『通り雨』
雨の降る日、僕は生垣のそばに座り込んでいた。
住宅街の中にある坂道の途中。
雨が降っているせいか、普段より人通りは少ない。たまに通っても、早足で僕の目の前を通り過ぎて行く。
誰も僕に興味なんて無いだろうし、僕も彼らに興味は無い。
雨音に混じって、どこからか、聴き覚えのない音が聴こえてきた。
雨の日には到底似合わない、明るい音。雨でくぐもった空気の合間を縫うように、僕の耳に入ってきた。
「トランペットの音する。」
「この曲なつかしー。またやりたいね。」
制服を着た学生が、通り過ぎて行った。
いつ間にか、雨は止んでいた。
あの音も、雨と一緒に消えていた。
9/28/2023, 9:46:23 AM