『雪を待つ』
私の記憶の中で、雪を見たのは小学校4年生の時だ。
それよりも前に北海道の従兄弟のところに行ったりしているから、雪自体は見たことがあったと思う。でも、私の記憶の中にある雪は小学校4年生の時のが一番鮮明だ。
特に何かした訳では無い。あまり積もらなかった記憶がある。
その時は確か算数の時間だった。私は算数が苦手だったから、いつも基礎クラスにいた。担当は私の好きな先生で、ゆっくり進めてくれるから、楽しかった。
今もまだ、あの時の記憶は覚えている。
特に何があった訳では無いけれど、雪を見ると、あの日を思い出す。
今年は雪降るだろうか。来年になるだろうか。
受験があるから、できれば年内に降って欲しい。
ホワイトクリスマスとか、1度過ごしてみたいなぁ。
『光と闇の狭間で』
闇の、奥深く。
周囲に光はなく、音もない。
私は床の上にいる。これより下には行けないようになっていた。
私は、この下に何があるのか、知っている。
誰の目も届かないような闇の底にいた私を
最初に見つけたのは、君だった。
光が見えるところまで、引き上げてくれた。
光と闇を行き来しながら考えた。何かを考えていた。
何を考えているのか。どんな答えを求めているのか。
自分にも分からなかった。
私は闇から離れたかった。
そこが1番落ち着く場所だったとしても、
光を見てしまった私は、もう闇の底にはいけなかった。
私を光の方に連れ出してくれた人は、君だけではなかった。
もっともっとたくさんいた。最初から、みんなそこにいた。
私が見ないようにしていただけだった。
「灯台もと暗し」と言うけれど、
もしも、灯台の下を探しても何も無かったらと思うと、
怖くて見れなかった。ずっと。見ないようにしていた。
今もまだ、暗い霧のようなものが足元に漂っている。
あの時のような闇の中ではなく、薄暗い場所にいる。
まるで、暗闇に目が慣れてきたみたいに、
いろんなものが少しずつ、見えるようになってきていた。
『終わらせないで』
横断歩道の真ん中に人が立ってたんです。
信号機はもう赤になってて。
だけどその人は動かなくて。
死んじゃうって思った。
目の前で人が死んじゃうって。
気づいたら体が動いてて、
腕掴んで、「もう赤になってますよ。危ないですよ。」
って言ったんです。
そしたらすごい怯えさせてしまって。
その人、タクシーを待ってただけだったみたいです。
怖かった。
自分は、まだ死ねないなと思った。
『太陽の下で』
8時32分。
受験生とは思えない遅い朝だ。
いや。これが普通なのか。よく分からない。
周りの受験生がどんな生活をしているのか、自分がそれほどよく知らないということに、最近気がついた。
布団の上で体を起こし、伸びをする。
部屋の中はカーテンを通した光のせいで、黄色くぼやけている。
カーテンを開けると、部屋の中のものがそれぞれの色を持った。
(汚ったなぁ)
部屋中に、投げ捨てられたプリントやら教科書やら模試の結果やらが山積みになって残っている。たいして使い物にならない紙たちが、私の部屋を占領していた。
普段の朝より太陽の光が強い。
単純に起きる時間の問題だろうが、私には珍しいものに見えた。
久々に浴びる朝日は、暖かくて、気持ちがいい。
相変わらず何もする気は起きないけれど、無理せずやろうと思う。
ここ数日の私の目標は、『頑張ることを諦めること。』
これがまた難しくて、やらないのは簡単だが、やっぱり罪悪感に苛まれる。塾や学校の人たちの視線に、まだ少し、苦手意識がある。
だから自分に言い聞かせる。
私は休まなくてはいけないのだ。
大丈夫。もう、十分頑張ったから。
『セーター』
セーター。欲しいね。
最近見つけた可愛いブランドのお洋服。
こないだ新作出してたなぁ。セーターもあった気がする。
「うつ病」「適応障害」「完璧主義者」
自分の感情を調べていて、よく目につく言葉たち。
生まれて初めて(私の記憶にある中で)、
私は、『頑張ることを諦めた』。
受験近いからまあ、ちょっとは勉強するけど。
前よりはしてない。
来週から塾を中学の時のとこにするから、そしたら何か変わるかな。
あ。セーター新作出てる。買うか。