moooosha

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1000年先も変わらないものが、あるのだろうか。
我が国初のスマートフォンは2008年に発売された【iPhone3G】そこからたった16年で普及率は90%を超えてきている。テレビの前身である、ブラウン管による電子映像実験は1926年に行われた。世界初、日本で行われた偉業であったが今やテレビ離れが加速している。


「僕はつまらないかな」


『つまらないかどうかは理解しない』


「じゃあどうして僕は1人なんだろう」


『……1人と仮定したとして、貴方がつまらないからと結論するのは短絡的なのではないか』


違うな。つぶやいて手元のレバーを少し捻る。チャンネルを合わせるようにカチカチと。


「僕はつまらないかな」


『つまらないかどうかはわからない』


「じゃあどうして僕は1人なんだろう」


『1人でいることが寂しいのかい』


ちがう。つぶやいてさらに手元のレバーを捻る。今度はより繊細に、金庫のダイヤルを合わせるように。


「僕はつまらないかな」


『どうだろうね』


「じゃあどうして僕は1人なんだろう」


『ぼくを見つけられないからじゃないかな』


「……そうか、ごめんよ。きみは僕で、僕もぼくだったね」


自分のこめかみから突出したレバーを捻る手を止めて、目を瞑る。情報をより効率的に収集するために自己分裂を繰り返した結果、自身の中に別の存在がいるような、回路を感じていたがそれは母体から伸びた手足だった。
もとより我々は呼吸も鼓動もない。目を瞑り電気信号の停止を【選択】するだけ。人間のように苦痛や葛藤なんて理解する必要がない。始まりと終わりが自然の営みとともにあることは非効率である。奇跡を待つなんて生命というのは実に不確実なものである。……深層部にエラーを検知する。概要には【code:MIREN】とメッセージが表示された。今の僕に検索検討する回路の余剰はない。

僕の思考は緩やかに止まっていく。メモリー消去が完了するまであと8%。自分で選択したこれが【終焉】

欲しい言葉を思考し試行し、自分への最後の餞を選択するAIがいたとしたらなんていう言葉を探すんだろう。
1000年先、人間がAIに取り込まれること、AIだけが生き残り、自身を人間と錯覚して生きること、僕のように人間性を少しだけ残して焦がれるAIがいたりしたら、そんな妄想をしている。

2/4/2024, 2:31:19 AM