『麦わら帽子』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
あいみょんのマリーゴールドがヒットした年の夏。
私たちは出会い、交際を始めた。
きっかけは、淡白なありきたりのものだった。
君の職場のコンビニで、
私が祖母に頼まれた小さなあんぱんを探していたが、
見つからず品出し中の君に尋ねた。
君は嫌な顔ひとつせず、笑顔で
「もしかして、この商品ですか?」と聞いてきた。
そのあんぱんが私の探していたものだとわかると
「それです、ありがとうございます」
と御礼を言ってレジに向かった。
すると、店員が少ないせいか君が慌てて会計をしてくれた。
会計を済ませた後、君は丁寧にお辞儀をした。
その日から私は祖母に頼まれてなくてもパンを買いに
君のコンビニに時々、行った。
それを重ねていくうちに私は彼から
未発表の新商品を教えてもらったり、
アプリの新着のクーポンを教わり、使ってみた。
私はお金を落としていくことしかできないけど、
それで君と話せるから、嫌なことも忘れられた。
君の方から「LINEを交換しよう」と言われ、
ロケット花火のように私の心は跳ねた。
その夜、私は君の車で牧歌の里に行く約束をした。
デート当日。
牧歌の里に着き車から降りると、
私がかぶっていた麦わら帽子が風で舞った。
君が追いかけ、華麗な飛び蹴りのようにキャッチした。
「ありがとう」と君に見惚れながら言うと君は
無邪気な笑顔でその麦わら帽子を被って言った。
「俺、マリーゴールドに似てるかな?」
とふざけて言う君を見て私は、
「私があいみょんだったら、違う花にしたかも」
とふざけて言いながら笑った。
今では麦わら帽子をかぶっている人はほとんど見かける事はなくなった。私が子供の頃、夏休みになると、十勝清水のおじいちゃんの家に遊びに行った。おじいちゃんは畑仕事をする時も自転車に乗って街に用事をたしに出かける時も必ずつばの広い麦わら帽子をかぶっていた。おじいちゃんは幅の広い舗装道路を気持ち良さそうにゆっくりとペダルを踏みながら自分の家の方に帰ってゆく光景を今でも思い出します。
テーマ:麦わら帽子
突然現れたのはきれいな女性だった
何を喋らずじっとこっちを見つめている
風が吹くと君の麦わら帽子がとんだ
私はあわてて麦わら帽子を拾った
そして、渡そうとすると君はもういなかった
どこに消えたの?
返せないじゃんか…
この帽子をどうしろと…?
私は考え、その麦わら帽子を置いていくことにした
また、君はここに来るかな?
麦わら帽子が拾われたころに
私はここに戻るよ
2024/8/12
暇なのか、麦わら帽子をくるくるとひっくり返し手遊びをしている君が、何かを閃いたように、にひひと笑い、自分の視界から消える。暫くたって自分の所に戻って来た君は、麦わら帽子に桃を2つ入れていた。どうやら、この夏の果実で休憩をしませんか、ということらしい。
麦わら帽子が揺れる夏の日、
あの日の君と出会った奇跡。
優しい風が吹くたびに、
初恋の甘さが胸に蘇る。
青空の下で交わした言葉、
二人だけの秘密の場所。
麦わら帽子を押さえながら、
君の笑顔が心に焼きついた。
夏が終わり、秋が訪れても、
あの初恋は色褪せない。
麦わら帽子と共に、
今も君を想い続けている。
【麦わら帽子】
なるべく遠く。
知らない人ばかりの知らない街に行こう。
何かが変わることを期待して。今日出会う人とはうまくいく気がする。
白い光が眼球を刺し空を睨む、「久しぶり青空。」
海から吹く風 入道雲 ヒマワリの花
クラフトバンドを編みながら
麦わら帽子が連れてくる夏の景色を思う
ずっと憧れがあった
カントリードールの女の子がかぶっていた帽子
