香水』の作文集

Open App

香水』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

8/31/2024, 10:39:12 PM

懐かしさすら感じる香り。色鮮やかな蒼と翠の色彩に目を細めた。
思わず口角が上がる。うまくいったという達成感と、出し抜けたという優越感。

やっと屋敷から抜け出す事が出来た。あの現世から隔離され閉じられていた空間から、屋敷の主を欺いて出たのだ。


声を上げて笑いそうになり慌てて口を押さえると、急いで森を駆け抜けた。



久しぶりに戻った我が家は、見た目は特に変わらず。鼻につく埃臭さに、慌てて窓を開け換気する。
冷蔵庫を開け、水しか入っていない事に落胆し、同時に安堵した。一ヶ月以上も家を空けていたのだ。食べれるものがあったとして、それはすべて廃棄処分になっていた事だろう。
空腹を覚えど、今は外に出る気にはならず。仕方ないかと、ベッドに腰掛けそのまま横になった。
埃っぽさには、この際気にしない事にする。

「あ、いけね」

ズボンの違和感に、ポケットに入れたままだった小瓶を取り出す。中の透明な液体が揺れて、微かに音を立てた。
蓋を開け左手首に吹きかける。ふわりと香る爽やかなりんごと、次第に変化する凜とした睡蓮の花の香りが鼻腔をくすぐり、先ほどまでの高揚感を思い起こさせる。

「今頃、慌ててるのかな」

想像して、隠しきれなかった笑い声が漏れる。
いつもはこちらを振り回してばかりの屋敷の主が狼狽えているのを考えるだけで、楽しくて仕方がなかった。
もしくは怒っているのかもしれない。勝手に屋敷を出たのだから、それも当然と言えば当然だ。しかし何も言わないで様々を勝手に事を進めようとしていたのだから、これくらいの意向返しは許されて然るべきである。

「にしても、こんな女の香り一つで誤魔化されるなんて」

手にした瓶を弄ぶ。髪を下ろし、着崩していた服をしっかりと着て。そして女性ものの香水を振りかけ、自分を女と見立てただけで、あれだけ強固に閉じていた屋敷は外へと続く玄関の扉を開いた。
たったそれだけで自分を認識されなくなるなんて、と少しばかり複雑な気持ちはあるが。出れるのならばと切り替えて、こうして久しぶりの自宅に戻ってきたのだ。


「馬鹿だなあ」

いつかの言葉を繰り返す。
あの時は化かし合いだと思った。お互いの本心を引きずり出すための駆け引きだと、そう思っていた。
だが今は。
屋敷の主の思惑は駆け引きの範疇を超えていて。その思惑を知った自分は、それに反抗し戻ってきた。

これはすでに化かし合いではなくなっている。

本当に馬鹿だなあ、と呟いて、少しだけ眠ってしまおうかと目を閉じた。


あの屋敷の違和感に気づいたのは、実は始めからだったりする。
妙に馴染む和室。広大な屋敷の中で一度も迷う事はなく。
幼い頃に足繁く通った屋敷に対する思いは、懐かしさよりも戻れたという安堵感に近かった。

違和感が確実になったのは、現世から隔離された頃だった。
何度も打った式が帰らない。境界を超えられずにいる事は分かっていたが、その後の式は行方が知れず戻ってくる事はなかった。
それに比例して段々に馴染んでいく屋敷の感覚。目を閉じると自分が人なのか屋敷なのかが曖昧になっていく気がしていた。

そして枕元に置かれた小さな麦わら帽子。
あの夏の日に置き忘れた麦わら帽子は、すでに屋敷の一部となっていて。
その麦わら帽子がすべての答えだった。
屋敷に取り込むのか。あるいは新たな『迷い家』にするのか。
どちらにしても、それは人ではなくなるという事だ。
そこに自分の意思などない。

それを知った時、最初に感じたのは恐怖でも怒りでもなく、純粋な呆れだった。
一言くらい言えばいいのに、それが素直な感想である。
何も言われず、じわじわと追い込まれるのは気に入らない。何を思っての行動なのかが何一つ見えていないのは、徒に不安をかき立てるだけだ。

