『通り雨』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
むかしね
電車に乗ってて
通り雨と競争して
負けたことがあるよ
降りる駅につく頃には
もっと先へ行ってしまって
空は晴れていたよ
………通り雨
通り雨の後に虹が出た
田んぼを車で走っていたので
綺麗なアーチになっていた
いくつになっても
雨の後に日が差したら
虹を探してしまう
『通り雨』
君と一緒なら、通り雨に濡れるのだって悪くないかな。
雨足が近づいて私の後ろを通る。
ふと振り返ると、彼は私に虹を手渡す。
「通り雨」とかけまして
「濡れた切手」と解きます。
その心はすぐに「晴れる/貼れる」でしょう。
通り雨に濡れる
傘を忘れて濡れる
寂しい心も濡れる
通り雨
黄昏時、ビルの谷間の寂しい路地だ。私は退勤して家路を急いでいた。
通行人とすれ違いざま「来るぞ」と聞こえた。
私に言ったのだろうか?
振り向くと紋付羽織袴、そして丁髷。整った身なりの江戸時代の侍と目が合った。
あれ?と思った瞬間ふっとあたりが暗くなり、遠くから聞こえてきたと思った悲鳴が気づくとすぐそばから発せられている。降りかかった生温かい液体を拭って手を見ると血液だった。
斬られて路上に落ち燃え上がる提灯が、地面を転げ回って苦痛の声をあげる和服の男を照らし出している。
さっきの紋付侍は現代の景色と共に消え、かわりに私が江戸時代に来てしまったようだ。
長い板塀と水路に挟まれた舗装されていない小路で、男を斬ったと思しき殺気立った賊がこちらに刀を向けている。来るのか、と思ったら斬られた方の仲間らしい若い侍が抜刀して前に出た。
しばし対峙し、動いた途端気合いの声と共に何かの塊が吹っ飛んで路上に落ちた。指がついている。これは手首だ。
実際にそれが武器として使われる現場に立つと刀はこんなに恐ろしく見えるものか。
劣勢となった賊は逃げるか迷ったように見えたが、突然私に凄まじい殺意を向け、駆け寄って刀を振りかぶった。叫んだ声は天誅、と聞こえた。
これは過去の出来事で、実際に私の位置にいたのは紋付袴の侍だったのではないか。彼はここで殺されたのか。私には天誅される覚えはないぞ。
ゆっくりと感じられる時間の中でこんなことを思っていた気がする。
私は反射的にノートパソコンが入った鞄を盾にして刀を受け、横に薙ぎ払った。
体勢を崩した賊の背を若い侍が袈裟斬りにした。
ざあっと血が飛んで雨のようにあたりに降り注いだ。
顔についた血を拭って手を見ると、何もついていない。
気がつくと私は元のビルの谷間にいた。
この時は気づかなかったが、道の端には小さな石碑があり、何人もを殺した幕末の暗殺者がついに返り討ちにされて命を落とした現場がここであることを伝えていた。
目的を遂げられなかった暗殺者の怨念が今でも標的の子孫を狙って暗殺の場面を再現しており、最初に現れた紋付袴の侍はご先祖様で私を助けようとしたのではないか、今はそう考えている。
煉瓦造りの街路を歩いていると、ふと鼻先にしずくが落ちてきた。立ち止まって、空を仰いだステラの顔に、ぱたぱたとしずくが続けざまに落ちてくる。
ついさっきまで青空が広がっていたはずなのに、今は暑い雲が垂れ込めている。向こうの方にはまだ青空が見えた。
「――通り雨かもしれませんね」
声が降ってくると同時に頭に何かを被せられた。視界が極端に狭まる。ふんわりと漂う香りと、この硬質な肌触りは、彼が着ていたジャケットだ。
「ラインハルト、こんなことしなくていいのよ」ステラは頭を隣にいる彼の方へと向ける。「あなたのジャケットが濡れてしまうじゃない」
ふふと小さく笑う声がする。生憎と、視界が狭いせいで彼の表情はよく見えないが、いつものように穏やかな微笑みを浮かべているのだろう。そんな笑い声だ。
「上着は濡れても乾かせばいいんです」
「わたしだって濡れても、いつか乾くわよ」
「体を濡れたままにしていては、風邪を引いてしまいます」
