『香水』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
夜中に森で
香水の代わりに全身に樹液を塗りたくる
ライトアップされた私を見て
カブトムシとクワガタが集まってくる
おやおや喧嘩をはじめたよ
私の為に喧嘩はやめて、と呟く
まるでディスコのナイトフィーバー
黒光りするこのジャケットで
夜の街へ今、繰り出す
『香水』
香水
貴方は嘘が上手い人。
でも、その香りだけは誤魔化せなかったみたい。
貴方が「ただいま」と毎日私を抱きしめてくれるたび、そのふんわりと香る甘い香りが鼻につくの。
ねえ、こんな時間まで何してたの。
どこに、誰と居たの。
そんな言葉を、香水の香りと一緒に飲み込む。
こんな日々の繰り返し、お腹がいっぱいで吐きそうだ。
でも、どうしても貴方は嫌いになれなくて。
ただただその香水の香りが憎い。
香水
合コンが苦手だった。
緊張してしまい、何を話してよいか全く分からなかった。
そんな自分に自信を持つことなんて出来なかった。
でも、香水をつけると違った。
違う自分になれた気がした。
何故だか少しだけ自分に自信を持ち、女性にも積極的に話しかけることが出来た。
そして今の奥さんとなる人と付き合うことができた。
付き合ってる時はお揃いの香水をつけて楽しんだ。
今思えば俺が結婚出来たのって、香水のおかげなんだよなー
ありがとう!
アラン・ドロン
海外へ
旅行に行く。
おすすめの
旅行土産を
調べたら
―――香水。
うーん、
香水って
どういう時に
使うの?
初心者には
全然分からない。
まぁ
いいや。
これは
あくまで
他人のおすすめ
なんだから!
わたしが
いい
と思ったら
買ってみよ。
#香水
香水
今日もあなたからいい香りがする
なんの香水をつけているの?と聞いてみるともしかしたら家で育てている花の匂いかもと言っていた
明日もあなたからはあのいい香りがするのだろう
【香水】 ※あるドラマを元に
「…あれ、先生、香水つけてます?」
「はぁ?つけるわけ無いだろ。」
あんなの金の無駄、と吐き捨てるように言った。
でも、どこか優しくて落ち着くような匂いを纏っている。
「柔軟剤でも…こんな匂いはしませんよね…」
「っておい…ここ仕事場だぞ。」
抵抗する先生を抱きしめ、首筋に顔を埋める。
すると、優しくて落ち着くような匂いを強く感じた。
「ああ…先生自体だったか、」
「何言ってんだ、お前は。」
トップノートは魅力的
ミドルノートは誘引性
ラストノートは致命傷
綺麗な花には棘があり
甘い蜜には毒がある
知らなかったの お馬鹿さん
‹香水›
臭い…風呂に入りたての清潔な香りと田舎の小学生の放課後の様な匂いが容器の中で混ざりきらずに二人三脚の如く、私の嗅覚に目掛けて襲ってくる。
こんな匂い、子ども以外で許せるものなのだろうか?
バレンタイデーの日に彼女に呼ばれ、駅前で待っていると、急に不安になってきた。
「あぁーあ、遅刻してもいいから仕事終わりの汗を流してくるんだった」
誰に何を弁明しているわけでもなく、男はボソりと呟いた。
男は鳶職をしていて、今日、仕事終わりにメールで彼女から時間と待ち合わせの場所を突然送られてきた。
当然、2月14日に彼女からの呼び出しを断る男はいない。遅刻なんて持っての他だ!と思い。
仕事終わりの汗を汗ふきシートで乾拭きも、そこそこに待ち合わせ場所である駅前に来たのだった。
待ち合わせの時間まで、あと、5分…
その時になって、バレンタインデーという特別感が男を襲ってきた。
急いで、目の前の薬局へ入り、石鹸の香りと書いてあるボディスプレーを買って、全身に振りかけた…訳なのだが、自分の汗と相まって気持ちが悪い。
「最悪だ!」
付き合い始めて初っ端の二人の行事が、こんなんで彼女は幻滅しないだろうか?