すべて話してくれたのなら。本心をさらしてくれたのならば。
まずそこで一悶着はあるだろうが、それでもここまで意地を張り続けるつもりなどはなかったのに。


寝返りを打って、考えを霧散させる。
これ以上は意味のない事だ。まずは寝て頭をすっきりさせる必要がある。
何せこれからやることはたくさんあるのだから。
部屋の整理。スマホの買い換え。親しくしてくれた数少ない友人達への連絡。あとは折角だから無駄に貯まった金銭を使い切ってしまおうか。

そしていつか屋敷の主が迎えに来てくれたのならば。
そのときは思い切り言いたい事を言い切って、最後に足りなかった一番重要な事を教えてやろう。

自分が一番嫌いな、自分の名前。
屋敷の主が知っているのは姓の方だ。昔から女みたいな名前が嫌いで、あの夏の日も名乗るのに姓を使っていた。
それを知った時、驚くだろうか。それとも悔しがるだろうか。
どちらにしても、女のような名前を笑われなければそれでいい。

凜とした睡蓮の香りに微かに混じり始めた白檀に、あの屋敷を重ねて苦笑する。
緩やかに沈んでいく意識の端で。

馬鹿だなあ、ともう一度繰り返した。



20240831 『香水』

8/31/2024, 2:01:25 PM

「香水」

今日も今日とて決まった時間に起きる。
そのあと小さな兄を起こして朝ごはんだ。
「⬜︎⬜︎、起きようか!」「ん〜……。ねむいよ……。」

「ほら、おはよう!」「おはよ……。」
「朝ごはんの時間だよ!」「ん〜……。」
「あっこらベッドの中に戻らないの!」

もぞもぞして起きようとしないな。仕方ない。
ボクは兄を抱き起こすことにした。
「ほーら、朝ごはんだよ!」

しかしながら、兄はボクにしがみついたまま離れようとしない。急にどうしたんだろう。怖い夢でも見たんだろうか。

「どうしたの?まだ眠い?」「んーん。」
「⬛︎⬛︎ちゃん、おとーしゃんのにおい!」
「あれ、本当?」「ん!ここ、おとーしゃんのにおいー!」

ボク達のお父さんのにおい?洗濯物だろうか。
それとも香水か何かの香りが移ったのかな?
それよりも、どうしてボクからお父さんの匂いが?

「⬛︎⬛︎ちゃん!もうちょっとだっこ!ちて!」
「しょうがないなぁ!少しだけだよ?」「わ!わー!」
嬉しそうにボクの体に顔を埋めるキミ。

……なんだか懐かしいなぁ。
こんなふうに、ずっと過ごすことができたとしたら、ボク達はどれだけ満たされていただろう。

……でも、これからはきっと、いや絶対に時間を取り戻すんだ。
守りたいひとをボクが守らなくては。
それと……お父さんの匂いのもとも探したいね!

とにかく!ボクは裁判に勝って兄を解放するんだ!
そのためにボクも、お父さんも努力を続けてきたんだからね!
せめて少しくらい、家族への愛が報われて欲しい物だ。

「前回までのあらすじ」────────────────

ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!

調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!

それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!

……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!

そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!

……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!

それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、お覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。

もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。

どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。

そうそう、整備士くんや捜査官くんの助けもあって、きょうだいは何とか助かったよ。

712兆年もの間ずっと一人ぼっちで、何もかも忘れてしまって、その間に大事な人を亡くした彼は、ただただ泣いていた。ずっと寂しかったよね。今まで助けられなくて、本当にすまなかった。

事情聴取は無事に済んだ!その上、ボクのスペアがきょうだいを苦しめた連中を根こそぎ捕まえてくれたからそれはそれは気分がいい!

だが、実際に罪を犯した以上、きょうだいは裁判の時まで拘留されなければならない!なぜかボクも一緒だが!!
……タダで囚人の気分を味わえるなんてお得だねえ……。

牢獄の中とはいえ、随分久しぶりにふたりの時間を過ごせた。小さな兄が安心して眠る姿を見て、今までずっと研究を、仕事を続けてきて本当によかったと心から思ったよ。

きょうだいのカウンセリングの付き添いがてら、久しぶりにニンゲンくんと話をしたんだ。いつも通り話がしたかったけれど、そんなことはできなかった。

ボクの心は、ボクの気持ちは紛れもない本物だと信じて欲しかったけれど、受け入れてはもらえなかった。
機械のボクはもう、キミに信じてもらえないみたいだ。

でもまあ!!!きょうだいもボクも元気に牢獄暮らしが送れているうえ、旧型管理士の彼女も調子がよさそうだから、当面はよしとしようか!!!

