あいみょんのマリーゴールドがヒットした年の夏。
私たちは出会い、交際を始めた。
きっかけは、淡白なありきたりのものだった。
君の職場のコンビニで、
私が祖母に頼まれた小さなあんぱんを探していたが、
見つからず品出し中の君に尋ねた。
君は嫌な顔ひとつせず、笑顔で
「もしかして、この商品ですか?」と聞いてきた。
そのあんぱんが私の探していたものだとわかると
「それです、ありがとうございます」
と御礼を言ってレジに向かった。
すると、店員が少ないせいか君が慌てて会計をしてくれた。
会計を済ませた後、君は丁寧にお辞儀をした。
その日から私は祖母に頼まれてなくてもパンを買いに
君のコンビニに時々、行った。
それを重ねていくうちに私は彼から
未発表の新商品を教えてもらったり、
アプリの新着のクーポンを教わり、使ってみた。
私はお金を落としていくことしかできないけど、
それで君と話せるから、嫌なことも忘れられた。
君の方から「LINEを交換しよう」と言われ、
ロケット花火のように私の心は跳ねた。
その夜、私は君の車で牧歌の里に行く約束をした。
デート当日。
牧歌の里に着き車から降りると、
私がかぶっていた麦わら帽子が風で舞った。
君が追いかけ、華麗な飛び蹴りのようにキャッチした。
「ありがとう」と君に見惚れながら言うと君は
無邪気な笑顔でその麦わら帽子を被って言った。
「俺、マリーゴールドに似てるかな?」
とふざけて言う君を見て私は、
「私があいみょんだったら、違う花にしたかも」
とふざけて言いながら笑った。
8/12/2024, 6:41:50 AM