「少々濡れたくらいで風邪など引かないわよ」
間髪容れずに返ってくる言葉に、ステラは呆れを混えて返答する。全く、この男はいつまで経っても過保護だ。出会ったときから何も変わっていない。
(――まあ、だから安心できるのだけど)
小さく息をつくとステラは微笑を口元に浮かべる。
被せられていたジャケットを羽織り直すと、彼を見上げた。彼は穏やかな微笑みを彼女に返して小首を傾げた。
「わたしだって、あなたが濡れるのが嫌なのよ」
ステラがそう言うと、彼は少し目を見開いたが、すぐに笑顔に戻った。
「だから、面白いものを見せてあげる」
彼女は指を鳴らした。ぱちんと小気味のいい音がしめやかに辺りに響く。すると、しとしとと自分たちを濡らしていたしずくが自分たちを避けていくようになった。
今度こそ完全に目を見開いて、ラインハルトはその光景を見つめている。
「もっと早くこうすればよかったわね。ごめんなさい」
「いえ……これは、一体?」
「単純なことよ」彼女は肩を竦めた。「魔術で雨を弾いているの」
彼は感嘆の溜息を洩らすと、ステラの方に顔を向けた。
「さすがですね、ステラ。式も詠唱もなしに行使するとは」
「こんなこと大したことないわ」
そう言った彼女は、自分たちの周りに虹ができていることに気づいて声を上げた。
「見て、ラインハルト。虹が出てるわ」
「おや、本当ですね」
自分たちを彩る虹を見て、彼は再び穏やかな笑みを浮かべた。彼女の肩を抱き寄せると、彼女はきょとんとしたように彼を見上げたが、ふっと笑顔になると彼に寄り添った。
やがて、通り雨は去っていくだろう。それまではこの美しい景色をあなたと見ていたい。
窓の外から、雨粒の音が聞こえてくる。
動かしていた手を止め、窓の方に歩み寄る。
どうやら通り雨のようだ
干してあった洗濯物の事を思い出し、駆け足でベランダに向かう。
物干し竿にかけてあった洗濯物を取り、少しはたく。
足元の床に置き、他の洗濯物も同じように部屋の中に入れていく。
ふと、外の方から声が聞こえてくる。
視線を移すと、高校生ぐらいの男子生徒達が、駆け足で走っていた。
焦りと楽しさが混じった声色で、隣にいる生徒に急かすように声をかける。
雨に濡れてはいるが、その顔は嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「良いなぁ…」
自身の気持ちが口から漏れ出す
嫉妬の気持ちが、心の器から溢れたような感じがした。
持っていた洗濯物を、強く握りしめる。
病気になんてなっていなければ、こんな気持ちを抱かずに済んだのに。
私も、あんな青春を過ごせていたのかもしれないのに。
自身の頭上に広がっている雨雲のように、気持ちが灰色に染まっていく。
そんな顔をしていると、日差しが顔を直撃する。
急に眩しくなったことに驚き、空を見やると、
遠く離れた空が雲ひとつない晴天だった。
憂いなんて無い、躊躇いなんて無い。
そんな青空を見ていると、さっきまで雨が降っていた私の心が、晴れていくかのようにすっきりし始めた。
きっと病気は治る
きっと学校に通える
きっと青春を送れる
"きっと"という、不確定しかない、だけど希望が詰まっている。そんな言葉で心が埋め尽くされていく
他の人から見たら、ただの晴天だ。
だけど私から見たら、希望と夢が詰まった晴天だ。
自然と口角が上がる
床に置いていた洗濯物を拾い、部屋の、ハンガーがかけれそうな場所にかけていく。
自身の部屋に戻り、書きかけのノートの前に座る。
まずは、今やれる事をやろう。
そう、心の中で喋りシャーペンを手に取った。
お題『通り雨』
不意に 天から降り注ぐ
世界は色を変えていく
それは
輝いているだろうか
憂いているだろうか
―「通り雨」―
通り雨
ポツリ、と頭を刺す冷たい刺激。
見上げれば、曇天が広がっていた。
まるで今の気持ちを投影しているかのように、私を中心に雨雲が広がっているようで。なんだか無性に、泣きたくなった。