多分ニンゲンくんの事情聴取も終わっている頃だろう。あとは何度か取り調べを繰り返して、いつか来る裁判の時を待つだけだね。

……というかこの「あらすじ」、長すぎるね!!!何がどう荒い筋だと言うんだい???……また作り直さなければ!!!
ふえぇ全然時間が取れないようぅ……。゚(゚´ω`゚)゚。
あとどこに書くのがいいのかもわからないよぅ……(´•̥ω•̥`)

────────────────────────────────

8/31/2024, 10:38:30 AM

#香水
匂いって、強烈だ。

どんなに忘れていても、その香りを鼻に感じれば、一瞬にして脳裏にその存在を思い出してしまう。

私の日常生活から香りを消して数年、今も近い存在なのに、遠くにいるような。確かに存在はあるのだけれど、意識して考えないといけないくらい、私の中で彼の存在が薄れてゆく。

自分の一部だったものが欠けるような感覚。記憶の中での彼が、だんだんと不透明な色になって、どんな風に笑っていたのか、どんな声だったのか、どんな音で名前を呼んでくれたのか、はっきりと思い出すことができない。

いろんな音と匂いの混じる町で、覚えのある香りに、私は思わず立ち止まった。間違えるはずがない。私の隣で香水を撒き散らしていた彼の、あの匂いだ。
だけど、周りを見回しても、彼の姿は見つけることができなかった。世界にひとつしかないわけじゃないし、きっとありふれてる香りだ。たまたま同じものを使っていた別の人かもしれない。
仮に、もし彼だったとしても、私はこの人の往来の中から彼を見つけるのは難しいだろう。

顔も、声も、存在すらも薄れていくのに、匂いだけは、ハッキリと覚えていた。
香水は、香水にしかすぎないのに、彼が使っていたというだけで、あの香りは彼だということが、脳に刻み付けられている。

次第にぼやけてゆく視界に、ふわりと柔らかい香りが舞う。

「はっ。なんだ、変な顔だな。」

顔上げると、こちらを見下ろすニヤケずらと目が合った。途端に、香りが強くなる。
引き金みたいに、埋もれていた記憶が一斉に弾け出した。

私は知ってる。覚えている。ただ、考えていなかっただけで。
ちゃんと、この人のことを、知っている。

「うっさい。」

瞳に宿る熱を誤魔化すように、私は乱暴に口を開いた。

8/31/2024, 10:05:54 AM

「こんなパーティ、ふたりで抜け出しちゃおうよ」
唐突な提案は、澄んだ桃色と深いみどりの香りを纏った、はじめましての君からだった。



四角いきっかりした箱からゆらゆら香ったそれは、わたしの鼻先を擽り、心臓を掴んで離さない。
そのまま私ごと、そちらに連れ出してくれればいいのに。
あのときの「つまらないパーティ」みたいに。
初夏、美しく澄んだ清涼な空気が吹いてわたしは、君の残り香を今日も追う。


No.17【香水】
気が向いたら加筆修正

8/31/2024, 10:05:03 AM

香水

いつも安心できる、彼の香水の匂い。
もう嗅ぐことはないって思うと悲しいけど。

だけどたまに、彼の香水の匂いが鼻を燻る。

8/31/2024, 10:02:17 AM

『香水』

観劇はどうしても譲れない趣味

未知の感染症により目の前で幾つも上演が消え、
それでも手探りで再開したときに
前から2列めの席が振り当てられた
久しぶりに観られた『生の舞台』と
好きな役者さんからふわりと香った匂いの
懐かしさに涙が出た

8/31/2024, 9:59:51 AM

「なんでよ!…私だけって…言ってたのに…」
「いや、だってお前さ、」
「なに?!まだお金足りない?!!もっと積めって?!」
「違ぇよ、そうじゃねぇって、話聞けよ、」
「なによ!!あんたも私のこと……」

