ネジが外れたウサギ

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君と出会ったのは冬だった。

冷たい北風が頬を刺すように吹いている。


私は会社でのパワハラに耐えられなくなって

公園のベンチで座っておえつしていた。 

「もう、無理」

泣きながらそう思っていた。


ふと、コートの上から温かい物が触れた気がした。

そちらに目をやると缶のココアがコートに触れている

その手をたどって顔を見ると知らない男性、君だった

私はびっくりして思わずベンチから落っこちた。

馬鹿みたいに驚く私を見て君は大笑いをした。


「大丈夫?」

そう言って差し出してくれた君の手は冷たかった。

私は君の手を借りて立ち上がった。

それから一緒にベンチに座り、悩みを話した。

君は転職エージェントの社員だった。

果たして、君は私に転職を勧めた。

私と君はLINEを交換した。

そこから交際が始まった。

そして、私は君の転職エージェントを介して転職した


転職先は前職よりもさまざまな面で良好だ。

給料だけではなく、仕事も、人間関係も、設備も。

私は君に感謝している。

そして君を愛している。


今日は君と出会って初めての旅行だ。

私が恩を物で返そうとした時、

君は思い出で返してと私に言った。

だから、二人の給料を旅費に費やし、

思い出をたくさん作ることにした。


私は君と出会ってから夏が好きになった。

初めて半袖のポロシャツを着た君の腕を初めて見た時

筋肉質の腕に見惚れてしまった。

「見過ぎだよー」

と笑いながら照れる君を見て私も小さく笑った。

笑われたことと君の男らしさに改めて惚れた自分を

ちょっとだけ恥ずかしく思った。


待ち合わせの場所で君を見てあの日を思い出した。

半袖のTシャツ姿の君に赤らめた頬を隠したくて

すぐに荷物を置いて君をハグする。


今から始まる旅のことを思うと、

君の彼女であることを夢のように思う。

あの時、私を救ってくれた君の恩を返しながら

この旅で君と仲を深めたいと心底思い、

君のほっぺたにキスをした。

7/26/2025, 1:15:01 AM