『遠くの空へ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
思いっきり投げたボールが、
空を舞って、
ドックランの犬たちの注目の的
もう帰ったかな
結局一度も夢に出てくれなかったね
おばあちゃんのところにはちゃんと行った?
すぐ忘れるからね、また会いに来なよ
遠くの空へ
昼休み、アキは口さがない人たちの陰口に耐えかねて、部屋を出た。
お先です、と言い残して屋上へと向かう。
席を外してしまったから、次は自分が陰口の標的になるかもしれない。まあ、いつものことだ。
あの人たちのことを、一概に責める気にはならなかった。
彼らには彼らなりに理由がある。理不尽な業務に押しつぶされそうな時、不満を言い合ってなんとか息を繋ぐ。あの人たちにとって陰口は、みんな同じだってことを確認する作業のようなものだ。
アキだって、上司に仕事を押し付けられた時、先輩が自分以上にムカついてくれて、ちょっと救われたような気持ちになったこともあった。
だからアキは、彼らと一線を画して孤立する勇気もない。
流されるのも嫌だけど、嫌われるのも怖い。
アキは昔からそういう子だ。
学校の休み時間をやり過ごしていたあの頃と変わらない。
自分から誰かを悪く言うことはない。だけど陰口を非難しようともしない。
無害であろうとして結局、誰とも本心で繋がれない透明な存在になった。
中途半端な立ち位置は、いつだってアキそのもの。
今日だっていつもみたいに、スマホの画面をスクロールして陰口なんて聞き流せば良かったんだけど。
空があまりにも青く、高かったから。
否定的な意味を成す言葉たちは、皮膚を針でちくちく刺してくる。やり過ごすには、雲ひとつなく透き通る青が眩しすぎた。
アキは屋上のフェンスにもたれて、空を見上げる。
昔はあの青い空が全てを吸い込んでくれたような気がしてたけど……
今はもう空を見たって、胸の奥に澱んで残った自分の不甲斐なさが消えるわけでもないのをアキは知っている。
遠くの空へ届けたい思いも相手もいないアキは、ただただ無になる為に、果てしなく広がる高くて青い空へ溶け込んでしまいたかった。
不格好で
折り目もズレた
飛行機で
さあ、行こうか
「遠くの空へ」
短歌ってむずかしーね
翼のない君は、いつも遠くの空を見ている。
空を飛びたいのかと聞けば、首を横に振るから、僕は首を傾げた。
それじゃあ君は、なにを見ているのだろう。
問えば、曖昧に笑ってみせる君。
それはまるで、翼のない君がどこかに行ってしまうような。
そんな気がして、僕はその白い手を握ることしかできなかった。
遠くの空へ
10年後の空は、今日とそんなに変わらずにあるだろう。
10年後の自分はどうなっているだろうか
子供たちは大人になり、夏休みのお昼ご飯には悩まなくなっているだろう
自分の時間がないことに苛立ったりするどころか、時間がありすぎて困っているかもしれない
静かな家で寂しいと思っているのかもしれない
掃除も洗濯も当たり前のことは毎日こなし、仕事もしているだろう
歌は続けているだろうか
周りにはどんな人がいるだろうか
笑っているだろうか
苦しんでいるだろうか
遠くの空へ そこにいる私へ
あなたが笑っていられるよう、今の私は少し頑張らないといけないね。
あなたが笑っているということは、今の私の積み重ねが間違っていないということだから。
遠くの空へ それを見上げる私が幸せであるように。
今の私は、毎日を生き切ろう。
歩いていると、後ろから頭の上を何かがふわっと触った。何?と思うと、通り過ぎていくハトが見えた。飛びたったハトの羽が当たったらしい。
ハトにからかわれたのか、距離を読み間違えたのか? 遠くへいくハトを見ながら、自分の力で自由に飛べる感じはどうなのだろうと思う。
ずっと続く空のその先。飛行機で空へ行ったら、下に雲が見えた。いつも見上げていた雲が下で漂っている。雲の上は快晴だった。下からは見えなかったまぶしいくらいの真っ青な空間を突き抜けていく。
そして、まだまだその先にも空が続く。そんな中にいるちっぽけな自分を思うと、些細なことなんてどうでもよくなってくるのだ。
「遠くの空へ」
遠くの空へ…
空って足元の空気も
空なんだろうか。
地面から一ミリでも離れたら
空なんだろうか。
山に登って、足元の霧を
「それは雲だよ」と教わったから
やっぱり地面から離れたら
空と言う空間になるのだろうか。
お題は遠くの空へだった。
遠出すれば遠くの空だな。
お出掛けは涼しくなるまで
御免だな。
(遠くの空へ)
遠くの空い
遠くの空い 思いをはせて
願い 事を したことは
何度も あります
癒されていました
ありがとう
遠く空 願い込を込めて 懐かしむ
夜空みて 涙ぐんだ日 懐かしむ
どの色がいい?
