ハクメイ

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5/8/2026, 5:05:14 AM

それは、ある薄明の日だった
雲がオレンジ色に染まり、カラスがかぁかぁと、子に帰るようにと促していた。

住宅街にひっそりと存在している、地元の人しか知らないような抜け道。
そんな道を、一人の女子学生が歩いていた。
紺のブレザーに、同じ色のチェック柄のスカート。
沢山のキーホルダーをぶら下げたスクールカバンは、沢山の教科書でパンパンになっている。

歩きスマホをしていた学生は、抜け道を出た瞬間、目の前のだれかとぶつかってしまった。
スマホが手から弾けて地面に落ち、学生も尻餅をつく。

「うわぁっ!ご、ごめんなさ……」

見上げながらそう言った言葉は、青ざめた顔でキャンセルされてしまう。

それは確かに人だった。人の特徴を持っていた
しかしその頭部は、避難生活で使うようなランタンに置き換わっている。
安心させるであろう光は、薄明の色と混ざり合って、鳥肌が立ってしまう、不気味な色。
服は父親のようなスーツを身につけ、白手袋をはめ、ネクタイをキツく締めている。

SNSのTLだったら、異形の一次創作としていいねを押され、フォトイベントならコスプレとして存在している、そんな存在。

「おや…すみません。お怪我はありませんか?」

一体どこから発せられているのか分からない言葉は、怯えている学生には届かない。
ランタンの化物は、あぁ、と理解し、学生の目線に合うようしゃがむ。

「貴方……私の顔が、見えていますね?」

学生の心が、カイロのように暖かくなる。
彼女はその感覚を知っていた。
恐怖と一緒に混じり合う、この感情を表す言葉

彼女は後に思い出した
その日が、初恋の日だった。


お題『初恋の日』

4/30/2026, 1:48:02 PM

「なぁ、楽園って知ってるか?」
「そりゃ勿論。想教のデッカい木のことだろ」

 とある国の、とあるカフェで。
そんなことを話す住民が二人いた。外に設置された机と椅子とパラソルが、静かに会話を聞いている。

「噂によりゃあ、想祈(想い)の神は、今でも楽園の中で眠っているんだとよ!」
「おいそりゃないだろ。流石に世界と一体化してるさ」

「ロマンがねーな兄弟!夢を持って生きようぜ!?」

「夢よりも、今の充実した暮らしを守りたいね。女帝様の国は、他の国よりも安定しているし、商業も盛んだ。想いもあまり困らない」

 現実を見ている住民と、夢を見ている住民の声は、近くの道を通り過ぎる通行人の耳にも入る。
その中の一人が、ニヤリと笑った。

「おやまぁ、嬉しいことを言ってくれるではないか」

「あれ?今、なんか言ったか?」
「いーや何にも。どうした兄弟?」
「なんか、女帝様みたいな声が聞こえたんだが」
「まっさかー!そんなことないって!ほら、食べたかったパフェを、さっさと注文しちまおうぜ!」

 ニヤリと笑った人物は、そのまま歩みを進める。
大きな城へと、一直線に。

お題『楽園』


想祈の神  想いを司る神 想教を作り上げた存在

世界と一体化
神になった存在は、やがて世界に溶ける。
意思や感情はなくなり、その想いだけが世界に記憶される。

4/27/2026, 11:46:53 AM

 そこは戦場だった。空は紅く染まり、泥のような雲が、厚く、低く広がっている。
だだっ広い草原には、槍、剣、斧、弓。幾重もの武器が突き刺さり、傍に防具を纏った戦士達が、息もせずに横たわっていた。
それらが飾りに見えてしまうほど、草原の中心で派手な争いをしている者が二人いた。

 一人は女性。黒い短髪に、大人びた顔。両手に握る短剣が、相手の体を傷つけようと、残像が見えてしまうほどの素早さで攻撃し続けている。

 もう一人は少年。金髪を後ろに短く結んでいる。右手に銀の片手剣、左手に謎の紋様が刻まれた盾を持つ。短剣の攻撃を捌き切るのに、精一杯の様子だ。

 女性の強い攻撃が加わり、少年は後退りする。

「少年、そろそろ降参したらどうだ。私達は君を受け入れる。私達"想者"を尊重し、平等に扱ってくれる君ならな」
「お断りだ!『君』ってことは、他のみんなは受け入れてくれないんだろ?」
「勿論だ。価値観の合わない者など、受け入れる意味が無いからな」
「それなら、お断りだ!!」