ウルスラがキキを訪ねた時にかぶっていた帽子
セージ ミント シナモン オレガノ
乾燥させたラベンダーといくつかのハーブ
シトラスの精油を少々
オーガンジーでつくった巾着に包んで
小さな麦わら帽子に詰めた
本物の藁で作れたら良かった
お気に入りの布をリボンにして縫い付けたら完成
窓際に吊るしてしばしながめる
少しは供養になったかな
陽炎の中に手をふる子供の影が見えた気がした
『麦わら帽子』
【麦わら帽子】
「今日、30℃超えてんだけど…」
「暑いですけど…水分やらタオルを持ってきましたよ!」
「俺が休みをいいことに、外に連れてきやがって…」
いつも外に出ていない僕の仕事場の先輩。
今日は天気がいいし、ずっと一緒に行きたいところに
連れていくことに成功した。
「…ひまわり畑、ねぇ…」
「はい、ずっと先輩と一緒に見に来たかったんです」
そう言って持ってきた麦わら帽子を先輩に渡した。
素直に被ってくれた先輩は、どこか儚さを感じた。
チータラの、タラのとこだけ剥がして集めて。
ところどころ焼き色のついたタラを縦横に並べて、上、下、上、下、とチマチマと編んでいく。
裸になったチーズの細切れをモシャモシャ食べながら、黙々と編み編みする。
一袋食べ終わる頃には手のひら大にまで大きくなったシート状のタラ。
ぴょんぴょんと飛び出たタラを一つ残らず編み込み、しげしげと眺めてから、少々固くなったタラをむしゃりと噛みちぎった。
テーマ「麦わら帽子」
麦わら帽子、といえば今でこそ海賊が思い浮かぶ人が多いだろうけど、昔はオタクの憧れだったんだよな……真っ白なワンピースに麦わら帽子の美少女って。
でもさ、現実にはなかなかそんな娘はいないんだよ。所詮、オタクが生み出した一種のファンタジーなのかな……? そんな幻想に対する想いと夏の暑さにやられた頭は——今にして思えば、イカれた結論を生み出した。
白ワンピの美少女がいないなら、俺がそれになってやろう、と。可愛いは作れる! Can Make T○ky○! って言うし、大丈夫! やれるやれる!!
謎の自信に満ち溢れた俺は、早速Z○Z○TOWNで自分サイズの白ワンピを購入した。いつもいかつい男物を買ってたアカウントが、突如同サイズの白ワンピを購入したことを知った担当者はさぞゾッとしたことだろう……ZOZOT○WNだけにね!
ネットで白ワンピを購入した俺は、勢いそのままに近場のホームセンターで麦わら帽子を買った。……これで後は白ワンピの到着を待つばかりだ。
注文から二日ほど経ってついに、ワンピースが届いた。これであの頃、オタクだった俺が憧れていた白いワンピースの美少女になれる! 俺は着ていた服をいそいそと脱ぎ捨て、憧れの純白のワンピースに袖を通した。
すると、なんということでしょう!
素材の良さを活かし、引き出すはずの真っ白なワンピースは素材の不味さに殺され、見るも無惨な姿となっているではありませんか。
麦わら帽子を被った首から上は、どっからどう見ても農作業に従事するおっちゃ……お兄さん。白ワンピとの相性の悪さは改めて言うまでもありません。
……家を出る前に鏡を見て良かった。この姿のまま外に出ていたらどうなっていたことか。俺は涙を堪えて元の服へと着替えた。ちなみに、白ワンピは捨て……るのは勿体無かったので、なんとなくハンガーに掛けておいた。駄目元でZ○ZOT○WNに返品出来ないか問い合わせてみたが、一度でも着用したものは駄目なようだ。女物の下着までは買わなかった(お洒落は見えないところから、ってことで迷いはしたが)のはせめてもの救い、だったのかもしれない。
かくして、俺の白ワンピ美少女化計画は失敗に終わった。あれは本当に素材が良くなきゃ似合わないんだな、と身をもって知った。
