『鏡』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
やっぱ、ぶさいくだな
顔でかいし。鼻つぶれてるし。目はちっちゃいし。
...はぁ
鏡は嫌いだ。自己肯定感下がるし。自分に嫌気がさすし。...でも、もしかしたら急に、お姫様みたいになるかも...なんて、夢を抱いて見てしまう。
現実逃避なんて、最低だってわかってるのに。そんなマンガみたいなこと、起こらないってわかってるのに。
やっぱ、ぶさいくだな
顔でかいし。鼻つぶれてるし。目はちっちゃいし。
...はぁ
鏡は嫌いだ。誰一人、可愛いなんて言ってくれないから。自分だけでも自分のこと、みとめたいのに。鏡のなかだけでも、美しくありたいのに。
やっぱ、ぶさいくだな
顔でかいし。鼻つぶれてるし。目はちっちゃいし。
...はぁ
鏡は嫌いだ。みんなみたいに、誰かに認められたいのに。もう、無理なのかな...
「どうしたんだ、お前?鏡なんか見て。」
急に話しかけられた。知らないヒトだ。ちょっと、びっくりした。でも、心配の方が勝っちゃって
「いや...えと、...」
何も言えなかった。また、バカにされるかな...
「自分のこと、見つめてたの??なんで?見る必要ないじゃん」
「...っ」
まただ...またっ、バカに...されt
「...可愛いの、鏡見なくてもわかるのに」
「え」
「...はっ...ごめん、なんでもないっ...」
男の人、逃げ...ちゃった。でも
心は晴れやかだった。ふふふっと、えみがこぼれる。初めてだった
「ありがと、お兄さん」
目頭が、熱くなった
#鏡
※ホラー
薄暗い屋敷の中を、奥へ奥へと歩いていく。
誰もいない。一人きり。
ここには入ってはだめよ、と母から忠告されていた事を思い出す。
理由は言われなかった。たくさんの大人や子供が集まるこの時期でも風を通す様子がない事から、客間として使用されるわけでもないだろう。
理由など関係はない。どんな理由であれ、好奇心に駆られた少年の足を止める事はないのだから。
足取り軽く、奥へと進み。気づけば突き当たり。
とん、と足が止まる。
左右の障子戸を見る。戸を開けるか、引き返すか。
今戻ったとして、広間ではまだ大人達が赤い顔をしながら大声で話し合っているのだろう。他の子は外へと遊びに出てしまっている。
今まで遊んでくれていた年上の従兄弟は、事故にあったらしく帰っては来なかった。
しばらく考えて、右の障子戸に手を伸ばす。
その視線がつい、と上を向き。
少年よりも高く、大人と同じ目線の場所に、指で開けられたような穴に気づいた。
目を凝らす。穴の向こう側に何かを垣間見て、背伸びをした。
暗い穴の先。それが障子と同じ、白になり。
それが白濁した人の眼だと知る。
見下ろされている。戸の向こう側の誰かに。声もなく、ただ静かに。どろりとした濁った眼が、逸らす事なく少年を見ていた。
かたん、と戸が小さく音を立てる。
開けられる。開けられてしまう。
白い眼から視線を逸らし、引き返そうと廊下を見遣れば。
その先で黒い何かが蠢いているのを見た。
かたん、と再び戸が音を立てる。
開いている。先程まではなかった僅かな隙間が開いていた。
声にならない呻きが少年の口から溢れ落ちる。後ずさりながらも、視線は戸の隙間に向けられたまま。
その足が背後の戸にあたり、止まる。
かり、かり、と何かを引っ掻く音がして。
隙間から、細く白い、指が。
「ぅわああぁぁ!」
叫んで、反射のように背後の戸を開け中に入る。
急ぎ戸を閉め、距離を取った。
戸が開けられる様子はない。
荒い呼吸を繰り返し、戸を気にしながらも部屋の様子を伺った。
四畳半の狭い和室。その中央にある三面鏡以外の調度品はない。押入れらしき襖は固く閉ざされて、中に何が入っているかは分からない。
戸が開く様子はない。
幾分か落ち着きを取り戻した少年の内に、また好奇心が湧き上がる。三面鏡に近づき、恐る恐る鏡を開く。
薄暗がりでも分かる、それぞれの鏡に映った姿に驚き、驚いた自身の姿を見て笑った。
鏡から視線を逸らす。鏡台の上には何も置かれてはいない。二段ある引き出しの上の方を開けるも、やはり何もなく。少しばかり落胆しながら、下の引き出しに手をかける。
片手では開けられぬ重みに、両手で力を込めて引き。ゆっくりと開けられていくその隙間から覗く中身に、少年の目が丸くなる。
