ハクメイ

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1/22/2026, 11:06:45 AM

「もしタイムマシーンがあったら、何に使いたいですか?」
そう言ったのは、10代前半程の少年だった。
綿飴をちぎった様な灰色の髪に、金色の眼。
黒のマントが全身を覆い隠し、虫の王国を探索している剣士の様な姿だった。
「えー、うんと。落としちゃったプリンを買う前に戻る。それで、代わりに野菜ジュース買う。あらごし入りの、コンビニ限定なやつ。」
答えたのは、20代前半ほどの女性だった。
カーキの眼に、ベージュの髪を肩下まで伸ばし、少し分厚くて、目の色と同じコートを羽織っている。

「くだらないですねぇ。でも、あれよりはマシだと思います。」
「うん。なんで、合わせちゃうかなぁ。」
「まぁ、強い×ロマンの組み合わせは、最高ですけど。」
二人の旅人は、目の前のそれを改めて見た。
ゴテゴテとした金属は、ドラゴンの形をしていた。
2枚の大きな翼に、前脚と後ろ足。
飛ぶタイプの、火を吐きそうな、そんな典型的な姿。
「なにも、タイムマシーンを、ドラゴンの姿にしなくても…」
「やっぱり、ロマン。だからですかね。」
「裁縫道具かよ。ほら、倒すよー。」
「はーい」
金属を擦り合わせながら、ドラゴンが動き出す。
その姿に物怖じもせず、二人の旅人は戦闘を開始した。

お題『タイムマシーン』×『爬虫類』

1/21/2026, 11:30:26 AM

夜の都内で、20代後半の男性が街灯の下で立っていた。
整った紺色のスーツに、揃えられた眉毛。
黒色の髪と眼が、微笑みながらスマホを見ている。
『もう直ぐ着きます!ごめんなさい!』
『ゆっくりで大丈夫ですよ。転ばないように!』
ふふっ、と微笑みながら、男性はスマホをズボンのポケットにしまう。
「スケジュールがすれ違いに、すれ違って、苦節2ヶ月。
やっと…この時が!」
おでんが沁みた様に、ひとりごとを噛み締めていると、乾いた靴音が、タタッと聞こえてきた。

「お待たせしました〜!」
男性が顔を上げ、そちらを見た。
黒いスーツに、ハイヒールを履いた20代程の女性。
キャラメル色の髪の毛が、くるりとカーブをつけてまとめられている。
「いえいえ、今来たところです!
そちらこそ、お仕事お疲れ様で…」
彼女の顔を見て、ぴたりと言葉が止まる。
「どうかしましたか?」
女性は、ぽけぇっとして、頭の上に?を浮かべた。
男性はその顔を凝視する。
整った眉毛に、栗色のまんまるとした目。
口元には薄い口紅が塗られ、化粧直しをした薄いチークが頬に振り掛けられている。
とても、とても、可愛らしくて、美しい。
整って…整っている?

「え…」
男性は思わず後退りをした
決して相手が嫌いなわけではなかった
電話をしている時も、メッセージを送っている時も、カバンの中に入っているプレゼントを選んだ時も。
全て、全てが楽しかった。
だが、体が、本能が訴えかけていた。
整っている顔を、だが違和感を感じる顔を。
本能が、危険だと訴えかけている。

後ずさった男性を見て、女性の顔から笑顔が消えた。
まるで、大嫌いな兄を見たかの様な顔を浮かべた。
「あーあ。やっぱりダメだったか。」
黒幕の様に、静かに喋る。
「顔を綺麗にしすぎると、人間の本能が危険だと認識してしまう。先輩の言うことを聞くべきだったな。」
笑顔を消し、冷酷な目で男性を見つめながら、ハイヒールの音を鳴らして、静かに、氷の様に近づく。
男性は一歩も動けず、女性を見つめるだけだった。
「ほら、今日は特別な夜。ですし、まだまだ夜は長いですから!」
女性の顔が、バリンと、ガラスの様に割れた。
顔のパーツが、パズルの様に砕け、地面に落ちる。
パーツをハイヒールで踏み潰す。嫌な音がした。
顔があった場所には、深淵の様な、ドス黒い暗黒が、バターのように塗りたくられていた。
「あなた、製薬会社のお偉いさんですよね!
嬉しいなぁ!そういうポジション、なってみたかったんですよぉ。」
会った時よりも嬉しそうな声を上げた。
女性は、腰が抜けて座り込んだ男性の側に寄り、しゃがんで目線を合わせる。
今にも口付けができてしまいそうなほどの距離。
「じゃあ、いただきまーす!」
女性の声が、最後に聞こえた。

