『雪を待つ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
ぬくぬくとした毛布の中、既に目は覚めてはいた。
が、なかなか起きることが出来ずにいる。
冷えた空気を吸う度に鼻の奥がヒリヒリと痛む。
流石にもう冬だな、と冷えた鼻を毛布に埋めて目を閉じた。
……危なっ。 流れるように二度寝を決めようとしていたが、今日は朝から色々と用事が入っていたことを思い出して、ベッドから飛び起きる。
手早く身支度を整えてリビングへ向かうと、カーテンの隙間からチラチラと白が舞っているのが見えた。
テーマ「雪を待つ」
雪の降らない南国に雪の降る恋のうたがある。お前を待つときに何となく思い出す。歌えやしない。その土地の言葉とその土地の節で歌われるそれはどうにも難しい。だからお前を待つときに何となく思い出している。目の前にいないお前を想像のなかに描くのはそのくらい難しい、という話だ。だから消えないでくれよ、という話でもある。うたえないうたのために何となしに宙で指揮を振る。お前を待っている。お前を。
向かい合う二人、何らかの情緒的シーン——
『あ、雪……』
広げた手のひら、その指先に舞い落ちる雪。
ホワイトクリスマスだ——と微笑む二人。
……ドラマや漫画で、幾度となく見る展開。
使い古されようとその結末で締められることが多いのは、わかりやすくドラマチックだからだろう。
そして数多に使われるからには、その情景にそれ相応の需要があるから——なのだろう。
「ホワイトクリスマス? そんなものに憧れなんかないよ。雪なんて、最悪なだけじゃん」
雪国育ちの彼女は、忌々しげに顔をしかめて言い捨てた。
その日は朝から雨だった。
段差のない狭い玄関口で、彼女は傍らのシンク台を片手で掴み、コートの裾を汚さないようモスグリーンの長靴を脱ぐことに専念していた。
ブーツを模した、お洒落な長靴。
外は確かに予報通り一日中雨だったが、大雨というほどでもない。
雨予報のたびに眉をしかめて押入れからその長靴を出す彼女が、いつも不思議だった。
「なんで、長靴?」
「は? 雨でしょ、明日」
「そうだけど——長靴、履くほど?」
言って、長靴を最後に履いたのはいつだったろうかと記憶を探る。
多分、小学生ぐらい。
それも親がまとめたアルバムの写真で見ただけで、自ら用意して履いた記憶はとんとない。
「こっちの人って、長靴履かないよね。それで濡れたとか文句言うくせに。むしろそっちがなんで、なんだけど?」
なんで、って。
濡れるより、長靴履く方が面倒だし。
そもそも濡れて不快な思いをする日より、長靴を使用する機会が少ないから、だろう。
そう、彼女に述べたかどうか——記憶にない。
いつの頃からか、彼女は雨でも長靴を履かなくなった。
代わりに、濡れてダメになっても支障がない、かつオフィスでも見咎められない程度の安靴を履き。
そうして雨で靴から足まで濡れた日には、鬱陶しげに——よく聞く文句を並べていた。
何とはなしに聞き流しているうち、ふと気付けば。
彼女の置き荷物がすべてなくなって。
この六畳一間の安普請なアパートに、彼女はもう訪れなくなっていた。
彼女がこの部屋へ最後に来た日。
互いに何を喋ったかも、正確には覚えていない。
多分……、将来のことだった。
この先どうするつもりなの、とか。
親めいた問いに、机に向かったまま返事にもならない曖昧な音だけ口から発して、心で耳を塞いだのだと思う。
ああそうだ。
『少し忙しくなるから、あまり来れなくなるかも』
——そうなんだ、と頷いた。
会えなくなる、と確信した。
でも、何も言えなかった。
『じゃあね』
いつものように彼女は手を振って、振り返した。
間隔の短い街灯が、夜空を灰色に見せていた。
「ほら——あの彼女さ、地元に帰ったって」
そんな話を聞いたのは、彼女と会わなくなって幾度目かの冬だった。
