ふうり

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12/1/2025, 3:25:54 AM

「『君と紡ぐ物語』なんてロマンチックな言葉なんだろうか。なぁ、あんたもそう思うだろ?」

にっこりと笑顔で喋る少年は、死体という名の肉塊に座りながら、独り言を呟いた。
豪勢な飾りやシャンデリアが飾られた大広間は、炎と血の匂いによってデコレーションされている。
辺りにはメイド服を着た女性や、身なりが整った少年少女が虚空を見つめ、炎に焼かれている。

「『君と』だから、特定の誰かが居なくちゃいけないってことだよな。そうだな…」
熱に体が焼かれるのを気にせず、ハンドガンをくるくると片手で回しながら、歩き出す。
少年は、今にも焼けて消滅しそうな大きな肖像画の前で止まり、その顔をじっと見つめる。
大きくて、立派なティアラを小さな頭に被り、キラキラとした輝きを放つドレスを見に纏った、お姫様。

「ならばこれは、"君"との物語だ!
君の物語を僕が焼き尽くし、そして君が紡ぎ直す。
それを永遠と繰り返そうじゃないか!」
瓦礫が落ち、肉が燃え尽きるこの屋敷に、声変わりを迎えていない、狂気の笑い声が響き渡った。

お題『君と紡ぐ物語』×『復讐』

11/14/2025, 2:53:35 AM

祈りの果てに、愚者は笑った。
それは、クリスマスを迎えた子供のように。
旅の果てに、愚者は笑った。
それは、徹夜で挑んだテストが返却された時のように。

そう笑いながら、愚者は腕を粘土のように変形させ、鋭いドリルの形に変えた。
「ねぇ、%(8.♪6.♪%8(。このドリルって、まるで星をも貫き通せそうな姿をしてるよね?」
「多分、僕には君を2.9.せない。でも、それでも。」
愚者は覚悟を決めた吐息をつき、目の前にいた彼を見つめ、最後の言葉をかける。

「あいつと一緒に死ぬ為に、其に辿り着く為に、あの子が笑っていられる為に。
そして、この世界に生きる者達が、生きていて良かったと思える為に、君を倒す!!」

祈りの果てに、愚者は笑った。
プロゲーマーにボコボコにされた、苦笑いのように。
旅の果てに、愚者は笑った。
先に逝ってごめんと、誰かに伝えるように。
世界を見守る柳の木の下で、愚者は静かに眠りについた。

お題『祈りの果て』×『愚者』

10/24/2025, 9:37:50 AM

「無人島に行くなら、あなたは何を持って行きますか」
スーパーボールの様に弾けた声が、辺りに響く。
△△が本を読む目を上に向けると、そこには××が居た。
放課後の誰も居ない教室。
黄昏の光が、教室にいる二人を照らしている。
オレンジ色の髪をさくらんぼの様にまとめた××と、栗色の髪をねぼすけの様に散らした△△。
2人っきりの教室、何も起こらないわけがなく…
この言葉に続くようなことは、起きなかった。

「聞いてるの?無人島に!行くなら!」
「聞いてるよ、うるさいなぁ。えー無人島?」
「そうそう!因みに私は災害用リュック」
「思ってたより現実的な物だった。うーん、そうだな」

△△がその答えを言おうとし、天井を軽く見つめる。
「それだったら、僕は…」
答えを伝えようと、視線を元に戻し、話しかける。
いや、話しかけられなかった。

何故ならば彼女の姿は目の前になく、辺りは教室ではなく、海と砂浜だったからだ。
「は?」
その声は、そばにある水の音にかき消され、虫の鳴き声に蝕まれる。
蒸し暑い風が制服を揺らし、ギラギラと照りつける日差しが喉にスリップダメージを与える。

2人っきりの教室、何も起こらないわけがなく…
本当に、"何か"が起きてしまった。

お題『無人島に行くならば』×『俯仰之間』

10/22/2025, 11:39:47 AM

「ねー早く行こうよー」
桜色の髪をした青年が、ジェラート片手に苦言を落とす
目の前には、同年代の学生が二人。
よもぎの様な髪色の青年と、まんじゅうの様な髪色の少女が、バチバチと雷を浮かべて睨み合っていた。

「あんたがスペルミスさえしなければ、赤点から逃げられたのに!」
「うるっせ!お前が『お互いに得意なやつカンニングしようよー』なんて、誘わなければこうなってなかっただろうが!」
「いやー二人とも勉強ちゃーんとしてれば、よかったんじゃーないのー」
「正論ぶつけないでもらっていいかな、学年三位。いいわよね、あんたは頭よくってさー!」
「あー火にあぶらを注いじゃったかー」
緊張感なんてゴミ箱に捨てたかの様に、ぺろぺろとジェラートを食べる。

「あーあ、またこうなっちゃったか。」
青年がジェラートを食べ終わり、コーンを床に落とす。
「どうしたんだ?」
彼の言葉など聞かず、それを足でぐしゃりと踏み潰した。
「な、なによ。嫌味言って傷ついたの?」
「んーちがうよー。ただ…」

ぐしゃりと、噛みちぎられる音が聞こえる。
「君たちが、化物に殺される未来を、変えられなかったなーって。」
不思議な石をポケットから取り出し、心臓の位置に構える。
「じゃあね。また会おう」
ねっとりと、もう飽きたかの様な、同じものを食べ続けたかの様な。
そんな声をこの次元に残し、彼の姿が消え去った。

お題『秋風』×『ねっとり』

10/22/2025, 10:24:22 AM

「きゃーー!!イチゴ様かっこいいー!」
「ウメちゃーーん!!今日も可愛いよー!」
黄色い声が、商店街中に響き渡る。
「なんだ、この声?」
「知らないのか?ほら、あの集団の真ん中に、目立った服のやつらが見えるだろう?あれが、イチゴ様とウメちゃんだよ。」
集団の方に目をやると、二人を中心に円となって住民達が集まっている。
様々な姿形をした住民に負けないオーラを放つ二人は、お互いを睨み合っていた。

「イチゴ様ー!お美しいです!!」
そう呼ばれた女性は、人間の立ち姿に蝶の様な羽と触覚が生えていた。
苺色の着物を上品に纏い、羽の模様はショートケーキのいちごの様に、存在感を放っている。
黄緑の複眼で、目の前の相手を見つめている。

「ウメちゃん!売れ残りのおにぎり食べるかい?」
その声に釣られて顔を上げた女性は、大きな口から涎を垂らす。
二足歩行しているクマの姿は、ピンク色のフリフリとした服で着飾られている。
熟す前の梅色をした体毛を震わせ、涎を拭いて着物の女性を睨み返す。

「おっ、二人ともべっぴんさんじゃねぇか。ところで、なんであんなにばちばちしてるんだ?」
「ん?そりゃあもちろん」
男の声が掻き消され、二人の女性が声を上げる。

「ぜっったい、あなたがくる予感しかしませんでしたわ。今日こそは、私の物ですわ!」
「いーや、ぜっっったいあたしの物だね!ここで会ったが千年目!」
二人の声が、同時に響く。
「「今日の焼きそばパンは、(わたくし)(あたし)の物だよ!!」」


お題『予感』×『二心』

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