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『光と闇の狭間で』

 闇の、奥深く。
 周囲に光はなく、音もない。
 私は床の上にいる。これより下には行けないようになっていた。
 私は、この下に何があるのか、知っている。

 誰の目も届かないような闇の底にいた私を
 最初に見つけたのは、君だった。
 光が見えるところまで、引き上げてくれた。

 光と闇を行き来しながら考えた。何かを考えていた。
 何を考えているのか。どんな答えを求めているのか。
 自分にも分からなかった。

 私は闇から離れたかった。
 そこが1番落ち着く場所だったとしても、
 光を見てしまった私は、もう闇の底にはいけなかった。

 私を光の方に連れ出してくれた人は、君だけではなかった。
 もっともっとたくさんいた。最初から、みんなそこにいた。
 私が見ないようにしていただけだった。

 「灯台もと暗し」と言うけれど、
 もしも、灯台の下を探しても何も無かったらと思うと、
 怖くて見れなかった。ずっと。見ないようにしていた。

 今もまだ、暗い霧のようなものが足元に漂っている。
 あの時のような闇の中ではなく、薄暗い場所にいる。
 
 まるで、暗闇に目が慣れてきたみたいに、
 いろんなものが少しずつ、見えるようになってきていた。

12/2/2023, 11:51:19 AM