卒業して君は地元を出た。
卒業しても私は地元に残った。
君はメイクアップアーティストを目指して冒険に出た
私はニット作家として編み物の教室の講師になった。
「いつかまたあったらお互いの才能を開花しようね」
君が何気無く言ったあのひと言が私には耐え難かった
手先が器用な君はモード誌のメイクを真似して
学園祭で観客を沸かせた。
私より『才能』があったのは相違ない。
私は編み物はできるけど苦手な技法が多かった。
デザインが頭に浮かんでも再現できない。
到底、君のメイクを引き立てる服を編む自信がなかった。
でも、編み物教室の師匠に相談すると
「努力せずに開花させようとするからうまくいかない。
基礎ができるあなたなら、今からでも間に合う。
もっと練習して、いろんな作品を作りなさい。
わからないことがあるのは私も同じ。
技法は進化するもの。
あなたが成長した時、きっと彼女と再会できる。
いい化学反応が生まれ、いいルックができるわ」
師匠のそのひと言で私は、不安が自信に変わった。
夢を叶えるために上京した君の背中を追って
私も高校を卒業してから地元を出て東京にやってきた
君は進学せず、フリーターになっていた。
意外だった。
夢を叶えるため安全で確実なルートしか選ばないと
決めていた君が夢を叶えるために
人とは違う道を選ぶことが。
君は言った。
「誰かが敷いてくれたレールを辿るだけなら、
失敗はないだろう。
だけど、そればっかりが正解じゃないんだ。
人が気づかない路地裏にこそ穴場がある。
俺はその穴場を手探りで探しながら、
自分だけしか掴めない夢を叶えようと努めてる」
その君の一言が私のコンパスを狂わせた。
そしてまた、君の背中を追っていきたいと思った。
なぜなら、その先に私の知らない私の夢の世界が
あると思ったから。
美しい嘘があるならば
そこに少しだけ、悪というスパイスがあるだろう。
完全なる優しい嘘は存在しない。
優しい嘘ほど美しい嘘はない。
他者を傷つけるのが怖くてついた優しい嘘は
自分を守るためのナイフを隠し持っているから。
遅めの青春だから、初めての彼氏だった。
だからこそ、君を深く愛し過ぎてしまった。
だからこそ、余計に君を傷つけたしまうこともあった
謝りたい、まだ「好きだよ」って言いたい。
でも、これで最後にするね。
「私に恋を教えてくれた君に、幸あれ」
もし君が孤独の風にさらされているなら、
僕が君を甘い羽衣でそっと包み込んであげる。
孤独の風は冷たく、苦く、鋭いから、
甘い羽衣で暖かく、甘く、ほんわかと守るよ。
君には見えなくても、羽衣は孤独をさえぎってくれる