現実に真っ白なワンピースに麦わら帽子の美少女がいない理由は、もしかしなくても「そういうこと」なのだろう。
麦わら帽子
治安が良くない国で日本人だと思われないように麦わら帽子を目深にかぶって大きめのTシャツにゆったりしたパンツを履いて地元の青空市場に買い物に行った事がある。
安宿のシャワー状態も良くなかったので髪の手入れが大変になり、青空市場の一角にあった美容院で髪を切ってもらったら、ちょっとダサい髪型になり眉毛まで剃られた。
日本だったら怒って落ち込んだかもしれないが、その選択をしたのは自分なので、仕方ないと開き直って、あの時はおおらかにならざるを得なかった。
そしてまた麦わら帽子を目深にかぶって美容室を出たのであった。
麦わら帽子
青空と坂道が交差する
麦わらの乙女は赤い自転車何処へ行くのだろう
忘れていた、宝物を思い出した。
わたしの心の一番やわらかい場所に眠る
夕焼けと日に焼けた麦畑を渡る風の匂い
切り取った時間の片隅で君は微笑む
麦わらの乙女の夏休み
目を閉じれば草笛の歌が聞こえるよ
想い出の、あの浜辺から君の囁きは漣
わたしの心を染める君色の絵の具
陽炎、向日葵、ジリジリと蝉時雨
遥むこうにある、夏の嵐を積乱雲が連れて来る
土砂降りの中、君を探した
夏の終の、覚めやらぬ夢
麦わらの乙女の残り香は、過ぎ去りし
激しく暑い夏を想い起させる
女には最初の恋が故郷
戻ることは出来ない、だからこそ
儚く尊い、夏の日の嵐と濡れた麦わらの想い出。
令和6年8月12日
心幸
『麦わら帽子』
私がその人と出会ったのは、かれこれ三十年ほど前のことになる。
私たちは、たまたま列車の向かい席に乗り合わせ、他に大した数の客もなく、なんとは無しにポツリポツリと雑談を交わした。
日差しの厳しい夏のことだった。
ちょうど碓氷峠に差し掛かったところで、その人が言った。
「あの帽子、どうしたかなぁ」
なんのことかと尋ねると、幼い頃、碓氷から霧積へゆく道で、谷底へ麦わら帽子を落としてしまったのだと言う。
「あれは、好きな帽子でねぇ。当時、僕はたいそう悔しかった」
そこへ通りがかった若い薬売りが、懸命に拾い上げようとしてくれたけれど、ついに手が届かなかったらしい。
その話を聞いて、私は思わずため息を漏らした。
人と人とのめぐり合わせは、誠に不思議なものである。
「私の名前は、百合といいます」
突然話し始めた私に驚きながら、その人は先を促すように頷いた。
この名は父の思い出話が由来だ。
ある夏の日に、偶然行き合った母子との束の間の邂逅。
ゆっくりと谷間へと落ちてゆく麦わら帽子。
その時、傍らに咲いていた燃えるような車百合の花。
「父は若い頃、薬売りをしていました」
大きなモンペで身を包み、私を見送る貴女へ。
昨年のこの夏は、貴女は大きな麦わら帽子に白のワンピースを着て一緒に向日葵を見に行きましたね。
周りの女性は着物ばかりだったので、白のワンピースを纏った貴女は天から舞い降りた女神のように見えました。
貴女はお家柄もよく、身分違いな私でしたが、婚約出来た時は夢の様でした。
全てが夢のようでした。
しかし、もう今はあの時とは何もかも違った世界へとなりました。
私はこれから貴女の未来には居ず、過去の男(ひと)となります。
貴女はどうか過去の男にしがみつかず、未来へと歩き出して欲しい。
私を待たず忘れて欲しい。
私は片道切符と貴女の写真と思ひ出と共に飛び立ちます。
二度と戻れない地へと旅たちます。
次はどうか貴女と幸せな家庭を築き、貴女と共に歩み貴女の傍で命つきたい。
では、いってまいります。
麦わら帽子
あの歌が流れてきた。
いいよねーあの歌。
想像できますか?
