『雪を待つ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
あなたをずっと好きでいる気持ち
くらいしかあげられないけど
どう?
雪を待っても
降り積もって隠れる石は
消えるわけではない
雪を旦那と見たいなあ。まだ見ていない。去年は産前産後でいっぱいいっぱいだった。今年は一緒に見れるかな。
小さな頃、冬の日は起きるとすぐにベランダに向かっていた。雪の降る日を心待ちにしていたのだ。
はらはらと雪が舞う日、一面に見える屋根や道路を真っ白に染め上げた日は身支度もそこそこに朝一番に飛び出した。
寒さなんて露知らず、白銀の中で踊る。まるで雪の精霊と戯れるが如く、ひとり笑っていた。
久し振りに、雪が振る日に外へ出た。
雪は今も昔も嫌いじゃない。
服の隙間から雪や北風が入り込んでは身体を冷やしていくのを感じた。
もう、精霊は見えないのだろうか。
雪を待つ
全部が全部真っ白で、寒く冷たい家の外から
あたたかな家の内からのぞく
あたたかそうな毛皮の君を見る。
窓枠を挟んだ別世界、君はキラキラした雫の結晶を、宝石のような瞳で眺めている。時折尾を振り窓を突いては、冷たくて引っ込めて。
今年もそろそろ、そろそろかなと、冬毛で一回り大きくなった君を撫でて、静かにしずかに、雪を待つ。
そうしていたら、テレビの天気予報士が、いい知らせを教えてくれた。
あぁ、あぁ。なんて遠い明日なんだ!!
それまで君と
雪を待つ。
結晶血漿血症敗血症ほんとうのいみで
ムーミン部屋で
貸すとぉロー
柔らかて優しいあなたからのメッセージは
まるで雪を待っているように静かな気持ち
強くて繊細で優しいあなたの言葉は
雪のように、ふわりと私の手のひらで
とけてしまうけれど
ゆううつなくもり空のようなグレーの気持ちの時に
白いまっすぐな雪のような
あなたのメッセージを私は今も待っている
雪を持つ
雪を手でにぎにぎして雪玉を作って投げる
ぽいっと投げる、大阪に雪は降らない
でもぽいっと投げるTポイントカードを投げる
歳を重ねるにつれ雪は、雪掻きや交通渋滞などを想起させる厄介者の印象が強くなってしまった。寂しいものだ。
子どもの頃は、夜、国道を走る大型車の装着したチェーンの音(それはまるでサンタクロースの乗る橇の鈴の音のよう)が遠くから聴こえてくると、朝が待ち遠しかった。
ただ今でも、雪の積もった朝の、カーテン越しにも判る外の明るさに胸が弾む感覚は、まだ微かにある。
#100 雪を待つ
タバコの煙が昇って解ける。
削り取られた月がボンヤリと。
丁度てっぺんで重なった時計。
夜更け過ぎに初雪があると、
朝のテレビが言っていたっけ。
どうせならこのまま、
雪が降るのを待っていようか。
『雪を待つ』
夢を見る
あかぎれだらけの薬指
氷の張ったドブ川と厚い雲
放置された長靴と割れたバケツ
まだ夢に見る
売れ残った花火と笑い声
少し高いあなたの体温
甘くて消えてしまいそうな香水
明るくなっていく世界で1人
私はまだ眠った振りを続けている
「雪を待つ」
年末年始の帰省シーズンへ向けてタイヤをスタッドレスに変える
運転しないに越した事はないが、そんな訳にもいかないので。用心に越した事はない
雪を待つ
あなたの住んでいるところではもうすでに雪が降っているのでしょう。もしかしたら積もっているのかもしれないですね。
私達は同じ場所で時を過ごすことはできませんが、雪を見ると同じ時を過ごしているように思います。
雪のように冷たく、触れると溶けて消えてしまいそうなあなたを私は応援しております。
15
吐いた息が白煙となって夜空へ吸い込まれていく。
凍てつく夜。遠くに眺める電車の走行音が、また一つ遠ざかるのを聞いていた。
―――
「くそっ!仕事がっ!!終わらねえっっ!!!」
東城翔(とうじょう かける)は唸るようにそう叫びながらダンダンとキーボードを叩いている。
余りの勢いで東城が座る机や椅子までもが揺れており、その様はデスクワークをしているのか格闘技をしているのか分からぬ程であった。
獅子戸雷生(ししど らいせい)は横目でその様を見ながらフン、と鼻で嗤う。
「情けねえな、これしきの事でギャーギャー抜かしやがって」
「ああ!?」
打つ手を止めぬままこちらを見、東城が唸った。
「お前だって終わってねーじゃんか!」
「うるせえゴリラは黙ってろ!」
「ゴリラはお前だろ!このゴリラ!!」
十二畳ほどのオフィス内に二人の大男の怒鳴り声が響き渡る。
「全く―――いい加減にせんか、大の大人が子供じみた喧嘩なんぞしおって」
ピンと空気を静かに切り裂くような、はっきりとしたその声に二人は瞬時にピタリと口を閉ざした。
