『1000年先も』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
朝も夜も存在しない暗闇の中で、俺は見せ物のように体は磔にされ、地獄の業火に焼かれ続けていた。
俺はとある国の王だった。
国民から搾り取った金で贅沢の限りを尽くし、美人な女は親元から引き離してひどくいたぶり、逆らうものは一人残らず殺してきた。
そんな俺への罰なのだろう。
俺が死んでから数百年が経っても、俺の悪事は歴史として残り、新入りは皆、俺の顔を見ては蔑んだ目で笑う。その度に腹の底から怒りと同時に後悔が込み上げくる。
そんな俺を見て閻魔大王は「馬鹿にされないと後悔できないなんて、あと1000年焼いとくかぁ」とため息混じりに言った。
大事な人
大事な家族
大事な友人
いろんな人達に会って
いろんな人達と繋がって
いろんな人達と縁が出来た
この大事な縁
どうか1000年先も変わらずに
姿形や何もかもが変わってても
魂に刻まれた記憶や感情は残ってると
信じてるから
1000年先の自分へ
1000年先も
永遠を
数字にすると
どれくらい?
人の寿命の
先にある
果てしない
時間の単位
1000年前から
今になるまで
続くもの
今から
1000年先も
続くもの
それが
永遠なら
人の思いの
先にある
果てしない
願いの数々
きっと
知らない
誰かの
一部分を
無意識に
繋げてる
そんな気持ち
感じるんだ
そして
私にある
いくつかの
思いを
きっと誰かが
無意識に
繋げてく
1000年先も
思いだけは
バトンのように
受け継がれていく
幾多の思いが
時を超えて
流星のように
駆けていくんだ
町の外れに森の入り口がひっそりと立っている。
最初はこの先に何があるのか
知りたくて森に入ってみたの。
森に入ると別世界に行ったような
町とは違う世界が広がっていた。
木々の揺れる音,鳥の声,
さらさらとながれる川のせせらぎ
町で感じることも出来ない世界がここにあった
少し開けたところに来た。
そこには見上げるほどの
大きな大木が静かにでも存在感をはなって立っていた。
1000年はたっているだろう
1000年もこの町を見守る大木は
私が大人になっても倒れずにいてくれるだろうか?
これから先
1000年先も
私を暖かく優しく
見守っててください。
大木さん。
─────『1000年先も』
お題 千年先も
私は蒸留所の樽
中にはウイスキーが入っている。
この蒸留所が出来て数十年。
この樽は開けられたことがない。
この蒸留所の人間は羨望の眼差しで私を見る
何故ならこの蒸留所の最古参のウイスキーが入った樽だ
今後私を千年先いやそのずっと先も寝かし続けると言っていた。
人間とは馬鹿な奴で年季が入れば入るほどいい味が出ると思っているらしい。
「天使のわけまえ」といって、中身が減って、代わりに味の深みが増すというが
このままだとそのころには天使のわけまえとやらで私の腹の中にはカスしか残らないはずだ
がっかりさせてごめんよ人間。
だが、そんなこと人間だって流石にわかっているはず。
結局この私をどうするつもりなのか…
私の運命は千年先にしかわからない
私の運命が決まるその時まで
私に出来ることは寝ること
それまでゆっくりこの暗い倉庫で寝かせてもらおう。
私の願いは叶わぬ。
かの神才と再び見えようなどと。
まして、再び、燃え盛る火の如き劣情を易々と口に出来るような日が来よう、などと。
人の人たる所以、想いなど捨て去ってしまえばよかった。この台詞をあと何度吐けば私は真に救われるのだろうか?
1年後、10年後、100年後、1000年後も?
__否。もう手遅れであったのか。
「____、君にも手紙を書いてみたんだ」
劈く様な声。
神は恒たる人の仔にあまりにも近づきすぎた。
だが、その声色は。
「やだなぁ、下ネタなんか書いてないってば」
あまりにも__
「ほら、こっちに来て、一緒に読もうよ、_____」
日は落ちた
もはや赦しは得られぬ
堕ちた神は壊疽の如く朽ち果てた
さあ
懺悔を!
懺悔を!