ザァザァと雨が降り注ぐ。雨音は段々と強くなって、けれど曇天は、私の頭上にだけ広がっている。少し行った先の空は淡い光が差し込んでいて、オレンジとグレーの濃淡が目に痛かった。
あぁ、少し行けば、光の元へ出られるのに。
私だけ、暗い世界に取り残されたみたい。
私だけ、みんなから置いてけぼりにされたみたい。
怖くて、泣きたくて、動けないでいる私は、ただ雨に打たれるばかり。けれど不思議と、涙は出なかった。泣いていたのかもしれない。でも気づかない。誰も、私ですら、頬を伝う雫が何なのか、わからないでいる。
皆が雨から、暗がりから逃げるように駆け足で横を通り抜けていく。
雨が、雨音が、弱まっていく。
パラパラと惜しむように体を叩いた雫。傷ついてもいない体を、冷えてしまった私の体を、暖かい光が包み込んでいく。そうして先程の雨が、ただの通り雨と知る。
皆、歩みを緩める。天を仰ぐ。ため息をつき、そしてまた、歩き出す。
光は差し込んだ。私の元にも。
どこへも行けなかった、私の元へも。
ひとつ、息をつく。前を向く。
私もまた、歩き始めた。
激しく降り注ぎ
何事も無かったように
去って行った
通り雨の中
ずぶ濡れの二人が
一つの傘の中
少しの間
立ち話しただけ
そう
ほんの束の間
肩寄せあって
冷たい雨から
身を守っただけ
そんな恋だった
優しい時間に
心地良さを感じながら
互いに
本当を口にはせず
探りあって二人
少しづつ近づきながらも
ブレーキから足を
外さなかった
ふと脳裏に甦る
切ない痛みの記憶
あれは
いつの事だったろう
また雨が来て
土砂降りになる前に
先に傘から
飛び出したのは私
雨の冷たさに
芯まで冷えて
心まで凍えて
動けなくなる事
知っているから
「通り雨」
通り雨
急にザーっと雨が降ってきた。東の空は明るいから通り雨だろう。
周りを見ても田んぼばかりで、雨宿りするところはない。
仕方ない、真っ直ぐな道を走る。
直ぐに全身水浸しになり、身体が重くなる。走れなくなり、トボトボ歩いていると、急に一直線に陽が差し、雨も降っているので、近くの山に虹が出る。
(あ〜今度はお天気雨か)
すると突然、後ろから若い男性が
「傘ないの?だいぶ濡れているね。大丈夫?」
と、傘を差し出し私に渡すと、走って行ってしまった。
そして走り去った田んぼの向こうから、狐のしっぽがくるんと輪を描く。
狐の嫁入り?
通り雨は止んだ。虹も消えた。
あれは狐のお婿さんだったのかしら?
優しいお婿さんね。
お幸せに。
通り雨 Street rain
さっと降って、さっと止む雨
俄(にわか)雨 Shwer
村雨(むらさめ) Shwer
驟雨(しゅうう) Shwer
以上3つは同じ意味らしいが、自分は、それぞれ微妙に何となく感じが違う。
俄雨
俄にザーと降って直ぐ止む雨。
にわか雨
突然ににザーと降って直ぐ止む
雨。
村雨
突発的にど~と降って直ぐ止む
雨。徳川家には縁起が悪い雨。
驟雨
ドッサリ降って直ぐ止む雨。
37作目
貴方は、本当に、通り雨のような人でした。と言われたくない。 徳博🤗
ふたりで、さびれた美術館に行き、どこにも誰ひとりいないことを確かめてみて、気が遠のくほどたくさんの時間をかけてすべて見回り、とうとうふたりとも、それに飽きてしまえば、埃をかぶった額のそばで、まるで自分たちそのものが作品集のうちのひとつであるかのように、ふたりのどちらかが笑いだすまで、熱情のままに見つめあっていよう、きみの鼻のてっぺんに自分の鼻をくっつけて、くすぐったい気持ちになったらそのまま子供みたいなキスを浴びせあおう
【十五夜のリハーサル】
丸い月がちょうど雲の隙間からいい感じに覗いていたのでスマホのカメラを向けたけど、なんだかちっぽけになっちゃうのであきらめて、月とお見合いしながら歩いた。
明日は満月で十五夜だから今夜は前日リハで立ち位置というか出る位置(?)を念入りに確認しているそうだ。
明日は大舞台なんだね。期待してるよ。
がんばって!
