『貝殻』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「貝殻」
水族館で買った、ピンクの貝殻のイヤリングを大事に学習机の引き出しにしまっていた
そんな時期が私にもありました
残骸を美しいと感じるられる心に、なにか良さを感じる。
(貝殻)
さり、さり、ざり
素足で歩く砂浜に
ぶちまけられた貝の亡骸たち
砂鉄に黒く染った砂浜を
白くしろく染めあげて
波に揉まれて砕け散った
貝殻たちが鈍く痛い
まだ生まれたばかりだったはずの
小さな巻貝がくしゃりとつぶれた
遠くで遊ぶこどもたちが
見つけた貝殻の大きさを競っている
きゃらきゃらとわらいあう声が
ピカピカ光る星みたいだった
帯のような夜色の浜に
星のような貝殻のかけら
なまあたたかい潮風と
沈む白黒の太陽が
私の意識をくらくらさせた
「貝殻」
僕の両親は海が大好きだった。
だから、毎年夏になると海に連れて行ってくれて
家も窓から海が見える場所にある。
そして、母さんと夜に海辺を散歩するのが僕の日課だった。父さんは仕事で帰りがおそいから。2人だけで。
そんなある時、母さんがとっても綺麗な貝殻を見つけて、それをネックレスにして僕にくれたんだ。
すっごく嬉しかった。
宝物にしようと思った。
一生大事にしようと思った。
だから、ずっとずっと肌身離さず持っていたんだ。
離れていても母さんがそばにいる気がして、
心の支えでいてくれる気がして。
もちろん今でも持ってはいる。
でも、今ではこれを見るたびに
あの時を思い出すたびに
心が苦しくなる。
いつしか父さんは家を出て行ってしまったんだ。
そこから母さんの心は壊れていって。
色々と僕なりに考えて寄り添ってみたけど、
僕には何もできないのだと思った。
僕が何かしたところで母さんの心の穴は埋められないのだと。
あの時のような笑顔の母さんはもういない。
それでも母さんは夜になると海を眺めている。
何を考えているのだろう。
もうわからない。
どうしたら僕に振り向いてくれるのだろう。
考えてばかりだ。
いっそのことこいつと一緒に海へ行こうか。
ー貝殻
貝殻
暖かい陽だまりの中
海のようなあなたの笑顔を浮かべて
私は泣いている
潮の香りがする
涙を流している
私は貝
貝になりたかった
醜い心を閉じ込め
暗い世界で光る思いを抱きしめ
泣く貝
貝殻の中
私は泣いている
潮の味がする
涙を流している
貝殻に 耳を当ててみれば
波の音が聞こえるだろうか?
家に マリがだいぶ前に
修学旅行で 買ったらしい
星の砂の入った小瓶がある
小さな貝殻が 入ってて
とても かわいい
昨日の投稿で 主人格の名前を
マリと書いてしまった(笑)
名前をハルから マリに変えます
ハルというのは 俺の考えた名前だし
マリの方が 主人格の本名に近いのです
貝殻
魔法使いだったおばあちゃんが亡くなった。110歳だったけど、魔法使いとしては短い人生だったらしい。
ミャオーん。
家の縁側で猫のチイちゃんが寂しそうに鳴いていた。おばあちゃんを探ししているのだろう。
「ごめんください」
誰か来た。
おばあちゃんが亡くなってから、おばあちゃんの昔の友達も何人か訪ねてくる。
玄関に行くとビーフシチューの美味しいレストランに向かうバスの中で会った着物姿の小柄なお婆さんが立っていた。
おばあちゃんの仏壇の前でお茶を出すとお婆さんはそれを啜りながら話し始めた。
「あんたのばあさんが、もし自分が死んだら孫にこれを渡して欲しいと頼まれてな」
お婆さんの手には、貝殻で出来た螺鈿のネックレスがあった。
「これ?」
「あんたのばあさんが魔法使いだったのは知っているだろ。それは妖怪の世界に行くための鍵だ。」