「綺麗じゃないですか?ここの景色。ここで見る星は何処よりもきれいなんですよ」
三つ葉寮の寮長である参輪(みわ)ふたばが、自分の寮の自室にあるベランダに俺を通した。『星が綺麗なんだ』と孤立した俺の手を参輪が引いた。参輪の自室は、お世辞にも綺麗とも広いとも言えなかった。必要なものがあったりなかったりと、言いたいことがたくさんある部屋だった。そんな部屋を通りベランダを踏む。ギッと地面がきしむ音がする。
「ほら、綺麗でしょう?どこの夜景よりも」そう言って参輪は俺に笑いかけた。
「星なんて興味はない」そう言うと、参輪は一瞬悲しそうにしたあと「鈴蘭寮の寮長さんは、冷たいですね。」と笑った。申し訳ないとは思わなかった。
「ほら考えて見てください。幾千もの星に、物語があるのです。もしかしたら、他の星にも人がいて、その星の一人一人が物語を持っている。そう思うと、星自体が短編集のようなものに見えてきませんか?」独特な参輪の意見に、少し笑いそうになった。しかし、星は星だ。本には見えない。俺は素直に「見えてこない」と答えた。参輪はまたしばらく考えだした。しばらく見ていると、思い出したように語り始めた。
「うーん。他の星から見たらこの星だって小さくて、ただ見るだけ。もしかしたら見るにも値しない。そんなものだと考えると、実に面白くないですか?」
俺が返答に困っている隙に、参輪は空を指さした。
「あ、あの星は鈴蘭寮の寮長さんみたいですよ。白くて冷たそうです」俺は参輪が指した方を見て、どこのことを指しているかを探す。しかし見つからない。
「どこだよ︙これか?」適当なものを指さして聞いてみた。
「うーんその星は椿寮の寮長さんですかね。椿寮の寮長さんの背中は大きくて暖かくて優しい感じがするので。ちなみに、その隣のかわいい星は桜寮の寮長さんですかね?」と聞いてもない持論を繰り広げた。俺にはさっぱりわからない。さっき指した星すらも。しかし、この星はしっかりと浮かんだ。
「じゃああの建物の横にある星は参輪だな。」その星は、参輪の様に、弱々しく、すぐに散ってしまいそうな花のようだった。しかし、その弱そうな儚さが、美しかった。
「え、どれですか?」参輪が空を眺め、それっぽいものを探す。
「上から8個目のレンガの横。右側のすぐ。すぐ消えそうな星」俺はその星の明確な場所と見た目を示した。星を探す参輪の横顔に、なぜか吸い込まれた。
「どこですか。︙ていうか、酷くないですか?」急にこっちを向いた参輪と目が合う。一瞬ドキッとした。が、調子を整える。
「酷くねぇだろ。思ったことだし」
「鈴蘭寮の寮長さん、意外とのりいいですね」いたずらにニヤリと笑い、手すりを掴む手に顔を近づけた。
「別によかねぇだろ」
「どうですか?こう語らうのも悪くないんじゃないですか?」
「悪くはないけど、もうしたくはない」そう言って俺は空を見上げた。そこにはいくつもの星が生き生きと輝いていた。
「残念です。でも、星同士を渡るのに、数年かかるそうですよ。あそこにあるキレイな星に届くまで、一体何年かかるのでしょうね。私と鈴蘭寮の寮長さんの星だって、今の私達の距離よりも少ない距離なのに、私の拳一握り分ぐらいなのに、何年もかかる。不思議ですよね」そう言い参輪も星空に釘付けとなった。
いくつもの星を越え、千年経った先でも、こいつとまた出会えたのなら。
そう望まない日はない。
凍える日
わずかに綻ぶ
福寿草
逞しき生に
背中押される
樹齢1000年を超える
生物の大先輩のような木々達が
いくつもの時代を経てまだ
世界のあちらこちらで
圧倒的な存在感を放ち
そびえ立っている
木は
この世の変化を
人間の歴史を
変わりゆく景色を
どの様な気持ちで
見据えて来たのか
人は
1000年先も
きっと
そこからまた
1000年先に
思いを馳せている
遠い未来に
何かを夢見ている
自分はその時
何処で
どんな世界で
どんな形で
存在しているのだろう と
「1000年先も」
「1000年先も」
1000年先も
ただ紡いでいたい
非現実的過ぎて
生きていられない事
分かっているから
死んだ後
どうなるかなんて
分からないけど
高い空に行こうが
何処に行こうが
私はずっと紡いでいたい
あの日に恋した君の事や
私をいつも笑わせてくれた
あなたのことや
いつもやんちゃしてた君の事
色んな人に感謝しながら
色んな人に紡いでいたい
空から
悲しい紡ぎを奏でたら
今日は雨ね
空から
楽しい紡ぎを奏でたら
良い天気になるだろう
色んな胸の内を
教えてくれている様に
今日の晴れは誰の
どんな紡ぎなんだろう?
