「今年は雪、まだなんだね」
白い息を吐きながら幼なじみが言う。
僕は目を丸くして、どうしたの、と返した。
「雪なんて冷たいだけだから嫌いだって、去年言ってたじゃん」
「去年はね。今年は、雪でやりたいことがあるの」
「雪で?」
なんだろう。雪合戦? 雪だるま作り? 小学生じゃあるまいし。
いくら候補を思い浮かべてもピンとこなくて、僕は幼なじみの袖を引いた。
「やりたいことって何?」
足を止めた幼なじみは、引っ張られた袖と僕の顔を交互に見る。そして、
「なんだと思う?」
と、質問に質問で返されてしまった。
「分からない」
間髪入れずに答えると、幼なじみは仕方ないなぁと笑う。
「ヒントはねー、私の家の庭でやるってこと」
「庭で? かまくらでも作る?」
「違う。私の家の隣の家に、メッセージを送りたいの」
隣の家。
隣の家というと、僕の家になる。僕の家に? メッセージ? 雪に字を書いて、ってこと?
「そんなの、普通にスマホで送ればいいのに」
「特別なメッセージだからダメ」
「特別? ねえ、せめて文字数だけ教えてよ」
僕の手をやんわり外し、先を行こうとする幼なじみに言う。幼なじみは振り向かずにぽつりと呟いた。
「二文字」
寒さのせいか、幼なじみの耳は赤くなっていた。
12/15/2023, 2:33:32 PM