お題『美しい』
昔、心理テストにはまっていたことがあって、
「崖の上から湖を眺めた時、あなたは何ていう?」という質問があった。
私はそれに対して「美しい」と答えた。
そうしたら、その答えは「死ぬ時に言う最期の言葉」だと言われた。
「美しい」と言えるということは、きっと死後の世界はきれいな場所なんだろうなということだ。
まだ先の話の予定ではいるから実際のところよくわからないけどね。
お題『水たまりに映る空』
「最近、田中さん見かけませんよね」
社内でもうだつが上がらない田中は今、どうしているか知らない。
俺にとってはどうでもいい話だ。田中がいつも上司に怒られようと、仕事を押しつけられようと。
今の悩みは人生が退屈であることだ。
仕事はそこそこうまくやれている。ただそれ以外なにもない。
唯一の趣味は異世界に転生したり、転移したりする小説を読むことだ。こういう小説を読むことで退屈じゃない日常を送れるだけでなく、強大なスキルを手に入れたり、人からモテたりするんだよなと願ってやまないのだ。
今日も定時で上がり、なにごともなく帰宅しようとしてふと、雨も降っていなかったのに大きな水たまりを発見した。
(もしかしたら、俺はこれを使って異世界へ行けるのでは?)
そう思った瞬間、俺はそこに向かって飛んだ。
びしゃ。
水たまりには俺のアホ面と夕暮れ時の空がうつるだけ。
ふと、俺はこの時になって田中を思い出す。
田中は多分、異世界に行ったんだろう。会社では仕事ができないくせに、いいように使われているくせに、あっちの世界ではきっと英雄になって、ひょっとしたら努力しなくてもモテているかもしれない。
「畜生っ!」
俺は再度飛び上がった。スラックスに水がかかるだけ。
しばらく俺はその場で退屈な生活から抜け出すための執念をスーツを汚しながら燃やし続けたのだった。
お題『元気かな』
私の趣味はSNSの巡回だ。
いつものように昔のクラスメイトや、昔付き合ってた人のアカウントを特定して最近の近況を見ている。
なお、私は一部のクラスメイトからなぜだか知らないけどブロックされているし、元恋人はアカウントごと削除したりしている。
それでも私はどうしても見たくて別でアカウントを作り、彼等を見ている。
「結婚しました」
「子どもが産まれました」
「昇進したから大変」
「そっちも大変だね、お互いがんばろ」
それらを見て私は安心して「元気そうでよかった」と呟くのだ。
お題『遠い約束』
「もしお互いに三十になるまで相手いなかったら、その時は結婚しよう」
そんな約束をたしかこっそり、小学校を卒業する時に幼馴染とした覚えがある。
その時のことは、きれいな想い出として私の中に残り続けていた。夕日がきれいな場所でそんなことを言ってもらえて、たしかに嬉しかったんだ。ちょっと大人の階段を登ったきになって、それがちょっとした優越感に浸れる要因になったりもして。
その想い出は今、目の前で土下座している男によってもろくも崩れ去ってしまっている最中だ。
「お願いしますっ! オレを養ってください!」
夕日が見える河原でプロポーズめいたことを言ったかっこいい幼馴染はもういない。
目の前にいるのは、いい年して実家から出たことがないクソニートである。
久々に実家に帰ったら幼馴染が親しげにやってきて、でかい声で
「お前、三十になったんだって?」
と言ってきた。あの想い出の彼は今、親のすねをかじるデリカシー無し男に成り下がっていた。
そんな彼が「久しぶりに話したい」と言って連れてこられたのがよりにもよってあの河原だ。
それで今、このクソニートは土下座をしている。
「お前、今彼氏いるの?」
と聞かれて「いない」と答えたらこのザマである。
「頼む! お前だけが頼りなんだ!」
「は?」
「このままだと、オレが実家から追い出されてしまう!」
「じゃ、働けよ」
「それも考えた。だけど、オレに合う仕事がないっつぅか、なんつうか」
「じゃ、無理」
「え?」
踵を返して実家に戻ろうとすると、幼馴染が食い下がってくる。物理的に。
男性の力だから重くて、動けそうにない。
「お互いに三十になって相手がいなかったら結婚しようって言ったじゃん!」
「それはアンタがマトモに働いてたらの話でしょうがっ!」
「互いに助け合えばどうにかなる! お前、年収高いらしいじゃん!」
「ふざけんなぁ!」
なにが助け合いだ、くそったれ。
今この場に欲しいのは証人じゃなくて警察だ。
頼む。誰か。私の想い出を破壊しやがった人の金をアテにしようとするクソ男を引っ剥がして欲しい。
お題『フラワー』
フラワーから連想する言葉を考える。
曲名のフラワー。たしかラルクの昔の曲かな、あれは英語だけど。
あと、普通の花。
あと発音が同じ英単語のflour。小麦粉だ。Google検索でちゃんと調べたから間違いない。
そこで思いついたのが粉塵爆発と燃え盛る花畑の風景だった。
シチュエーション的に嫌いじゃないけどロクでもないね。
じゃ、なぜ花畑を燃やすに至ったか。
こういうことを考える。
たまにはこういう思考の書き殴りみたいなものがあってもいいはずだ。