猫宮さと

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9/15/2024, 10:33:40 AM

《君からのLINE》

※以前にも申し上げましたとおり、こちらに書いている世界観にLINEは決定的に合わない物なので、不本意ではありますが今回も含めてLINEがお題にされた回はお休みさせていただきます。
 いつも読んでいいねを下さっている皆様にはいつも本当に感謝しております。
 この場をお借りして、御礼を申し上げます。ありがとうございます。

9/15/2024, 5:45:30 AM

《命が燃え尽きるまで》

今回はひとまず保全致します。
いつも読んで、いいねを下さっている皆様には本当に感謝しています。ありがとうございます。

9/14/2024, 1:11:58 AM

《夜明け前》

ここのところ気温の変化が激しいからか、何だかメンタルが落ちてきてる。
何か不満があるわけじゃない。それどころか、彼との生活は毎日が嬉しくて楽しい事ばかり。
でも、こればかりは理由があるわけでもなく。

今日は、月のない夜。
昼間の汗ばみそうな陽気から一変、緩やかに吹く夜風は冷たいぐらい。
それでも少しは気分転換になるかと、私は庭に出て夜空を見上げた。
月無し夜は、星灯りはあれど鬱蒼とした雰囲気が漂う。

「…夜明け前が一番暗い…」

私は気持ちの落ち込みに任せ、何故か頭を過った言葉を思わず口にした。
すると、背後からふわりと柔らかいショールに肩を包まれた。

「どうしましたか? 風邪を引いてしまいますよ。」

振り向けば、彼が優しい笑顔でそこに立っている。
彼は私の肩に掛けたショールが風で飛ばないように、肩口でショールを摘んでくれていた。

「ごめんなさい、ありがとうございます。」

彼にお礼を言って、掛けてもらったショールを胸の前で押さえる。
さあっと吹き抜ける冷たい夜風に、肩のショールも、彼の足元の草もさらさらと靡く。

「謝らなくていいですよ。」

彼の、普段よりも柔らかい声が私の耳に届く。
心配、掛けちゃった。申し訳ないな。

元気のないところを見せて、彼に心配は掛けたくない。
でも、どうしても今はその元気を出す力が湧いてこない。
力なく俯いてる私に、彼はそっと話し掛けてくれた。

「夜明け前が暗い、と言いますが。」

私は、何とか気力を振り絞って顔を上げた。
そこには、真剣に私を慰めてくれている彼の優しい顔があった。

「東の空を見る事が出来れば、夜明け前から空は白んでいます。
 暗いうちから正確に東を向く為には、月の満ち欠けを読めばいい。
 月がなければ、星の光を探ればいい。」

それは、とてもあなたらしい言葉だった。
どんな暗闇の中でも、置かれた状況を把握してそれに対応した行動を取る。
何事にも挫けず、押さえつけられても折れずに正義を貫いたあなたの目には、夜空の星座もはっきりと映し取られていたんだろうな。

彼は今、私を元気付けようとしてくれている。
私を見るその眼差しは、柔らかな暖かさに満ちていて。
彼の言葉と優しさに、心がほこほこと暖かくなる。
私は、彼の顔を見つめながら少しずつ上を向いてきた自分の気持ちを噛み締めていた。

すると、彼はほんの微かに目元を赤らめながら囁いた。

「…もしもあなたが星の光すら見失ってしまったなら、僕が代わりに星を読みますから。
 だから、落ち込んだ時はいつでも頼って下さい。」

本当にあなたは、いついかなる時でも希望の光を見失わない。
そんな強いあなたの光に導かれて、私はここにいる。
今の私には、いつでも夜明けへの光がそこにある。

何故か冷えて落ち込んでいた私の心は、もう暗闇の底にはない。
冷たい夜風の中、肩を暖めてくれるショールがふわりと靡く。

「はい。」

私は、心からの最高の笑顔で彼に頷いた。

9/13/2024, 2:42:03 AM

《本気の恋》

今日も私はいつものように、本部で政務に励む彼に連れて来られている。
私が闇の眷属に魅入られし者として、生活を共にしながら彼に監視されているから。
それでも私はこの世界に来る前からずっと彼のことが好きだったので、監視とは言え一緒に暮らせるのは物凄く幸せで。
その上、真面目で実直な彼はそんな私を人として丁寧に扱ってくれてる。
だから毎日、ますます彼のことが好きになっていった。