 少年は手に持った剣で切り掛かるも、女性は冷静に避け、腹を蹴り、体を吹き飛ばす。
少年は草原に寝転がり、剣と盾は手から離れた。

「少年、何故君は生きる?お前の大切な者は既に死んだ。故郷も消え失せた。私には理解できない」
「そりゃぁ…あんたが"涙の想背者"だからだよ。涙を知っているから、その涙を流す理由…苦しみながら生きる理由が分からないってことだろ?」
「そうだ。何故、わざわざ苦しい状態を続けるんだ?涙を流した気持ちは、私に痛いほど伝わる。理解できる。なら何故」

「それはなぁ!」
 少年はぐらぐらと揺れる足で、無理やり体を起こす。
既に服はボロボロで、剣を握る力も残っていない。そんな状態で、少年は言葉を続けた。

「幸せを掴みたいからだ。苦しいことがあれば、嬉しいことだってある。苦しみは、幸せを勝ち取るためのエネルギーだ」
「気持ち悪いですね」
「かもしれないな。でもな、飽和した幸せよりも、不幸せの中で掴み取った幸せの方が、すっっごく嬉しいんだ。そうして経た人生が、誰かに希望を与えられるって考えると、嬉しくてたまらない!」

 少年に、想いが宿る。目に見えない。しかし確かに感じるその力は、草原に大きな風を吹かせた。
少年に闘気が宿る。リベンジを果たす、ヒーローの様に

「想いが…まさか、人間がそれを扱えるなんて…」
「驚愕をどうも!それじゃあ…もう一戦始めようか!」

 これは、とある日の出来事。
とある神は、この出来事をこう記録した。
『第一次星辰戦争』と

お題『生きる意味』


想者 想いの力を持つ存在 妖怪の様なもの
想い 人間が生み出す、妬み、愛情、勇気、死。などと
   いった感情のこと。
想背者 人間の想いから生まれた想者。己の想いに忠実
   に生きる。想いを満たさないと、発狂してしまう

第一次星辰戦争
学校で習う歴史で、最初の方に習う時代。オーパーツの様な武器や文明が生まれた、不可思議な時代。
その頃に起きた戦争のこと。
海・空・地を司る神々が発狂し、世界が粉々になってしまった。
とある集団が立ち上がり、三柱を封印。『星辰の神』と呼ばれる神を封じた。

4/24/2026, 9:56:22 AM

 白昼夢を見ている気がした
気づけばそこには、赤い液体が広がっていた。
僕は手に何かを持っていた。それが何かを理解出来ない

 心模様を表すかのように、雨が降った。
傘を開くのが億劫になる、そんな小雨。目の前にある、それらを見つめた。
 それは肉塊で、スーパーのケースで冷やされている、特売のお肉のようだった。たくさんの主婦達が群がっていそうな、そんな色。

「そこのお前、止まれ!」
 いきなり後ろから、そんなふうに怒鳴られた。後ろを振り向く。二人の、武装をした天使がいた。
「手に持っている物を床に落とし、手を上に上げろ!さもないと命はないぞ!」
 右手にあるそれを離す。調理実習で先生が駆けつけそうな、金属の落ちる音がした。

 天使達はすぐに僕の体を抑えて、拘束した。抵抗しなかった僕は、すぐさま連行された。

罪が裁かれる場所 人間で例えると裁判所
罪を計る計測者が鎮座する場所 秤の神殿に

お題『今日の心模様』×『白昼夢』


天使 人間でいう警察組織。公務員的な仕事に就く者は、9割天使だったりする。白い羽が生えている

4/21/2026, 11:22:06 AM

目を瞑った。それを見たくないから

 ある春の日の出来事。一人の人間が、走っていた。
そこは薄暗い路地裏で、灰色の雲で、上から蓋をされていた。まるで逃げ道なんて無いかの様に、どんよりと気圧を低下させている。
 走っている人間は、背の低い女性。大学生の様に感じるその女性は、星空色の不思議なショートヘアを揺らしながら、裸足になって必死に駆ける。
足首と手首にはアザがあり、服もボロボロで、異世界の奴隷と見間違う程。
 その女性の足が、急ブレーキをかけた。目の前には、良く日に焼けた肌をした、オークの様な男が道を塞いでいたからだ。

