『雪を待つ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
雪が降って、寒くなれば、貴方と手を繋ぐ口実になるでしょう。
だから。だから、はやく、降らないかしら。雪。
『次は、いつ逢えますか。』
『そうだな。雪が降る頃に又来るよ。』
「あなた。」
「雪の降る頃、約束通り迎えに来たよ。私の花嫁さん。」
「お待ちしておりました。」
「長い事、待たせてしまった…本当にすまない。」
「いいえ、構いません。あなたのお側に居れるなら、何年でも待ちます。」
「ありがとう。いつも、君の優しさに救われる。」
「これからも、末永く宜しくお願いします。」
「こちらこそ、これからも末永く宜しくお願いします。」
僕は、ぼんやり頬杖をつきながら、窓を眺めた。
ガラスを介してみる空はどんより重く、今にも落ちてきてしまいそうだ。しかし、雨は降っていない。
遠くでは厚着をした親と、その前を駆け抜ける比較的薄着の子供の姿があった。近くでは窓に結露している雫が見えた。部屋の空気は暖かいにも関わらず、指先は死体のように冷たい。試しに窓を開けて、息を柔らかく吐いてみた。暖かい息は白く可視化された。そのまま消えていった。そんな日だった。
元々こっちは雪の降る地方では無い。今流行りの異常気象によって、10年前から降るようになった。
僕は毎年、初雪を確認している。幼い頃に見れなかったからでも、雪が好きな訳でもない。
ただ、1人の女の子を思い出すために。
彼女の名は雪と言った。当時は17歳と言ったところか、まだ若いにもかかわらず病院で毎日を過ごしいた。雪のような女の子だった。肌はやけに白く、体も細かった。触れたら直ぐに消えてしまいそうで、儚さとも違う脆さがそこにはあった。
彼女と幼馴染という訳でもない。長年の付き合いという訳でもない。恋をしていた訳でもない。友人だった訳でもない。その日、初めて出会った。そしてそれ以来会うことは無かった。
目的は、クラスの配布物を渡すだけだった。雪はそれを貰うと静かに微笑み、僕にこう語りかけた。
「雪って、見た事ある?」
僕は静かに首を振った。
「否、ない。僕は生まれも育ちもここだからね。存在や形形状は写真で見たことがあるからわかるのだけれど、それがどのくらいの速さなのか、大きさなのか、冷たさなのか。まったく分からないんだ」
彼女はまた薄く笑った。
「そう、だよね。私も、雪って名前なのに雪を見た事がないんだ。でもね、今日は雪が降るかもしれないんだって」
彼女は4人部屋に居たが、彼女以外に人はいなかった。おかげで彼女は窓際のベットから外を眺められる。彼女はずっと窓の外を見ていた。
「せめて、死ぬ前には見てみたいな」
けれど、結局その願いは叶わなかった。その日に雪が降ることは無かったのだ。そして、数日後に雪は亡くなってしまった。
もうあれから10年が経つ。僕はまだ、雪を見る。
なんだか忘れてはいけないような気がするから。
窓のそば
温かい飲み物をはさむ
両手のひらが
ほんわかする
冷えてきたなぁ
ちらちら
白いものが
冷たい空を
舞い始めた
いよいよ始まったんだ
聖夜の予行練習
サンタの乗るソリが
素早く子供達の家を
移動できるように
事前に雪を降らして
トナカイさん達が
ソリをひく練習
寒い中
ありがとう
練習終わったら
イブまで
ゆっくり休んでね!
