『開けないLINE』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
・開けないLINE
2桁の数字がアイコンの横に並んでいる。
己の怠惰が原因なのは分かっているが、それでもたった1回のタップさえ後回しにしてしまう。
いっそ通知を消した方が早いのは分かっているが、なけなしの良心がそれを止めている。
……まぁ、それが余計にアプリを開く気力を奪っているのは確かだけど。
そうこうしているうちに通知の数字がまた1つ増えてしまった。
早く見た方がいいのは百も承知なんだけどなぁ。
「……急ぎのようなら通話で来るか」
今日も言い訳を呟くと、いつものようにYoutubeを開いた。
開けないLINE
深夜にすごい量のLINEがきてたら、大体クラスの陽キャな男子たちが、クラスLINEで駄弁ってる時。
昨日は、明日から学校が始まるにもかかわらず、深夜12時に宿題の進捗状況を報告し合って、挙げ句の果てにはグループ通話してた。いやー怖い怖い。
ミスって入っちゃったりしたら怖いから、絶対開けないようにしよ。
「開けないLINE」
私には、開けないLINEがある。
それは、付き合いのない人やいらない情報。
人の時は、なかなか消せないから困る。どうしよう。
情報はいらなかったり、不必要なら消してしまう。
LINEを貯まると、忘れてしまう。気をつけないと。
LINE友だちもそこそこに
23:53 もうすぐで明日になる。
スマホとにらめっこをしてもう30分。
ずっと待っている。
LINEの音が聞こえた。
通知をオンにしているのはあの人だけ。
きた。返事がきた。
もし、望む言葉が返ってこなかったらここで1人の友達とお別れすることになる。
不安と緊張と、大きな期待が混ざっている。
こんな緊張するんだ。
初めての感情に揺さぶられながら抱きまくらをぎゅっと抱えて画面に触れた。
そこには「◯◯◯◯◯」の五文字が書かれていた。
開けないLINEは、見る必要がないから。
読む価値がないから。
時間がないから。
壁を作りたいから。
馴れ馴れしくされるのはイヤだから。
でも、相手はというとお構いなしにメッセージを送るから、赤い風船が膨らむように数字が増えていき増えていき……確認の指先は画面に触れたくないと駄々をこね、心の殻のなかに引きこもる。
通知はもう切った。
けれど起動するたびに目に入る余計な情報。
相手は本当におせっかいである。
余計なお世話。
その短いセンテンスが言いたいけど、数字の膨らむ終わりなきカウントアップにおびえてしまって、送れずにいる。
画面を支配するように。
送られてくるメッセージの、強調された数字分の言い訳を用意しては無視の雪が心に降り積もっている。
凍え死ぬかもしれない。
拡大解釈妥当。
そして、一ヶ月二ヶ月と放置した夜。
仕事のしわ寄せがあって、誰かのための時間外対応をするバイトのやるせない気持ちで、素早い既読無視をする。
これが最善だ。
身体を丸くさせて、引きこもりの夜はそう殻に閉じ込もるのだ。
「開けないLINE」
彼氏とこん感じになっちゃってもう3ヶ月。
今は夜の10時頃。
ホーム画面には貴女からきた3件のLINE。
1番上には「ごめん」。
もう聞き飽きたよ。君からの「ごめん」は。
1件目の内容なんて分かったようなもの。
そんなLINE開けれないよ
開けないLINE
開けないLINEは、広告かな。
後、気がついても直ぐには開けないで、時間がたってから開けることがあるかな。
LINEて、話し出すと止まらないから時間がある時に反応しないとね。
仕事中や、人に会っているときなんかはね。
「『あけない』、『ひらけない』。
その後のアルファベット4文字はまぁ、ドチャクソ捻くれて読むなら、某アプリの名称以外だと回線・接続・釣り糸・方針・口癖等々の英単語よな」
今回配信分の題目をチラリ見て、某所在住物書きは相変わらず、ガリガリ頭をかいた。
