お題『元気かな』
私の趣味はSNSの巡回だ。
いつものように昔のクラスメイトや、昔付き合ってた人のアカウントを特定して最近の近況を見ている。
なお、私は一部のクラスメイトからなぜだか知らないけどブロックされているし、元恋人はアカウントごと削除したりしている。
それでも私はどうしても見たくて別でアカウントを作り、彼等を見ている。
「結婚しました」
「子どもが産まれました」
「昇進したから大変」
「そっちも大変だね、お互いがんばろ」
それらを見て私は安心して「元気そうでよかった」と呟くのだ。
お題『遠い約束』
「もしお互いに三十になるまで相手いなかったら、その時は結婚しよう」
そんな約束をたしかこっそり、小学校を卒業する時に幼馴染とした覚えがある。
その時のことは、きれいな想い出として私の中に残り続けていた。夕日がきれいな場所でそんなことを言ってもらえて、たしかに嬉しかったんだ。ちょっと大人の階段を登ったきになって、それがちょっとした優越感に浸れる要因になったりもして。
その想い出は今、目の前で土下座している男によってもろくも崩れ去ってしまっている最中だ。
「お願いしますっ! オレを養ってください!」
夕日が見える河原でプロポーズめいたことを言ったかっこいい幼馴染はもういない。
目の前にいるのは、いい年して実家から出たことがないクソニートである。
久々に実家に帰ったら幼馴染が親しげにやってきて、でかい声で
「お前、三十になったんだって?」
と言ってきた。あの想い出の彼は今、親のすねをかじるデリカシー無し男に成り下がっていた。
そんな彼が「久しぶりに話したい」と言って連れてこられたのがよりにもよってあの河原だ。
それで今、このクソニートは土下座をしている。
「お前、今彼氏いるの?」
と聞かれて「いない」と答えたらこのザマである。
「頼む! お前だけが頼りなんだ!」
「は?」
「このままだと、オレが実家から追い出されてしまう!」
「じゃ、働けよ」
「それも考えた。だけど、オレに合う仕事がないっつぅか、なんつうか」
「じゃ、無理」
「え?」
踵を返して実家に戻ろうとすると、幼馴染が食い下がってくる。物理的に。
男性の力だから重くて、動けそうにない。
「お互いに三十になって相手がいなかったら結婚しようって言ったじゃん!」
「それはアンタがマトモに働いてたらの話でしょうがっ!」
「互いに助け合えばどうにかなる! お前、年収高いらしいじゃん!」
「ふざけんなぁ!」
なにが助け合いだ、くそったれ。
今この場に欲しいのは証人じゃなくて警察だ。
頼む。誰か。私の想い出を破壊しやがった人の金をアテにしようとするクソ男を引っ剥がして欲しい。
お題『フラワー』
フラワーから連想する言葉を考える。
曲名のフラワー。たしかラルクの昔の曲かな、あれは英語だけど。
あと、普通の花。
あと発音が同じ英単語のflour。小麦粉だ。Google検索でちゃんと調べたから間違いない。
そこで思いついたのが粉塵爆発と燃え盛る花畑の風景だった。
シチュエーション的に嫌いじゃないけどロクでもないね。
じゃ、なぜ花畑を燃やすに至ったか。
こういうことを考える。
たまにはこういう思考の書き殴りみたいなものがあってもいいはずだ。
お題『またね!』
今日も父のお墓参りに来た。
父は私が幼い頃に亡くなった。もう今は声を思い出すことが出来ない。家のすみに置いてある棚の上の写真立ての中で笑う父はずっと若いままだ。
私はずっとトラウマなんだ。
小さい頃、母に抱っこされながら「ばいばい」といつも手を振っていたことを思い出す。
それを繰り返していたらある日突然、父が交通事故でかえらぬひとになってしまった。
父が眠るお墓を掃除して、お花とお線香をそえて、合掌しながら近況を伝える。
私は去り際に言った。
「またね」
「ばいばい」という言葉は今はもう言えなくなってしまった。トラウマなんだ。だから、どこかで生まれ変わっていたら会えるといいなの願いをこめて言うんだ。
お題『春風とともに』
最近寒いんだが暑いんだが分からない日が続く。
あったかいを通り越して暑いと思ったら、今度は急に空気が冷たくなる。春になったんだか、初夏に入ったのか分からないくらい最近の日本の気候は狂ってきている。
昔は春を感じられたかと思った。三月の中旬くらいに自転車を走らせていると温かくて春を感じたものだ。
だが、最近は、あったかい通り越して暑い!、と寒いを繰り返している気がする。