チェーン店の居酒屋に集まった面々は、みんな懐かしげに破顔して、賑やかに談笑を交わしている。
「え、何で?」
思わず疑問がこぼれた。
彼女は、故郷を疎んでいたはずだった。
冬は長く厳しい、と。
毎朝どころか、ひどい時には毎時間、雪かきをしなければ暮らしが成り立たない地域だからうんざりだ、と。
「さぁ? 子供が生まれたって話だから、子育てのためじゃないかな」
ジジババの手が借りられるならその方がいいし。
子育ての環境としては、田舎の方が良いと感じちゃうんじゃない? 田舎育ちならなおさら。
推測に過ぎない、けれど不思議と説得力を感じるのは、同じ立場にある者の言だからだろう。
「——そっか……」
小さく、納得の呟きをもらすのが精一杯だった。
解散してからだったか。
我に返ったのは、赤煉瓦の駅舎を目にした時だった。
あまりな無意識の行動に、苦笑する。
彼女がこの地を去ったのは、だいぶ前。
子供を伴った引越なら、列車で去る訳がない。
街明かりで闇というには明るすぎる、濃灰色の夜空を見上げる。
……なんで、何も言わずに。
思うものの、批難する権利なんてどこにもないのは自分がよくわかっている。
だから、あるのは一抹の寂しさだけ。
最後の日、何かを——多少なりとも言えていたのなら。
結末は、変わっていたのだろうか。
夜半を過ぎても、駅前の人通りは絶えない。
曇天をはらんだような夜空でも、この時期のこの地に雪が舞い散ることは決してない。
それでも。
街路樹に身を潜めるように立ち、ひたすらに空を仰ぎ続ける。
フィクションの中ではありふれ過ぎた情景が生じないかと——
ただひたすらに、雪を待つ。
この土地で 降るはずもない雪を待ち
暖かささえ 今は苦しい
短歌
お題【雪を待つ】から発想
ずっと前に別れたあの人はもう来ることもないのに、今ある幸せすら苦しくなるそんな季節もある
もううんざりなの
なにもみたくない
すべてがいらない
そう強く願ったとき
あなたは来てくれる
唸り轟音を轟かせて
視界の全てを無慈悲に凍てつかせながら
乱れ降る冷たい叫び
現れた白魔の名前は
"ホワイト・アウト"
おねがい 私からあらゆる識別を奪って
こんな世界に惜別の情など端から無いの
早くあなたの白一色に世界を染めて頂戴
飲み込んで 閉じ込めて ただ奪ってよ
そうしてようやく安寧が齎される頃には
既に私も白の中 静寂さえ認識できない
だけどそれがきっと私が望んだ平穏なの
…なんて、瞼の裏の世界のお話。
色も音も匂いも鮮やかに濁り汚れた世界で、
あなたに似た白い息を吐き出しながら、
夢想家の少女は今日も静かにその到来を待っている。
-雪を待つ-
雪を待つ
雪を待つ。
僕はいつも雪を見れない。
僕は雪を見たことがない。
太陽に当たって時には下を向きながら、涙を落としながら、頑張って上を向いて生きている。
涙は次の希望だ。また頑張ろう、と。
でも頑張っていても毎年、絶対雪を見れない。
太陽は好きだ、大好きだ。
だから僕はいつも太陽を見ている。
でも、雪に憧れている。
真っ白な世界を見てみたい。
でも、絶対見ることはできない。
でも、だとしても、絶対に諦めることはない。
たとえ叶わないとしても、
太陽のような僕の光で照らしてあげる
ひまわりより
※不穏な話です
ビルの屋上で煙草をふかしている後ろ姿を見つけた。
彼の頭上を漂う白い煙が、少し遠いこの位置から見るとまるで抜け出した魂のように見えて、思わず足を早めた。
「探しましたよ」
彼は煙草を咥えたままゆっくり振り返ると、おどけたように肩を竦めた。
「君が来るとは思わなかった」
長い指に煙草を挟んでそんな事を言う。その仕草の何もかもが絵になって、しかもそれが嫌味になっていないところが不思議な男だった。
「知りませんでしたか? 私が一番周りを細やかに見ているんですよ」
彼は一瞬目を見開いて、そしてくしゃりと顔を綻ばせる。普段厳しい表情が多い彼の、その意外な幼さに私は突然胸を鷲掴みにされたような気がした。