交通機関が乱れようが
恐ろしいほど寒かろうが
残念ながら関係ない。
一年でこの季節しか見れない
そんな景色を待たずにはいられない。
色も音もなくなる感覚。
心身と降り積もる姿は
雨より雹より美しく。
今はそれがもたらす
マイナスのことなんて考えられない
この季節だけの特権と美しさを
ただ待つのみ。
–雪を待つ–
生まれてからはじめての冬、わたしは風邪をこじらせて緊急手術を受けていた。その冬はとても寒く、滅多に雪の積もらない地元も夜には真っ白になっていて、母と私の帰りを家で待っていた父と兄は2人で雪だるまを作ったらしい。父母雪だるまと、兄雪だるまと、小さいわたしの雪だるま。朝になるとよっつの雪だるまはすっかり溶けていて、それを見た兄は「○○(わたしの名前)が消えちゃう」と一日中泣いていたそうだ。兄は当時5歳だったけれど、生まれたばかりの妹がもしかしたら...と不安だったのかもしれない。そのあと、兄はわたしが12歳の時に灰になって、わたしはメンタルクリニックに通いながら今もなんとか一人暮らしをしながら生きている。無口だった兄との思い出は数えるほどしかなくて、それでもわたしを思って一日中泣いてくれるような人がかつていたことは多分死ぬまで雪が降るたび思い出して、忘れられないんだろう。
みな雪の踏む夜に砕けたいはずで砥石が地金をまくる音
どこよりも、
早く
冬が来るこの街は、
初雪も
一番乗りである。
秋から、
冬に変わるこの季節は、
家族の絆を
感じることが多い。
子供が育ち、
巣立って行った
家に残された、
彼女は
毎年
この雪の季節が
待ち遠しい。
バラバラに
なった
家族達が
集まる場所。
雪が一面に
白く景色を塗り替える。
今年も、
皆んなが
大好きな
ご飯を作る。
雪国も大変だけど、
雪をまつ
人によっては
この季節は
楽しみでもある。
私、雪が好きなんだけど、待っていたらいつか降ってくれたりするんだろうか。
研究室で実験を出来るのも残り1ヶ月半だけど、なかなか思い通りの結果にならない。進んで欲しい反応が進まなくて進んで欲しくない反応が進んでしまう。もう1年近くこの有機合成に取り組んでいるのにまだ完成しないのなら、あと1ヶ月半で成功させるなんて無理なんじゃないかと頭をよぎる。
そして今日もそんな状況に焦りながら、1人黙々と実験をしていた。そして、NMRスペクトルの結果を眺めながら頭をフル回転させて失敗した原因と上手くいく方法を考えた。もう無駄な実験をしている時間は無い。過去の先輩のデータなんかも確認して1番上手く行きそうな反応条件を考えた。そして、同期が持っている過去の先輩の実験データも見せてもらうことにした。
同期の彼は先輩の実験ノートを探して持ってきてくれた。それから、これからの実験について一緒に考えてくれた。そして目的物の合成について4時間も議論した。
この4時間で、私はもしかしたら今度こそ上手くいくかもしれないと、また思えた。あと1ヶ月半あれば合成出来るかもしれないって、心の底から信じることが出来た。研究者にとって、可能性を信じることは1番大切なことだと思っている。だって、可能性を信じることが出来ないと研究への熱量なんて生まれないでしょう?きっと上手くいくと、そう信じられるから何度失敗したってまた次の実験に進めるのだ。彼はそんなことを思い出させてくれた。そして久しぶりに、実験とか反応について考えることが楽しいと感じた。
私は運がいいし人に恵まれているとつくづく思う。助けて欲しいと言ったときに助けてくれる同期がいる。やりたい実験があると言ったら試薬を買ってくれる先生がいる。目的物のピークだと思っていたものが不純物のピークだと分かって心が折れてもう無理かもしれないと諦めそうになったとき、「これが何のピークか分かって嬉しいっす!」と目を輝かせて私を見る後輩がいる。そんな周りの人達のおかげで私はまだ頑張ろうと思えるのだ。恩返しなんて簡単には出来ないけれど、修論発表の日までできる限りの実験をすることが唯一私に出来ることのような気がする。
雪を待つよ、どきどきどき
雪が降るよ、しんしんしん
心が鳴くよ、わくわくわく
窓を開けるよ、がらがらがら
真っ白な息は、ふわふわふわ
目が輝くよ、きらきらきら
雪を待つ
いつになったら
君は現れてくれるのかな
あの日、あの場所で交わした約束
左手の小指、重ねた指
君がいなくなってから
僕の心の時計は止まったまま
ずっと12時を指している
周りはあっという間に時が進んで季節も巡り
もう、あの冬から3年経った
想いも、冬の寒さもどんどん強くなって
僕だけがあの冬に取り残されて
「…もう、会えないのかな」
そう、冬の白い息と共に彷徨った言葉は
すっと、消えてしまった。
あれから毎日通っているこの場所
今年も、会えないまま過ぎてゆく
約束の12時を回るころ
冷たい風に吹かれて、
この場所を去る。
「……雪、降ってたんだ。」
気付けば、肩に落ちた雪が溶けていて。
また、今日も会えなかったな。
雪を待つあなたに見せたかった。
いや、一緒に見ていたかった。
そんな想いは
暗闇に溶けて無くなった。
ちょっと複雑で良く分からないかもですが、、
「あなた」は、もう死んでしまってこの世にはいないのに、それを受け入れられず、ずっと待っている、僕を書きました。雪が見たいと言って消えた「あなた」を、
僕はずっと待っているのかもしれません。でもきっと、そばにずっといるはずです。
読んでみてくださいね。
「今年は雪、まだなんだね」
白い息を吐きながら幼なじみが言う。
僕は目を丸くして、どうしたの、と返した。
「雪なんて冷たいだけだから嫌いだって、去年言ってたじゃん」
「去年はね。今年は、雪でやりたいことがあるの」
「雪で?」
なんだろう。雪合戦? 雪だるま作り? 小学生じゃあるまいし。
いくら候補を思い浮かべてもピンとこなくて、僕は幼なじみの袖を引いた。
「やりたいことって何?」
足を止めた幼なじみは、引っ張られた袖と僕の顔を交互に見る。そして、
「なんだと思う?」
と、質問に質問で返されてしまった。
「分からない」
間髪入れずに答えると、幼なじみは仕方ないなぁと笑う。
「ヒントはねー、私の家の庭でやるってこと」
「庭で? かまくらでも作る?」
「違う。私の家の隣の家に、メッセージを送りたいの」
隣の家。
隣の家というと、僕の家になる。僕の家に? メッセージ? 雪に字を書いて、ってこと?