不安が爪の間からゾワゾワと脳みそに震えを伝えてくる。待ち合わせの時間から2時間が
経とうとしていた。女性の支度っていうのは、どんな時でも遅いらしい。
早く来てくれ、彼女の笑顔で、このゾワゾワを安心させたいのだから。
近くでは、中学生くらいの女の子がさっきから行ったり来たりしている。
あの娘も彼氏を探しているのかもしれない。
生ぬるいジメッとした風が、
幼なじみの綺麗なロングヘアを撫でる。
その瞬間、あのバニラの香りに
ふわーっと鼻をくすぐられた。
嗅ぎなれた甘ったるいあの香り。
大好きだけど今は大嫌いな君の香りが、
執着するかのように友人を纏っていた。
・
『香水』
要は友達から元彼の香水の匂いがしたってお話
いつぞやに書いたメモを見つけたのでここにも
これもうちょい広げて短いお話書きたいな
香りは欲望を匂わせる。強ければ強いほどに。存在を主張したいのか、反対にかき消したいのか。どちらの方向にせよ香水には欲望のエネルギーを感じる。
ーーー
バスの中に西洋人と大学生。体臭を上塗りして消すという本来の使い方をする人と色気を足したいという使い方をする人。それに自前の鼻が過敏に反応しむせそうになる。
ーーー
イケてるやつ。そうであるとシグナリングしたくて手頃で万人受けする香水を一度だけ買ったことがある。出かける前に数プッシュ。この香りが相手にしれっと悟られればいいなと出かける前のおまじない。結局その日は匂いに言及されずそれ以降減らないボトルが自宅に眠る。
ーーー
汚い公共トイレに強烈な甘さの芳香剤があったことを憶えている。視覚と噛み合わない甘くてクドいにおい。そのわかりやすい違和感が余計に気持ち悪さを助長していた。
ーーー
汚れた壁紙に100均のリペアシート。似たような白地で合わせて貼ったが最初よりも目立ってしまう。下手なコンシーラーはしないほうがいいのかもしれない。普段メイクはしないがそう思った。
ーーー
(醜いとしても)ありのままでいるという潔さと、綺麗になるよう(醜いほどに)取り繕うことではどちらが清いのだろう。わからない。
ーーー
眠っていたボトルの中身を枕元に数回吹きかける。最初の目的と違う用途の香りが部屋を優しく包んでくれる。そんなのどっちだっていいよね。醜美なんて忘れて眠る。
香水が洪水に見えて、濁流を抱く龍が寝そべるような川上から幸水の化け物がどんぶらこと流れきた。
誰かが桃のようなでかいナシを拾って、家でパカンと真っ二つに割ったら、硬水が噴水のように吹き出してきて美味しいという話。
(何も思いつきませんでした……)
頑張って短歌作ってみた
エチケット時間が流れファッション色混ざり揉まれ靄がかかる
香水
なんで人生ってこんなに遠回りするんだろう
少なくとも自分は、初めからすっかり大好きだったものからわざわざ遠ざかって
わけのわからないものを心に詰め込んで、合わなくて傷付いて、ボロボロになる頃にまた最初から大好きだったものに出逢って
やっぱりこれしかない、と思い知ることを繰り返している気がする
何が、自分をこんな無駄な懊悩に誘うんだろうか
死ぬまでこんなことを繰り返すのは嫌だ
最初からずっと好きなものと、残りの人生はずっと傍にいたい
香水
綺麗なガラスびんに詰められた、不思議なもの。
おばあちゃんやお母さんが普段は大事にしまって、大事なときに出して少しだけつけてるいい匂い。
いつもとちょっと違う華やかな空気の記憶とともにある、その時代の香り。鏡台が大活躍する日。