「何をしてたんです?」
隣に並んで柵に凭れる。彼は煙草を一口吸って細く煙を吐き出すと、「雪を待ってた」と意外な答えを寄越してきた。
「雪?」
天気予報はここ一週間星のマークばかりだ。
彼は淡く微笑んで、煙草を挟んだ手を空へと向ける。
「空に縫い付けられたあれがさ、目に見えるあの大きさのまま落ちてきたら雪みたいだと思って」
彼の指先を追うと、夜空に冬の星々が輝いている。冴えた空気の中で輝く無数の星は、確かにしんしんと降り積もる氷の粒を思わせた。
「……あれが全部落ちてきたら、空は何にも無くなってしまいますよ?」
「うん。でも、真っ暗な中であれだけ沢山の雪に埋もれたら、きっと気持ちいいんじゃないかって」
「……」
彼は時々、こんな危ういところを見せる時がある。
ぽつりと、唐突に、まるで当たり前のことのように。
止めて欲しいのか、気付いて欲しいのか、それとも叱って欲しいのか。
捉えどころの無い彼の、心の奥底に何があるのかを知りたくて、私は腕を伸ばすと彼の指から煙草を奪って口付けた。
淡い色をした瞳が見開かれる。
唇が離れると、彼は煙草を持つ私の手に指を絡めて囁いた。
「君の指も冷たくて……気持ちいいな」
低く響くその声に、私は死の誘惑を感じた。
END
「雪を待つ」
雪を待つ
冬といったら雪だね。
雪は、世界を一気に照らしてくれる_
この平凡で地味な街も白く照らしてくれる素敵な存在だね。
そんな雪も、今年はきてくれるかな_と、考えてばかり
雪が好きなのは、幼稚なことなんかじゃないよ_
激イタポエマーみたいになりました😭
雪を待つ____
「溶けて、悶えて、散る。」
雪が溶けると彼女は悶えて春になると桜が散る。
体が溶けると彼女は悶えて春になると骨が散る。
溶けての「と」
悶えての「もだ」
散るの「ち」
友達。
こんなホラー小説あったら面白そうだな。
雪を待っている。
枯葉も落ちきり寒々しい枝が凍える様に擦れあうといよいよ待ち遠しくなる。
耳が痛いなかハラハラと降り出した。砂糖をまぶした様だと眺めていたのもほんのわずかな時間。瞬く間に真っさらなキャンパスが出来上がった。
そんな日が何日か続いた頃に友達がやってくる。
雪から生まれた様な容貌。
雪が積もらないと現れない客人。
特に約束もしていない。だが必ずひょっこりと顔を出す名もなき友人を今年も出迎えることが出来た。
小さなソファに座りながら、スープをひと口飲む。
目の前の暖炉の炎がパチパチと音を鳴らす。
「…」
ハンモックがある西の窓に目を向けると、雪が積もり始めていた。
ガタッ___
建付けが悪い家だからか、少し吹雪になると本棚から本が落ちることが多々ある。
スープを飲み干すと、気付けばもう暮夜だった。
柔らかい木材でてきた食器の中にクリームシチューを入れる。
西の窓には、もう雪が積もっていた。
雪を待っている間にとっくに時間は過ぎていたようだ。
"雪を待つ"
明日は雪が降るらしい
何時も通り遊ぼう
マフラー
手袋
上着
後は友人を誘う
此れだけ有れば充分かな
さてと
明日は雪だ
待ち切れないな
# 22
ひとひら、ふたひら。
ちらちらと舞っていた雪が濃度を増していく。
その年、初めての雪が降ると密かに胸が躍る。
激しく降っていた牡丹雪が、気温が下がるとともに粉雪に変わっていく様を眺めるのも、その中を歩くのも好きだ。
初雪はすぐに消えてなくなるけれど、しばらくしてドカ雪が降り積もると、この雪が根雪になるだろうと予想する。
長い冬の始まりである。
今は昔の雪国の思い出。
『雪を待つ』
時々自分自身の成長に寂しさを覚える。
クリスマスはサンタさんのプレゼントが
楽しみで仕方なかったのに
クリスマスを家で過ごすことに恥ずかしさを覚えたり、
雪が降ったら外に出て遊びたかったのに
電車が止まる心配をしだすようになったり、
もっと純粋に、