そう問うと、可愛らしい彼女の指が淡い水色の折り紙を選ぶ。
これ、おにいちゃんのおようふくとおんなじ。
頬を赤らめてにこにこと笑う姿に、僕の胸にじんわりとあたたかいものが溢れてくる。
大切な君が、これからもずっとずっと幸せでありますように。
一折一折願いを込める。
ひこうき、できた?すごいねぇ。
風を選んで手を離せば、紙飛行機は空を目指す。
どうか。どうか、いついつまでも。
遠く、遠く飛んでゆけ。
#遠くの空へ
遠くの空へ
なんの特徴もないしなんの個性もないしなんの能力もないしなんの才能もないしなんにもできないけど、嘆いたり、もうしないからね。
ガチャガチャって何が出るかわからないギャンブルが醍醐味なわけじゃないですか。ガチャに限らずランダム商品とかクジとか。
でも目当てのものが出す求めてないものばかり出続けると「いらね〜〜〜〜〜〜これならフリマで買ったほうが安いし早いしつか最初から単品これ狙いならフリマで買ったほうが良かったのでは?そのほうが合理的では?」って思考が出てくる。ほんとつまらないと思います。
違うじゃないですか。何出るか分からない中目当てのものが出たときの喜び、延々求めてないグッズがダブるわ欲しいのは出んわってときに目当てのものが出てきて脳汁ドパドパ出るのがいいからガチャを回すわけです。中古で買ったほうが安く済む場合もあるけど、中古で探せば買えるとか手に入れられるとかそういうことではない。
そしてフリマで買ったほうが安いと分かっていながら回すガチャが最高だったりする。ギャンブルは楽しい。
フリマで買ったほうが合理的と言うなら、わざわざガチャを回しているのが不合理というんだろうかと考えたんです。考えた末に行き着いたのが、合理的快楽主義。どうすればこの理不尽な世界を最も楽しく生き抜けるかを合理的に考えた結果の快楽主義。
人生所謂「無駄」を楽しんでなんぼだと思うんです。僕は無駄だとはこれっぽっちも思っていないが便宜上「無駄」と表記させていただく。
ゲームは無駄だと言われていることがありました。「ゲームなんてして何になるんだ」と。そういう「こんなのやって/買って何になるんだ?」という無駄、特に何にもならなくていいじゃないか、と僕は思う。ただ自分が嬉しくて満たされるだけ。それでいいじゃん、その時楽しけりゃそんでいいの。でそのうちそれが思い出とかになってまた幸せになれる。お得だよね。そういう合理的快楽主義。
「無駄」なんて言い出したらキリがないよ。言おうと思えばいくらでも言えるさ。ゲームもアニメも映画も舞台観劇も音楽も旅行も無駄だ。人付き合いもコミュニケーションも無駄だしそもそも人間どうせ死ぬんだから息を吸ってることすら無駄だ。
でもそんなわけないじゃないか。無駄を味わって人は豊かになれる。無駄か無駄じゃないかは「その人にとって必要か不要か」ということでしかない。僕にはギャンブルが必要。へへ、ガチャだけど。
自己正当化?自己正当化でいいじゃないか。人生は積極的に自己正当化していくほうがいい。
合理的快楽主義、無駄を楽しむ。そこで考えたのが「ではこの『無駄』な脳みそも存在してていいんじゃないか」ということ。
何をするにも覚えが悪く、容量が悪く、努力という言葉には「人並みになること」が内包されているような人間が生きていたって何の役にも立たず、誰の役にも立たず、社会からのはみ出し者のゴミでしかない。どう転んでも批判しかされないような人間だ。ならさっさと死んでしまいたいと思っていた。あったところで無駄な脳みそ。
でも僕はガチャという無駄が好きだ。ゲームも好きだし音楽も好きだ。無駄が好き。無駄は存在してていいと思う。なら僕だって別に存在してていいんじゃないかな。
「不要」な人にとっては僕は邪魔でしかないと思うけど、僕に限らず「邪魔」は世の中溢れまくってると思う。僕は煙草が不要な人間だから煙草は邪魔だし、なんならさっさと消滅してしまえと思ってる。一人一人「不要だ」と思うことやものはそれぞれあるだろうけど、そういう「不要」が溢れて成り立ってるのが社会だ。
僕に死ねと言ってくる人を想像してみる。すると僕は「そんなこと言ってくるやつがそれこそ僕にとって不要な存在だからお前が死ねや」と思った。なんだ。意外とちっぽけなのかもしれない。
僕が消滅する必要があるというなら世の中の要らないものも全部消滅する必要がある。みんなの要らないものを全部消していこう。そのうち社会が滅びて国が滅びて人類滅亡してると思うよ。いや、そもそも僕が人類は不要だと思ってるから、みんなの不要なものを消していくことになったら、僕の不要なものを消すことになったら、全員が死ぬことになる。