お題『特別な夜』×『美容整形』

1/20/2026, 12:42:38 PM

そこは海の底だった
沈没した船に乗っていた宝箱ぐらいしか、辿り着けなさそうな場所。
深海の魚達が悠々と泳ぎ、太陽の光など届かない場所。
その海の底に、一人の少年が横たわっていた。
勿論意識は無いし、恐らく死んでいる。
昆布の様な長髪が魚につつかれ、ボロボロの服の隙間に小魚達が潜り込んでいた。
死体になったそれを、誰かが持ち上げた。
人魚の様な動きで、それを抱えながら上へ、上へと、優雅に泳ぐ。
二つの人影はやがて、砂浜に辿り着いた。

「げほっ!ぐっ…はぁ、はぁ。」
死体になっていた少年は、咳き込みながら起き上がる。
そこは砂浜で、奥へ手前へと、動き続ける波が音を立てている。
少年は水を含んだ長い髪を引きずりながら、辺りを見渡そうとした。
「やっと起きたか人間!」
うわ!。と少年は驚きの声をあげ、そちらを見やる。
その姿を見て、更に少年は声を上げる。
「なによ、変な声あげちゃって。」
「いやいや…は?おまえ…何者だ!?」
少年が指差した、声の主。
頭部に黒いネコミミと、ふにゃふにゃと揺れる、黒くて細長いしっぽ。
縦に伸びた猫の瞳孔が、じろりと少年を見る。
分類を決めるのであれば、彼女は"ネコ娘"だった。

「全く、人のことを指差すなんて、礼儀がなってないわ!折角助けてあげたのに。」
少年は我に帰り、その言葉に反論する。
「助けた?ふざけんな!俺は死にたかったんだぞ!?助けてなんて言ってない!!」
「はぁぁ?うるっさいわね、そんなの知らないわよ!
というか、海で死にたかったの?」
少年は黙り、海を見つめる。
既に太陽が、地平線に吸い込まれそうだった。
「母さんが、海が好きだったんだ。だから、ここで綺麗に死にたかった。」
「……そう。なら、このまま生きなさい。」
「どういうことだ?」

二人の影が、長く伸びる。
誰もいない砂浜に、二人以外の気配が現れてしまった。
「アンタ、"海の眼"に目をつけられたのよ。
だから、綺麗な死に方なんて出来ないわ。」
呆気に取られる少年と、真剣な顔をしたネコ娘。
二人に近づいたのは、悍ましい何かだった。
黒くて、触手があって、足音が複数聞こえて、眼がたくさんあって。
少年がそれを認知する前に、ネコ娘がその手を掴む。
「行くわよ!綺麗に死にたいんでしょ!?」
少年はこくりと頷き、砂浜の上を走った。

お題『海の底』×『ネコミミ娘』

1/19/2026, 10:58:49 AM

「会いたかったよ…キミとぉ!!」
豚の様な、汗が混じった声がその場に響いた。
夜の住宅街。人を設置するのを忘れたかの様に、人の気配も、灯りも、生気も無い。
声の主は、機械だった。
成人男性と同じぐらいの背丈に、二足歩行の姿。
その腕も、脚も、頭も、お腹と、背中も。
サビが進行した青緑色の金属が、人間の形を成していた。強いて言うならば、サイボーグ。
エコーが掛かった声で、獣の様に喋りだす。

「なぁ、どうしてこっちに来ないんだい?
僕は、君に会いたくてここまできたんだよぉ。」
「うわ、きっっしょ。」
辛辣にその言葉を放ったのは、金髪の女性だ。
ポニーテールを揺らし、ミント色の目で、その機械をめんどくさそうに見つめる。
赤色の派手なワンピースが、寒そうに肌を見せる。
「どうしますか?倒します?」
敬語口調で冷静に問いかけたのは、女性の隣に立つ、金色の目をした少年だった。
綿飴をちぎったような灰色の髪に、肌を全て隠す黒色のマントを見に纏っている。
「そうね。うん。派手にお願い」
女性が呆れた様に言い放ち、少年が頷く。
サイボーグ…ダサイボーグが、必死に言葉を連ねるが、二人共聞く耳を持たず、言葉すら理解しようとしなかった。