前方に座り、もはや塔と化した書類の山に囲まれたその男は、鋭い目を少しばかり細めながら二人を凝視している。
―――銀の髪に至極の瞳、覇たるその力を以って狼将と称す。
かつてそう称えられたこの男は、今なおその威厳は衰えていない。
八雲弦狼(やくも げんろう)。二人の上司である。
「八雲隊長ーーー」
「隊長は止せと言っているであろう。今は只の科長だ。…にしても東城」
八雲は東城を見遣る。
「さっきから何をそんなに苛立っておるのだ。毎月この時期はいつもこれくらいの忙しさだろう?」
東城はそれを聞くと「あー…」とやや恥ずかし気に目を逸らした。
「いや…実は今日、ツレと約束がありまして」
「はあ?」
今がその時と言わんばかりに、獅子戸はすかさず東城に向かい唸った。
「ふざけてやがるな貴様………この時期だからってさてはイルミネーションでも見に行くつもりか…!?あれだろ、どうせ今日から始まった駅の通りのすげぇやつでも見に行くつもりなんだろうな?くそが…仕方ねえから祝福しといてやる、感謝するんだな!!」
「うるせーな!情緒どうなってんだよお前!!…まあイルミネーションってのは半分当たってるんだけどな。遠くから少しだけ見るんだ」
ほう、と八雲は顎に手を当てた。
「そうか、お相手に合わせて…という訳か」
「はい!…なので早いとこ終わらせねえと待たせちまうんですっ!!」
そうして東城は再び轟音を鳴らしながらキーボードを打ち始めた。
(八雲隊長は東城のツレをご存知なのか。にしても"お相手に合わせて"ってどういう事だ…?)
獅子戸はふとそう思ったが、己も仕事がまだまだ山積みである事を思い出し再び仕事に戻った。
「終わったあああ!!!お疲れ様でしたああまた来週!!!!!!」
暫く経過した後、そう叫びながら走り去っていった東城の背を眺めながら獅子戸は伸びをした。
「ったく騒がしいやつだ……八雲隊長、お疲れ様でした。ようやく今日も終わりましたね」
「隊長は止せと言っているだろう。…然し全くだ。獅子戸も疲れたろう」
「いえ……あ、そういえば八雲隊長。隊長は東城のツレが誰がご存知なんですか?」
ああ、と八雲は帰り支度をしながら答える。
「覚えているか。以前うちの会社の研究開発部に稀代の天才と呼ばれていた社員がおっただろう」
「稀代の天才……」
勿論知っている。社内ではかなりの有名人で、この会社に三人で異動になったその日に見かけ、周りの社員達が噂しているのが記憶に残っている。
「覚えていますよ。頭脳明晰、明察秋毫、仕事スゴ出来。しかも滅茶苦茶キレイな顔の男ですよね?」
「そうだ。あまり人の名を覚えない獅子戸でもさすがに覚えておったか!」
そう言って八雲は大きく笑った。
本当に、天は二物を与えるものなのかと当時は思ったものだ。
あのように全てを持った男は後にも先にも見たことがない。
「……え?まさかそいつじゃないですよね?」
―――
「七星!!」
よく馴染みのある声で己の名を呼ばれ、四ノ宮七星(しのみや ななせ)はゆっくりと振り返った。
「翔」
「すまん!遅くなった…!」
翔はそう言って両手を合わせる。
「別に構わない。元々遅くなるのは予め予測していた」
いつも翔は毎月この時期には忙しくなるのだ。
二人は繁華街から少し離れた、人通りの無い橋を並んで歩いていく。
「お!!良く見えるじゃねーか」
翔は繁華街の方角を指差しなから言った。
色とりどりの眩しい光。遠く離れた場所から見る其れは、まるで星の瞬きのように美しい。
「…これであとは、雪が降れば何も言うことは無いな」
七星はぽそり、とそう呟いた。
「雪か。今日そういえば降る予定だったな」
喧騒から離れた暗闇の中。遠く眺める光に白い結晶が降り注いだら、其れはどんなに美しいだろう。
「…少し、お前には似合わないかも知れないがな」
「なんだと!?俺だってこう見えて繊細な美しさの分かるエモーショナル男なんだぜ!?」
二人並ぶ帰り道、自然と頬は綻んだ。
凍てつく夜空、雪を待つ日。
あの時あなたの隣で見た花火のように
降りそそぐ雪をあなたの隣で見られたなら
今年の冬に悔いはないのに
「精霊には王がいる、って話、知ってる?」
「ア? ンだよ突然。……聞いたことねェな、そンな話」
ロキの言葉にイルは顔を上げた。陽が高く暖かい、珍しくのんびりとした小春日和のことだった。
「そっか。まあ、ただの噂みたいなものだからね。伝説って言い換えてもいい。魔人《こっち》、いや、魔王《僕ら》に伝わる、ただの噂」
「俺は精霊の存在自体、知覚できねェからなンとも言えねェが……。その言い方じゃあ、オメェは信じてねェのか」
「……うん、そうだね。そうなるね」
ロキは両手で持ったカップをクルクルと回し、一口飲んでからそう言った。その水面を見つめたまま話し続ける。