「妖怪?おばあちゃんは魔法使いで妖怪とは関係ない」
おばあちゃんの友達は、フッと笑ってもう一口お茶を飲んだ。
「魔法使いは西洋の妖怪みたいなものさ。妖怪の世界であんたのばあさんが若い頃、暮らしていた世界を見てみるといい。ばあさんもそれを望んでおった。」
みたいなものって。割と適当だな。
でも、魔法使いだった頃のおばあちゃんのことを知ってみたい。
「そうそう。妖怪の世界に行くならあの猫を連れて行きな。あれでも300年近く生きた猫又だ。妖怪の世界のことは詳しいはずだよ。ついでに用心棒をつけてもいい。
ネズミはダメだろうから、目玉の親子とかなら大丈夫かね~。シシシ。その気になったらあのバスに乗るといい。行き方を教えてあげようじゃあないか」
螺鈿のネックレスは、キラキラと七色に光りを放っていた。
私はいつかあの螺鈿のネックレスを使うだろう。。私にもおばあちゃんの血が流れている。私も妖怪や魔法使いの仲間なのだから、自分のルーツを見に行ってみたい。
おばあちゃんありがとう。
おばあちゃんがくれたチャンスだから、いつか猫又のチィちゃんに案内して貰って妖怪の世界に行ってみよう。
ライフハックお姉さん👩🏫<貝殻は細かく砕くと肥料になるけど、問題はどうやって細かくするかなのよね。まあ、どこのご家庭にもある、一般的な薬研なんかを使うといいと思うわ。
お題『貝殻』
貝殻
「お前は良いよなー何でも出来て。」
中島は再試確定のテストを見て落ち込んでいる様子だ。
「まぁーな。」
爽やか、何でもそつなくこなす。
周りからはそう思われているらしい。
まあ、実際モテて、成績が良くて、生徒会に入っているような奴だ。そう思われても不思議じゃない。
でもひとつ言わせてもらいたい。俺は必死に、努力してる。
目標のために毎日を積み重ねてるだけ。
それなのに周りは俺の表面しか見てない。親さえもだ。
中島の言葉が夜になっても頭から離れない。
シャーペンを置き、俺は自転車で海に向かった。
むしゃくしゃした時は決まって貝殻を集めてしまう。
懐中電灯で照らしながら、砂浜をじっと見つめる男の姿はかなり不気味だと思うが、気にしない。波の音を聞きながら夢中で貝殻を探していく。
大きいもの、渦を巻いたもの、つるつるしたもの、派手な色のもの。
集めるまでは知らなかったが、貝殻はとにかく個性的だ。
そしてどの貝殻にも模様がある。模様からどうやって貝殻が作られてきたか分かる所もいい。
そのうち、むしゃくしゃした気持ちは消えて家へ帰ることにした。
母親に気づかれないように静かに洗面所に向かい、貝殻を軽く洗った。
自分の部屋に戻り、改めて今日の貝殻を見てみる。ずっと欲しかった形を拾えたのはラッキーだった。
美しい形と色を持っているのに、貝殻はかなり固くて頑丈だ。中身はぶよぶよでかっこ悪いから、固い美しい殻で自分を守ってるんだろう。
俺は何で自分を守ってるんだろ。
カラン、コン、コツン、
貝殻をビンに入れる音だけが静かに響いていた。
「貝殻」
バターが溶け込んだマドレーヌをひとくち。
口腔内に広がる優しい風味にほっと一息つく午後。
青い海!
白い砂浜!
ついに来たぞー!
ホントに綺麗だなぁ
ここなら、きっとあいつも喜んでくれる!
お!あったぁ!
この貝殻いいなぁ
よし、ここの隣に……うん!似合ってる!
これでおっけー
次は、あの子も連れてこよっと。
久々に海に来たな
昔は、よくここへ来てたっけ
貝殻とかめっちゃ集めて、母さんに怒られたなぁ
「おーい!〇〇もこっち来いよー」
友達が僕の名前を呼ぶ。
せっかくだし、面白い貝殻でも持っていってやるか
ふと、近くに沢山貝殻があるところを見つけた。
…?
貝殻か?これ?