隙間なく収まっていたのは、文字の書かれた符。字の読めぬ少年では、それが何かは分からない。数枚手に取れど、薄暗がりの中では違いに気づく事も出来ず。小さな溜息と共に符を元に戻し、引き出しを閉めた。
鏡面の探索を終え、少年は途方に暮れる。好奇心はすでに鳴りを潜め、あるのは不安だけだ。
ここから出れるのだろうか、戻れるのだろうか。
戸を開ければいるかもしれない何かに怯え、唇を噛む。
閉じるのを忘れていた鏡が、そんな少年の泣きそうな顔を映していた。
頭を振って鏡に手を伸ばす。鏡を閉じようとする手は、しかし閉じる前にその動きを止めた。
鏡に映った背後、押入れの襖が少し開いているのが見えた。
表情が強張る。
入った時には閉まっていたはずだ。開いているはずはない。
見間違えだと、鏡から目を逸らす。暗いから見間違えたのだ、気になるならば直接確認すればいい、と。
鏡を閉じようと手だけを動かして。
その手が、何かに掴まれる。
慌てて手を見れば、鏡から出た細い腕が少年の手を掴み。次々と現れる腕が少年の手を、腕を掴んで鏡の中へと連れ込もうとする。
「やだっ、いや、いやだぁ!」
泣きながら抵抗する少年の姿を、正面の鏡は映す。だが左右の鏡は少年の姿を映しながらも、その表情は明らかに異なっていた。
笑っている。嬉しそうに、楽しそうに。
右の鏡は口元に笑みを浮かべ、左の鏡は声を上げて笑っている。
早くおいで、と手招かれる。
ありがとう、と誰かが喜んでいる。
変わりは誰が、とたくさんの声がした。
鏡の中に引き込まれる間際。
映った襖の隙間から、あの白い眼が少年を見つめているのが見えた。
「もうどこ行っていたの。勝手にいなくなっちゃだめじゃない」
「ごめんなさい」
母に叱られ素直に謝る少年を、離れた場所で二人は見ていた。
同じ光景を見ながらも、浮かべている表情は対照的だ。一人は安堵に笑みを浮かべ、もう一人は無表情ながらもその瞳は冷たく鋭い。
「見つかって良かった」
心からそう思っているのだろう。にこにこと満面の笑みを浮かべる少女を横目に、僅かに表情を険しくする。
周りには見えていないのだろう。叱られ俯く少年の唇が弧を描いて歪んでいる事を。
「どうしたの?何かあった?」
「別に、何も」
心配する少女に気にするなと笑って見せ。部屋に戻ると一言告げて、歩き出す。
着いてこようとする少女に大丈夫だと手を振って、昨夜泊まった部屋へ向かった。
「中身が違う。でも」
しばらくすれば、入れ替わった中身は馴染んでしまうのだろう。
馴染んでいない今ですら、違和感に気づく者は誰もいなかった。母親ですら気づけなかった。
気づかないのであれば、それは入れ替わっておらず最初からそれであったのと同じ事。
過ぎる思いに、頭を振って否定する。
認めてはいけない。屋敷の奥から聞こえる泣き声は、絶えず聞こえているのだから。
「神様」
「ならぬ。取り戻したとて元に戻す術はない。諦めよ」
唇を噛み俯く。
左手首に触れるも、そこにあるものは何もなく。
「己が領分をわきまえよ。すべて背負うなぞ傲慢と知れ」
縋るものがなく迷う手を、縄に繋がれた強い手が窘めるように掴み引いた。
20240819 『鏡』
「鏡」
自分が意識的に、そして無意識のうちにしていることは、実は心を映す鏡のようなものだと思っています。
頑張って作る笑顔。なんとなく撮った空の写真。
ポジティブな口癖。ついつい聴いてしまう音楽。
思ってもいないのに言った一言。そして、書いた文章。
こういったひとつひとつの行動のどこかに、自分の心の鏡が隠れているような気がして、あとで思い返したり、見返したりするとあの時抱いていた自分の本当の気持ちに気づくこともあります。
逆に、こんな些細なことで悩んでいたのか、と思うこともありますが……。当時の自分の心の幼さに気付かされるような、少し恥ずかしくなるような、そんな気持ちになります。
さて、なぜ「心の鏡」なんていう抽象的なテーマで今日の文章を書いたかご説明します。
心というものは、丈夫で鈍感そうではありますが、知らず知らずのうちに傷ついています。今この瞬間も、心の底で悩みが揺蕩っていることでしょう。
やがて心は少しずつヒビが入り、もししっかり守られないといつしか壊れてしまいます。
心の鏡が、割れてしまいます。
そんな時は、この言葉を思い出してください。
“こなごなに砕かれた鏡の上にも 新しい景色が映される”
これは、千と千尋の神隠しのエンディング曲「いつも何度でも」の歌詞の1フレーズです。
心が壊れてしまうことを決して肯定するわけではありませんが、たとえそうなったとしても、いつか美しいものがきっと見えてくる。