子どもの頃の香水の記憶は、そんな面影がある。
さて、香りのおしゃれが香水の本面目なのだが、当然皆さまよう。私も彷徨った時期があった。
香水の濃度では難しく感じてオー・ド・トワレ。
いい香りと思うものと、しっくりくるものは違う。
カボティーヌで若さを妬まれ、ミス・ジャガーじゃ使いにくくて通行止め。サンローランイグレッグは30年早過ぎる香り(祖母に貰ってもらった)。彷徨った果てに落ち着いたのは、ディオールのファーレンハイト。ラインナップが増えて現在は“クラシック”と付いている。…まあ、もう滅多に使わなくなってしまっているが。
昨年だったかその前だったか、海辺に打ち上げられた鯨から発見された大きなアンバーグリス塊を、どこかのメゾンが買い取ったことがニュースになった。
さて、このアンバーグリスというものの匂いを、うちの子ども達は嫌がる。間違いなく良い匂いに類するのだが、その由来がダメらしい。実は多くの日本の家庭で、昔は珍しくない香りだった。「龍涎香」で、“おばあちゃん家の仏間の匂い”なイメージだ。
そんな香りなので私は気分的に落ち着く。
鯨の何が香るのかというと、鯨が食べたイカのクチバシが鯨の腸管内を傷つけないように、腸管内に分泌される粘液でイカの硬いクチバシを包んで、ウンコと一緒に排出する粘液塊が香るのだ。「それがアンバーグリスって呼ばれていて、香水の原料に使われたりするんだよー」と、子どもに話したら、「鯨のウンコのにおい」などと言い出した。いや、ウンコじゃなくてね…と言っても聞きやせぬ。
なので、リラックスを求めて私が時々使っている練り香水も、「鯨のウンコのにおい」というコメントが飛んで来る。違うっつの。ちなみに、私の使っているやつは近似分子構造の合成香料で、鯨に由来する天然香料ではない。ますますウンコじゃないぞ。
香りは結局、精神状態に働きかける効果が高い。
引き締まった集中力のためにファーレンハイトを使い、落ち着いて静かに緩むためにアンバーグリスを使う。私はどうも、おばあちゃんやお母さん達みたいに上手に「おしゃれ」に取り込めていない。
華やかで素敵な、不思議な魔法の小びんというイメージを、子ども達に持たせる力量が無いようだ…
「大将、醤油ラーメン一つ。あと、餃子とビールも」
「はいよ!」
短いやり取りのあと、懐から煙草を……取り出しかけて、やめた。健康増進法だかなんだかの影響で何処もかしこも喫煙不可になったんだった。喫煙者である俺は肩身の狭い思いをしているのだが、これも世の流れか……。仕方ない、サービス品の漬物の力を借りて口寂しさを誤魔化すとしよう。
漬物をトングで小皿に取って程なく、ビールと餃子がカウンターの向こうから届いた。
この店に来たらやはりこの組み合わせは外せない。自然と顔が綻ぶ。
さて、メインのラーメンを迎え入れる準備も兼ねて、この三種の神器に舌鼓を打つとしようか。
あらかたラーメンを迎え入れる準備が整ったところで
「醤油ラーメンお待たせしました!」
と、メインディッシュの到着が告げられた。
これこれ、これですよ! ○○(店名はヒミツ)の醤油ラーメン! 新店開拓のために、最近は他店に出向くことも多かったが、やっぱりここの醤油ラーメンが一番でしょ!
「らっしゃい!」
ラーメンが着丼するのとほぼ同時に、大将の威勢のいい声が響く。なんとなく、入り口のほうに顔を向けると、ラーメン屋には似つかわしくない若い女性客が一人。まあ、そんなことはどうでもいい。今は目の前の丼を……
(くっっっさ!)