開けない。 圏外か、意図的か、その他か。
「Line」に多々和訳が存在する。英単語1個を全部大文字表記するのは、一種の強調表現でもある。
よって「開けないLINE」を「ひらけない『その』接続」や「あけない『特定の』回線」と曲解することも、まぁまぁ、可能といえば可能と考えた。
問題はそれで実際物語が書けるかどうか。
「うん。俺にはムズいわな」
そもそもアプリを入れてないので「開けない」。いっそこれで書いてやろうか。物書きはまた頭をかく。
――――――
最近最近の都内某所、某職場の一室、早朝。
藤森という雪国出身者が、部屋の主より先に来て、掃除をしたり消耗品を補充したり、湯を沸かしたりアイスブロックの量を確認したり。
要するに、室内整備と清掃を、ひとりで。
観葉植物は調子が悪いのか、それとも秋を先取りしてか、一部だけ葉が黄色く褪せている。
それらを摘んで水やりのタイミングを見極めるのも、藤森の担当である。
ところで昨日補充したばかりの個包装菓子が、ガラスの器から随分消失している。
部屋の主の仕業である。彼は名前を緒天戸という。
給料が給料なので「良いモノ」を食っている筈なのに、彼はともかくチープな甘味と塩味を好む。
ゆえに藤森の基準で購入補充された「普通のモノ」、来客用である筈の菓子が大量に消える。
それはいつものハナシであった。
「おい藤森!」
「はい。おはようございます」
始業時刻30分前、緒天戸が出勤。
不機嫌そうな理由は、藤森がよく理解している。
今年の3月から諸事情により「ここ」に配属になって、はや半年。藤森は己の上司の性質をだいたい、6割程度、把握し始めていた。
「『はいおはようございます』じゃねぇ!
なんでお前、俺のグルチャ無視しやがった」
「『昨日の「ペットも食べられる自然の甘さの和菓子」と「自然のしょっぱさの和スナック」が美味かったから補充してくれ』、ですか?」
「それよ。例のあの、和菓子屋ポンポコ堂のやつ。あそこの見習い坊主の見習い新作」
「お忘れですか。時間外のメッセージでしたよ」
「あ。わり。すまね」
「時間外だったため、グループチャットアプリは開けていませんし、既読も付けていません。
ご要望の和菓子とスナックは購入してあります」
「さすが藤森信じてた」
はぁ。 藤森が静かで長いため息を吐く。
開けないグループチャット、聞かない時間外命令。
それらは公私双方に仕事が割り込みやすい緒天戸との「付き合い」において、不可欠な対応である。
他店他業界との会合を終業時刻の後にこなし、その延長線上でついつい、緒天戸はそのまま藤森に、業務上の指示を出すのだ。
『お前が買ってきたアレ美味かった補充してくれ』
『今日来た客がお前の淹れた茶っ葉の購入先と値段を聞きたいってよ。よこせ』
開けないグループチャット、聞かない時間外命令。
断じて即時返信が面倒だからではない。
業務時間外だからである――他意はない、ナイ。
「……私は一体いつからこのひとの女房だの専属秘書だのになったんだろう」
「なんか言ったか藤森」
「総務課から書類が届いています。9時頃回収に来るとのことなので、優先決裁お願いします」
開けない、あけない。
再度息を吐く藤森は、上司の緒天戸にひとまず礼をして、掃除用具を片付けるために部屋を出る。
数年前からSNS界隈において、「繋がらない権利」というものが叫ばれているそうである。
ウチの「あの上司」にそれを進言したら、どんな駄々っ子が返ってくるだろう。
(間違いなくあのひとの菓子事情は崩壊するな)
三度目のため息を吐いて、藤森は開けていなかったグループチャットのメッセージに既読をつけた。
開けないLINE(カレー日和)
「誰から?」
人通りの多い、洒落た通りを二人で並んで歩く。
テイクアウトした流行りのジュースに映え狙いかと気持ち落胆しつつ、わたしは彼との久し振りのデートを楽しんでいた。
「………んー?」
隣の彼はちらりとスマホを見るなり画面を閉じてさっさとそれを仕舞い込む。
………?