砕け散ったことで、心はもう二度と元には戻らないかもしれないけれど、飛び散った先で、別の何処かにある何か新しいものを見ることが出来るようになる。
そんな気がするから、心の鏡というテーマで書いてみました。
辛いことが沢山あるこの世の中ですが、どうか希望を捨てないで、心が粉々になったとしても、ずっと大切に抱きしめていてください。
子供の頃の不思議。鏡の正面にあるものが鏡に映るのは分かるが、鏡の中の斜め奥の方を覗き込むと鏡には映らないと思えるような場所の映像が映ること。
今思えば、鏡を斜めに覗き込むことで、入射角と反射角が広がり、より広い範囲の景色が鏡に映って見えていただけのことだが、鏡の中にこちら側の世界とは別の世界が広がっているように思えたものだった。
また、別の不思議。海辺の家に暮らしていた私は、山に登って海の方を見ると、遠くの方の海が視界の上の方までせり上がってくるように見えること。
単に標高が上がることで遠くの方まで見えるというだけのことだが、感覚的には遠くの海が上昇して見えていたということだ。
星が動くのではなく、地球が動いているのだ、と言われればそうなのかなとは思うが、普通に見れば動いているのは星の方だろう。
目に映る世界が見えるかのようにあらぬものとは思えぬものか
鏡の中の自分を自分と認識できる能力は、
限られた動物にしかないんだ。
鏡像自己認知って言うんだけど。
最近イカにも備わってることがわかったんだって。
イカは自分がわかるのに、私は自分がわからない。
《巡り逢うその先に》
番外編
〈黒鉄銀次という男〉 ①
主な登場人物
金城小夜子
(きんじょうさよこ)
玲央 (れお)
真央 (まお)
綾乃 (母 あやの)
椎名友子 (しいなともこ)
若宮園子 (わかみやそのこ)
大吉 (だいきち)
東山純 (ひがしやまじゅん)
向井加寿磨 (むかいかずま)
ユカリ (母)
秀一 (義父)
桜井華 (さくらいはな)
大樹 (父 たいじゅ)
高峰桔梗(たかみねききょう)
樹 (いつき)
葛城晴美 (かつらぎはるみ)
犬塚刑事 (いぬづか)
足立刑事 (あだち)
柳田剛志 (やなぎだたかし)
桜井大樹(さくらいたいじゅ)
横山雅 (よこやまみやび)
京町琴美(きょうまちことみ)
倉敷響 (くらしきひびき)
黒鉄銀次 (くろがねぎんじ)
詩乃 (母 しの)
海江田
銀次の母 詩乃は中学の卒業式を終えるとそのまま電車に飛び乗った。
「あんな家、二度と帰ってやるもんか」
詩乃の父はアル中で、月に10日働いたことがない。
毎晩酔っ払い詩乃に暴言を吐き暴力を振るうこともあった。
最近では夜中に詩乃の布団に入ってきて胸や下半身を触ってくる。
母はそれを見て見ぬふりをする。
このままでは、父に犯され父親の子を身籠りかねない。
なんの当てもない。
所持金35000円足らず。
ともかく、住み込みの仕事を探すことにした。
降り立った駅は、詩乃の見たことがないほど大きな街だった。
たくさんの人が行き交っている。
詩乃の町の人を全員集めても、こんなにはいないだろう。
ここでなら、私を雇ってくれる所がすぐに見つかるだろう。
詩乃は駅から少し離れたところにある工場に向かった。
「すいません、住み込みで雇ってもらえないでしょうか?」
「君はこの辺の子じゃないね、年はいくつだい?」
「15です」
「そう、ちょっと待っててね」
詩乃は事務所で待っていた。
感じの良い人だったな、ここで働けるといいな。
そんな事を考えていると、外で話し声が聞こえてきた。
「通報してきたのは貴方ですか」
「はい、どうやら家出娘のようなので」
マズイ、警察に通報されたのだ。
捕まったら、家に連れ戻されてしまう。
詩乃は窓から飛び降り一目散に逃げ出した。
詩乃は逃げながら考えた、正直に15才だなんて言うんじゃなかった。
今度は化粧をして19だと言おう、名前だって偽名にすればいい。
しまった!うっかり履歴書を置いてきてしまった。
実家にも連絡がいくだろう。
もうこの街にはいられない。
詩乃はそのまま駅に向かいどこ行きだかもわからない電車に飛び乗った。
どのくらい時間がたったのだろう夕陽のキレイな湊町に着いた。
なんてキレイな夕陽なんだろう。この町なら私を受け入れてくれるかもしれないと思った。
駅前はさっきの街とは比べものにならないが、詩乃の住んでいた町よりはましだ。
湊町なので、漁港に行ってみたが日が暮れる時間に人などいるはずがない。