愛してる人と
空で幸せになって
愛してる人と
デュエット奏でたい
たった一つの歌
あなたと私で
2023年 17
___________________
私たちが誰かに恋をする用に
これから生きていく人たちも
誰かに恋をし愛を知り
恋や別れの辛さを知っていくのだろうか
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Theme:1000年先も
「1000年先も」
良くも悪くも様々なものが変化し続けていくこの世の中で1000年先も何一つ変わらないものがあるのなら、それはこの世の理くらいだろうか。
1000年先も人が生きている保証なんてない。
生物が存在している保証も、地球が存在している保証も、絶対なんてどこにもないんだ。
それでも、この世の中はどうやらルールとやらがあるらしい。
絶対がないなら、そんなルールもやがて変わってしまうのだろうか。
この残酷なルールはいつか終わってくれるだろうか。
私は知りたい。この世の全てを。
その先に残酷な結末が待っていたとしても私は知りたいと願うだろう。
知りたがりなのだ。
しかし、知ったところで私は何も変わりはしない。
ただ知りたいだけ。
否定も肯定もしない。
私はこの世界に"生かされている"身なのだから。
私にどうにか出来る問題じゃない。
口を出せる立場でもない。
ただどうせいつか消えてしまうなら私はその日まで追求し続ける。
答えを教えてくれないというのなら私なりの答えを探す。
ひたすら考える。思考する。
今の自分で居られる内、自分が死ぬまでに自分なりの答えを見つける。
私は私の生きたいように生きる。
生かされている身とは言え、私はこの世界について、己について何も教えられていない。
教えられてくれないのなら、せめて自由に生きる。
1000年先なんて私は知らない。
どうなるか分からない未来に期待なんてしない。
何も教えてくれないのなら、
想いや記録は残しても希望なんて託さない。
私が私で居れる最初で最後のチャンスかもしれない。
魂がどうのとか、天国とか地獄とか、転生とか、生まれ変わりとか、そんな不確かなものを信じれる心は私の中には存在しない。
1000年先がどうなって、私の死後がどうなろうと
今の私には知ることが出来ない。
だから願わないし、信じない。
もう、なにかに託すなんてしない。
見えない未来に希望を抱くことも。
誰かを信じることも。
自分が明日生きてる事を信じることも。
いけないとわかっていても、それでも、
もう何かに縋るのは怖いから。
独りよがりの先に待つのは絶望だけだから。
自分が本当に信じれるのは自分だけなのだから。
1000年先もこうであったら、なんて願えない。
鶴は千年亀は万年、という言葉がある。
しかし、現代の鶴や亀はそんなに長生きではない。
いくら縁起が良くても、性質上、鶴も亀ももっと早くに死んでしまう。
一方、宇宙の星々の寿命はもっと長い。
太陽であれば約100億年。
もっと小さく軽い星であれば、兆にまで達するらしい。
寿命が最長3桁の生物である我々人間から見れば、それはあまりに果てしない長さだ。
反対に、星々から見た人間の一生は、一瞬の出来事とすらカウントできない程度の長さかもしれない。
私達が星々の歴史を最初から最後まで見届けることは叶わない。
そして、私達の歴史はこの惑星の死と共に消えるだろう。
しかし…それはなんとなく凄く嫌だ。
今生きていることすら、無意味に思えてきてしまう。
自分の思考も生死も何もかもを放棄したくなってしまう。
『だって、どうせ最後には消えてしまうのだから』と。
__星々は、宇宙は、覚えていてくれないだろうか。
誕生の時から、今も、1000年先も、その先も、全て。
私は、どうにか覚えていてほしい。
そうでないと、……虚しいじゃないか。
遠い昔の出来事も
遙か未来の出来事も
我々の目は手は
触れられもせず
心も身体も
ここに存在しているだけ
織り重なった地層は
幾年月の霧散した
音なき音を吸い込んで
誰に証しするともなく
足もとに硬く
あきれるほどに強固に
横たわっている
いつまで続くのか
わかりはしない
天に問いかけても
わかりはしないが
千年は一日のごとく
神の時を生きるなら
過去も未来も現在も