「そもそも精霊自体、個の意識が低い。生き物っていうより──風や植物、自然に近い存在だ。僕ら交信者《ファミリア》は、一応精霊と話すことができるわけだけど……。なんていうか、たぶん、他の人たちが思うよりずっとふわっとしてる」
「ふわっと」
「うん。ふわっと。精霊の意志自体が割と曖昧なわけだから、はっきり会話できてるわけじゃない。断片的な情報で、言葉ってよりかは感情を推測していく感じ。で、僕が知る限り精霊ってのはそういう感じだから……そこに王なんて言われてもね。かなり信憑性は低いと思うよ」
「ふぅん。オマエが言うならそうなんだろ。……で? なンでいまそンな話を?」
「僕の話すこと全てに意味を求めないでほしいけど……。こんな噂もある」
カップを置いて指先を合わせ、真っ直ぐにイルの目を見る。深く、暗く、静かな湖のような瞳が微かに揺れる。
「シリウスは精霊王と契約したって」
「……アイツが。精霊の、王と」
その言葉にイルの瞳も揺れる。
ロキはその反応に満足そうに頷き、大きく手を広げた。
「そ。でもまあ、そもそも精霊王の存在自体が眉唾モンだからね。どこまでが事実でどこからが伝説か、わかったもんじゃあない。でも、それも──」
「次の都市でわかる、か」
ロキは再び深く頷いた。
「そういうこと。初雪が降ったらここを発つ。のんびりしてられるのもいまだけだよ」
「アァ、言われるまでもねェ」
イルは知らず知らずのうちに拳を握りしめた。
伝説の真偽も。
この旅の行末も。
全てがわかるのは、もうすぐだ。
出演:「ライラプス王国記」より ロキ、イル
20241215.NO.116「雪を待つ」
『冬になったら一緒におーっきな雪だるま作ろうねっ』
あの子の名前がずっと思い出せない。隣の家に住んでいて、ずっと一緒に遊んでいた同い年の女の子。冬が好きなこと、おてんばだったこと、いつも痣をつくっていたこと、実はそれはお父さんに殴られたあとであること。いつも泣きそうな笑顔。覚えているのはこれくらいだ。5歳ぐらいのとき急に引っ越していってしまった。今思えば父親の虐待が誰かに通報されたのかもしれない。ところで僕はというと、今は実家を離れ、地方で大学生活を送っている。東京とはまるで違って、今日早くも雪が降っている。
インターホンがなった。
『雪だるま、つくりませんかっ』
半袖白Tシャツに下は恐らく高校のジャージ。この寒い中一体どういう格好をしているんだ。間違ってないよね。きっとずっと名前が、名前だけが思い出せなかったあの子。ふと外の景色が目に入る。そうだ、君は
「雪ちゃん」
君は今にも泣き出しそうな顔で笑って助けて、と言った。
『雪を待つ』
雪が降ることを、私はまだ知らない
ただ、冷たい空気が心に触れて
冬の匂いが遠くからやってくる
空は灰色、けれど優しい色
静けさの中で何かを待つ時間
それは、私の中にだけ降る雪のようで
「降るかな、今日」
そんな風に君の言葉を待つ
どこかで、少しだけ期待して
降らないとしても、
その空を見上げることが好きだから
白く染まる街を想う
それはたぶん、私の心が
君のことで、また真っ白になる瞬間
――雪は、待つ人のところに降るのだと
誰かが言っていた
なら、君はいつ、私の冬に降るのだろう
私の想いを反映しているようで
好きになれなかった
_雪を待つ
随分と時間が経ってしまった。
人は出会って3ヶ月以内に付き合うのがいいだとかなんだとか聞いたことがある。
それで言うと、まぁ、
随分と時間が経ってしまった。
君と出会ってからもう半年以上を数える。僕は君が好きだ。でも、それは言えない。
この関係が変わるのも、終わるのも怖いんだ。
毎日同じ駅で降りて、君の家の近くまで一緒に歩いて帰る以上の幸せに、勇気を持って踏み込めないんだ。
雪のように白くて綺麗な君の横顔を見れることが僕にとっての幸せなんだ。だから、このままでいいと言い聞かせた。
代わりに、僕は雪が降るのを待つことにしたんだ。
雪が降れば、道が凍れば、転ばないようにいつもよりゆっくり歩けるじゃないか。転ばないように手を取り合う瞬間が来るかもしれないじゃないか。
まぁ、そんな淡い期待はさておいて。
このままじゃ君との思い出は何も残せない、でも雪道は一緒に歩いた記念を地面に刻み込めるじゃないか。
それがどれだけ一瞬の出来事でも、たまらなく嬉しい。
──────────
随分と時間が経ってしまった。
君は今、どうしているだろうか。
どんな顔で笑っているだろうか。
どんな人と出会ったのだろうか。
君の思い出の中に僕がいたとしても、きっと思い出すことはないだろう。それでも僕はきっとこれからも君を思い出す。
その時に、未練は決して抱えぬように
君への想いは断って仕舞った。