お腹も空いてきた。
今晩はどこに泊まろう?所持金があまりないので、ホテルになど泊まれない。
かといって3月の夜に野宿などできやしない。
どこか朝までやっているお店はないだろうかと探していると、“純喫茶スナック”という変なカンバンを見つけた。
扉を開けると、‘カランカラン’とドアベルがなり、カウンターの中にいた女性が顔をあげた。
「いらっしゃい、見ない顔ね」
女性は派手めで、若作りをしているが、四十路を過ぎていそうだ。
この店のママなのだろう。
ママは私を上から下まで眺めたあとに、「アンタ、迷子かい?」と言った。
「いえ、そういう訳じゃないんですけど、あの...」
「ピラフでいいかい?」
「はい」
「2階の手前の部屋が空いてるから荷物はそこに置いといで」
詩乃は呆気に取られていた。何も話していないのに、全てお見通しって感じだ。
「慣れるまではタダ働きだよ。食事は、ある食材を使っていいから自分で作ること」
「はい...えっと」
「私のことはママとお呼び、アンタは今からアケミ18才だ。いいね」
「はいママ」
神様、素敵な出会いをありがとう詩乃は心からそう思った。
店の営業時間は11時から14時までが喫茶店として、軽食も出している。18時から26時までがスナックとなる。
夜の部は最初は20時までで徐々に長くしていくそうだ。
ママは、私の事を何も聞いてこない、それが嬉しかった。
1週間2週間と経ち接客にもだいぶ慣れてきたが、ヨッパライの相手には苦戦している。
お酒も少しずつ練習している。
ビールを水で割ったり、ウーロンハイと言いつつ烏龍茶を飲んだりしている。
1ヶ月もすると、私目当てで来てくれるお客さんもできた。
3ヶ月経った頃にはヨッパライの相手も無難にこなせるようになっていた。
「アケミ、この商売続けられそうかい?」
「はい、大丈夫です、一生懸命頑張ります」
「そうかい。そろそろフルタイムで働いてもらおうかね。これからは、お給料も出してあげるよ」
嬉しかった。ママに認めてもらえた事が、すごく嬉しかった。
でも、鏡の中の私は派手な化粧をしていて、とても15才には見えなかった。
本当にこれでいいのだろうか。
15才の娘に酒を飲ませ、深夜までホステスとして働かせているママを本当に信じていいのだろうか?ただ、ここを出ても行く宛なんかない、せめて18才になれば...
今はここでやるしかない。
ここに来て半年たった頃19才(本当は16才)の誕生日を迎えた。
ママやお客さんがお祝いをしてくれた。
誕生日だからという事で何度も乾杯をさせられ、初めて意識を失った。
胸が押し潰されそうな息苦しさを感じて目が覚めると、誰かが私の上に乗っている。
「何をしているのですか?」
「おや、目が覚めたかい。気持ちいい事をしてるんだよ」
男は常連のお客さんだった。
私は裸にされている。
「やめて下さい。ママ、ママ助けて!」
「ママにはちゃんとお金を払っているんだ、呼んでも無駄だよ」
“裏切られた”
イヤだイヤだイヤだ
詩乃は全力で抵抗していると、
‘ゴン’と鈍い音がして男の力が抜けた。そして、何か温かいものが詩乃の胸を濡らした。
暗くてよくわからない。
男を押し退け明かりを点けた。
男は頭から血を流している。
詩乃の右手には花瓶が握られていた。
“私、殺してしまった”
“人を殺してしまった”
気がついたら、裸のまま外へ飛び出していた。
“もうおしまいだ。死のう”
そのまま海に飛び込んだ。
つづく
鏡は自分自身を写すけど写すのは見える部分(外見)だけで自分が感じたことや思ったことは写してはくれないそれは鏡だけでなく他の人と接するときも同じで思ったことは話さないと伝わらないでも人と鏡は違う人には感情があるが鏡にはないだから人に自分の気持ちを話すのは怖いでもそこで少しの勇気を出して自分の気持ちを伝えみよう自分が考えてるよりいい答えが帰ってくるかもしれないからでもさ毎回そんな優しい答えが来るわけないしって気持ちもわかるよだからさ出会った人みんなに気持ちを伝えるんじゃなくて親友とか信頼してる人なんかには本当の心からの思いを伝えてみよう私にはこんなことしか言えないけどこんな文でこんな言葉で救われる人がいたら嬉しいな(˶' ᵕ ' ˶)💦
最後にこれを見て頑張って見ようと思ってくれた人へ
伝えた人に優しい答えを貰えたとしても貰えなかったとしても私は伝えようと思って頑張った君がすごいと思うよ頑張れ(๑و>o<)و📣ファイト!!!