今は、お昼時。
彼と一緒に食堂でご飯を食べていると、テレビから観光名所特集が流れてきた。
その名所の中に、夏の初めに彼と一緒に行った蓮の池が紹介されていた。

夜明けから午前に、小さくてもはっきりした音を鳴らしながら花開く蓮の花。
向かいに座っているあなたも、その映像に目を止められている。

あの夜明けの光に包まれた池の畔であなたと一緒に見ていた蓮の花がポンと音を立てて咲いた瞬間、私はつい嬉しくなってあなたへ向き直りガッツポーズをしてしまって。
そんな女らしくない行動を取ってしまった私を見たあなたは、花開く蓮の邪魔をしないように声を潜めてくつくつと笑いだして。

そのあなたの無邪気な心からの笑顔を目の当たりにして、私の胸にもポンと新しい花がまた咲いた。

あの時は照れくさくて恥ずかしくて、思わず叫びそうになるのを下唇に力を入れる事で何とか堪えてた。
すると彼は笑顔のまま手を『すみません』の形にしたと思うと、また無言になり蓮の開花に目を向け始めた。

湿原地帯の視察がてらではあったけれど、着いてくる私のことも気遣って色々な場所を見せてくれたあなた。
いつもは人当たりのよい笑顔だけれど、不意に無邪気な笑顔を見せてくれるあなた。

今の自分の立場を考えれば、これだけでも幸福だ。
それでも想ってしまう。
もっとあなたの心からの笑顔が見たい。
あなたを喜ばせたい。
いずれ離れることになるだろうと分かっていても、ずっとあなたのそばにいたい。

テレビに映る池一面の蓮の花を見ながら自分の欲張りな願いに思いを馳せていると、向かいの彼が私を見て言った。

「この蓮の開花は見事でしたよね。また来年、次は視察抜きで一緒に見に行きましょうか。」

私は、息を飲んだ。

それは、世間話のようなさらりと何気ない一言のような口調で。
彼の表情は、ふわりとした優しい笑顔に満ちていて。

当たり前の事のように、あなたは私との未来を考えてくれている。

いいの?
ずっと、あなたのそばにいても。

私ばかりが嬉しくて、本当にいいの?

思わず、私はこの気持ちを告げそうになる。
でも、本気だからこそ言えない。
その一言がきっかけで今の安らぎが壊れて、この幸せが取り戻せなくなるかもしれないから。

私はその言葉を飲み込んで、今伝えられる最大限の気持ちを彼に伝えた。

「はい。また来年、一緒に蓮を見に行きたいです。」

9/11/2024, 1:20:45 PM

《カレンダー》

「すみません。よければですが…この日に印を付けてもいいでしょうか?」

ある日、彼女がカレンダーを指さしておずおずと僕に聞いてきた。

「ええ、構いませんよ。」

闇の眷属に魅入られた者として彼女を監視している僕としては、その予定などを把握出来るのはむしろ都合が良い。
当時はそのような考えもあって、彼女の希望を受け入れた。
すると彼女はそれを聞き、それは華やかな笑顔を僕に向けてきた。

「ありがとうございます! じゃあ、失礼しますね。」

先程のおずおずとした態度から一変、心の底から嬉しそうな様子になると、カレンダーを捲ってある日付に赤いペンで花丸を書き込んでいた。

「一体その日に何があるのですか?」

不思議に思い、赤いペンに蓋をした後も嬉しそうにしている彼女にそれを尋ねるも、

「うーん…うん、秘密、です。」

と、少しはにかんだ様子でそう答えるだけだった。


今になれば分かる事だが、その日は彼女にとって本当に嬉しい特別な日なのだろう。
あの笑顔は、彼女が心底喜んでいる時の表情だ。
何か悪事を企んでいるわけでも、それを実行しようと目論んでいるわけでもない。

しかしだ。ならば、尚更分からない。

今日、壁のカレンダーを見る。
彼女の書いた花丸の日付は、3日後。
果たして、その日に何があるのか。

カレンダーの前に立ち、愛おしそうにその花丸を指で擦る彼女にまた同じ質問をするも、心の底から嬉しそうに、それでもはにかんだ様子で、

「…今はまだ、秘密です。」

そう答えられるだけだった。


その後、紆余曲折を経てその日付の秘密を知る事になる。
それはとても信じ難く、しかしそれを遥かに上回る喜びに満ちた日であった。

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