匂いの発生源は、店員の案内に従って俺の隣の隣に座った件の女性客だ。香水のことは詳しくないので分からないが、とにかく強烈な匂いだ。女は着席するとメニューも見ずに
「いつもの」
と注文した。俺ですらいつもの、なんて通用しないのに……。若干の敗北感と強烈な香水の匂いに、俺の頭はクラクラしていた。
「いつもありがとうございます」
と、応える大将の鼻の下も心なしか伸びているように見える。辞めなさいよ、そういうの。あんた頑固親父だって雑誌に書いてあったじゃないの。若い女にデレデレするんじゃないよ、全く。思わず心の中で悪態をつく。が、そんなことをしてる間にせっかくのラーメンが冷めてしまっては勿体無い。俺は意を決してラーメンに箸を付けた。
(香水の匂いのせいで台無しだ……)
分かってはいた。分かってはいたが、いつもと違ってラーメンの匂いがさっぱり分からない。そのせいだろうか、いつもより味が劣っているように感じた。こと飲食店においては香水は煙草よりはるかに有害なんじゃなかろうか? だのに、片やお咎め無し、片や迫害とはこれ如何に? とは思いつつも、嘆いてばかりもいられない。ラーメンが冷めてしまっては今以上に美味しくなくなってしまうのは明白だ。俺は心の中で台無しになったラーメンを悼みながら、注文した品を完食した。
勘定を済ませて外に出ると、俺はそそくさと店の脇にある喫煙所に向かい、煙草を咥えた。
やってらんねぇ……そんな思いを胸に、俺は紫煙をくゆらせるのだった。
香水
香水のイメージは、大人、お洒落、高級、上品、プレゼント、歌、など。
私は匂いがきついものは嫌だから使ったことはないけど、友達の身体から香水の匂いがすると少しドキッとする。そのことから誘惑のイメージもあると気付いた。
2024.8.31 7
《香水》
貴方の隣に立つと、ふわりと香る優しい香り。
爽やかなシトラス。オレンジを中心に、刺々しくならない程度の酸味が効いた香り。
華やかなフローラル。前面に立ち過ぎずシトラスを活かすように優しく、それでも艶やかに花開く香り。
それらを支える、樹木の香り。森を厳しい寒さの中でも緑に彩り、その地が雨で緩み崩れるのを防ぐ根を張る、聳える大樹の香り。
一つ一つ貴方の心、生き様にとても似合っている。
誰とでも笑顔で会話を交わせる優しさ。
洗練された立ち居振る舞い、厳しい訓練に基いた技の洗練された華やかさ。
どんな困難にも折れずに真っ直ぐ立ち向かう、真摯な逞しさ。
どれも貴方を形作る、大事な香りの一雫。
柑橘を口に含んだ時。
鮮やかに開く花に囲まれた時。
森の大気に包まれた時。
私は、貴方の隣を思い出す。
時間が来ればすぐに並んで歩ける。それでも自然と鼻を擽る暮らしの香りは、貴方を私の心に呼び起こす。
ああ、早く一緒に帰りたいな。
仄かに残る香りに、私はいつも貴方を想う。
「もしかして、香水つけてる?」
雪(ゆき)は葉瀬(ようせ)にプリを渡しながら尋ねる。
「ん?つけてないけど?」
「マジ?さっきプリ撮った時いつもと違う香りしたから、今日だけ香水つけてたのかと思った。違うのかよ」
葉瀬は何故雪がそう言うのか分からなかった。何か生活が劇的に変わらない限り、匂いなど変化しないはずだが...
「......あ」
「何?なんか心当たりあんの?」
「あー......うん!!!」
「え、何」
葉瀬は何かに気づき、気まずそうに勢いよく返事をした。ただならぬ気配を感じた雪は、焦ってそのまま口から出た言葉を返してしまった。
「......じゅ」
「じゅ?」
「柔軟剤が変わりました!」
「柔軟剤」
相変わらず葉瀬は気まずさ全開の返事をする。雪は不安で思わず復唱した。
「たぶん柔軟剤ですね!」
「へ、ぇ......そ、それは何故...?」
葉瀬は諦めたように笑って、雪を見つめる。そして、深呼吸してこう言った。
「彼氏が出来ました!!!言ってなくてごめんね!!!」
「へぇー......ぇええぇぇ!!?」
てへぺろ、と先程の様に諦めて笑う。
「え、彼氏できたのか!?おめでとう!!って出来たら俺に教えろって言ったよね!?」
「ごめーーんね!!」
「許さん」