「俺さ、ふと思ったんだけど鏡の中の世界って……」
「急にどうしたの?」
どうしたの? と口で尋ねながら、僕は心の中で「ああ、またいつものか」と思った。
僕の親友には突拍子もないことを思いついては語りたがる悪癖があるからだ。
……放課後に付き合わされるこっちの身にもなってほしいよ。
「まあ聞けって。創作でよくあるだろ? 鏡の中の世界」
「あるね。鏡の中には左右があべこべになった世界が、ってやつでしょ?」
「でもさ、本当にそんなことあるのか? って思ってな……」
「本当にも何も、そもそもが創作の話じゃないか」
「そうなんだけど。そこで思考停止しないのが俺なんだよ」
「へーすごいなー」
適当に煽てる。いちいち本気にしていたらいつまで経っても下校出来やしない。
「……話を戻すぞ。俺はな、あれは嘘だと思うんだよ」
「そもそも創作だからね」
「だーかーらッ! そこで思考停止するんじゃない! いいか? 俺は『鏡の中には鏡に映っているものしか存在しない』と思うんだよ。というか、存在しないものが存在することのほうがおかしい」
得意気に話す親友を前に、僕はどんな表情をしていただろうか? 鏡があれば確認していたに違いない。
「で? それがどうしたの?」
「そうなると、だ。鏡の中に仮に入れたとしても極めて狭い、窮屈な空間に閉じ込められる可能性が高い。鏡の中を大冒険! なんて出来ないはずだ」
「なるほど……?」
「どうだ? 怖いだろう!?」
親友は何を言っているのだろう? というか、コイツと親友を続けていていいのだろうか?
「悪い、怖くはないな」
「なん……だと……?」
困惑する親友を尻目に僕は言葉を続ける。
「正直に言うけど、スタート地点が既にぶっ飛んでるから、怖がりポイントが分からないよ。大体なんでこんな話を?」
聞けば、今度この設定を元に怪談を作って一儲けしようと画策していたらしい。そうそう上手い話はないと思うんだけどなぁ。
「なら、もうちょっと地に足を着けた設定のほうがいいんじゃないか? 今の話は一部の創作に対する批判としか思えないよ」
「設定……設定か」
また一からやり直しだ……と肩を落とす親友を、僕は適当に励まし、
「じゃ、僕はそろそろ帰るよ」
と、言い残して帰路に就いた。
翌朝。
顔を洗い終えた僕の前にあるのは洗面台の鏡。
ふと、親友の昨日の話が脳裏をよぎる。彼の話だと、床の映っていないこの鏡の中に行ったら……どうなるのだろうか?
あれ? そう思うとちょっとだけ怖い気がするぞ?
僕は嫌な想像を振り払うべく何度か頭を左右に振る。
「まさか、ね……」
普通の鏡であることを確かめるべく、僕は鏡に触れる。
。たっなに目羽るす悔後を動行の己は僕、間瞬の次
自分の顔や肌を隠すのが習慣になって、いつしか晒すことが恐怖に変わっていた。信頼できる相手にもそれは変わらず、誰も私の顔は知らないまま。
テラを離れた今もそれは変わらない。刀剣男士はともかく、審神者たる者は黒や茶色の控えめな色目の髪や瞳が多い。
それもあって、変わらず隠していた。
誰にも見せることなんてもうないと、思っていたはずだったのに。
「主、ちっくと聞きたいことが……」
髪の毛を乾かしていた時、背後から声をかけられた。鏡越しに目が合って、何も考えずに振り返った。
「おお!おまさん、綺麗な顔立ちをしちゅーやいか」
心臓が止まるような感触がした。
「鏡」
持ち歩き用の小さい鏡を百均で買っては失くしを繰り返す生き物をしています。
鏡に映る私はブスだ
二重顎で眉毛の太さも違えば顔は左右非対称
首は短く肩幅広く、体型は寸胴
毎日嫌でも見なければいけない鏡
ネットの中の私は違う
二重顎なんて有り得ないし、顔は黄金比
眉毛も皆の理想とする形
首は少し長くて、体型は韓国アイドルみたいだ
化粧をする時も眉毛を描く時も身だしなみを確認する時も全部全部、鏡を見ないようにした
そしたら、自分の顔が分からなくなった
もう視力を失った母の鏡台にはずっと、幼い私が描いた母の似顔絵が挟まっている。添えられた「だいすき」の「す」は、鏡文字だ。
鏡にはあの頃の母の歳を超えた私がいて、冷蔵庫にいつも貼ってある息子の手紙を思った。
母の愛情深いところが息子にも鏡写しのように似れば良いと祈りながら顔を擦って母の忘れ物探しに戻った。
_______________
日本では鏡が度々御神体となって信仰されていますが、海外ではあまり、神格化されていないのか見つからないのが面白かったです。
ナルキッソスが見た水鏡とか、メデューサの邪眼の効果を防ぐため相手を確認するために鏡のように磨かれたアイギスの盾とか、神話や童話の中にでてくることはあるのですが。
「ゲホッ……ハァ…」
顔を上げると誰かと思うほど酷い自分の顔が映っていた
気づけば眠れなくなり、最近では食事も喉を通らない
もうきっかけすら思い出せない
鏡
鏡を見たいと思わない。
だって自分の嫌いな顔が映るから。
自分の顔が嫌いだとを思ってる自分は人を見た目で判断する嫌な奴なんだなぁって思って、
また自分が嫌いになって、そして自己嫌悪に陥る。
まさに負のループ。
鏡よ鏡、
私はとても美しく、
好きな人から愛され、
幸せな人生を歩む人間です!!
