わたしはずっと雪の日が嫌いだった。
雪の日、街を歩くとあちこちの家から暖炉の火のあたたかな匂いがする。それと同時に夕飯のおいしそうな匂いも。それぞれの家庭の匂い。家族のいなかったわたしは道を歩くたびにそれを思い知らされる。わたしの知らない、家族の温かさ。雪の日は、それが特に感じられて嫌いだった。
けれども今は、雪を待つようになった。雪の日の温かさを知ったから。雪のちらつく寒い帰り道、その先に、家を温めて待っていてくれる温かい家族ができたから。
『雪を待つ』
12/15/2023, 2:14:07 PM