私、雪が好きなんだけど、待っていたらいつか降ってくれたりするんだろうか。
研究室で実験を出来るのも残り1ヶ月半だけど、なかなか思い通りの結果にならない。進んで欲しい反応が進まなくて進んで欲しくない反応が進んでしまう。もう1年近くこの有機合成に取り組んでいるのにまだ完成しないのなら、あと1ヶ月半で成功させるなんて無理なんじゃないかと頭をよぎる。
そして今日もそんな状況に焦りながら、1人黙々と実験をしていた。そして、NMRスペクトルの結果を眺めながら頭をフル回転させて失敗した原因と上手くいく方法を考えた。もう無駄な実験をしている時間は無い。過去の先輩のデータなんかも確認して1番上手く行きそうな反応条件を考えた。そして、同期が持っている過去の先輩の実験データも見せてもらうことにした。
同期の彼は先輩の実験ノートを探して持ってきてくれた。それから、これからの実験について一緒に考えてくれた。そして目的物の合成について4時間も議論した。
この4時間で、私はもしかしたら今度こそ上手くいくかもしれないと、また思えた。あと1ヶ月半あれば合成出来るかもしれないって、心の底から信じることが出来た。研究者にとって、可能性を信じることは1番大切なことだと思っている。だって、可能性を信じることが出来ないと研究への熱量なんて生まれないでしょう?きっと上手くいくと、そう信じられるから何度失敗したってまた次の実験に進めるのだ。彼はそんなことを思い出させてくれた。そして久しぶりに、実験とか反応について考えることが楽しいと感じた。
私は運がいいし人に恵まれているとつくづく思う。助けて欲しいと言ったときに助けてくれる同期がいる。やりたい実験があると言ったら試薬を買ってくれる先生がいる。目的物のピークだと思っていたものが不純物のピークだと分かって心が折れてもう無理かもしれないと諦めそうになったとき、「これが何のピークか分かって嬉しいっす!」と目を輝かせて私を見る後輩がいる。そんな周りの人達のおかげで私はまだ頑張ろうと思えるのだ。恩返しなんて簡単には出来ないけれど、修論発表の日までできる限りの実験をすることが唯一私に出来ることのような気がする。
12/15/2023, 2:35:44 PM