喧嘩している二人の男女は、傍から見たらただのカップルでしかないのかもしれない。けど、私には分かる。あれはホストと姫。私の住む歌舞伎町ではいつもの光景すぎて、最近ではその真横を素通りするのが楽しみになってきているほどだ。今日も通りがかればいつもの二人。歌舞伎町のナンバーワンホストの男と、ホストを渡り歩いては自論を吐き出して出禁になることで有名な女。女はいつも男のズボンを逃がさんとばかりの力で掴んでいて、男がやっとこさ逃げれたと思えば、高そうなスーツにはシワが馴染んでいる。可哀想に思いながらも、今日も帰路に着いた。
家に帰ればこじんまりとした玄関が私を迎え入れた。買ってきた冷凍食品を乱雑に電子レンジに投げ入れる。電子レンジで温かくなったはずなのに、私の心は冷えきったままだった。スマホの写真フォルダを漁る。まだ気合いが入った化粧の私と、大好きだった彼。沢山の彼との思い出は写真になって残されていた。もうこの思い出たちは五年前のことだってことも、すっかり忘れていた。

__五年前、私は新入社員ということもあり、仕事に明け暮れる日々を過ごしていた。そのお陰か、仕事の飲み込みも早く、他の同期の子たちよりも結果が実るのが早かった。上からは認められ、下からは尊敬の目を浴びるようになった。自分の才能を認められる度に増えていく仕事量。認められるほど増える大きな商談。自分に課せられた責任感、上からの重圧。気付けば私の身体は、会社に行くことを拒絶し始めた。手足は痺れたように震え、喉が絞られているような感覚に襲われ、声が出なくなった。母に勧められて行った精神科病院で、私は鬱病と判断された。
会社には退職届を出して、実家に入り浸る生活が始まった。最初は外に出ることもままならなかったが、少しずつ外に出れるように練習をした。夜の散歩、早朝のランニング、母とジョギング、近所の人と挨拶。練習の成果もあり、一ヶ月が経つ頃には一人で買い物に行けるようになった。近所の人と会話も交わすようになった。

元通りの自分を取り戻せてきたある日、高校から疎遠になっていた幼馴染の麻弥から急に連絡が来た。
「久しぶりに会わない?それに今のあんたになら、私の秘密の花園を教えてもいい気がする」
"秘密の花園"が何かも知らないのに、なぜか心が高鳴った。会おうと返事をして、実際に麻弥と会って紹介された彼女の秘密の花園が、歌舞伎町のホストクラブだった。
「どう?一回入ってみない?」
その言葉に静かに頷いて麻弥の後に続いた。
席に着くと、早速私たちの席の方に向かって歩いてくる男の人が見えた。麻弥が手を振ると、彼も手を振り返した。彼は麻弥の隣に座って私に挨拶をした。
「初回の子?初めまして、勇也です」
お互いに会釈を交わすと、勇也くんは麻弥に付きっきりなってしまった。暇だなあなんて、天を泳いでいると隣に人の気配を感じた。隣を見ると、勇也とは真反対の見た目の好青年が座っていた。
「初めまして、葵です。勇也さんのヘルプに付いてて、もし良ければ僕とお話しませんか?」

この瞬間、私はホストに堕ちた。

毎日のように通い詰め、葵くんを指名し、同伴アフターは勿論、プライベートでも会うような仲になった。
「僕のことこんなに指名してくれるのは君だけだよ。ほんとにいつもありがとね。」
そうやって笑ってくれる葵くんが見たくて、どんどん入れるお酒の金額は大きくなっていった。一ヶ月も経った日には身体も重ね合わせた。もう彼のことは何でも知り尽くしたし、彼のことを一番好きなのは私だと思っていたし、彼も私が一番好きだと思っていた。


「ごめん、俺」
一人で買い物をしていた時にたまたま見つけた葵くんに、声をかけようと思って気付いた。彼の隣にいた女の存在。彼の一声で気付いた。私と会う時とは違う一人称。彼と女を見て気付いた。恋人繋ぎで重なった二人の掌。二人の手を見て気付いた。薬指に輝く指輪。

あの時私は我に返って、ホストクラブに通うのを辞めた。けど、まだ彼を忘れられたわけじゃない。彼は当時、歌舞伎町に住んでいた。彼にまとわりついていたあの街の匂いは、そう簡単に消えない。

