猫宮さと

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《麦わら帽子》

夏の晴れた空の下。
一面のグラジオラスが色とりどりの花を連ならせ、その緑の葉を勝者の剣の如く天へと掲げている。

そこに見える、麦わら帽子。
ブリムは広く、強過ぎる日差しから持ち主である少女の華奢な肩をも守っている。
麦わら帽子の下から伸びる豊かな白銀の髪は、細い腰に届かんばかりの長さでふわふわと風に踊る。

少女は片手に桃色のグラジオラスの束を抱え、もう片方の手は風に煽られぬよう麦わら帽子に手を添え、薄黄色のチェック柄のワンピースを風に揺らめかせながら濃い青の空を眺めていた。

真正面から、風が吹き抜ける。

ブリムの広い麦わら帽子はその風をまともに受け、空高く飛び立たんばかり。
ふわり、浮いた帽子に少女は慌てて手を伸ばす。

しかし、帽子は飛ぶことは叶わなかった。
後ろからそっと上から添えられた温もりに、その飛行は遮られる。

ハッと少女が振り向けば、そこには少女の麦わら帽子に手を添えた赤髪の青年が、優しい笑みを湛えていた。

目を合わせた少女もまた満面の笑みで答え、青年にそっと桃色のグラジオラスを手渡した。



桃色のグラジオラスの花言葉「たゆまぬ努力」「ひたむきな愛」「満足」

8/12/2024, 3:19:01 AM