規範に縛られた軟弱根性無し

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兄を殺した。気が楽になった。
父を殺した。爽快になった。
母を殺した。滑稽だった。

「お前は無理だ。諦めなさい」
「兄さんにもできるんだ。私だって!」
「お兄ちゃんは天才なんだ。彼こそが努力し、たくさんの人を救うべきなんだ!」
そんなの兄が望んでる訳ないのに。
昼間から父親と娘による口喧嘩が勃発している。週末になれば必ずと言っていいほどよく起こる。
「漫画家の何がダメなの?多くの人を楽しませられるんだよ?」
「あれは天才がやるべきことだ!平凡なお前にやれる資格も覚悟も機会も無い!身の程を知れ!」
「兄さんだって!医者になるだなんて、ハードルが高いよ!」
「お兄ちゃんなら全然現実的だ。賢くて、人を思う気持ちは人一倍強い」
「私だって!たくさんの人を楽しませたいって思ってるよ!」
プロの漫画家を目指すなら専門学校に通うのが手っ取り早い。でも通うためには親の許可が要る。でも…
「いいか!何度も言ったがなぁ、お前は諦めろ。お前がなんと言おうと許す気は微塵もないからな!」
父の部屋から突き飛ばされて廊下に出された。そして近所迷惑になる程でかい音でドアが閉められた。田舎だから近所なんて無いけど。
結局今日もダメだ。やっぱり許しなんてもらえない。全部兄さんだ。家族みんな私だけをハブる。否定する。父は私を全否定する。母は何もしようとしない。兄は妹にかまってられないほど勉強三昧。
かつて家出しようとも考えた。だが、家の前の監視カメラとGPSですぐにバレ、父にぶん殴られた。あの時のあざはくっきり顔面に残っている。
もう…嫌だよ。もっと前から親からの愛なんて無いことに気づいてればよかった。絵画のコンクールでいい賞をとっても、ネットでイラストがバズっても絶対に認められない。いや、認めようとしない。生まれてこなければよかったと言わんばかりに。
「みてろよぉ…」
ドアの前で吐き捨てて自室にこもった。

5日くらい学校を休んでも家族から気にもされない。そこだけはこの家庭のいいところだ。
もう我慢ならないので、やってしまおうと思います。

深夜。家が寝静まったころ。私は父の部屋の前にいた。
リビングのスピーカーを大音量にして、大地震の時になる例の音を鳴らした。それぞれの部屋からドタドタ聞こえる。こうなったらみんなリビングに出る他ない。みんな私なんかどうでもいいので、3人だけで簡単な会話を済ませる。その間に私は、開けっぱなしになったドアから父の部屋へ侵入し、クローゼットに隠れる。
しばらくして、耳障りなイビキが聞こえてきた。
いまだ。
静かにクローゼットから出て、あの口うるさい男に近づく。ネットで買った金属製の手錠で四肢をベッドに固定する。
「ふへへ…」
うっかり笑いが溢れたが、気付かれなかった。
仕上げにあいつの口を超強力なビニールテープで塞げば完璧。
「あはっ…はははは」
自室から持ってきた針と糸であいつの口をテープの上から縫い始めた。布と感触が違って、新鮮で楽しかった。針を刺すたびブチッ!ブチッ!といって面白い。痛みで目が覚めて暴れるから、綺麗に縫えなかったが満足だ。
「次は…、へへへ」
万年筆を取り出した。なんの躊躇いもなくあいつの目にブッ刺す。
唸り声など無駄なことはよして、今までの自分を悔いて欲しいものだ。
目をくり抜いて、残った片方の目の前でゆっくり潰してやった。あの恐怖に染まった、娘に裏切られ、絶望した目は最高だった。
いろいろやって満足したので、ぶっ殺しといた。
兄も同じ手口で殺した。慕ってはいたが、口封じで殺した。思いのほか楽しくて、自分を縛る存在がいなくなって安堵した。
母も殺した。手錠をつける時に目が覚めてバレそうだったが、もうこの際どうでもよかった。手錠は右足以外つけれたし。母はしゃべった。
「いつでもお前のことは大切だったよ?ね?助けて!誰にも言わないから!漫画家だってなっていいから!」
戯れ事だった。うるさいので殺しておいた。滑稽に思えた。何も思ってないくせに、一丁前の命乞いをしやがって。
「あぁ…なんていい人生のスタートだろう」
これを漫画のネタにすれば大バズり間違いなし。
自室で今日の事をメモした。



いい話だ。感動的だな。
毒親死ね。

7/18/2024, 11:01:50 AM