学校に行って、宿題をして、遊んで、ご飯を食べて、疲れてぐっすり寝る。
ただそれだけだった。
大学に行って、勉強して、バイト行って、遊んで、悩んで、自己嫌悪で寝る。
いつからこんなに自分を卑下するようになったのかな。
いつからこんなに人と比べるようになったのかな。
きっと私たちは知りすぎてしまったんだと思う。
愛は永遠じゃない。
努力は報われない。
友達も所詮は他人。
言葉と本心は違う。
こういうことがこの世界には普通にあるってことを。
そんな世界でたった1人他人じゃないのは自分だけで、
最後に自分を守れるのは自分しかいない。
そのために私たちは純粋じゃいられない。
自分のために強くなってる。
冷たくて気持ちいい弱い風が髪の毛を揺らす
興味本位でふーっと一息吐けば白い息が顔を出す
家やお店 、木や看板 などに飾られているサンタの置物や光る物
カフェのメニューもこの季節にぴったりなものばかり
家族や友達やカップル 、ペットも連れて
ドンと飾られたデカいツリーの前で写真を撮る人達がいる
『 … もう完全に冬だなぁ 』
楽しそうな人達と楽しそうに輝く街を眺めながら独り言を呟いた
元々冬は嫌いで家から出ることなんてなかった
友達も居ないから遊びに誘われる訳もなく
夏になれと願いながら暖かい家の中で寝ていた
おじいちゃんの家へ行った日
有り得ないものを見た
おじいちゃんの家は二階建てで屋根裏があった
僕は屋根裏に行ってひとりで過ごすのが好きだった
屋根裏の窓から見る眺めは最高に綺麗で夏の夜なんてもっと綺麗だ
椅子に座って本を読む
本を読むと目が疲れるから目を休ませるために本を閉じた
ふと視界に映った景色が衝撃的だったことを今でも覚えている
木には軽く雪が乗り
建物のほとんどがキラキラな物に囲まれていた
白い道路に反射する灯りがとてつもなく美しくて
何枚も写真を撮った
その日以降
僕は冬が好きになった
夏よりも冬の方が 。
今じゃ夏は暑いから嫌い とまでなってしまった
可笑しいな
『 雪 、まだかな 』
冬になると見たくなる
あの雪と灯りがミックスささって出来る景色
今年もはやく見たいな 。
【 雪を待つ 】
✘ sn.
※BLです。ご注意を。お題ガン無視です。書きたいとこだけ。
(続き)
「お仕置き?!は?うそ、何で?!」
悟は慌てて拘束されてた腕を解こうともがくが、びくともしない。
その気になれば一瞬にして解ける事ぐらい自分でもわかっていたが、それをしてはいけないと本能が訴えていた。
俺が任務中に電話したから?1人で気持ちよくなってたから?
でもそんなキレるほどの事でもなくない?
ぐるぐると理由を考えてはみるものの、さっぱりわからない。
目の前にいる傑はそんな俺を冷めた目で見ている。
怖い。なに、この感じ。こんな傑知らない…。
「悟。」
「な…に。」
「考え事できる余裕があるんだ?1人で気持ちよくなって、私の気持ちを掻き回して。」
言い終わらぬうちに、傑のモノがぐりぐりと奥を攻めてきて、怖いのに気持ちよくて、もう訳がわからなくなっていた。
「うぁっ、やだ、そこ!やっだ、あぁうぁ、ぅ。」
「1人でイってさ、気持ち良かった?」
「はぁっ、も、無理、あぁっ。」
ぐいっと足を持ち上げられ傑の肩にかけられる。その体勢で一気に最奥を貫かれ、目の前に星が飛び、視界が霞む。
「ふぁっ…はぁっ、あん、あーーっ。そこ、だ、め、、!」
「喘いでばっかりいないで、ちゃんと考えな。」
「ぅ、あ、ごめん…ごめんなさぃ、あっぅぅ、ふぁっ。」
悟は涙目になりながら、必死に快感を逃がそうと腰を引くが、傑がそれを許してくれる訳がなかった。逃げようとすればする程、傑が奥に入ってきて頭がおかしくなりそうだった。
ぐっと悟の体にに体重をかけられ、息が苦しくなる。途端に傑は激しく腰を打ちつけてきて、悟は先ほどより薄くなった精液を自身の腹に吐き出した。出し入れされている場所が嫌でも目に入ってきて頭がおかしくなる。ぴん、と伸ばされた足は痙攣し、ガクガクと震えていた。
