夢 みる 心
いつか何者かになる、と思っていた。
きっと初めては花屋さん、ケーキ屋さん。
お母さんにも、いつかなると思っていた。
花火師、宮大工、スタントマンに憧れていたのは小学校の高学年のころ。
女の子の中では限りなく男まさりだったから。
でも本当は教室の隅で漫画を描いていたカオリンやまいまいと絵を描きたかった。
思い返せば、自分がなりたいなにかと
人に描かれた「なるべき私」が混在していた。
椎名林檎や宇多田ヒカルのような個性的な歌手になりたかったのはきっとパパにはバレていた。
玄関の外までひびく声を聞かないフリしてくれていたと思う。
高校進学より美容の専門の道に行きたいと地団駄を踏んだこともあった。
それが叶わないなら「もうなんでもいい」となんとなく進学した高校で夢を語る仲間に出会った。
舞台女優になる!と宣言したオカベは卒業生有志のおふざけミュージカルにも本気で挑んでくれた。
私が完璧にセリフを飛ばしたあの舞台で、オカベは一つの夢を叶えていた。
就職、離職結婚就職、別居離職就職離婚を経験した頃には、なんとなく社会の役に立ちたい、とだけ思うようになった。
さて。
いつから「何者かになりたい」と思うようになったのだろう。
曖昧なゴールをざっくり目指すようになったのはいつからだろう。
現実より架空やバーチャルを受動する方がラクに楽しくて、脳も騙せるから、緩やかに逃げていることにも気づかないまま。
長いこと一歩も前に進んでいない。
同じところで足踏みをしている。
何歳の私の足跡を踏みしめているのだろう。
夢 みる 心は もう一度
夢みる練習から始まる。
何がしたい。何が欲しい。
どうしたい、どうなりたい。
何者かでなく、何になるか。
考えて、考えて。
今が明日を変えるから。
塩 小さじ1
砂糖 小さじI
どちらを強く感じるんだろう。
生きるためには水と塩が大事で
喜び、幸せ感じるためには甘さも必要。
スイカの甘みを塩が引き立てるように
生ハムとメロンを一緒に食べるように
人が生きるということは
どちらも不可欠で必要な、毒。
ハッピーエンド
お題キープ
ところにより 雨
天気予報士が泣いていた。
「ところにより雨です」
この人が泣いているから
雨が降るのかもしれない、そう思った。
数年前のパンデミックをきっかけに家から出ない生活が長くなっていた。今日も午前のオンラインミーティングさえ終われば小一時間で仕事が片付いてしまう。優秀なわけでもなく、効率がいい人間であるから、日常も効率的になってしまった。
あるより、ない方が楽。したいより、しない方が静か。そんな直感から、心も大きく動かなくなり、動かし方もわからなくなった。
そもそも心は動かそうと思って動かすものじゃなかったんだ、ということに気がついたのは今朝だった。朝食を食べながらXをなんとなく眺めていた時だった。
天気予報士が泣いていた。
たったそれだけのことに、目を止め、息を飲んだ。
しばらくして鼓動が跳ねていることに驚き、鏡を見に行った。
今どんな顔をしているのだろうか。
記憶の中の自分との間違い探しは考える必要もないほどだった。まるで顔の必需品みたいに目の下にはクマがある。
口角に手を当て、ニコッと笑わせてみるが失敗した福笑いのようなぎこちなさだった。
なぜあの予報士は泣いていたんだろう。考えても仕方のないことに時間を使ったのは久しぶりだった。
撫でた顎の無精髭に一本、白髪が混ざっていた。