ふうり

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視界が真っ暗になる
目を開けると、体は動かせなくなっていた。
目の前の地面の匂いと血の匂いが鼻を刺激する
呼吸をしようとすると、腹に激痛が走る。
さっきのそいつのせいだ 腹を蹴られたんだった
そいつはゆっくりとこちらに近づき、追い打ちとして腹を思いっきり蹴りやがった。
声に出ない悲鳴が頭の中で埋めつくされる
「弱者が私の理想に歯向かうものではないぞ」
人をなんとも思っていないその冷たい目で見下す
「もう二度と歯向かうんじゃない。あの女と同じ目に遭いたくなければな。」

「あの女…?」
眠りかけていた意識が、その言葉によって這い上がる。
「あの女って…誰のこと…言ってんだよ」
喉の限界を無視して、質問を投げかける。
そいつは何も喋らない代わりに、こちらにある物を投げてきた。
地面に落ちたそれは、クリオライトでできたブレスレットだった。
純白なはずのそれは、赤黒い血がこびりついている。
「まさか」
それは、俺が彼女にプレゼントした物だった。
半年前の誕生日に あの時に

自分の脳内が、別の想いに埋めつくされる。
その想いはなんなのだろうか
復讐?後悔?悲しみ?
もうわからない 
だが、もう二度と会えないという事実がずっと脳内に残り続ける。

動かなかったはずの体を動かし、立ち上がる。
右脚は切られ、左目は使い物にならなくなっていた。
しかし今は歩けるし、見える。
右脚はいつのまにか白いクリオライトが生えており、なんだか視界の左は、キラキラと白く輝いているような気がするのだ。
冷たい目で見下していたそいつは、氷が解凍したように驚きの顔を浮かべている。ざまぁみろ
「さぁ歩け もう二度と後悔しないために」
そんな言葉が頭の中に浮かんだ気がした
手から白く輝くクリオライトの片手剣が生み出される
それを強く握りしめる
さぁ、第二ラウンドの始まりだ。

クリオライト 氷晶石
石言葉 『行動』『決断力』

お題『もう二度と』×『クリオライト』

3/24/2025, 12:09:23 PM