白い塊が所々に落ちている。
形は、バラバラで大きい物から複雑な形まで。
妙に見たことのあるようなそれに
少しずつ鳥肌が立っていく。
そこにある砂を少し掘ると
ようやく、それが何か分かった。
思わず、悲鳴が上がり腰が抜ける。
それと同時に
すぐに僕は、警察に電話した。
タイトル:貝殻
「貝殻」
海から帰ってきた君は焼けて赤く肌を染めていた。嬉々として俺にこれが楽しかった、あれがどうだったと教えてくれる。
次は君とも行きたいねと笑顔で話してくれている。俺はそうだなと嬉しさを隠して素っ気なく答える。
嬉しそうに俺を見た後急に思い出したかのように立ち上がりどこかに行ってしまった。どこに行ったのかと心配しているとにこにことしながら帰ってきた。
どうしたんだと声をかける前に何かを渡された。それをよく見ると貝殻の入った小さな小瓶だった。
君のために頑張って作ったんだ、と。
少し恥ずかしそうに話してくれる君はいつもよりずっと愛おしかった。
砂浜で見つけた桜色の貝殻
君はそれを「垢抜けている」と言った
なぜかと訊ねると君は
「恋する乙女の頬だから」
その答えを聞いていた近くの少女は微笑んだ
小学生の頃
父と海に貝を取りに行った
父は1人で沖へ向かった
10mくらい?
私は浅瀬で探していた
父が「ほらーっ」と
貝を私に投げてきた
私は受け止められず
手前にチャポーンと落ちた
拾おうとして下を見ると
真下に血がポタリと広がった
「え?」
触ると手に血がついた
貝殻で唇が切れていた
父には話せなかった
✴️141✴️貝殻
あとがき
貝は投げると危ないです🥹
貝殻は海辺で拾えるきれいなもの
たくさん集めたくなるもの
あの中で生きてたものがあって
それを守ってたものだけが残ってる
そう思うと
集めるのがちょっと怖くなるような
大事にしたら守ってくれそうな
どっちにしろ
単なるものではなくなる不思議
貝殻と聞いて連想するもの
幸せの丸い貝
(貝殻)
「貝殻、シェルパウダー、シェルフレーク、シェルビーズ。ハンドメイド以外だと、クラムシェルなんて言葉もあるんだな」
わぁ。今回もなかなかに手強いお題が来た。
某所在住物書きは「貝殻」から連想し得る複数個を検索し、それらの物語を仮組みし、途中で「無理」と挫折を繰り返している。
青森県には「貝焼き味噌」、ホタテの貝殻を使用して作る郷土料理があり、
岩手県はアワビの生産量が、酒蒸しが美味いアサリは愛知県が、それぞれ日本一だという。
食い物ネタが書ける――おそらく酒とセットで。
「他に貝殻って言ったら、耳に当てて『海の音』とか、『白い貝殻の小さなイヤリング』?」
なお、牡蠣の貝殻は肥料としても優秀らしい。
螺鈿細工は貝殻を使った工芸だ。 他には?
――――――
9月なのに、真夏日の予報で、かつ最低気温との差が10℃だの8℃だの開いている東京です。
残暑と気温差で体調崩す方も多からず居そうなこの頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。
アサリは加熱するとすぐ身が固くなるから、ふっくらしているうちに食うのが美味い
という情報を見つけた物書きが、こんなおはなしをご用意しました。
某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、絶賛修行中。
稲荷のご利益ゆたかなお餅を作って売って、
あるいはお母さん狐が店主をしている茶っ葉屋さんで看板子狐なんかして、
一生懸命、人間を勉強しておりました。
今日は都内で漢方医をしているお父さん狐が、お家に薬師の赤貝とハマグリ、貝の精の姉妹を招いて、
コンコンコン、ぷかぷかぷか。1匹と2個、もとい3人で、内科医療の情報交換の真っ最中。
「そちら、治療に漢方薬を使用してみるタイプの研究は、どれくらい進んでいますか」
「こっちはひとまず、葛根湯に黄麻湯、それから小柴胡湯加桔梗石膏の名前が、よく出てきます。
あと、漢方から離れますが、藍や緑茶、ホタテの貝殻を用いた除菌や予防のハナシも見ました」
「ホタテの貝殻ですか」
「はい。ホタテの貝殻です」
ととさん、難しいハナシをしてるなぁ。
コンコン子狐、父狐がちっとも遊んでくれないので、床にお腹とアゴをべったりつけて、退屈千万。