みな同じだ
なにも変わることなく
生まれくる命が
みな平等なように
#1000年先も
1000年先もなんて言いたいけど
そんな我儘は言えないから
あと一日だけ、あと少しだけ
君と居させて。
『1000年先も』
1年先も
10年先も
100年先も
1000年先も、、、
生まれ変わっても。
きっとわたしが恋をするのは
大切なあなた
大好きなあなた
わたしに
生きる希望を与えてくれた
人だから
笑わせてくれる人だから
大切にしてくれる人だから
わたしもあなたを
1年先も
10年先も
100年先も
1000年先も、、、
笑わせたい
大切にしたい
「いつか居なくなっちゃうんだよね」
そうだ。彼も俺も、いつか消えてなくなる。
「そんな悲しいこと言うなよ。俺の心の中でお前はずっと生き続けてるから」
柄にもなく馬鹿なことを言う。
彼はいつもの顔を崩さず
「でもいつか忘れるでしょ。」
と呟く。コイツは何処までマイナス思考なんだ。
「俺のことが信じられないのかよ!」
軽く突っ込んだつもりだったが、彼は大きな目から少しずつ涙を零していた。
「忘れないで、、ずっと隣で笑ってて、、」
縋るように泣いてくる。彼が何かを抱え込む姿は幾度も見てきたが、泣くほどでは無かった。
ただ、それと同時に俺は彼の特別になれたような気がして、少し嬉しいような、そんな感じだった。
「馬鹿だな。ずっと一緒だよ」
彼を抱きしめ、頭に手を置く。
「お前もずっと隣で俺を笑わせてくれよ」
彼が嗚咽を漏らしながら泣く。
「何歳だよ馬鹿。心配症だなぁ」
はは、と笑ってみせる。
彼と俺、どっちが先に死ぬかなんて俺たちには決められない。神様が気に入った方を遺してく。
そんな輪廻の中で俺たちは生きている。仕方の無いことなんだ。
いつか死ぬ、いつか居なくなる。
いつか、誰からも忘れられる。
それでも
「ずっと一緒だよ」
そう思えるのは、君だから。
#1000年先も
浮上できてなくてすみません、、。スランプですごめんなさい許してください
1000年先も
このまま生きてる気がする。
死んでる気がしない。
土に埋もれたり、分解されてたりするとは思えない。
1000年先も恋をしている気がする。
今ある記憶を全て忘れて、いちから新しい恋、
純真無垢な恋をしている気がする。
1000年先にLINEはないだろうし
Instagramも
Twitterも
TikTokも
ないだろうから、
連絡は何でするのだろう。
1000年先のあたしは。
やっぱり
誰かと繋がろうとしてる。
お題「1000年先も」
時間が経過しても変わらないものなどない。
100年、1000年先も愛してるなんて言ったって、その数分後には別の誰かに愛を囁いているかもしれない。
未来の愛を語るなぞ、無責任以外の何物でもない。
だからオレは言わなかった。
ずっと一緒にいようと言われても、未来のことなんてわからないから答えられないと返した。
あなたと暮らす未来が見えないと言われても、それは未来の話なんだから見えるはずがないと返した。
そしていつからか、相手からはなんの連絡も来なくなった。
「だからフラれるんだよ、おまえは」
向かいの席に座った男が口をへの字に曲げて言った。
つられるようにオレも顔をしかめて言う。
「おまえは逆に誰にも責任を持ってないだろう」
「責任ってなんだよ? 相手はおまえのこと好きになってくれてたのに、それを無下にするのが責任だってか?」
「確定してないことを答えられるわけがない」
「相手は少しでも安心したいの、この人となら生きていけるかもって期待したいの」
「それを裏切る結果になるかもしれないだろう」
「そうならないように頑張ろうねって話なの!」
男は「めんどくせー男だなおまえは」と髪をかきむしる。
そのめんどくささがコミュニケーションというものではないのか。コミュニケーションを怠るとフラれると言っていたのはおまえではないか。
オレは不満に思いながらも、少し落ち込んでいた。
きっと男の言っていたコミュニケーションをオレはできていなかったのだろう。
男の言ったものとオレがそれだと思ったものが違っていたのだろう。
オレはため息をついて天を仰いだ。
「また……恋人を傷つけた……また失った……」
「おまえのせいでな。文句言われんの俺なんだぞわかってんのか」