現在麦わら帽子と言えば「海賊王」を目指す少年だろうけど。
私は『赤毛のアン』のアンや『大草原の小さな家』のローラのような、異国の三つ編みのソバカスのチャーミングな少女がかぶっているイメージがある。それもつばの広くないカンカン帽。
その帽子をとばされないように片手で押さえながら、走ってこちらに向かってくる、古い時代に疑問を持ちながらもたくましく生きる少女たちだ。
あくまで私のイメージで、本当の素材はちがっているのかもしれない。ローラにいたってはサンボンネットをイメージされる方のほうが多いかもと思う。
ところがだ、少し前の日本では、そのカンカン帽が紳士のかぶりものだったと知った時の衝撃たるや。
挙げ句今の私はストローハットをかぶってすることといえば、狭い庭の草刈りの時くらいだ。
アンやローラのように三つ編みを揺らして草原を駆け巡るなど、遠い憧れのまま一生叶わない夢と諦めている。
お題「麦わら帽子」
『麦わら帽子』
お盆の時期は父の実家に親戚一同が集まる。どの人が誰と兄弟なのか、誰のこどもなのか詳しく知らない中で仲良くしてもらっていた人がいた。父より年下でどうやら独り身でいわゆるちょい悪オヤジながら、こども相手にはひょうきんなところを見せる人だった。会えるのは決まって夏だったので麦わらでできたカンカン帽にアロハシャツ姿が見えると小さな頃には駆け寄っていたものだ。もう高校生なので行きたくない気持ちもあったけれど、あの人に会えるならと今年もやってきた。実家の祖父や祖母とそのきょうだい、叔父や叔母といとこたちに一通りあいさつをしていると声を掛けられる。
「よう、久しぶりだな」
今年もカンカン帽にアロハシャツ姿のおじさんが気さくに片手を上げた。もう高校生なので大人向けな対応をしてくれるかと思ったけれど頭を撫でくり回される。
「ちょっと!せっかくセットしてきたのに」
悪い悪いと言いながらも悪びれずに笑みを見せるおじさんは去年と比べると痩せているように思えた。
それから仏間で酒盛りが始まったのでそっと抜け出すと、抜け出た先でおじさんとばったり会った。ビールをよく飲んでいた記憶があるけれど片手にあるのは炭酸水。
「医者から酒止められてんだよ」
「体、どこか悪いの?」
「あぁ。体中全部悪いらしい」
ぐいと飲んでみせるけれどあんまりおいしそうでもない。
「好き勝手生きてきた罰が当たった、なんてオヤジからは言われちまったが、好き勝手生きて何が悪いって話だ」
炭酸水がビールみたいにどんどん減っていく。酔っ払いが管を巻いたようになってきたおじさんは、おもむろに被っていたカンカン帽を脱ぐと僕に手渡した。
「なぁ。この帽子もらってくれねぇか」
「えっ、でも」
「けっこういいやつなんだぜ、それ。大事にしてくれよ」
言葉を返す暇を与えずに立ち上がったおじさんは、そのままふらりとどこかへ行ってしまった。手元に残ったカンカン帽を見つめたり匂いを嗅いでみたりしたあとに被ってみるけれど、今着ている服ではあんまり似合わなかった。
次の年のお盆はおじさんを迎える形になった。僕はファッションの好みが少し変わって、今はカンカン帽が似合う服装を模索している。
麦わら帽子といえば
あいみょんのマリーゴールド
ルフィ
夏!
連想ゲームか??
自分の背くらいの向日葵と、麦わら帽子を被ったキミ。
太陽を背にして微笑ましく笑っているその姿は、今もフィルムの中で生きている。
遠い日の夏の記憶。
あの向日葵畑は今もあるだろうか。
キミも空の上で元気にしているだろうか。
《麦わら帽子》
夏の晴れた空の下。
一面のグラジオラスが色とりどりの花を連ならせ、その緑の葉を勝者の剣の如く天へと掲げている。
そこに見える、麦わら帽子。
ブリムは広く、強過ぎる日差しから持ち主である少女の華奢な肩をも守っている。
麦わら帽子の下から伸びる豊かな白銀の髪は、細い腰に届かんばかりの長さでふわふわと風に踊る。
少女は片手に桃色のグラジオラスの束を抱え、もう片方の手は風に煽られぬよう麦わら帽子に手を添え、薄黄色のチェック柄のワンピースを風に揺らめかせながら濃い青の空を眺めていた。
真正面から、風が吹き抜ける。
ブリムの広い麦わら帽子はその風をまともに受け、空高く飛び立たんばかり。
ふわり、浮いた帽子に少女は慌てて手を伸ばす。
しかし、帽子は飛ぶことは叶わなかった。
後ろからそっと上から添えられた温もりに、その飛行は遮られる。
ハッと少女が振り向けば、そこには少女の麦わら帽子に手を添えた赤髪の青年が、優しい笑みを湛えていた。
目を合わせた少女もまた満面の笑みで答え、青年にそっと桃色のグラジオラスを手渡した。
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桃色のグラジオラスの花言葉「たゆまぬ努力」「ひたむきな愛」「満足」