ふうり

Open App
6/22/2025, 9:58:09 AM

悲鳴が飛び交う町中を
君の背中を追って走り続ける
お腹が苦しくなりながら息を吸っては吐き、
目の前を走る君を見逃さないよう、足に力を入れる。

逃げる人々が前から走り、僕達と交差する。
前方には巨大な青緑の化物がいる
大きな手で車をちぎり、子供のようにそれを投げる。
大きな音を立ててガラスの割れる音と悲鳴が上がり、火の匂いが風に乗って鼻に届く。

「待って、待って!」
君を呼び止めるも、君はスピードを落とさない。
雪の肌は返り血に染まり、せっかく整えていた髪の毛もボサボサになっている。
暴れている化物の側につくと足を止め、くるりと此方を振り返る。

「ごめんね。かき氷食べる約束、果たせなくて。」
君は後ろに手を組み、にまっと笑った。
「何言ってんだよ、いいから離れろ、危ないだろ!」
後ろではトラックの荷台を握りつぶし、くしゃくしゃにしている化物がいる。
「危なくないよ。だって…」
その言葉に呼応するかのように、化物はぐるりと振り返り、此方を見つめる。
迷子になりそうなその深緑の眼で、やっと見つけたかと言わんばかりに、息を荒げながら。
四足の手足を使って此方に向かって走り出す
「私はこの子なんだもん」
「#°!!!」
君の名前を呼ぶ声は、ぐしゃりという音に掻き消された。
化物が君を握りつぶした音に。
血が滴り落ち、脚がぼとりと落ちる。
化物は血に塗れた手をベロベロと舐め回す

「ふざけんな」
僕はいつのまにか斧を持っていた
1mは超える、空色の装飾がされた斧を。
なぜ斧が現れたかなんて知らない。なぜ軽々と持てるのかなんて知らない。
ただ、そいつを殺せと言っているのだけはわかる。
君が化物なんて知らない。勝てないなんて知らない。
知らない疑問を頭に充満させて、恐怖という感情と一緒に斧を振りかぶり、そして。
気づいたら辺りには血の雨が降っていた

お題『君の背中を追って』×『雪の肌』

5/5/2025, 8:14:44 AM

その瞳は赤星のようだった

明るくても肉眼で見れる赤い星
狂気を予知させるような不穏な色
すれ違った彼女の瞳は、そんな色だった。
顔も知らないし、名前も知らない。
だが、妙に記憶に残る瞳だ。

歩みを止め、後ろを振り返る。
赤星の瞳を持った女性は、膝上のスカートを風になびかせながら、歩き去ってしまう。
見ず知らずの他人を理由もなく呼び止める度胸は、僕には無い。
そのまま僕も目的地の方へ、歩みを進めた。

まさか再開するなんて思わなかった
再開するにしても、同じ学校でばったり。
そんな平和な再開なんだろうって

僕がその赤星を見た状況は
君が僕の心臓を、貫いた時だったんだから。

お題『すれ違う瞳』×『赤星』

3/28/2025, 9:40:29 AM

朝の陽気が眠気を飛ばしたある日
だるそうに体を伸ばし隣を見やると、昨日泊まって行った彼がいた。
筋肉質の体に、赤紫色の短い髪。
彼の手をそっと握り、これが夢じゃないんだと改めて認識する。
起こさないようにベットから降り、身支度を済ませる。
顔を洗って、髪を溶かして、お手洗いに行って、着替えて冷蔵庫を開ける。
昨日の残り物を取り出し、レンジで温める。

ガチャリと扉が開き、彼が顔を出す。
レンジの音で起こしちゃったかな
「おはようございます桜さん」
「おはようございます よく寝れましたか?」
「はい、おかげさまで。桜さんがいなかったら、今頃俺は野宿でしたよ。」
「この辺りにカプセルホテルなんて、ないですもんね。
お役に立てて何よりです」
若干しどろもどろになりながらも、日常会話を行う。
大丈夫私?ちゃんと喋れてる?顔に出てないよね!?