【鏡】
『鏡』
仕事を終え、スーパーで割引シールの貼られたお弁当を1つ買った私は家路を急いだ。金曜の夜だからといって寄り道はしない。
駅から歩くこと10分。単身向けの2階建てアパートであるここ、「壽荘(ことぶきそう)」に住み始めたのはつい先月のことだ。
「ただいまー」
玄関を上がり、真っ暗な部屋に明かりをつける。
不動産屋で築40年と聞いた時は身構えたが、数年前にリフォームされたという部屋は築年数ほどに古い印象はなかった。1番の心配だった水回りも同様に綺麗にリフォームされており、風呂とトイレが別でこの家賃というのはとても魅力的だった。今思えば、その魅力的すぎる条件を少しは疑うべきだったと思う。
「随分と遅かったな」
ひとり暮らしの部屋、本来なら聞こえるはずのない声が聞こえる。もちろん、今この部屋には誰もいない。
「すみません、来週の会議の準備でバタバタしてて」
「それはご苦労だったな。それはそうと、例の物の場所は分かったかい?」
「はい。大家さんに住所のメモをもらいました」
カバンの中のファイルから1枚のメモを取り出した私は、鏡台の前に腰を下ろした。
以前は畳だったという床には、今はフローリングが敷かれている。数着しか服の入っていないクローゼットも、元は押し入れだったらしい。すっかり洋風に生まれ変わったこの部屋に、このいかにも和風な鏡台は明らかに馴染んでいない。
「明日、この住所に行ってみます」
目の前の鏡に向かってメモを見せながら、そう口にする。
他の人が見たら間違いなく奇妙な行動––––いや頭のおかしい人の行動に見えるだろう。
だが、私の頭は正常のはずだし、私は至って真剣なのだ。
翌日、朝早くに家を出た私はメモの住所を目指して電車に飛び乗った。1時間ほどで着くらしい。
生まれてこの方、私は私のことを凡人の中の凡人だと思ってきた。育った環境や経験してきたこと、容姿やスペックや性格。特に秀でるものもなければ劣るものもなく、人並みに幸せと不幸を繰り返してきた。
そんな凡人である私にとって、不思議なものとの縁というのは今までにあるはずもなかった。だから、鏡台の鏡の中から幽霊の声がした時の私は、今までにないほど驚いた。
「君は、わしの声が聞こえているのかい」
その声は明らかに部屋の中、いや鏡の中から聞こえていて、隣の部屋の声という感じではなかった。
「聞こえるなら返事をしてくれんか。悪いことはせんと約束する」
聞こえないフリをするべきか迷っていた私だったが、その言葉に恐る恐る頷いた。
「そうかそうか。やっと話の通じる相手がここに来たか」
「あの、えっと……」
「あぁ、すまんすまん。わしは名を彦三郎。歳は100といくつだったか……いや、幽霊が歳を言っても仕方がないな」
「ゆ、幽霊……?」
「あぁ、そうだ。あの世に行くこともできず、こうして鏡に閉じ込められた情けない幽霊さ」
信じられないような出来事に言葉を失う私に向かって、彦三郎さんはこう言った。
「ここは1つ、哀れな年寄りの幽霊に手を貸すと思って、わしの頼みを聞いてくれないだろうか」
電車を降りてからは、地図を頼りに歩いた。約束の時間にはどうにか間に合いそうだ。
彦三郎さんに探してほしいものがあると頼まれた私は、電車に乗ってこうしてここまでやってきた。今から向かうのは、あの鏡台の元々の持ち主の息子さんの家だ。
鏡台は持ち主であるおばあさん──光枝さんが亡くなったあとも、鏡台はずっとあの部屋に置かれたままになっていた。引き取り手もおらず、処分するにはもったいないような立派なものなので、住人が自由に使えるようにと大家さんがそのままにしたらしい。
彦三郎さん曰く、死んだあと幽霊としてあの部屋に棲みついた彼は、光枝さんと彼女が雇ったという霊媒師の手によって鏡の中に閉じ込められてしまった。鏡から出るには鏡を割るか、彦三郎さんを鏡に閉じ込めるのに使ったという小さな箱が必要なのだという。
あの部屋に住人が変わる度に彦三郎さんは声をかけたり、音を立てて存在を知らせようとした。きっとそのせいで家賃が格安になっているのだろう。
