夢の中で小学生くらいの天使が
顔を埋めて体を小さく震わせ座ってる。
「どうしたの?」
と声をかけたらゆっくり顔を上げて黒い涙を流してる
その涙を見て僕は
「別れた恋人の最後に見た涙だ」と思い出す。
もしかしたら、
同じような思いをこの子もしてるのかもしれない。
そう思った。
だけど、あの時の彼女の気持ちとこの子の悩みは
同一ではないと思う。
もし、この子があの日の彼女の幼少期だとすれば
推測できるかもしれない。
彼女の子供の頃の話なら、あの頃聞いていた。
「また、お父さんに殴られた?」
とっさに口から出たこの一言が天使の涙を透明にした
そう、なぜなら元彼女も実の父親に殴られていた。
黒い涙が透明になったことは打ち明けられぬ孤独を
分かち合える人を見つけたから。
ふと目が覚めた時、
僕は元彼女との共通の友人にLINEで聞いた。
「サナは、今どうしてるか知ってる?」
その夜。返事がきた。
「あの子は今、婚約者がいるよ」
あの日、目覚まし時計が鳴る直後まで
夢の中で君と話してた。
幸せな時間だったのに君はいきなり真剣な顔で
何か言おうとして口を開いた。
周りの人の話し声でうまく聞き取れなくて
私は聞き返した。
でも、君は横に首を振るだけで背を向けた。
肩を震わせて立ちすくむ君に私は一言言おうとした。
抱きしめようとした。
どうしようかと一瞬迷って声をかけようとしたその時
目覚まし時計は鳴った。
あの迷いがなかったら、私は君に何を言っていたのか
あの夢の続きにもう一度立ち入られるなら
君に言いたい。
「泣かないで」じゃなくて、
「ずっと、そばにいるから」って。
「新しい恋をしろよ」
それが君の最後のラインだった。
でも、置いてけぼりの私にはその続きが欲しかった。
「これからは仲のいい友達でいたい」とか
心に恋はなくても、心に友情があれば
そばにいられると思ったのに。
新しい道に進む君を近くで見守っていたくて。
もし、未来を向かうことのできる鍵があるなら
その特別な鍵でどこでもドアみたいな扉を開けて
未来の私に会いたい。
新しい恋を迎えられているのか?
大きな夢を果たせているのか?
逆に堕ちているだけなのか?
それとも、彼とよりを戻せたのか?
そんな未来の私から答えを聞きたい。
未来の鍵はきっと眠りについた夢の中に転がってる。
いつかは正夢と証明するその鍵は、神様の落とし物
二刀流のハラスメントを受けて私の心はズタズタになった。
声をあげたくてもあげられない。
それが非正規雇用の身の定めなのか?
私は逃げるように職場を去った。
一度は死を覚悟したものの、
それでは私がアイツらに負けを認めると思った。
だから、一心発起して再就職を目指して職安に通った
しかし同じ事務職の求人を求めても、逆にない。
あれとすれば医療事務の求人。
私には資格を取得するお金がなかった。
両親とも親戚とも今は連絡を取り合っていない。
頼るところがなくて貯金を切り崩して生活している。
いったん就職を諦めてバイトをすることを決めたが
私の技量を発揮できそうなところがない。
追い風はいつまでも続くだろう。
初日の出の写真を見せてくれた君の目は輝いている。
病気で入院している私に
君は少しでも元気づけようとしてくれてる。
「退院したら一緒に見ようね」
そのひと言が嬉しいはずなのに
ズーンと生理痛のように痛かった。
手術をすれば治るって主治医の先生は言うけれど
手術をしたらデートに行けるって君は、はしゃぐけど
もしかしたらを予想して怖くなる。
でも、君はこう言った。
「失敗すると不安になると事故は起きるかもだから
俺はあの先生を信じてる。
愛想がなくて嫌なとこもあるけど、
ベストな手術をしてくれるって信じてる。
ミユのラッキーカラーはサーモンピンクだから
このマニキュアを塗って手術に臨んで?
初日の出みたいに綺麗だし」
って私と君は笑い合った。
そして、私より器用な君が塗ってくれたマニキュアを
私は窓の外の水色の空に飾った。
「私に初日の出が現れた記念日は
ハル自身の特別な夢が叶う記念日でもあるように
祈っているからね!」
そう言って私は君とハグをした。