励ますと月は雲の袖幕に恥ずかしそうに隠れてしまった。
『通り雨』
雨の降る日、僕は生垣のそばに座り込んでいた。
住宅街の中にある坂道の途中。
雨が降っているせいか、普段より人通りは少ない。たまに通っても、早足で僕の目の前を通り過ぎて行く。
誰も僕に興味なんて無いだろうし、僕も彼らに興味は無い。
雨音に混じって、どこからか、聴き覚えのない音が聴こえてきた。
雨の日には到底似合わない、明るい音。雨でくぐもった空気の合間を縫うように、僕の耳に入ってきた。
「トランペットの音する。」
「この曲なつかしー。またやりたいね。」
制服を着た学生が、通り過ぎて行った。
いつ間にか、雨は止んでいた。
あの音も、雨と一緒に消えていた。
通り雨が好き。
どうしてって?
だって。
「優しいあなたはオレを家にあげてくれる」
真っ直ぐそう言ったら、あなたは意味がわからないって顔をして眉間に皺を寄せたね。
だけど本当のことだよ。
そりゃ、オレの家が近かったらオレの家に行くんだろうけれど。
残念ながらあなたは自分からオレのところに来たりしないから、だいたい人の家にあがるのはオレの方。
それが嫌だとか、悲しいとか、寂しいとか、そういうことを思ったりはしない。
だって見てよ。この部屋を。
もう置いとけって言ってくれたオレのサイズの着替え一式。新品の下着じゃなくて、オレのってところはポイントが高い。なんのポイントだと言われたら上手く説明できないから、ツッコまないでほしい。
あなたの髪は癖っ毛で、湿気でボンッと膨らむ。
オレはふわふわのそれが好きだけど、まとまらないしかっこ悪いから人に見せるのを嫌がる。
ねえ、わかってるかな。
人に見せるのを嫌がるのに、オレはいいんだ?
すぐに家に帰って整えたいだろうに、雨に打たれて冷えたオレを先に心配するんだ?
それを全部、オレの良い方に考えてもいいですか?
「ねえねえ」
「なんだよ」
「今日どこか行きませんか?」
今日の予報は降水量0%。
けどオレのカンが言っている。
たぶん午後雨が降る。
だからそれを見越して、あなたの手を引いて出掛けようと思ってます。
本当は予報ハズレの雨じゃなくても、あなたの家行きたいんだって、伝えたい。
お題「通り雨」
「通り雨」
それは、水溜まりのようだった。
薄く、水面が広がり、透明さを活かし、世界を反射する。
四つん這いになり、水面を触る。
すればさざ波が立ち、ゆらゆらとその世界は揺れた。
きれいだと思った。素直にきれいに見えた。
変わりげのない、世界に見えた。
普通だった。ただの水のように思えた。"思いたかった"。
なにもない。『普通の光景だ』と。
でも。どれだけ嘘を本物だと思っても。
どれだけ事実を否定しても。
それは、所詮、夢幻だ。
じわじわと現実は牙を剥く。
だんだんと、色が鮮明になる。
その水は、否、水"だった"ものは、どす黒い色を帯びて。
"赤く″染まった。
気づけば、その朱は自らに絡まり付くように。
或いは、変わらない現実を見せつけるように。
自分の方へ流れてきて。
手は赤く濡れ、体を貪るように侵食していく。恐怖が体を支配する。
ふと、前を見てみれば。
そこには、君の倒れた体があった。
夢のようだった。
辺りは薄く、暗く、闇しかないような。
異常なくらい静かで、なにもない。
紺色に、包まれたような世界。
でも、どこかから、希望のように。
一つの光が目の前を照らす。
だんだんとそれは大きく、強くなっていく。
目を瞑る。開けたところで見える気はしない。
でも、何か、とても知りたいものが、見たいものが見えた気がして。
それがどうしても、気になって。
薄ら目を開けた。
ぼんやりと、情報は頭に回る。
なにも見えない。でも。
あの中には、何かがある。
そう、確信した。
でも、手は延ばせど届かなくて。
何がある? どこにある?