なぜか第六感があるわけでもないのに彦三郎さんと話ができた私に向かって、彼は鏡を割ることだけは絶対にしたくないと言った。そこで私は、光枝さんの遺品を管理する彼女の息子、幸彦さんを訪ねることになった。
「初めまして、田代と申します。生前、光枝さんには大変お世話になりました」
「そうでしたか。ご丁寧にありがとうございます」
本当は光枝さんとの面識は全くない。だが、見ず知らずの人の遺品から物を探すわけにもいかないので、彼女に預けたものを取りに来たという体で話を通すことにした。
申し訳ない気持ちでいっぱいだが、ここは彦三郎さんのためにも腹を括るしかない。
「それで、母が預かっていたものとは」
「はい。あの、小さな桐の箱なんですが、紙で封がしてあって」
彦三郎さんから聞いた情報を伝える。
「あぁ、そういえば。見た覚えがあります。母の物はほとんど捨てずに2階に置いてますので、今探してきますね」
幸彦さんは私の話に疑いを持つ素振りもなく、とても親切で、すぐにその箱を探して持ってきてくれた。
「これで間違いないですか」
彼の手にある箱は彦三郎さんの行った通りの大きさ形で、紙で封がしてあることから言っても間違いなさそうだった。
「はい、そうです。ありがとうございます」
「いえいえ。こちらこそ生前の母と親交のある人が訪ねてきてくれてありがたいです。実を言いますと、亡くなる少し前の頃は母のことが少し心配でね」
苦笑いを浮かべる彼に、「え?」という表情を返す。
「いやぁ、おかしな話だと思われるかもしれないんだけど——」
20年ほど前、光枝さんは当時一緒に暮らしていた旦那さんとともに災害に見舞われた。幸い彼女は一命を取り留めたが、旦那さんと、その旦那さんと長年住み続けた家を一度に失うことになった。
その後、今私が住んでいる壽荘に住まいを移した光枝さんだったが、しばらくして息子である幸彦さんにおかしなことを言い始めたらしい。
「家に幽霊がいて、あまりに騒がしくされて困る。誰かいい人を紹介してくれないだろうか——」
「しょうがないんで知り合いのツテを頼って詳しい人を紹介してみたら、そのあとから母はピタリとそういうことを言わなくなりまして」
「そうなんですね……」
話を聞いた私はおおよそのことを理解した。彼が頼んだというその人が、彦三郎さんを鏡に閉じ込めたという"霊媒師"なのだろう。
「父が亡くなったのも突然のことでしたし、何しろ2人は仲が良すぎるぐらいでしたから。母はさぞかしショックを受けていたと思います。唯一手元に残った父との思い出の鏡台は、亡くなるまでずっと大切にしてたと聞きましたし……」
「あの、その鏡台なんですが。実は今、私が使わせてもらってます」
「そうでしたか。それは良かった。私が使えるものでもないので、あなたのような人に使ってもらえて母も、それから父も喜んでいると思います」
「そう言っていただけて嬉しいです。大事に使わせていただきます」
「あの、1つお聞きしてもいいですか」
箱を受け取った帰り際、私は最後に尋ねた。
「お父様のお名前って……」
「あぁ、父の名前は————」
「ただいま」
「おかえり。あれはその、見つかったかい」
「はい。これです」
桐の箱を鏡に向ける。
「あぁ、あったかい。そうかい。ついにこの時が来たんだね」
嬉しそうで、でもどこか寂しそうな声。
「あの、彦三郎さん。この箱を開けたら、彦三郎さんは鏡から出られるんですか」
「あぁ」
「そうなったら……そうなったとしたら、彦三郎さんはどうなるんですか」
「わしはそうだな——」
彦三郎さんが考える間、静かな部屋に音はない。
「もうこの世に未練はない、だろうな」
「それはこの世にもう光枝さんがいないから……ですか」
「な、なんでそれを……いや、そうか。そりゃ分かるだろうな。まぁ本当はあいつと一緒にあの世に行くはずだったんだ。だがそれを待つ間、ここで誰にも気づかれないのは暇でな。それであいつにちょっかいを出すようになったらこのザマだ」
