白糸馨月

Open App

お題『開けないLINE』

 知らないアカウントから突然「やっほー、久しぶり」と通知が来た。
 私はそれを横にスワイプしたあと、LINEの画面を開いてそのアカウントを長押しして、ブロックしようとした。が、なにも表示されない。
 戸惑っている間に通知が矢継ぎ早に来る。

「元気だった? 私は元気」
「っていうか、今どこ住んでんの?」
「おーい、返事してよー」
「まだー? まだかなー?」

 と。あまりにうざすぎるし、どこから漏れたのか怖すぎて私は何度もアカウントを長押しするのを繰り返した。だけど、いっこうになにも表示されない。
 
「あっ」

 間違えてそのアカウントをタップしてしまった。まずい、既読がついてしまう。だが、そのアカウントはなぜか開けない。

「なに、なんなの……」

 スマホを握る手が震える。その間も通知はやまない。

「返事しないなら今からそっち行くよー」
「今、家出たよ」
「●●駅に着いたよ」
「もうすぐあなたの家に着きそう」

 開けないLINEに本当に来る気がして、怖くて私はついにLINE自体をアンインストールしようと試みる。だが、LINEを長押ししてもなにもでてこない。
 そうしているうちに。

「いま、あなたの家の前まできちゃった」

 そう言って、呼び鈴を何度も鳴らす音が聞こえてきた。あまりに怖すぎて、誰が来たか確認することができない。私はふとんをかぶりながら、なんとかその場を乗り切ろうとした。

9/2/2024, 3:46:50 AM