悲鳴が飛び交う町中を
君の背中を追って走り続ける
お腹が苦しくなりながら息を吸っては吐き、
目の前を走る君を見逃さないよう、足に力を入れる。
逃げる人々が前から走り、僕達と交差する。
前方には巨大な青緑の化物がいる
大きな手で車をちぎり、子供のようにそれを投げる。
大きな音を立ててガラスの割れる音と悲鳴が上がり、火の匂いが風に乗って鼻に届く。
「待って、待って!」
君を呼び止めるも、君はスピードを落とさない。
雪の肌は返り血に染まり、せっかく整えていた髪の毛もボサボサになっている。
暴れている化物の側につくと足を止め、くるりと此方を振り返る。
「ごめんね。かき氷食べる約束、果たせなくて。」
君は後ろに手を組み、にまっと笑った。
「何言ってんだよ、いいから離れろ、危ないだろ!」
後ろではトラックの荷台を握りつぶし、くしゃくしゃにしている化物がいる。
「危なくないよ。だって…」
その言葉に呼応するかのように、化物はぐるりと振り返り、此方を見つめる。
迷子になりそうなその深緑の眼で、やっと見つけたかと言わんばかりに、息を荒げながら。
四足の手足を使って此方に向かって走り出す
「私はこの子なんだもん」
「#°!!!」
君の名前を呼ぶ声は、ぐしゃりという音に掻き消された。
化物が君を握りつぶした音に。
血が滴り落ち、脚がぼとりと落ちる。
化物は血に塗れた手をベロベロと舐め回す
「ふざけんな」
僕はいつのまにか斧を持っていた
1mは超える、空色の装飾がされた斧を。
なぜ斧が現れたかなんて知らない。なぜ軽々と持てるのかなんて知らない。
ただ、そいつを殺せと言っているのだけはわかる。
君が化物なんて知らない。勝てないなんて知らない。
知らない疑問を頭に充満させて、恐怖という感情と一緒に斧を振りかぶり、そして。
気づいたら辺りには血の雨が降っていた
お題『君の背中を追って』×『雪の肌』
6/22/2025, 9:58:09 AM