貝殻
「お前は良いよなー何でも出来て。」
中島は再試確定のテストを見て落ち込んでいる様子だ。
「まぁーな。」
爽やか、何でもそつなくこなす。
周りからはそう思われているらしい。
まあ、実際モテて、成績が良くて、生徒会に入っているような奴だ。そう思われても不思議じゃない。
でもひとつ言わせてもらいたい。俺は必死に、努力してる。
目標のために毎日を積み重ねてるだけ。
それなのに周りは俺の表面しか見てない。親さえもだ。
中島の言葉が夜になっても頭から離れない。
シャーペンを置き、俺は自転車で海に向かった。
むしゃくしゃした時は決まって貝殻を集めてしまう。
懐中電灯で照らしながら、砂浜をじっと見つめる男の姿はかなり不気味だと思うが、気にしない。波の音を聞きながら夢中で貝殻を探していく。
大きいもの、渦を巻いたもの、つるつるしたもの、派手な色のもの。
集めるまでは知らなかったが、貝殻はとにかく個性的だ。
そしてどの貝殻にも模様がある。模様からどうやって貝殻が作られてきたか分かる所もいい。
そのうち、むしゃくしゃした気持ちは消えて家へ帰ることにした。
母親に気づかれないように静かに洗面所に向かい、貝殻を軽く洗った。
自分の部屋に戻り、改めて今日の貝殻を見てみる。ずっと欲しかった形を拾えたのはラッキーだった。
美しい形と色を持っているのに、貝殻はかなり固くて頑丈だ。中身はぶよぶよでかっこ悪いから、固い美しい殻で自分を守ってるんだろう。
俺は何で自分を守ってるんだろ。
カラン、コン、コツン、
貝殻をビンに入れる音だけが静かに響いていた。
9/6/2024, 5:10:34 AM