父狐が晩酌用に保管している、貝焼き味噌用のホタテの貝殻を引っ張り出してきて、かじかじ、かじかじ。噛んで舐めて遊んでいます。
「西洋医学の方はどうですか。最近、新しい薬の開発や、アプローチの仕方に関する論文は」
「一番最初に比べれば、目新しいものの発表は減ってきているように感じます。論文の量も落ち着いてきました。追加情報はほぼありません」
「そうですか。ありがとうございます」
「ところで狐さん。そちらのお子さんが、どうやら何か噛んでいるようですが」
「お気になさらず。ホタテの貝殻です」
「……ホタテの貝殻ですか」
「はい。ホタテの貝殻です。
あ、すいません。気に障りましたよね」
ご安心ください。「あなたがた」を食う筈がありませんので。 コンコン父狐、赤貝の精とハマグリの精の薬師姉妹に誠心誠意で説明、釈明。
ホタテの貝殻を絶賛かじかじ中の子狐抱えて、部屋の外に出そうとフスマの前へ。
「すぐ移動させます。ちょっと、待ってください」
子狐としては父狐と離れるのは不服ですが、
父狐としては子狐からホタテの貝殻を取り上げるより、ホタテの貝殻咥えた子狐に他の部屋でお留守番してもらう方が楽なのです。
「ついでにお茶でも、」
お茶でも、持ってきましょうか。
コンコン父狐がそう言おうとして、フスマに手をかけると、父狐が開ける前に、フスマが動きました。
「あら。お客様?」
現れたのは丁度お昼の買い物から帰ってきた、若くて綺麗なご婦人に化けたおばあちゃん狐。
「お出しするのは、冷茶と生菓子で良かった?」
手にはヒイキのお魚屋さんからオマケで貰った岩牡蠣が、貝殻をきつく閉じて、虚無そうに透明なナイロン袋の中で氷風呂しておったとさ。
「カキの貝殻……」
「すいません、すいません!決してわざとでは」
「分かっています。偶然です。偶然ですとも」
「お客さんも岩牡蠣食べてくかい?」
「お母さん!ヤメテ!」
【お題:貝殻 20240905】
子供の頃、それはキラキラと輝いて、とても綺麗で素敵な物に見えた。
身につけると、少しだけお姉さんになれる、そんな気がした。
「はぁ⋯⋯」
だいぶ古くなっていた。
貰ったのは10歳の時だから、30年以上前の物だ。
壊れるのは仕方ないのかも知れない。
けれどやっぱり気持ちとしては、やり切れないのも確かで。
「はぁ⋯⋯」
手のひらに乗せた小さな白い蝶を眺めては、ため息がまた一つ零れる。
今では他にも色々なアクセサリーを持っているけれど、これだけは特別だった。
「どうしたの?さっきからため息ばっかりついて」
今日は学校もバイトも休みだと、朝からソファで寝転んでいた娘がいつの間にか背後に立っていた。
「壊れちゃったの、これ」
娘の目の前に、手に乗せていた蝶を差し出す。
彼女はそっとそれを持ち上げ、光に翳して見ている。
「これ、イヤリングだった?あれ、でも、ママいつもピアスじゃなかった?」
「そうよ、イヤリングだったの。金具はだいぶ前に壊れてしまったけど⋯⋯」
「そっか。綺麗な蝶だねぇ。キラキラしてるし」
「そうでしょう?でも、脆くなってるみたいで、ほらこっちは割れちゃったのよ」
娘に渡した蝶とペアのもう片方の蝶を見せる。
こちらは羽の部分がパッキリふたつに割れてしまっている。
「ん〜、ん?これ、もしかして貝殻で出来てる?」
「あら、よくわかったわね。そうよ、貝殻でできた蝶なのよ」
「へぇ。⋯⋯これ、大事なもの?」
「そう、大事なものよ」
家族を除けば、私の一番の宝物かもしれない。
それくらい、私にとっては大事で大切で思い出深いもの。
「う〜ん。もしかしたら、友達が直せるかも」
「えっ!本当に!」
「聞いてみないと分からないけど⋯どうする?」
「是非!」
それが1週間前の出来事で、そして今日、あの蝶が帰ってくる。
そのまま直すのはやっぱり難しかったらしく、少しアレンジを加えて良ければ直せる、との話で、それに関しては、娘のお友達に一任した。
故に、出来上がりがどんな風になっているのか私は知らなかったりする。
「そろそろかな?」
わざわざ家まで届けに来てくれる、との事で、朝からパウンドケーキとクッキーを焼いて準備していた。
娘はそんなに気を使う必要は無いって言っていたけど、そうも行かない。