「すまない」
「誠意のかけらも感じられない」
「彼女が文句を言いにきたら伝えてくれ。……すまなかったと」
再びため息をつくと、男は機嫌の悪そうだった顔を少しだけ緩めた。
「あの子に罪悪感があるならまあよしとするか」
「傷つけてしまったことは申し訳なく思っているが、オレは悪いことをしたとは思っていない」
「反省する気ゼロじゃん」
「当たり前だ、1秒後のことなんて見えないのだから保証なんてできるわけがない」
「おまえなぁ……」
男は注文のベルを押し、店員にコーヒーのお代わりを頼む。オレは紅茶を頼む。
静かな店内には、オレたちの声しか響かない。なんなら、店内にいるのはオレたちと店員くらいだ。
こんなガラガラなカフェでよかった。逆に安心して話せる。
男は届けられたコーヒーに砂糖を3つ入れて、スプーンでくるくると混ぜる。
コーヒーは好きだが甘いのしか飲めないという難儀な人だ。
「おまえさぁ……もしかしてデートの約束とかもしなかったのか? 未来のことはわからんって」
「いや、そういう約束はした。1ヶ月を超えるものはしない主義だ」
「どんな主義よ……旅行とかもおいそれとできないじゃん……」
「二人での旅行は社会人になってからだろう。今約束することはない」
「……まじかよ」
虫でも見るかのような顔をされて、少し不安になる。
恐る恐る尋ねてみた。
「おまえは……旅行したのか?」
「ついこの間、タキちゃんとね」
「……おまえ、何人目の恋人だ」
「4人目かな? みんな許してるよ、なんなら相手の子たちも恋人いるし」
「なんでそんな爛れた関係になるんだ……」
「俺の話なんかもーいいよ、それよりおまえのそれをどうにかしなきゃならん」
「それ?」
「『未来の約束をしない』こと」
オレは断ろうとしたが、男にそれを遮られる。
「俺も何度も言ってるよ、『永遠の愛を誓う』って。でもそんなの、ただの気休めでしかない」
「だから……」
「それでも相手は安心するんだよ。この人はそう言い切れるくらいに自分のことを愛してくれてるんだって。事実、今までの恋人全員それで落としてる」
それはそれで、彼女たちのガードの弱さが心配だが……。
言いたかったが、男は話を続けとしていたのでオレは黙っていた。
「俺が恋人と続いてて、おまえが恋人にフラれる。その違いは、嘘でもずっと愛し続けると言えるかどうかだろ」
「嘘では相手を傷つけるだけだ」
「それはおまえの技量の問題。俺は誰とも拗れてないよ」
「おまえのは彼女じゃなくてセフレとかそういうあれでは……」
「立派に彼女ですー」
とりあえず、と男はコーヒーに口をつけて俺を見る。
「タキちゃん、ユウちゃん、ショウコちゃん、ミチちゃん。次なる恋人候補はこの4人だ」
「また選ぶのか……?」
「こちとらおまえが好きになりそうな子選んでやってんだぞ、文句言うな」
テーブルにパラパラと写真が置かれる。
下に名前が書いてある。この子達から、『恋愛練習相手』を選ぶことになる。
昨今、コミュニケーションというものが敬遠されている世の中で、この男は『恋愛練習相手を貸します』というグレーゾーンな仕事をしている。
恋愛でのトラブルはとても多い。
普通に交際してるつもりがDVに発展したり、すぐに熱がさめてしまったり、ストーカーに成り果てたり。
そんな被害に遭わないために、そんな行為を行わないために、この男は自分の『恋人』と称した女の子たちを雇い、依頼人に貸し出す。
もちろんそれでお互いいいマッチングだったらそのまま男の恋人をやめることもできる。
そんな男に頼るしかなくなった自分は情けないが、ここで借りると、終わった後にこの男から何がいけなかったかのフィードバックがあるのだ。
そのフィードバックを受けて行動を変え、相手の心を傷つけないような恋愛をする。
憧れの人と、自信をもって恋仲になってやる。
そんな目標も知っているから、男は笑って、「シノちゃんはまだ全然遠くだな」なんて言う。
「着実に近づいてはいるだろう」
「まあ、初対面にお前がまず名乗れって言い出したことを考えると断然よくなってるよ」
あとはその頑固さだなぁ。
男は立ち上がる。写真をまとめてカバンに入れる。
一枚だけ、タキちゃんを残して。
「この子、性格の雰囲気はシノちゃんに近いと思うから。あとでついてもらえるように頼んどくよ」
