貝殻
魔法使いだったおばあちゃんが亡くなった。110歳だったけど、魔法使いとしては短い人生だったらしい。
ミャオーん。
家の縁側で猫のチイちゃんが寂しそうに鳴いていた。おばあちゃんを探ししているのだろう。
「ごめんください」
誰か来た。
おばあちゃんが亡くなってから、おばあちゃんの昔の友達も何人か訪ねてくる。
玄関に行くとビーフシチューの美味しいレストランに向かうバスの中で会った着物姿の小柄なお婆さんが立っていた。
おばあちゃんの仏壇の前でお茶を出すとお婆さんはそれを啜りながら話し始めた。
「あんたのばあさんが、もし自分が死んだら孫にこれを渡して欲しいと頼まれてな」
お婆さんの手には、貝殻で出来た螺鈿のネックレスがあった。
「これ?」
「あんたのばあさんが魔法使いだったのは知っているだろ。それは妖怪の世界に行くための鍵だ。」
「妖怪?おばあちゃんは魔法使いで妖怪とは関係ない」
おばあちゃんの友達は、フッと笑ってもう一口お茶を飲んだ。
「魔法使いは西洋の妖怪みたいなものさ。妖怪の世界であんたのばあさんが若い頃、暮らしていた世界を見てみるといい。ばあさんもそれを望んでおった。」
みたいなものって。割と適当だな。
でも、魔法使いだった頃のおばあちゃんのことを知ってみたい。
「そうそう。妖怪の世界に行くならあの猫を連れて行きな。あれでも300年近く生きた猫又だ。妖怪の世界のことは詳しいはずだよ。ついでに用心棒をつけてもいい。
ネズミはダメだろうから、目玉の親子とかなら大丈夫かね~。シシシ。その気になったらあのバスに乗るといい。行き方を教えてあげようじゃあないか」
螺鈿のネックレスは、キラキラと七色に光りを放っていた。
私はいつかあの螺鈿のネックレスを使うだろう。。私にもおばあちゃんの血が流れている。私も妖怪や魔法使いの仲間なのだから、自分のルーツを見に行ってみたい。
おばあちゃんありがとう。
おばあちゃんがくれたチャンスだから、いつか猫又のチィちゃんに案内して貰って妖怪の世界に行ってみよう。
9/6/2024, 5:18:41 AM