人間がそもそも無駄だ。無駄なのにみんな生きてる。僕は自分の存在を無駄だと思っている。でも人間がそもそも無駄で、無駄なのにみんな生きてて、なら、別に無駄な僕が生きているのは当たり前なことのかもしれない。
今日も空が青い。
幼い頃、テレビに映る主人公みたいに、空を飛べたらな、なんて思ったことがある。天使が持つ真っ白なつばさでも、ヒーローが纏う大きなマントでも、魔法使いが乗るほうきでもなんでもいい。あの大きな空の中で飛べたら、どれだけ気持ちいいのだろうって。
歳を重ねた今、仮に雨雲や積乱雲の中に突っ込んでしまったら無事では済まないよな、と夢見る子どもとは真反対な、現実を直視する大人への仲間入りをしてしまった。かと言って、小さな自分がかつて、遠くの空へ向かうことを夢想したように、これからも広がる可能性を手繰っていくつもりだ。今はまだ明確に目指すこと、ものを決めているわけではないけれど、果てのない中、歩んでいくのはみんな同じだと思うから。
遠くの空へ
快晴。そこまで早く起きなくても良いのに窓からの光で目が覚めた。いつも夜遅くに帰るからカーテンの存在なんてすっかり忘れていたのが悪かったのか。少し良いのを買ったつもりだった遮光カーテンは端に寄せられていて自身の役割を成し遂げていない。寝起きの暑さの不快感に冷房の温度を下げた。さーむーいー!なんて甘ったるい声を出しながら布団にくるまる誰かがいないから適温に。エアコンのリモコンを置き、代わりにテレビのリモコンを手にとって電源を入れる。ニュースでは、暑さ指数や熱中症対策について話すキャスターは爽やかなワンピースを身に纏っている。都心ほど深くは説明されなかった県の天気にふと目を通して天気アプリを開く。現在地、自宅の区、からスライドして表れたのはここから何十キロも離れた場所。その場所の天気が警報が出るほどの雨だと理解して携帯を閉じる。電子タバコを取り出して、息を吐く。肺も冷たくなる感覚に少しほっとした。一息ついた途端に窓の外から聞こえる蝉の音がやけにうるさく感じ、あまり興味はない野球のニュースの方の音量を上げる。窓の外もニュースの中も綺麗な青空が広がり夏本番を感じさせる。今この瞬間にあっちは大雨が降っているなんて信じられない。あの場所にいるであろう人に「雨大丈夫?」なんていう連絡を送ろうと打ち込んでやっぱりやめた。
「ごめん」
文面で見る、堅苦しくとも簡潔な三文字。送信ボタンを送ろうと思って、薄い煙と共にため息を吐く。だって自分は悪くない。仕事が忙しいのは分かってくれていると思っていたし、会える時間が減っていたのは痛感していたけど、寂しいのはこっちだって同じだった。働かなくて一緒にいられるならそんなに最高なことはないけど、一緒の家に帰れるならそんなに幸せなことはない。けど、自分の帰る第二の家と呼ぶには、どう考えても遠すぎるその距離と時間に遮られて会う回数は制限される。一緒に暮らすために働く。二人の将来のためにお金を貯める。あっちもあっちで頑張っていることは知っている。会えなくてもLINEも電話も毎日欠かさないようにしていたから、だから大丈夫、寂しくないなんて言い聞かせるように考えていた。本当に久々に会えたのにあんなひどい喧嘩になるなんて思わなかった。会えなかった分こじらせていた思いをお互いがぶつけあうだけで、まともな話し合いもできずに後味悪く帰った新幹線から一週間。連絡が止まったLINEの画面を見る。全てが嫌になって、もう一度布団に倒れ込む。思考を放棄しようとしたけどまだ窓から差し込む光が眠気をゼロにさせる。遠くの方まで雲一つ見えない。
ふとポップな通知音が耳に入る。さっきまで開いていた画面には新たな文面。
「きてよ」
そのメッセージは簡潔な三文字なのに寂しそうな雰囲気をひしひしと伝えていた。あっちは雨で警報出てるのに、新幹線動いてるのかな…なんて考えるよりも前に予約のアプリを開く。ええと、お詫びのスイーツは駅で買うとして、家から駅までこれぐらいで行けるか。よし。財布、携帯、傘とタオル。あとは…もういいか。そんなことより早く行こ。日傘の機能は無い大きな雨傘を手に持ち、駅までの道を歩く。ちゃんと話そう。素直に謝ろう。あっちが勇気を出してくれたんだからこっちが答えないのはダメだ。今行かなければ全てが終わってしまう気がしたから。いつか、そんなこともあったねと笑いながら話せるように。そうやって話しながら隣にいられる幸せを噛み締めることができるように。