「このお礼は絶対…」
「あ、あの!お礼なんですけど!」
「ん、はい。何がいいですか?」
手を後ろで強く握り、顔が熱くなる。
それでも今しかないと直感がそう言っている
私の直感は大体当たるんだ
「よかったら、川沿いの桜を見に行きませんか。
私一人じゃ、その………寂しくて!」
桜のような綺麗なピンク色の恋が、ここで始まったような気がした。

お題『春爛漫』×『愛慕』

3/27/2025, 9:14:23 AM

ぽたり ぽたりと天井から水が落ちる
錆びついた鉄の壁と床は、肌に痛みを与える程の冷たさになっている。
そんな床の上で、俺は目覚めた。
起きあがろうとするが、腕も脚も上手く動かせない。
なぜかと視線を移すと、錆びて緑になった鉄で動けないようにぐるぐると拘束されていたからだ。
集中してそれを力で壊そうとするも、なぜか使えない。
「無駄じゃよ」
頭上から声がする
幼く、舌足らずのその声の持ち主は、大人でも足がつかないであろう椅子に、これでもかと偉そうに足を組んで座っていた。
緑色に錆びた大きな椅子に座るその子は、まるで人形のように整った顔立ちだ。
いわゆる"ロリ"と呼称されるぐらいの体躯
肩まで伸びたクリーム色の髪に、虹色の瞳。
黄色い軍服は、体に似合わずぶかぶかだ。

「その鎖は、想いの力を封じ込める力を有している。
お主の力でも、破壊することは不可能じゃ。」
「あんた、何者だ?何が目的だ。残念ながら俺はフリーでね。どこの組織にも所属してねぇから、人質としての価値はねぇぞ。」
「ふっ、そうあれこれ喋るんじゃない。
最後まで吾輩の話を聞くのじゃ。」
彼女は椅子から飛び降り、俺の前にしゃがむ。
「お主、あの宗教バカどもに一泡吹かせてやりたいと思わないか?」
宗教バカ
言葉は悪いが、どいつを指してるかはすぐに検討がついた。
「協力してほしいのか?」
「そうだ。だからこんなに強引になってしまったが、お主をここに呼んだんじゃ。お主の力を使われては、この拠点は壊滅してしまうからな。」
「…はいオーケーなんて、言えるわけないだろ。」

「ま、それもそうだ。だが、お主は必ず吾輩に協力することになる。」
彼女は椅子の裏にある何かを取り出した
それは大きな旗だった
軍隊が行進する時に使うぐらいの、あの大きい旗。
その旗は彼女の瞳の虹色に輝いており、真ん中には剣のマークが刻まれている。
それはあのマークだった
俺が探し求めていたあれだった
「改めて自己紹介をしようじゃないか」
「吾輩は虹色の開拓者。全ての者に色を与え、モノクロの馬鹿どもを粛清する皇帝でもある。」

お題『七色』×『吾輩』

3/24/2025, 12:09:23 PM

視界が真っ暗になる
目を開けると、体は動かせなくなっていた。
目の前の地面の匂いと血の匂いが鼻を刺激する
呼吸をしようとすると、腹に激痛が走る。
さっきのそいつのせいだ 腹を蹴られたんだった
そいつはゆっくりとこちらに近づき、追い打ちとして腹を思いっきり蹴りやがった。
声に出ない悲鳴が頭の中で埋めつくされる
「弱者が私の理想に歯向かうものではないぞ」
人をなんとも思っていないその冷たい目で見下す
「もう二度と歯向かうんじゃない。あの女と同じ目に遭いたくなければな。」

「あの女…?」
眠りかけていた意識が、その言葉によって這い上がる。
「あの女って…誰のこと…言ってんだよ」
喉の限界を無視して、質問を投げかける。
そいつは何も喋らない代わりに、こちらにある物を投げてきた。
地面に落ちたそれは、クリオライトでできたブレスレットだった。
純白なはずのそれは、赤黒い血がこびりついている。
「まさか」
それは、俺が彼女にプレゼントした物だった。
半年前の誕生日に あの時に

自分の脳内が、別の想いに埋めつくされる。
その想いはなんなのだろうか
復讐?後悔?悲しみ?
もうわからない 
だが、もう二度と会えないという事実がずっと脳内に残り続ける。

動かなかったはずの体を動かし、立ち上がる。
右脚は切られ、左目は使い物にならなくなっていた。
しかし今は歩けるし、見える。
右脚はいつのまにか白いクリオライトが生えており、なんだか視界の左は、キラキラと白く輝いているような気がするのだ。
冷たい目で見下していたそいつは、氷が解凍したように驚きの顔を浮かべている。ざまぁみろ
「さぁ歩け もう二度と後悔しないために」
そんな言葉が頭の中に浮かんだ気がした
手から白く輝くクリオライトの片手剣が生み出される
それを強く握りしめる
さぁ、第二ラウンドの始まりだ。

クリオライト 氷晶石
石言葉 『行動』『決断力』

お題『もう二度と』×『クリオライト』

Next