私は今日も明日も、歌舞伎町の匂いを自分につけて外に出る。

「香水」

8/31/2024, 9:57:09 AM

ふわりと漂ってきたこれに、ああこれだ、と思い出した。
 甘い脂のようなけれど独特な酸味があるような、突き放す素振りを見せながらもすり寄ってくるあの生物を彷彿とさせる香り。

 使っている柔軟剤が無香料なせいか。洗濯機の水に注がれて充満して定着することなくやわらかさを残し、このにおいをまとえば、空気だけでもあれを再現できる。
 グォングォンと稼働する洗濯機の機械声が所要時間を告げれば、私の足は勝手にリビングへ向かった。

 「紅茶ですか」
 「んーん。あのね、香水」

 ベタベタと雨が覆う暗い空間で換気扇そばのライトだけに照らされた生物が顔も上げずにそう言う。

 室内スピーカーから論文の読み上げ音声を垂れ流させ、ホウロウの鍋を木べらでかき混ぜて。近くにはいくつか茶葉のティーバッグが転がり、はちみつの瓶が蓋があいたまま、それから牛乳パックひとつ、傍で…………、

 「アッ」
 「なに。あのね、うるさい」
 「お前…!」

 歩く勢いを上げたから足許でスリッパがバタバタ床を叩く。うるさい、と不規則に連呼するこれを無視して冷蔵庫を開け放つ。右側のポケットにちょうどひとつ、残りを管理していた牛乳パックが――――もちろん、ない。
 あれが空けたのが最後のひとつだったのだから。

 振り返って腹立たしくもふわっふわな後頭部を睨みつける。
 昨夜、滑り込んで買ったシャンプーとリンスが良かったのだろう。……これのチョイスだが。

 ねこのヒゲのごとく敏感なはずのこの生物の神経を逆撫でできなかったのか、これは振り返りもせずぶすったれた声もなく言ってのける。

 「あのね、おひるに聞いたらよるごはん、牛乳いらないって言ったのはそっちなんだよ」
 「だからって全部使ってしまうなんて! 少しくらい残しておいてくれたっていいでしょう。使うかも知れないのに」
 「そう言ってね、たべものくさらせたの、だあれ?」
 「う゛」

 蓋つきのガラス瓶にホウロウで煮込まれた中身が溜められていく。少しクリーム色が強く、ほんのり粘度のあるミルク。ティーバッグもそこにひとつ、スプーンの先で沈められていった。
 においだけならば、理路整然とした生物をとろかしてぎゅうぎゅうに詰めたもののようだ。

 「…………香水だって、食べ物が触れるところでつくってほしくないのですが」

 そもそも、これが香水を吹いているところなど、見たことも香ったこともない。

 「あのね、これ、ただの紅茶。…ほかのおなまえがあった気がするけど、たくさん煮込んだミルクとはちみついっぱいの、紅茶」
 「紅茶……の香りってことですか?」
 「んーん紅茶。あのね、ぼくがのむんだよ」
 「はあ」
 「んふ、ぼくのこと、思い出したでしょ。ぼくのにおい」
 「そっ、いうわけでは……」
 「ふぅン」

 ガラス瓶は冷蔵庫に入れられ、完成した(らしき)マグカップだけを持ってこれは私横を過ぎてゆく。
 やはり、鼻に残るのは馴染んだ香り。
 それをまとったまま、振り返った生物の表情筋はひどくふてぶてしい。

 「あのね、残ったやつ、のんじゃだめ。ぼくがのんで、ぼくのなかで、はじめて完成なんだよ」
 「は、……私は、ストレート派です」
 「あのね、しってる」

 マグカップの中身をひとくち飲んだのか、ことばの音も甘ったるい。

 これが片付けを放棄してやりっ放しだと気づいたときには、もう、小難しい論文の音声だけ残したあとだった。



#香水

8/31/2024, 9:42:34 AM

香水

 先生の授業を聞いていた。
 すると、鼻が「ツン」とした。変な匂いだった。
最初は、何かわからなかったけれど、友達に話すと
それは、先生の香水ということがわかった。先生の横を通るたび鼻が「ツン」とする。
その先生は、一年で私の学校を立った。