「ところで」
「ところで?」
「太陽系を基準とする座標系で考えると半年前か半年後の空が一番遠い」
「だからなんの話ー?」
「今回のお題だが、絶対座標があるなら過去の空は二度と会えない」
「またというか、ほとんどメタな話しかしてない」
「つまり、タイムマシンものなどでは相対座標系でしかも座標を固定できるという」
「ん?」
「時間がというか時空間が変化するときに空間的変化もすごいので、それに追従できるのがすごい」
「未来方向は穴掘って埋めた後に、冷凍睡眠するみたいなのを見たような」
「頭良いよね。何回も再発明されているアイデアだけど」
「そうだねー」
「ところで」
「ところで?」
「空は繋がっているので、近くの空だろうが遠くだろうが同じもので、見ている人にとって違いがある」
「……そろそろ疲れたので帰る」
「なんとか心だろうか?」
「」
お題『遠くの空へ』
とまどい
おそるおそる声をかけた 君は
くすりと笑い
のんびりとした口調で返事をくれたね
そらを見上げて
らいせでも絶対会おうねなんて
へんな僕です
バカンスは遠くの空より近くの海へ。
あなたがいれば
実はどこでも。
地球は丸いので、もういやだと穴にもぐって、下に下に掘り下げていったつもりでも、とうとうどこかに顔を出したと思ったら、そこにはまた空が広がっていたりするのだ。
「遠くの空へ」
僕の見ている空の向こうには、同じ空が広がっているのだろうか。
何処までも続くこの空の先には、いったい何が広がっているのだろうか。
もしも僕の背中に翼が生えたなら、何処までも飛んでいって確かめられるのに。
次に産まれてくる時は、神様に頼んで何処までも飛んでいける翼を貰おう。
そうしたらきっと、あの遠い空の端っこまで飛んでいける気がするんだ。
「お題 遠くの空へ」#9
【遠くの空へ】
幼いころから、自発的に行動することができなかった。
母は乙女チックで可愛い人だった。わたしにも、〝かわいい〟を求めるのは必然で、食べるもの、着るもの、交友関係。そのすべてに母の求めた答えがあって、その問いがわたしの人生の指針だった。
「アンタはどうしたいワケ」
言われたとき、視界が開けるようだった。
ずっとずっと、息苦しくて、居場所がなかった。
肩身が狭かった。
自分がそう感じていたことに、言われて初めて気がついた。
明るい金髪、数え切れないピアス、無愛想な美形ゆえの圧、間延びした口調。
手入れの行き届いた黒髪、着崩すことを知らない制服、美形の圧を柔らかくするための愛想、堅い敬語。
何もかもが違うわたしたちは、パズルのピースが嵌るように仲良くなった。大抵はわたしが話す内容に彼が相槌を打つ、というかたちでコミュニケーションをとった。
可愛がっていた娘が恋に現を抜かしているとあっては面白くない。母は当然、交際を反対した。
従わなければ母に嫌われる。でも彼と出会えたこの幸運を手放したくない。手放すわけにはいかない。説得は困難を極め、結局、母を納得させることはできなかった。
絶縁覚悟で自立したのは、大学入学を機に一人暮らしを始めたころだった。母は眉を下げるが、わたしにどうしても行きたい学校があったこと、彼とは遠距離恋愛になることから承諾を得ることができた。
遥か遠くの地で、一人暮らし。羽ばたくきっかけをくれたのは間違いなく彼だ。母もきっとわたしに失敗してほしくないだけだ。わたしが、変わらなければならないのだ。
『遠くの空へ』
好きな空を目指す
好きな空を走る
あさひがのぼる 東の空
雲がやってくる 南の空
日が明日へ行く 西の空
目指すは高見の 北の空
目指したい先を見る
登ってみたい上を見る
進んでみたい道を見る
会ってみたい人を見る
私の足の枷になる
過去の不安や悩みがある
私をとやかく言う声や
出来事たちが私を止める
わかる……わかる……よくわかる
進めばきっと、また起こる
だけどそれは、また無くす
私の明日は、無くさない
怖い、怖い、よくわかる
それでも明日はやってくる
だったら恐怖も連れていく
泣いて叫んで、連れていく
うずくまってもそのまま進む
私を笑う声しても
私は私を笑わない
同じ人を笑わない
進む、進む、ただ進む
行きたいところは遠いけど
近くを目指し、遠くを目指す
あゆみが遅くて情けない
そう思う日も沢山ある
それでも歩みは止めたくない
抜かれ、笑われ、惨めも惨め
それでも私は ただ進む
遠くの空で
待ってるあなたに
会うまでは―――
〜シロツメ ナナシ〜
239