不自然な態度。
訝しんでいると、仕舞ったそこから着信音が立て続けに鳴り響く。
「見ないの?」
「ただのどうでもいい通知だから」
「………。ずっと鳴ってるけど?」
くぐもった音が、開けとばかりに急かしているよう。
それでも頑なに見ようとしない彼に、嫌でもわたしの中の女の勘が動き出す。
指摘しても目が泳ぐ。挙動不審。
これはやはり、
「浮気!?」
「はあ!?」
純粋な驚きからの素っ頓狂な声色に、わたしは周りの目を気にしながら低く問いかける。
「だったら何で見ないの。何度も鳴ってるじゃない」
「これは、その………だから」
しどろもどろに言い訳を募ろうとするが言葉が出てこない。
業を煮やしたわたしは、仕舞い込んだそこから彼のスマホを奪い取った。
「あ! おまっ、何す………!」
「見せて?」
彼の手にスマホを乗せ、LINEを開くよう要求する。
さすがに奪ってそのまま探るような無配慮で無神経な女ではない。
「………」
わたしの圧に負けたのか、このままでは嫌疑が晴れないと踏んだのか。
彼は溜息と共に渋々スマホのLINEの画面を開いた。
『帰りに玉ねぎ買ってきて』
『あ、あとじゃがいもも!』
『あ、あと人参も!』
『しまった! カレールーも!』
「………。お姉さんからのライン?」
『わかった?』
『ねー既読つかないけど!?』
『デートに夢中で忘れたら許さないからね!』
延々、延々と。
終いには、『あんたがデートなんて百年早いわ!』なんて文言まで飛び出して思わず吹き出してしまう。
「だから嫌だったんだよ、笑われると思って」
つん、と顔を背けた彼が何とも可愛く、愛おしい。
………彼の家は父子家庭で、家事はお姉さんが一手に引き受けているのだと前に話していたのをどことなく覚えている。
彼とのデートも、いつも嫌な顔ひとつせず送り出してくれているとか………。
「カレーの材料ね。あとお姉さんに、美味しいスイーツでも買っていってあげようよ」
わたしの面目の為じゃない。優しいお姉さんに、ささやかな感謝の気持ち。
―――顔を背けていた彼は、おう、と照れ隠しにわたしの髪をくしゃりと掻き乱した。
「既読付けて、返信したらお昼食べに行こう」
流行りのジュースでイマイチになった舌を、美味しいご飯で慰めたい。
―――わたしはどこにしようかと考えながら、彼の手を引いて再び歩き始めた。
END.
タイトル: 「開けないLINE」
その日は、夏の終わりの蒸し暑い夜だった。遥香はいつものようにベッドに横になり、スマートフォンを手に取ってLINEを確認した。友人たちからのメッセージやスタンプが画面に表示される中、彼女はふと、見慣れない通知に気づいた。
「未読のメッセージがあります」
そのメッセージは、彼女がLINEを始めて以来一度も見たことのない奇妙な形式だった。通知をタップすると、見知らぬIDからのメッセージが一つだけ届いていた。誰からだろう? そのIDには名前がなく、ただ無機質な数字とアルファベットの組み合わせが表示されているだけだった。
「開けないで」
それだけが書かれていた。
「いたずらかしら?」遥香はそう思いながらも、不気味な予感が胸をよぎった。彼女はメッセージを無視することにしたが、スマホを置いても、どうしてもその通知が頭から離れない。
時間が経つにつれて、彼女のスマホはますます熱を帯び始め、何かが焦げるような臭いが漂ってきた。焦ってスマホを確認すると、再び同じメッセージが届いていた。
「開けないで」
そのメッセージを読むたびに、彼女の心臓は強く鼓動した。なぜか、まるで何か悪いことが起こるのを予感しているような感覚に襲われた。だけど、好奇心が勝ち、彼女はメッセージを開くことに決めた。
指が震えながらも、メッセージをタップすると、次の瞬間、スマホの画面が真っ暗になった。慌てて再起動しようと試みたが、画面は一向に戻らない。
その時、不意にスマホから、まるで誰かが遠くから彼女を呼ぶような低い声が聞こえてきた。「開けないでと言ったのに…」
