崩れ切った建物で
破れたカレンダーがひらりと落ちる
可愛いかぼちゃが描かれ、31日に花丸が付けられ、
側には仮装用のマントや、仮面がちらかっている。
外には破れた白旗が静かに揺れ、誰かの嗚咽声が街中に響き渡る。
統一された服を着た者達が、銃を握ったままあっちこっちで横たわっている。
そんな街に、裸足で歩く音が聞こえてくる。
青色の服が返り血で染まり、小さな体躯には似合わない銃を背負っている。
赤く染まった目で、銃を取り出し構える。
目線の先には、白色の制服を着た男が、にたにたと笑っていた。
物陰に隠れ、冷静に標準を合わせる。
呼吸を落ち着け、次に撃つ標的を確認し、震えなくなった指で、引き金を…引いた。
敗れた町に、反逆の発砲音が鳴り響いた。
お題『カレンダー』
薄明時が時を告げた
あの人から告げられたタイムリミット
それが、今日の薄明時。
逃げなきゃ
地平線から徐々に姿を見せる太陽から、必死に逃げた。
逃げて 逃げて 逃げて 逃げ続けて
靴がボロボロになっても
人々が私を邪魔しようとも
生きたい 生きなきゃいけない 生きなくてはいけない
死にたくない 死ねない 死んではいけない
後ろから爆発音が聞こえてくる
人々の悲鳴が聞こえる
タイムリミットの時を告げた太陽は
全てに等しく死を与えた
お題『時を告げる』
紫色の空が広がり、青色の海がたぷたぷと揺れる。
ベージュ色の砂浜には、色も形も様々な貝殻が散らばっていた。
ワンピースを着た少女が、裸足で砂浜に足跡をつけていく。
オレンジ色の巻貝を拾い上げ、ふっと息を優しく吹きかけた。
貝殻は砂でできていたかのように、小さな粒子となってバラバラになり空に浮かんだ。
そして細かく並び、映像を作り出した。
それは貝殻に詰まった、狂気の映像。
戦争を繰り返し、栄光と領地の為に戦った兵士達の、血と怨嗟の記憶。
悲鳴と命乞いの声が鳴り響いた後、その映像は夢だったかのように消えてしまった。
少女はさっきと同じ様に、貝殻を拾い続けた。
狂気の墓場であるこの砂浜の
貝殻が全て消え去るまで
お題『貝殻』
神様だけが知っている秘密
人間達には理解してはいけない秘密
唇らしき部位を動かし
言葉を発した
選ばれた人間だけがその言葉を聞ける
脳が認識し 心で理解する
選ばれた人間は深く、深くお辞儀をした。
満足そうで、これからを生きようと心に決めた顔を見せ、神に背を向け帰路につく。
「良かった」
人間は雨粒のようにぽつりと呟いた
首にぶら下げているネックレスを握りしめ
神の地を離れた
人間が聞いた言葉は
神が教えた言葉は
神様だけが知っている
お題『神様だけが知っている』
日差しがぎらりと輝く
鉄板みたいに熱くなった
コンクリ地面を見て
僕はぽつりと呟く
「あの時みたいだな」
お題『日差し』