「そんなの、普通にスマホで送ればいいのに」
「特別なメッセージだからダメ」
「特別? ねえ、せめて文字数だけ教えてよ」
僕の手をやんわり外し、先を行こうとする幼なじみに言う。幼なじみは振り向かずにぽつりと呟いた。
「二文字」
寒さのせいか、幼なじみの耳は赤くなっていた。
「雪を待つ」
青よ争え白に覆われ
どうか何も聴こえないほどに
「雪を待つ」
寒空の下
君と待ち合わせ
今日はXmas
天気は曇りのち雪
どうやら
サンタさんは僕のSNSを
チェックしてくれたみたいだ
1度でいいから
ホワイトクリスマス過ごしてみたい!!
と言った君...
僕が君のホワイトクリスマス
第1号になるんだ!!
ポケットの中には
プレゼントのリング...
あとはオシャレした君と
サンタさんから届く雪を待つだけ...
今までの努力が無下に終わったとき、雪を感じるのだ。
人には誰しも得意不得意がある。
あなたが得意なことが出来ない人だっている。
だから自分ができるから相手もできる。
そう思わずに相手のペースもみよう
北国に住む人の冬は厳しい
日々天気予報とにらめっこ
大雪なら除雪機を稼働して
屋根の落雪にも厳重注意を
時にホワイトアウトに遭遇
大人の皆様はお疲れ様です
それでもね雪が降った後は
空がとっても美しいのです
澄み切った水色と雪の色が
キラキラと輝いてるのです
積もったばかりの雪の中に
ダイビングしたいでしょ?
雪のベッドで空を見るのも
気持ちがいいものなんです
『雪を待つ』
雪を待つ
雪が積もったら、何をしようかな
雪だるま作り、雪合戦、それとも雪の中を思いっきり
駆け回る!
ああ、どれも楽しみだな、早く雪が降らないかな…
真っ白い国に迷い込んだみたいなワクワク感が好きで、
幼い頃の私は雪が積もるのを心待ちにしていた
今はこのくらいの季節になると、心が弾んだことを
しんみりと思い出す
わたしはずっと雪の日が嫌いだった。
雪の日、街を歩くとあちこちの家から暖炉の火のあたたかな匂いがする。それと同時に夕飯のおいしそうな匂いも。それぞれの家庭の匂い。家族のいなかったわたしは道を歩くたびにそれを思い知らされる。わたしの知らない、家族の温かさ。雪の日は、それが特に感じられて嫌いだった。
けれども今は、雪を待つようになった。雪の日の温かさを知ったから。雪のちらつく寒い帰り道、その先に、家を温めて待っていてくれる温かい家族ができたから。
『雪を待つ』
"雪を待つ"
「ご馳走様でした。……さて」
居室で昼食を摂り終え、残りの昼休憩を午後の準備にあてようと椅子から立ち上がる。
椅子から離れて立ったのと同時に、ハナが皿から離れ軽快に窓のヘリに飛び乗って窓の外を見上げる。
「どうした?」
疑問の声をかけるが、こちらを振り向くどころか返事すら無い。ただ黙ってじっと窓の外を見上げている。
──一体どうしたんだ……?
窓に近付いて、見上げるハナの横顔を見る。
──まるで何かを待っているような目だ。
ハナの見上げる目に、そんな感想を抱いた。
──ならこいつは、何かを待ってるのか?一体何を……。
深く深く思考を巡らせていると、ハナの髭が微かに動いた。
「みゃあん」
そう思ったのと同時に、『待ってました』と言わんばかりの鳴き声を上げ、空を見上げる。
白い綿のようなものが、ふわふわと舞いながら落ちてきた。
「……これを待ってたのか」
ハナが待っていたものは、雪だった。けれど一体なぜ?
「あぁ……。こないだ雪降ったのを見たからか」
あの時、居室にいたハナも舞い散る雪を見ていたらしい。その時に雪に魅入られたのだろう。
──だからもう一度見たくて、窓に近付いたのか。
そして、改めて窓の外を見上げる。
舞いながら落ちてくる様が綺麗で、再びスノードームの中にいるような感覚になり、空に引き込まれるように舞い散る様を見上げる。
「……っと、駄目だ駄目だ。早く戻らねぇと……」
頭を振り、何かに弾かれたように身を翻して扉へと向かう。そして振り返り
「そんじゃ、また行ってくる。大人しく待ってろよ」
窓辺に座るハナに言葉をかける。
「みゃあ」
俺の顔を見ながら、返事の一声を上げる。その鳴き声を聞き扉を閉めて診察室に向かい、定位置に着いた。