好奇心だけが膨らんでいく。
だが、その世界はだんだんと、白くぼんやりと霧のように。
薄く黄色く視界は染まる。
まるで、見せたくないかのように。
でも、一瞬だけ見えたんだ。
あの姿。あの、顔。
緩やかに背景との境目がどこかぼやけて。
いつしかそれは、消えてしまった。
なんの夢を見ていたのだろう。
ボーッとした頭を起こす。今は何時だろうか。
掛けていた布団をずらし、ベッドから降りる。朝、5時。
早く起きすぎたかな、なんて独り言を呟きながら、部屋に電気を付けようとして。止めた。
急に何かが覚醒したようだった。
何かを思い出しそうな、予兆。予感。
頭のなかを巡らせる。そういえば、どんな夢を見た?
見えそうで見えない、霧のような。
どこかで感じたものに似たような感覚。
ぼんやりと、頭が晴れていく。否、目が醒めた、と言う方が正しいか。
ああ、そうか。と、心のなかで納得する。全てが繋がった連鎖。心を圧迫もののない解放感。
そうだ。どうして忘れていたのだろう。
今日は、君が死んだ日だというのに。
二年前、君はいなくなった。公園で、血を流して。
一角に血溜まりを残し、君はどこかへ行ってしまった。まるで、幻想のように。
僕は、その死体を見た。体が、震えた。
撹乱して、おかしくなって。
まるで、血溜まりが、水のように見えた。
周りが霧のように、消えていた。まるで、雲の上みたいに。
気づけば、ベッドの上だ。どうなったのかさえ知らない。
通り魔なのか、自殺なのか。わからない。
ただ、死体を見ただけの、人間。
ただ、君を見た人間の、一人だ。
ふと気づけば、身体は力が抜けていて。
ああ、君を見たあの日もこうだったなと、思い出す。
二年前の今日。僕は君を見れなくなった。
何もかも、わからなくなった。
知らず知らずの内に君を忘れて。
何にも気づかずに前を向いた。背を向けた。
でも、それでいいのだろう。
きっと、君も前を向くことを望んでいる。
忘れてしまうことではない。背を向けることじゃない。責任を背負っていくこと。
僕に、歩んでいってもらうこと。
そう思う。
もう忘れはしないだろう。
責任をもって、向き合っていく。
でもきっと。
いつかは、通り雨のように、過ぎ去る過去として存在するようになる。
君だって、僕だってそうだ。
一つの思い出として、存在するようなる。
そうなっていく。
もう、朝日が上っていた。朝、6時。
君は、この太陽を見てどう思う?
心にそう語り掛けて。
これからだ。これからずっと。
僕は、君と一緒にいよう。心の中で、問いかけていこう。
窓を開ける。差し込む朝日が眩しい。
この朝日を、君も、見ているだろうか。否、きっと、見ている。
緩やかな風が吹く。少し、冷たい。
「ありがとう」
そんな言葉が聴こえた気がした。
週明け。
やっぱり秋とは名ばかりの茹だるような暑さの中、休み時間を使って、こないだ閃いたことが本当に正しいかどうか、"声"が聞こえた5人に、あることを確認して回った。そして全員が質問に対して"Yes"と答えたことを受けて、仲間を集め、名探偵よろしく「答えが解った」と言い放った。
驚く仲間たちの顔を眺めながら、今回の出来事が "銀歯" のせいだということ告げた。全員がザワつく中、どうも条件が合うと銀歯がアンテナの役目をはたしてラジオなどを拾ってしまう場合があるらしいこと、裏山の公園は近くに電波塔が建っていて条件が合いやすかった可能性があることを述べた。
仲間の1人が、自分にも銀歯があるのに聞こえなかった、と言うので、あくまで "条件が合えば" だと念押しをした。「ま、俺もテレビの受け売りだけどな」と言い、今回の "声"騒動は終結した。
でも実は、仲間に言ってないことがある。
あの日、みんなでジャングルジムに登ってあーでもないこーでもないと話し合ったあの日。通り雨が降る中、昼からまた1人であの公園へ行ってジャングルジムに登り、件の "声" を聞いてしまったのだ。
何の声か解んないし、何を言っているのかも解んない。でも、その声は確実にこっちに話しかけてくる。
ただ、俺に銀歯は、無い。
―――宇宙(そら)からの便り[急]
#74【秋🍁】【通り雨】