「じゃあ、行きますねー」
喚き散らす言葉を無視し、少年はふーっと息を吐き、構える。今から蹴りをするように、右脚を後ろに引く。
ダサイボーグが避けようと足を動かすも、小石ほどしか動かない。
少年の脚が、大きく振りかぶって、ダサイボーグに向かって放たれる。
機体に当たる前に、少年の脚は、鳥類の脚の様に黒くなり、前に2本、後ろに2本のヒヅメに変化する。
その鋭い爪が機体に突き刺さり、ぐしゃりと金属の板を貫通した。
「ぎゃァァァァ!!」
蹴り飛ばされ、ギャグ漫画の様に空に飛ばされる。
数秒経ってその姿は見えなくなり、キラリと星が輝いた。

「帰りましょうか。」
「うん…ハンバーガー食べよう。新しく出たやつ。」
「僕、新しいシェイク飲みたいです。」
「よーし。今日はお姉さんが奢ってあげよう〜!」

お題『君に会いたくて』×『サイボーグ』

1/18/2026, 1:33:59 AM

耳を赤くする風が、いっとう強く吹いた。
文句の如く咳払いをしたのは、40代後半程の、黒いジャケットを着た男性だった。
枯れ木しかない並木道の中央には、堂々と規制線が張られ、男性はその線の中に堂々と入る。
周りにいた警官が労いの言葉をかけ、事件の状況、現状を説明し始めた。

耳と鼻を赤くする風が、いっとう強く吹いた頃。
辺りはすっかり暗くなり、街灯が淡く光る。
規制線は解除され、警官達も撤収し、何も知らぬ人々が、その上を歩いていく。
そんな様子を、不服そうに男性は見つめていた。
「ニキ、お疲れですね〜。肩でも揉みましょうか?」
背後から聞こえたのは、若そうで、元気そうで、おとなしそうな、女性の声だった。
振り返るのもめんどくさそうに、ニキ、と呼ばれた男性は、その女性と話し始める。
「いらねぇよ、そんなもん。どうせなんか持ってきたんだろ、やなぎ。」
やなぎ、と呼ばれた女性は、男性の前に回り込み、正解と言わんばかりに笑う。
ベージュの髪が肩下まで伸び、カーキのコートが夜風に揺れる。
大人びた20代ほどの顔が、その笑顔を作っていた。

「そうですよ。木枯らしが身に染みるこんな夜に、考え事をしているニキの為に、悩み事を解決するお品をお持ちいたしました。」
「なんだ?」
「あれ?いつも『だからニキじゃねぇよ』なんてツッコんでくれる警部が、そのまま素通りなんて。
本当に疲れてるじゃ無いですか!」
「疲れてるわ、見てわかるだろ。で?だから、なにしにきたんだ?」
さっさとしろと押し通す様に、語気を強めた男性警部に、やなぎは、はいはいと話を続けた。
「今回の事件は、ぱっと見ただの事故です。
被害者は軽傷。犯人も見つかって自供し、その辻褄も、目撃証言も、特に不審な点は無い。
でも、貴方からしたら、とてもおかしい。反吐が出るほどに、赤を青と言っているかの様に。」
男性警部は黙り込む。
「そりゃそうですよ。貴方は普通の人間とは違って、"想い"の力を感知できてしまう。
だから気持ち悪いんです。真相を少しだけ感じてしまうから。」

やなぎは、コートのポケットから、何かを取り出した。
それは手のひらサイズのスコップで、ガチャポンの商品にありそうな、ミニチュアさだった。
「これは依頼の報酬でもらった物です。これを地面に突き刺すと、その土地で死んだ人の記憶を、再生することができます。」
「代償は?」
やなぎが優しそうに微笑む。
「それを忘れない人で良かったです。
代償は、"一度見始めた記憶を、最後まで見ること"です。逃げも隠れもできない。そんな代償です。」
男性警部は、鼻で笑い、そのスコップを手に取った。
「んなもん、最初からそのつもりだ。ありがとうな」
男性警部は、肩を回しながら、先ほどまで規制線が張られていた場所に向かって、歩き出す。
その後ろ姿を、やなぎは木に寄りかかりながら、じっと見守る。
「『墓暴き』。"死人に口無し"という死の概念を、堂々と壊してしまう、そんな代物。警部なら、有効活用してくれますもんね。」

お題『木枯らし』×『死の概念』

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