白糸馨月

Open App

お題『風を感じて』

 私は一重だ。それも、とても目が小さい一重。
 そんな私は、今、眼圧検査のために右目を思い切り開けている。
 自分では限界まで目を開けている。そのつもりだ。
 だけど、目の前で検査している看護師が言う。

「もっと目を開けてください」

 目ぇ、開けてるわと言いたくなるのをこらえながら更に目を開ける。だが

「まつげがかかっているので、指で押さえててください」

 逆さまつげが邪魔をしているようだ。自分の目の小ささに加えて、まつげも下向きに生えてるからやりづらいったらありゃしないのだろう。
 私は指でまつげをまぶたにはりつけ、更にまぶたを指で押し上げた。
 片方の眼球が乾いていくのを感じる。

「それでは、いきますねー」

 と合図されてから時間が長く思えてくるのはなぜだろう。早く目を閉じさせて欲しい。そう思ったその時、右目に風を吹き付けられた。途端、閉じかけるまぶた。

「では次、左目いきますね」

 という声を聞きながら私は右目の違和感を消化するために右でまばたきを繰り返していた。同時に風を感じてないはずの左目も連動してまはだきした。

8/10/2025, 6:48:53 AM