窓の外から、雨粒の音が聞こえてくる。
動かしていた手を止め、窓の方に歩み寄る。
どうやら通り雨のようだ
干してあった洗濯物の事を思い出し、駆け足でベランダに向かう。
物干し竿にかけてあった洗濯物を取り、少しはたく。
足元の床に置き、他の洗濯物も同じように部屋の中に入れていく。
ふと、外の方から声が聞こえてくる。
視線を移すと、高校生ぐらいの男子生徒達が、駆け足で走っていた。
焦りと楽しさが混じった声色で、隣にいる生徒に急かすように声をかける。
雨に濡れてはいるが、その顔は嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「良いなぁ…」
自身の気持ちが口から漏れ出す
嫉妬の気持ちが、心の器から溢れたような感じがした。
持っていた洗濯物を、強く握りしめる。
病気になんてなっていなければ、こんな気持ちを抱かずに済んだのに。
私も、あんな青春を過ごせていたのかもしれないのに。
自身の頭上に広がっている雨雲のように、気持ちが灰色に染まっていく。
そんな顔をしていると、日差しが顔を直撃する。
急に眩しくなったことに驚き、空を見やると、
遠く離れた空が雲ひとつない晴天だった。
憂いなんて無い、躊躇いなんて無い。
そんな青空を見ていると、さっきまで雨が降っていた私の心が、晴れていくかのようにすっきりし始めた。
きっと病気は治る
きっと学校に通える
きっと青春を送れる
"きっと"という、不確定しかない、だけど希望が詰まっている。そんな言葉で心が埋め尽くされていく
他の人から見たら、ただの晴天だ。
だけど私から見たら、希望と夢が詰まった晴天だ。
自然と口角が上がる
床に置いていた洗濯物を拾い、部屋の、ハンガーがかけれそうな場所にかけていく。
自身の部屋に戻り、書きかけのノートの前に座る。
まずは、今やれる事をやろう。
そう、心の中で喋りシャーペンを手に取った。
お題『通り雨』
9/28/2023, 10:36:30 AM