「コーヒー、紅茶、緑茶、ジュース⋯⋯うん、大丈夫ね」
最終チェックを済ませた所で、玄関の鍵を開ける音がした。
キッチンから廊下に顔を出すと、ちょうど娘が靴を脱いでいるところで、その向こう側には⋯⋯。
随分と背の高い男性が立っていた。
彼は私と目が合うと、ぺこりと頭を下げた。
「えーと、こちら青柳 将太さん。ママのイヤリングを直してくれた人で⋯⋯」
「青柳です。美紀さんとお付き合いさせていただいています」
「あら、そうだったのね。美紀をよろしくお願いします」
2人の馴れ初めを聞こうとした私を遮り、顔を真っ赤にした娘は例のイヤリングの話を持ち出した。
青柳さんは持って来た紙袋から小さな箱を取り出すと、その蓋をそっと開けてテーブルの上に置いた。
そこには小さな桃色の花と共に透明な樹脂に閉じ込められた貝殻の蝶がいた。
ドロップ型の樹脂には銀色の鎖が付けられ、イヤリングではなくピアスの金具が付けられている。
「貝殻がだいぶ脆くなっていたので、このような形にしました。劣化の少ない樹脂を使用したので黄色変化はしないと思いますが、保管は日の当たらない場所をおすすめします。あと、ピアスにしましたがイヤリングが良ければ変更できますので言ってください」
「⋯⋯⋯ありがとう、本当にありがとう」
もう二度とつけることができないと思っていたイヤリングが、こんなに可愛く私の好みの形になって戻ってきた、それが奇跡のようでとても嬉しかった。
ダメね、年をとると涙腺が緩くなっちゃうわ。
「ねぇママ、そのイヤリング。どういうものなの?」
「これは、陽介さんから初めて貰ったものなの」
「パパから?」
「そう、修学旅行のお土産で貰ったのよ」
修学旅行から帰ってきたその日に、わざわざお土産を渡すためだけに、自転車で20分もかかる私の家まで来てくれたのよね。
あー、思い出しちゃった、嬉しかったなぁ。
「修学旅行って、高校の?」
「ううん、小学校の修学旅行よ。水族館で買ったんですって」
「小学校!え、パパとママってそんな子供の頃からの知り合いなの?」
「ふふふっ、内緒。美紀と青柳さんの馴れ初めを教えてくれたら、教えるわよ?」
そんなむくれた顔したって駄目よ、だって陽介さんとの思い出はそんなに安くないんですからね。
ま、そのうち教えてあげてもいいかな、素敵なピアスにリメイクして貰えたから。
━━━━━━━━━
(´-ι_-`) 貝殻→白い→イヤリング=森のくまさん。という事で、パパは熊のような人ですw
耳を優しく撫でる海の音。
それと一緒に、しゃり、しゃり⋯と何かが擦り合わさる音がする。真夏の熱い砂のうえを歩いていくと、波に運ばれてきた綺麗な貝殻が無数にあった。
きらきらと光る珊瑚色の貝殻。暗い紫色の貝殻。種類は豊富。
この子達は一体どこから来たのだろう?一体、誰が使っていたのだろう?
そんな事を思いながら私はひとつ拾い上げる。
上にして日光に照らせば、シャボン玉のようにきらきらと光り輝く。
それはとても神秘的で、海の世界の美しさを教えてくれた。
貝殻はわたしの耳。元は一つの物なのに、左右に分かたれて可哀想。。。といった要旨の詩が教科書に載っていたことを思い出す。
ググれば出てくるがそれはおいておいて、詩というのは易しい言葉でも高尚なものであったりするし、奇をてらわず素直に表現することもあるので、それがいったい小学校の頃の教科書だったのか、中学生の頃の教科書だったのか、はたまた高校生の頃の教科書だったのか、記憶が曖昧な上に推察も難しい。
わたしが受けたその時の詩の印象は、なんだかいやに女々しいものに感じた。
たかが耳を、誰にでも付いている耳を、さも真珠を抱いたアコヤ貝か、はたまた岩牡蠣か、桜貝か。。。とにかく食卓で馴染みある浅利や蜆ではないイメージで、この人は自分の耳を貝殻に寄せた。
貝殻に耳を実際に寄せる仕草はよくあることで、波の音が聞こえてくるといった美しい現象が起こる。
と、こんなにも分量多く書いたのであるが、きっと彼女の詩の方がよっぽど短く読みやすく想像の幅を持たせた言葉の羅列であることは大いに認めたいと思う。
国語の教科書というのは本当にすばらしいものである。
大人になっても趣味や教養として小中学校レベルの教科書と授業を受けたいものだ。