突然、部屋の電気が消え、遥香は暗闇の中に取り残された。彼女の目は、真っ暗な部屋の隅に立つ黒い影を捉えた。影はゆっくりとこちらに向かって歩き出し、その姿が徐々に明らかになった。黒いローブを纏った人物が、まるで幽霊のように、彼女のスマホをじっと見つめていた。
その人物の顔が見えた瞬間、遥香は凍りついた。それは、数年前に亡くなったはずの彼女の幼なじみだった。「なぜ…?」遥香は声を震わせながら尋ねた。
「開けてしまったんだね…私の最後のメッセージを…」幼なじみの声が、不気味に響いた。「あなたに伝えたかった。開けるべきではなかったと…」
その瞬間、影はふっと消え、部屋の電気が戻った。遥香は息を呑み、スマホを確認すると、メッセージは消えていた。しかし、彼女の心には、永遠に消えることのない恐怖が刻まれていた。
あの日以来、彼女はスマホを手に取るたびに、もう一度同じメッセージが届くのではないかという不安に駆られるようになった。誰にも話すことができない、恐ろしい秘密を抱えたまま…。
開けないLINE
"大事な話があるの。"
LINEのトーク一覧の1番上。
固定されたトークにはそう書かれていた。
ついさっきまで楽しくお話していたはず。
急に温度差の激しいメッセージが来たと感じる。
大事な話があると言ってロクなことが無かった僕からすれば
ほぼ呪いの呪文のようなものだ。
スマホを持つ手は震えるし目の焦点は若干合わなくなる。
呼吸も浅くなる。
仲良くお話していた君とも今日でお別れなのかもしれない。
それならいっそこのままで...
は未読無視してしまうのは明日学校で会うと気まずい。
深呼吸をしてため息のように息をはく。
よし。もうなるようになれ。
勇気を振り絞って開けなかったトークを押して
"どうしたの?"と返した。
返ってきたLINEに僕は驚愕するのはあと数分後の話...
語り部シルヴァ
うそ待って彼とのLINEが残ってないんだけど
LINEのアカウントちゃんと引き継げたのに
おかしいじゃんこんなの!!
なんで? 何でないの?
えー、もー、ちょっとマジで泣きそう
……え
ええ?
LINEの"トーク履歴"の引き継ぎ方法……?
『開けないLINE』
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今は楽になりましたね!
『開けないLINE』
スマートフォンのホーム画面に今年もメッセージが来たと通知が入る。
「いつまでも面倒なやつだ……」
俺が通知を見て舌打ちをしたのをキッチンに立つ妻や絵本を読むこどもは気づかない。壁に掛かるカレンダーを見ると今日の日付は去年も一昨年もその前の年にもメッセージが届いた日付と同じだった。
差出人は前の妻。正確に言うならば、3年ほど前に別れてほしいと切り出したときに刃物を持ち出され、揉めた末に殺してしまった面倒な女。
あの女の持ち物は箱に詰めて床下のあの女とともにある。誰かがあの女を騙っているのかもしれないが、わざわざ日付を指定してメッセージを送ってくる奴は一人しか思い当たらない。当然、開いてやり取りする気には到底なれない。
「絶対に別れない」
あの女が包丁を手にしていたときの目を思い出しかけてあわてて強く目を瞑り、頭から振り払う。
こどもがその様子に気づいて心配そうに声を掛けてくれ、妻も気遣わしげな視線を送ってくれる。ふたりとも、床下に人がいることなど露ほども思ってはいないだろう。
「なんでもないよ」
かといって教えてやる気も露ほどもない。スマートフォンの通知をスライドして流し、また1年を憂鬱に過ごすことにした。
「今でも君のことが好きだよ」
「ずっと後悔してる」
「一生愛してるよ、君以外愛せない」
あなたから毎日送られてくるLINE。
「私もです」
この一言を返したいのにもうあなたには届かない。
もうちょっと、生きていたかったなぁ。
息子が小学生のころ
子供会ソフトボール部にいた時の
ママ友グループLINE
もうすっかりみんな高校球児になり
それぞれに野球を頑張っている様子
背番号何番だったとか 何回戦までいけたとか
一つ深呼吸してからでないと”開けないLINE”
