NoName

Open App

麦わら帽子、といえば今でこそ海賊が思い浮かぶ人が多いだろうけど、昔はオタクの憧れだったんだよな……真っ白なワンピースに麦わら帽子の美少女って。

でもさ、現実にはなかなかそんな娘はいないんだよ。所詮、オタクが生み出した一種のファンタジーなのかな……? そんな幻想に対する想いと夏の暑さにやられた頭は——今にして思えば、イカれた結論を生み出した。

白ワンピの美少女がいないなら、俺がそれになってやろう、と。可愛いは作れる! Can Make T○ky○! って言うし、大丈夫! やれるやれる!!

謎の自信に満ち溢れた俺は、早速Z○Z○TOWNで自分サイズの白ワンピを購入した。いつもいかつい男物を買ってたアカウントが、突如同サイズの白ワンピを購入したことを知った担当者はさぞゾッとしたことだろう……ZOZOT○WNだけにね!

ネットで白ワンピを購入した俺は、勢いそのままに近場のホームセンターで麦わら帽子を買った。……これで後は白ワンピの到着を待つばかりだ。

注文から二日ほど経ってついに、ワンピースが届いた。これであの頃、オタクだった俺が憧れていた白いワンピースの美少女になれる! 俺は着ていた服をいそいそと脱ぎ捨て、憧れの純白のワンピースに袖を通した。



すると、なんということでしょう!



素材の良さを活かし、引き出すはずの真っ白なワンピースは素材の不味さに殺され、見るも無惨な姿となっているではありませんか。

麦わら帽子を被った首から上は、どっからどう見ても農作業に従事するおっちゃ……お兄さん。白ワンピとの相性の悪さは改めて言うまでもありません。

……家を出る前に鏡を見て良かった。この姿のまま外に出ていたらどうなっていたことか。俺は涙を堪えて元の服へと着替えた。ちなみに、白ワンピは捨て……るのは勿体無かったので、なんとなくハンガーに掛けておいた。駄目元でZ○ZOT○WNに返品出来ないか問い合わせてみたが、一度でも着用したものは駄目なようだ。女物の下着までは買わなかった(お洒落は見えないところから、ってことで迷いはしたが)のはせめてもの救い、だったのかもしれない。

かくして、俺の白ワンピ美少女化計画は失敗に終わった。あれは本当に素材が良くなきゃ似合わないんだな、と身をもって知った。

現実に真っ白なワンピースに麦わら帽子の美少女がいない理由は、もしかしなくても「そういうこと」なのだろう。

8/12/2024, 4:57:54 AM