「ごめんなさ…いっ。もうむり…もうイっったぁっ、とまってぇっ、あぅ。」
「…。」
悟の懇願をガン無視して、傑は更に打ち付るスピードを上げる。
「ぅぅ、あ、ぁ。なんっでぇ、あっ。あっ、ふぅ。はっ。」
「私だって、今日はゆっくり悟と過ごしたくて。でも出来なくて、我慢してたのに、あんな電話してきてさ。酷いじゃないか。」
やばい。完全にキレてる。
「イきたかったんでしょ?イきなよ。」
イったばかりの身体に傑の雄が打ち付けられ、敏感になっている悟の中に更なる快感が上書きされていく。もうだめ。死ぬ。
一気に身体に電流が走り、イくのを止めることが出来ない。
「ゆるし…てぇっ、ごめ…んって…もう、やだぁっ、たす…けてっ。」
傑はニヤリと笑い、耳を喰みながら
「気持ち良いのを与えてるのは私なのに、やめると思う?」
そう言うと、悟の弱い所ばかり刺激してくる。
もう出ているものが性液なのか潮なのかわからないほど悟の腹に液体が溜まっていく。次第に意識が薄れていき、目の前が真っ白になった。
あ、やばい、落ちる。
与えられ過ぎた快感で意識を飛ばしかけたその時、乳首をギュウっとつねられて、悟の身体は弓なりに反り返った。落ちることも許されない。
「私まだイってないんだけど。」
繋がったまま身体を起こされ気付けばうつ伏せの状態になっていた。身動きの取れない体勢に痙攣が止まらない。
もう息も絶え絶えで上手く声を出すことも出来なくなっていた。狭くなった気道からカフ、ヒューと乾いた音が鳴る。
一段と早くなっていく抽送に身体全体がガクガクと痙攣し、打ち付ける度に悟の雄からは、びしゃびしゃと液体が飛び散っていた。
もう限界はとっくに超えていた。何度イったかわからない。
イき続けて戻ってくることが出来ない。
「悟っ。ハァっ、うっ…。」
傑が果てると同時に悟は急速に意識が薄れていった。
待つ……どころか降っている。しんしんと降り積もる雪に、明日は雪かきかな、と考えたくもないことを考える。
きっとこの雪が特別な雪になる人もいるのだろう。私からすれば毎年の厳しい冬の開幕を告げる白い悪魔だ。
雪が降る地域の人々は、どうか今年も、そして来年も転倒による怪我に気を付けてほしい。数年前にすっ転んで腰を痛めた、北の大地に住む私との約束だ。
私がまだ手を伸ばしても鉄棒に届かなかった頃、よく十数戸ほど離れた友人と遊んだ。車通りの多い国道が一本走る程度の都会だったが、幸い多少駆け回っても車に跳ねられた事はない。その日、大人では気にも留めないくらいの雪が降った。私は友人と窓を覗いては、積もればきっとお前が頭まですっぽり埋め尽くすほどの雪をかけてやるとはしゃいだ。しかしそれは私が帰るまでには到底叶わなかった訳で、終に友人の玄関を出る時には私はその事をすっかり忘れていたくらいだ。
やにわに陽を沈める冬の夕方、私は帰路に就く時にふと回り道をしようと閃いた。
もういいかい
まぁ…だだよ
もう…いいかい
まぁ…だだよ…
もう…いいかーい
まぁ、だだよー
かくれんぼしましょ
そう しましょ
もういいかい…
まぁ…だだよー
もう、いいかい?
まぁ、だだよ
あたり一面 まだ茶色
もう、いいーかーい
彼らの白さが まだないの
まーだだよー…
吹きすさぶ吹雪の音も聞こえない一面の銀世界。
ひとり佇む君の姿は袖のひとつも乱さずに、
ただ静かに君に見惚れた私を真っ直ぐに見た。
凍えそうな寒さも、凍てつきそうな冷たさも、
異常なほどの肌の白さに、輝きさえ見せる白髪に、
幻とも思える君は冬を誘(いざな)う女将軍だった。
私は毎年冬を待つ。雪を待つ。
―――…そして、君を待つ。
ただ一度の邂逅で私を魅せた君を求めるように。
身体が凍り、体温が下がり、感覚がなくなり、
目の前が霞み、指先ひとつ動かぬ身になろうとも、
再び君に会えるのならば極寒の地さえ楽園だろう。
【雪を待つ】