何かわからない心の準備をしてから
とりあえず一言でもコメントをいれる
別に、野球をして欲しかったわけではない
ただ、元気に過ごして欲しかった
それだけのはずだったけどね
みんなの活躍を微笑ましく嬉しいのと同時に
何かに胸を締め付けられる
お題『開けないLINE』
知らないアカウントから突然「やっほー、久しぶり」と通知が来た。
私はそれを横にスワイプしたあと、LINEの画面を開いてそのアカウントを長押しして、ブロックしようとした。が、なにも表示されない。
戸惑っている間に通知が矢継ぎ早に来る。
「元気だった? 私は元気」
「っていうか、今どこ住んでんの?」
「おーい、返事してよー」
「まだー? まだかなー?」
と。あまりにうざすぎるし、どこから漏れたのか怖すぎて私は何度もアカウントを長押しするのを繰り返した。だけど、いっこうになにも表示されない。
「あっ」
間違えてそのアカウントをタップしてしまった。まずい、既読がついてしまう。だが、そのアカウントはなぜか開けない。
「なに、なんなの……」
スマホを握る手が震える。その間も通知はやまない。
「返事しないなら今からそっち行くよー」
「今、家出たよ」
「●●駅に着いたよ」
「もうすぐあなたの家に着きそう」
開けないLINEに本当に来る気がして、怖くて私はついにLINE自体をアンインストールしようと試みる。だが、LINEを長押ししてもなにもでてこない。
そうしているうちに。
「いま、あなたの家の前まできちゃった」
そう言って、呼び鈴を何度も鳴らす音が聞こえてきた。あまりに怖すぎて、誰が来たか確認することができない。私はふとんをかぶりながら、なんとかその場を乗り切ろうとした。
#42 開けないLINE
[既読無視]
返答に困る、LINE。
開けない。
返し方のわからないLINEは、
既読無視せざるを得ない。
こういうときは、
直接会った方が謎が解ける。
LINE上で誤解されて事が大きくなるより良い。
忙しい時に来る、LINE。
とりあえず既読つけられそうな時までスルー。
下手に返せないから難しい。
その内に電話もかかってくる。
忙しいから、電話もやむおえずスルー。
とにかく忙しい時ほど
同時にかかってくるから手に負えない。
電話に出たくてもできない。
どうしようもないから、
優先度を考えて動くしかなくて。
後で謝ればどうにかなるだろうか?
心配しながら、一旦無視する。
XXXX年X月2日
工業地帯では特に化物との遭遇もなく、目的地である商業区へ到着できた。途中で橋を渡ったが、先日感じた強烈な潮の香りはすっかりと消え失せ元通りの静かな河に戻っていた。
当時の商業の中心地には大小様々な店が立ち並んでいた。そのうちのいくつかは私でも聞いたことのある有名なブランドのものだ。多くの人間が出入りしていたであろう店は外も内もすっかりと寂れてしまっており物悲しさを感じさせた。
半ばほどまで進んだところ、後輩が細い横道の向こうに人影を見たと言い出した。
化物の可能性が高い。襲われる危険はあるが、一度は姿を確認しておくべきだろう。警戒しながら細い路地を進むこととした。
左右に枝分かれする突き当りまで進んだものの人影を見つけることはできなかった。しかし、左手の分かれ道の途中に見覚えのある物が落ちているのを発見できた。
端末だ。機種は調査団の使用していたものと一致する。
調査団の誰かが、ここで端末を落としていったのだろうか。
案の定電源は入らなかったが外部に破損の形式は見られないため、バッテリーが切れているだけようだ。
持ち帰れば中身を確認できるかもしれない。
「LINE ID教えて?」と言われ
「LINEは家族としかやらないよ。それでも、よければ」と
言って、嫌なヤツには開かない専用のIDを教える。
でも、どうなっているのか気になる。
もうLINEの更新のない、そのアカウント
その持ち主は既にこの世を去っている
わたしの大切だったひと
どうしてもないことはわかっているのに、ふと目に入るたびに
また連絡が来るんじゃないかと期待しちゃっている