香りは欲望を匂わせる。強ければ強いほどに。存在を主張したいのか、反対にかき消したいのか。どちらの方向にせよ香水には欲望のエネルギーを感じる。
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バスの中に西洋人と大学生。体臭を上塗りして消すという本来の使い方をする人と色気を足したいという使い方をする人。それに自前の鼻が過敏に反応しむせそうになる。
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イケてるやつ。そうであるとシグナリングしたくて手頃で万人受けする香水を一度だけ買ったことがある。出かける前に数プッシュ。この香りが相手にしれっと悟られればいいなと出かける前のおまじない。結局その日は匂いに言及されずそれ以降減らないボトルが自宅に眠る。
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汚い公共トイレに強烈な甘さの芳香剤があったことを憶えている。視覚と噛み合わない甘くてクドいにおい。そのわかりやすい違和感が余計に気持ち悪さを助長していた。
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汚れた壁紙に100均のリペアシート。似たような白地で合わせて貼ったが最初よりも目立ってしまう。下手なコンシーラーはしないほうがいいのかもしれない。普段メイクはしないがそう思った。
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(醜いとしても)ありのままでいるという潔さと、綺麗になるよう(醜いほどに)取り繕うことではどちらが清いのだろう。わからない。
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眠っていたボトルの中身を枕元に数回吹きかける。最初の目的と違う用途の香りが部屋を優しく包んでくれる。そんなのどっちだっていいよね。醜美なんて忘れて眠る。
8/31/2024, 8:56:07 AM