「てへぺろ」
「もっと心込めろ。俺の方が可愛く言えるぞ」
「絶対言わないし聞かないよ」
葉瀬は、ちらりと時計を見る。あれから少し話し込んでしまったらしい。
「そろそろカフェ行こうか」
「そうだな。じゃあそこで馴れ初めとか聞かせてもらお。柔軟剤変わったってことはその彼氏と同じ香りなんだぁ~ってことは一緒に住んでるのか!聞くのが楽しみだな~」
「...答えられる範囲の質問でお願いします」
「ええ~どうしようかぁ?」
雪は悪戯っぽく笑っていた。
お題 「香水」
出演 葉瀬 雪
『香水』
「寝る時に纏うのはシャネルの5番だけ」
そう言った女優の言葉は、あまりに有名だが、後々香水が人の性格を左右することになるとは、当時の人達は思ってもみなかっただろう。
通販で買い物をするのが当たり前になった今でも、化粧品や香水の類は対面販売で買う人が多い。
「こちら、“初対面の人とはきさくに話せるのに、知り合いの中に入ると上手く話せなくなる人”の香りです」
手渡されたテスターの一嗅ぎしてみる。
「こちらのほうは、“思っていることとは裏腹に、ツンケンした態度をとってしまう人”の香りになります」
どちらもピンとこない。
「でしたらこちら、“人と交わるのを好まない、厭世的な人”の香りはいかがでしょうか」
気に入った。
これにしよう。
孤独な香りを纏わせて、夜の街をぶらつくのも悪くない。
香水は空気中に吹きかけてそこを潜ると程よい量がつくらしい。
それでも私は鎖骨に少し、手首に少し。両手首を擦り合わせて、頸に擦り付ける。あまり香らないなと匂いに慣れて鈍った嗅覚を信頼して、ダメ押しでもうワンプッシュ鎖骨へ。今日は香水が私の武器だから。
いつも使うこの香水は、これからデートする相手に記念日のプレゼントとしてもらった。表参道に店を構えている老舗ハイブランドのロングセラー品だ。大人っぽいラグジュアリーな香りから、女性らしく甘い香りへと変化する。
私はこの香りが好きではない。好みで言うならシトラス系の爽やかで甘すぎない香りがいい。
でも好いた男は、この香水のような女性がタイプらしいから。そんな大人に見てもらえるようにという子供じみた願いも込めたのだ。
まあ、私は浮気相手側だったわけだけども。
あの男との前のデートでその事実を知った。ホテルのベッドで横になっていた時、ヘッドボードに置かれた男のスマホが短くバイブレーションした。男は寝ていたし、てっきり私のスマホかと思って手を伸ばした。
ロック画面には、まだ小学生にも満たない男の子の写真。メッセージの送り主は男と同じ苗字。長押しして読んだ内容は、残業する夫を心配する妻そのもの。
ああ、私この男に騙されたんだ。
男に対する熱意が一気に引いた。一体いつの間に冷却機能を搭載したのか、心が冷えていく。頭も冷静になって、視界はくっきりとクリアに。
私はその場から逃げ帰って、あれこれ考えた。あの男が奥さんと別れて私と結婚する可能性とか。結局それは一ミリもあり得ないのだけど。
それなら別れるしかない。確かに男のことは今も愛しているけど、それ以上にちっぽけなプライドが勝った。私を、女を馬鹿にして弄んだこの男を許して、共に歩むいつかを夢見るほど、子供じゃない。
今日のデートで別れを切り出す。待ち合わせ場所は駅前だから人目がある。今度二人きりになったら流されてしまうから、その前に男とケリをつけるのだ。
でもただ泣き寝入りみたいな別れ方はしない。浮気の痕跡を残してやろうと、香水を振り撒いたのだ。残り香が移るほど近い距離に女の影があると、奥さんに気がついてもらうためだ。
チャンスがあるなら、香水のボトルごと男の服のポケットに忍ばせたいが、そこそこ大きく重量もあるから気が付かれるだろう。あと考えていることは、男の服や持ち物に直接吹きかけることとか。逆上されたら目潰しにするとか。襲われそうになったら瓶の入ったカバンごと振り回すとか。
バッグの中に香水の瓶を入れる。かなりの重量で肩にかけたショルダー紐が少し食い込んで痛い。それも我慢して深呼吸する。頭がクリアになったところで玄関を出た。
三年間、私を騙した男へ復讐を。
『香水』