「ありがとう」
「未来の話をされたら真っ先に否定するな、想像しろ。想像した結果を答えるだけでもだいぶ違うから」
じゃ、またな。
男は去っていった。伝票は置きっぱなしなので、オレの奢りになってしまった。
ため息をついてレジに向かうと、あれっという女性の声が聞こえた。
まるで音楽でも聞いているかのような美しい響きに、オレはガバッと顔を上げる。
「し、シノさん……」
「いまシフト入ったところだから気づかなかったよ、もう帰っちゃう? よかったら新しいメニュー試してみない? お金はとらないからさ」
シノさんはかわいい八重歯をみせて笑う。
ああ、シノさんは今日も美しい。
シノさんにだったら、オレも途方もない未来のことを話せるのだろうか。
考えているうちにシノさんはテキパキと準備を始めた。
オレはカウンターの前で、シノさんが働く姿を穏やかな気持ちで眺めていた。
ずっと、見ていたい。
もしかして今までの女の子たちも、そう思ってたから未来の話をしていたのだろうか。
ずっと、一緒にいられるように。
なら、オレはずっと彼女たちを裏切っている。
いつ好きじゃなくなるかわからない女性が、今はいるのだから。
永遠なぞ信用しないが、できることなら永遠を捧げたい相手がいるから。
オレは気づく。
相手がシノさんじゃないから言えないのではないか。
シノさんだったら、言えるのかもしれない。
あなたのそばにずっといさせてほしいって。
「はい、おまちどうさま」
思考を遮るようにテーブルに食事が置かれた。
ハンバーグだ。いつもよりボリュームがありそうだ。
「熱いうちに召し上がれ。話があるならその後聞くから」
優しいシノさんの言葉に頷いて食べ始める。
おいしいで埋め尽くされた脳内は、それまで考えてたことを全てどこかに追いやってしまった。
「今日も恋愛練習?」
「はい、なかなかうまくいかなくて……」
「そっかぁ。でも徐々に進んでるよ、前はこうやって会話さえできなかったんだから」
シノさんは楽しそうに笑う。
恥ずかしくなりながらもオレも笑う。
「いつだかにした約束、覚えてるよ」
「へ?」
「『恋愛うまくできるようになったら告白しにきます』」
「あはは……そのつもりではありますが、まだまだ先になると思います」
目を足下に向けて答えると、頭をぐしゃぐしゃと撫でられた。
顔を上げるとシノさんはニカっと笑っている。少し頬が染まっているように見えるのは幻覚だろうか。
「そのキミの姿勢に惚れた、って言ったらどうする?」
試すような、誘うような、甘い声。シノさんってこんな声も出すんだ、と場違いなことを思った。
「練習してる間に誰かのものになっちゃうかもしれないからさ、あたしで練習してよ」
「今のところ相手に泣かせてしかいないんですが……」
「いいねえ気になるじゃん、手始めに明日デートしよう、決定」
「はい!?」
「じゃ、あたしバイト戻るから。バイバーイ」
シノさんはそのまま裏に引きこもってしまった。
お会計を済ませて店を出る。
シノさんと……デート……。
一回きりの思い出になるかもしれないからちゃんと、準備しとかなきゃな。
そう思いながらさっきまで話してた男に電話をかけ、練習は一旦中止にしてもらうことにした。
まずは目の前のデートに集中しなければ。
緊張と不安と喜びをミキサーでかけたような気持ちで、オレは帰路についたのであった。
おわり。
あなたは、「俺」という存在を見つけて
こうやって愛し続けて来たよね、
「知ってましたか?俺、アンタと居れて
すごく嬉しいんですよ」
「なぁに?急に、そんなこと言うの珍しい」
「そうですか…?」
「うん、そうだよ〜、じゃあさ………-----」
こんなふうに、あなたは俺のことを甘やかして
来てくれた、
今度は、俺が愛すっていうのに、なんで…
あなたはそんなに冷たいんですか?眠っている
んですか?目を覚ましてください!
俺に「1000年先も愛してあげるね〜♡」
って、言ってくれたのは…あなたですよ…
こうして、俺はあなたが居ない世界を1000年も
さまよい続け、ようやく、やっと……!
「ろんかっていうの?素敵な名前!俺はね〜
和菜だよ!」
あなたはこうやってまた、微笑みかけてくれた
次こそは、1000年先も一緒に居ましょうね