彦三郎さんが声を上げて笑う。
「光枝は得体のしれない幽霊をその箱に閉じ込めたと思っているだろうが、実際は何の手違いか鏡台の鏡に俺を閉じ込めたんだからな。まぁちょうどいい冥土の土産話だな」
「——やっと光枝さんに会えるんですね」
「あぁ。そうだな」
この部屋で、彦三郎さんの存在に気づかないままの光枝さんにちょっかいを出し続ける姿を思い浮かべると、微笑ましさと切なさで胸がキュッとした。
「箱、開けていいですか」
「ああ、頼むよ」
封を切り、桐の箱開けると、眩い光が部屋に広がった。一瞬、鏡に反射した光に思わず私は目を閉じる。
ふと彦三郎さんの声がした気がした。光枝さんを呼ぶような声だった。
目を開けた私の前には、光枝さんの鏡台。丁寧に磨かれた鏡台は彦三郎さんに対する彼女の愛そのものなのだろう。
いつか私も二人のような非凡な恋ができるのだろうか。
鏡台に映る自分を眺めながら、私は未来の自分の姿を探した。
「鏡」
鏡さん、鏡さん。真実を教えて。
醜くうつる私は悪役しか生きる道はないの?
合わせ鏡。零時に覗き込んではいけない、丑三つ刻に行ってはいけないと言われている。
たかが迷信。都市伝説。
未来の自分を見ることができる。そう言われて想像する「未来の自分」が二十代や三十代の様子であることも噂の中心が十代の中高生であることを考えれば不思議なことではない。死相なんて想像もしないはずである。ところが、合わせ鏡は未来の自分としてその人物の死相を見せるという。
零時に覗き込むのは正直に言えばまだかわいい方だ。丑三つ刻の合わせ鏡は異界へとつながってしまう。その結果、その異界のもの、この世のものではないものがこちらの世界にやってくる。
異界に興味があったあの子は、丑三つ刻に合わせ鏡を覗き込んだ。
――あなたは誰?
あの子は人が変わったようだった。取り憑かれてしまった。別人と言っても過言ではない。クラスメイトも友だちも親兄弟も、誰も彼もが知らないあの子に困惑する。
あの子はどこにいってしまったのか。確かにあの子の姿かたちをしている。けれど、あの子の笑い方が違う。あの子の好む食べ物が違う。様々な違いが周囲を惑わす。本人にそのつもりはなくとも。
鏡に映るあの子こそ、あの子かもしれない。
【鏡】
君の瞳は鏡
僕の気持ちを綺麗に反射する
鏡自体は何も映さない
『鏡』
毎朝ニュース番組とともに放送される、じゃんけん対決。
それはテレビのリモコンを操作することで参加できて、勝てばキャンペーンに応募できるというものなのだけど、小学生のあの子は学校に行く前にただただキャラクターとじゃんけんをしていた。
けれど運が悪いのか、何度やってもあの子が勝てる日はこなくて、あの子も悔しかったみたいで毎朝じゃんけんの前に洗面所で練習してたみたいなのね?
その練習方法が驚きでね、あの子ったら、【鏡にむかってじゃんけん】してたんですって。
意味ないわよね…でも、子供の発想っておもしろくて、見ていて楽しいのよ。
それからしばらくしても、あの子が番組のじゃんけんに勝つ姿を見れることはなくてね、まだかまだかと様子見してたんだけど…ある日にあの子、不思議なことを言い出したのよ。
「おっかしいなぁ…いつもは勝てるのに……」
って。
おかしい話ではないわ。このニュース番組のじゃんけん対決以外でも、学校とか友達と遊ぶ時とか…じゃんけんをする場なんていくらでもあるし。
…ただ、ちょっとだけ違和感を感じて………少しの好奇心で、あの子が鏡に向かってじゃんけんしてる様子をスマホで撮ってみたのよ。
その時はあの子自身を見てたから気づかなかったんだけど…あの子がその日もじゃんけんに勝てずに学校に行ったあと、動画を見返してみたの。
そしたら…あの子、鏡の自分に勝ってたのよ。
さすがに気味悪くて、動画は直ぐに消して、帰ってきたあの子に鏡の前でじゃんけんはやめるよう言ったわ。
…鏡は自分をうつすだけじゃないこともあるみたいだから、気をつけた方がいいわ。