8/31/2024, 9:39:47 AM

香水を吹きかけると
プリンセス、貴族になった気分になる


私も、幼少期にディズニープリンセスの白雪姫に憧れていた。




去年の12月27日に夢の中で見た夢小説を語ろう



ヨーロッパ貴族として
いつも、華麗なドレスを身に付けている。


『お嬢様、香りをつけた方が宜しいかと…』

そう言ったのは
執事の横浜流星だ

彼は、花がたくさん咲いている庭で
笑顔で水を差している。


DIORのピンク香水と、ジルスチュアートのピンク香水があり選ばせてくれた

8/31/2024, 9:38:28 AM

体臭がフェロモンだというのは

確かアパレル雑誌で読んだのだったか

最良の子孫を残す為に

自分の遺伝子から程良く遠い遺伝子を

嗅ぎ分けるんだとか

あぁ、道理で。 …道理で?

優しくて甘やかな匂いがすると

初めて会った日から思っていた

柔軟剤やシャンプーとは違う

肌から香る彼本来の匂い

焦ったり困ったりするとさらに強く匂い立つ

可哀想なくらいに

彼は代謝が良すぎるから

とにかく汗をかく

少しの運動で汗の玉が浮いて

走れば滴り落ちる綺麗な雫

彼はいつもそれを欠点として扱った

「ねぇ、俺臭い?」

臭くないよ。

「本当〜?」

本当。

"最良の子孫を残す為に"

「今度香水とか買ってみようかなー」

制汗スプレーで十分!

"自分の遺伝子から程良く遠い遺伝子を"

「ねっアイス食べて帰ろ。

遠回りになっちゃうけどさ」

遠かろうが近かろうが…

「何?」

なんでもない。

この匂いに誘われているのは俺だけでいい

◼️香水

8/31/2024, 9:32:46 AM

いつもよりも念入りにお化粧して
普段つけずに大事にしまってある
フルーツブーケの香水をまとった。

結局、当たり障りのない会話だけ
もうそれだけ、それしかできてない。

ピシッとしたスーツにベストが
学生だった頃のあなたと別人で大人っぽくて
ちょっと褒めて微笑むので精一杯。

今回も結局なにも言えなかった
次いつ会えるかわからないのにな、、

毎度心にしまい込んでいる
この想いをあなたに伝えたら
二度と顔を合わせられない気がする。

8/31/2024, 9:31:06 AM

#45「香水」

きみの
笑い声が思い出せないんだ
きみの
かぜに揺られて踊る髪も
きみの
やわらかい肌の感触も
きみと
一緒に食べたカレーも


だけど
においだけ、かすかに君を覚えている

はずなのに、君の
のこりかけの香水を付けたって
ここにきみは居なかった

あぁ
君の汗が、君の体温が、きみが、
きみが、いなくちゃ

こうして
きみの全てをわすれてゆくんだ
のこりかけの香水を残して

8/31/2024, 9:29:48 AM

《香水》

ファビュラスなパープルの液体 芳しきミストの装い マリー・アントワネットの化粧台 ジュエリーのような硝子壜の背くらべ 新しい彼からの贈り物 ひと吹きのミステリー 桃色の吐息

8/31/2024, 9:28:02 AM

街ですれ違った人から君と同じ香水の香りがして、君の笑顔を思い出してしまった。
どうやら、匂いは記憶に残るらしい。

「そういうの、プルースト効果っていうんだって」
「へえー、そういうの詳しいよね」

唯一の女友達とファミレスのサラダを分けながら、君のことを思い出した現象の名前を教えてもらった。
僕と君はお互いのことを全て知っているほど近い距離ではなかったし、僕の片思いで終わってしまったけれど、デートで君が纏ってた香りと同じだった。
たった1回のデートだったけれど。

「唯斗、三鷹さんのことまだ好きなんだね」
「好きとかじゃないよ、ただ、忘れられないだけ」
「あー、ツァイガルニク効果?ってやつだ!」
「そんな効果の名前言われても、分からないけど」
「まあ、簡単に言うと、実らなかった恋の方が記憶に残るよねってこと!」
「へえ、そうなんだ」

確かに、と納得してしまった。
君と付き合えていたら、僕は君を忘れられていたのかもしれない。
君は、今頃どこで何をしているのだろうか。
そんなことを思い返しながら、店員さんが運んでくれたパスタに手をつけ始める。

