『冬になったら一緒におーっきな雪だるま作ろうねっ』
あの子の名前がずっと思い出せない。隣の家に住んでいて、ずっと一緒に遊んでいた同い年の女の子。冬が好きなこと、おてんばだったこと、いつも痣をつくっていたこと、実はそれはお父さんに殴られたあとであること。いつも泣きそうな笑顔。覚えているのはこれくらいだ。5歳ぐらいのとき急に引っ越していってしまった。今思えば父親の虐待が誰かに通報されたのかもしれない。ところで僕はというと、今は実家を離れ、地方で大学生活を送っている。東京とはまるで違って、今日早くも雪が降っている。
インターホンがなった。
『雪だるま、つくりませんかっ』
半袖白Tシャツに下は恐らく高校のジャージ。この寒い中一体どういう格好をしているんだ。間違ってないよね。きっとずっと名前が、名前だけが思い出せなかったあの子。ふと外の景色が目に入る。そうだ、君は
「雪ちゃん」
君は今にも泣き出しそうな顔で笑って助けて、と言った。
12/15/2024, 4:21:36 PM