 足を止めた女性を逃すまいと、反対方向からも同じ様な男が、数人現れて道を塞ぐ。
「抵抗は終わりか?占い師さんよぉ」
 男達の隙間を縫う様に現れたのは、白いスーツにサングラスで目を隠した、若そうな男性。一丁前に首から金のネックレスを下げ、見せびらかす様に銀の時計を手首に巻いている。
「その変な水晶玉を渡してくれたらぁ、見逃してやっても良いぜ。最終通告だ」
 男が指を刺したのは、女性のネックレスだ。デザインの無い銀のチェーンの真ん中に、星空が映った丸い玉がついている。
「何をしても、お前のそれだけは取れないんだよなぁ。なぁ、それどんな仕組みなんだ?教えてくれよ」
「嫌に決まってるでしょ!」
 女性の声には、威勢と恐怖が入り混じっていた。

 その言葉を聞いた、スーツの男は舌打ちをする。
「あっそ。じゃ、君の体から無理やり奪えば良い」
 男は背を向ける。それが合図だったのか、タッパがでかい男共が、女性へジリジリとにじり寄る。
 女性は逃げようとするも、手首を掴まれて引っ張られ、頭を掴まれて壁に打ち付けられる。鈍い音がして、壁に赤い液体が付着する。そんなことをお構いなしに、男はその体を地面に投げ捨てた。

 雫が降った。大量の雫が。厚くて灰色の雲から、その惨状を嘆く様に、星が泣いているかのように。
 群がった男共が離れ、白スーツを呼ぶ。女性の顔に生気なんてなく、心臓も止まっていた。
「あぁ?ヤったのに取れない?何言ってんだオマエラ、粉のキメ過ぎかぁ?」
 白スーツが女性に近づき、その体を蹴る。胸ぐらを掴んで胸を見ると、そこには雫で濡れたネックレスと、星空の水晶がまだそこにある。
 ネックレスを引きちぎるように引っ張るも、それは取れない。普通に取ろうとしても取れない。
「めんどくさ。ここ切れ」

 男達が返事をする為に、首を頷こうとした。その代わりに、その首が地面に落ちた。グシャリと、雫の上にソレが落ちた。雫が染まった。
「は」
 反応する間もなく、体躯が自慢の男達の首が、一つ、もう一つと落ちる。辺りには、雫の落ちる音だけ。
「何が起きてるんだ!?おい、やめ」
 命乞いなんて許さない速度で、白スーツの色が染まる。路地裏に墓地が生まれた。

 ポシャり、ポシャりと、雫を踏む音が聞こえる。
「想いの力に敵わない。いつの時代もそんなもんか」
 誰かが現れた。墓地に肝試しをする、子供のように。
「……君か。星辰…運命を覗ける占い師は」
 赤い雫に顔を埋める女性を、誰かは見つめる。
「おっと、まずい。そろそろ渡守が来ちまう」
 誰かは、女性を俵のように担いだ。体重なんて無視して、その場を去る。

目を瞑った。現実を見たく無いから
目を開いた。何故か生きていたから

お題『雫』


女性
不思議なネックレスで、世界の運命を決める"星辰"を読み解く事ができる。男達に追い詰められ、赤の雫の上で眠りについた筈だった。

誰か
女性を助けた。星辰を覗く占い師を探していた。
想いの力を使って墓標を増やす、謎の想者(そうしゃ)。

渡守
想いを持って思者になれる人間の側に赴き、それを導く存在。天国へ導く使いの様な存在。
今回は"誰か"に邪魔をされたので、ここに来た渡守は、暫く女性を探し回るハメになる。カワイソ

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