「次は、ザイオンス効果に期待だな〜」
「なにそれ」
「んー、何年も一緒にいる2人は、相乗効果で頭良くなるよ!みたいな」

嬉しそうに話す効果の名前は、カタカナが多すぎて最早何かも覚えられない。

「何その胡散臭い効果」
「私たちもう何年も一緒にいるけど、この効果だけは全く効き目がないんだよね」

はあ、と溜息をつく彼女を見て笑う僕、それを見て笑う彼女。
僕は君を思い出す度に、彼女にいつも助けられていた。
ご飯を一緒に食べて、話を聞いてくれる。
そういう優しさが有り難くて、ずっと友達でいたいと思った。

「私もね、好きな人の匂いがすると振り返っちゃうんだ、一緒だね。」

だから、彼女の言葉に胸が傷んだ気がしたのは、きっと気のせいなんだと思う。



※ ザイオンス効果 :単純接触効果のこと。相手に何度も繰り返し接触することにより、だんだん評価や好感度が高まっていくという効果。


《香水》

8/31/2024, 9:25:27 AM

『香水』

嫌いな人も多いけど
私は多分好きな方だ

初めての『香水』はアニエスbだった
それから子育てに明け暮れ…
忘れかけていた頃
とても好きな香りに出会った
それはうっすら恋心を抱いた人の香り
LANVINの『香水』
これはだいぶ長い間使った

その後
子供たちも香水にはまりだした頃から
ずっと今も使用しているのは
MissDior

この香りはツボだった
運命を感じたくらいだ

今では大人になった息子が
誕生日や母の日に贈ってくれる

この香りは
誰かにとっての私の香りとして
記憶されるだろうか?

香りや音楽は
その頃の記憶として残りやすい

だからどこかでこの香りを感じて
私を思い出してくれる人がいるといいなと
想うんだぁ…

どんなかたちでも
私は誰かの記憶になりたいの

8/31/2024, 9:24:46 AM

同窓会のときでしょう
ためくちになったらどしようかな
せ好きせんせい久ぶりにあうから
なんて話そうか

 ひどゆことゆわないかな

8/31/2024, 9:21:51 AM

『手首』
まるで手垢の付いた嘘 計算式は黒塗りだ 揺れるカーテン ホラーの匂い 手首の香水 愛の太陽か 溢れんばかりの妄想で 日常を塗りたぐる 勿論、誰にもばれないように

8/31/2024, 9:17:22 AM

香水

たしか、貴方は香水の匂いが苦手だったよね。
刺激的な香りは特に嫌がってた。
だから勿論、貴方はつけない。
私も、特別な日以外殆どつけない。

暗転?

出張お疲れ様。汗と混ざり合った卑猥な臭いを漂わせて、
さぞ、愉しかったようだね。

身体も、もう少しさ、洗ったほうが良いんじゃない?
臭いよ

何度か看過してあげたけど、無駄だったみたいだ。
私たち、おわりみたい。
さようなら、

私はあの日から、香水の、あの、独特の香りが嫌いになった、

8/31/2024, 9:15:17 AM

香水

香水と言えば普通にあの曲思い出しますけど、もう5年…
8年以上経ってると思った私はただのバカですね
歳とりすぎて…、もう50歳…((めっちゃ嘘
カラオケで香水歌う時の画面の映像って、Theカラオケ!!って感じですよね…カラオケ行ったの7年前なので知らないですけど(*^^*)

いや〜皆様お久しぶりですけど、私って前からこんなノリでしたっけ…なんか忘れた🤤

夏休み明けて不登校なりかけましたけど、少しづつ行こうと思います( ;∀;)
あ、病みました☆元々ですけど、別件で!(;´∀`)


で、創作の件なんですが、違う創作を作っていくか、まだ番外編を続けるかで悩んでいて…
続けるならば、あまり出てきて居ない、玲ちゃんや晴凛ちゃんのお話かな…と考えて居ます!

あ!!そういえば!!!「もっと読みたい」の数があと90個増えたら目標の数達成するんです!!
目標の数を公開してみようと思うんですが、計算したら今の数も分かると思います!!
めっっっちゃ少ないです、なので、押してくれてる方めっちゃ感謝です!!

取り敢えず、1000!!!「もっと読みたい」1000個を目指して、これからも頑張ります!!!宜しくお願いします!

Next