春爛漫
桜、チューリップ、パンジー、ガーベラ
庭に様々な花が先始める。春だ。
日差しもポカポカとして、眠くなる季節。
花に誘われて虫もやってくる。その虫を目当てに鳥がくる。
鳥に運ばれた種がどこか遠い地で芽吹き、再び花となる。春爛漫。そう。春は優しく回っている。PCAサイクルのように。
い、いけなない。眠っていた。
今は昼休みだがセミナーに参加している。いわゆる、自己啓発セミナー。参加理由は自分に自信がないからだ。そんなセミナーに参加したからと言って自信がつくものでもない。分かっているが、友達の誘いもあって参加した。
自分のこと、昔のこと、内なる自分、などなど話しを聞いてもらうことは悪いことではないが、なんか苦手。苦手を克服してこその自己啓発セミナー。間違ってはいない。はず。
でも、私にはかなりの苦痛。向いていない。だからといって、途中で辞めらる勇気もない私。はぁ。ため息しかでない。
どうしようか。午後もセミナーは続く。このまま帰ろうかな。義務でもないし。
お金払ったし、やっぱり辞められない。
はぁ〜。
何してるのやら。
自分でもよく分からないや。
外はポカポカで花が咲き、気持ちのいい季節なのに…。
やっぱり帰ろう。
帰りに服を買って、美味しもの食べて、銭湯寄って行こう。
もう、今のままでいいよ。変わらない私、バンザイ!
春先は新しいことに挑戦したくなるが、私は身の丈にあったことでいい。
できることをやっていこう。
記憶
遠い昔。わしがまだ人間であったころ、川の近くに住んでいた。
小さな家だがみんなで肩を寄せ合い、楽しく生活していたことを思い出す。
あれから何百年経ったのだろう。もう記憶も曖昧だ。
長い時間が過ぎたのにわしはまだこの土地にいる。土地に縛られているのか、ここから離れることができない。
おや?
誰かやってきた。人間だろうか。
「雨が酷いな。ちょうどいい小屋があって良かったな。」
「本当に。今日はここで雨宿りしよう」
人間たちがわしの住む小屋で夜を明かすようだ。久しぶりに人の声を聞く。あー。懐かしい。わしも誰かと話しがしたい。
『ゔぉ〜。ゔ、ゔ。』
「おい。何か言ったか?」
「いや。」
上手く声がでない。長いこと声など出したことはない。仕方がないこと。
さて、もう一度。
『おーゔぉ。に、にんゔぉ、』
「やっぱり変な声が聞こえる。なんかいるのか。」
「ああ。聞こえた。俺にも聞こえた。ヤバいぞ、出よう。ここは無理だ。」
「そ、そうだな。出よう。」
待て、待て。
わしは何もせんよ。話しがしたいだけ。雨も酷くなるし行かんほうがいい。
あー。行ってしもうた。
ここいら辺は、雨が降ると鉄砲水が出るから危険だと伝えたかったのに残念じゃ。
それから数日後、また人間がやってきた。
今度は子供のような可愛らしい子だったが、どうやら、わしが見えるようだ。
面倒なことにならんといいがな。
子供のような少女は、わしが居る小屋に入ると顔をしかめた。
そして、わしの前まで歩いてきて胸の十字架を握り締めながら話し始めた。
「あなたはどうして、あちらの世界に行かないのですか。いつまでもここにいても、皆さんの迷惑になります。」
迷惑か。
なるほどなぁ。ならばお前さんがわしの変わりに請け負ってくれないか。ここは、鉄砲水で無くなった人間の魂が溜まる場所。
みんな亡くなったことに気づかず彷徨っておる。
「え!?」
お前さんほどの力があれば大したことはなかろうに。ここにおるのは、数百人程度。
わしが抱えるには大き過ぎる魂の数でなぁ。困っておった。
よろしく頼む。
「え!イヤよ。なんで…戻って。」
ああ。これでやっとここから離れられる。
わしの記憶も無くなり無となろう。
やっとだ。本当にやっとだ。
ゆっくりと眠ることにしよう。
もう二度と
もう二度とこんな過ちは犯さない。私はわたしの正義を貫く。誰に言われても変える気持ちはない。
昨日、学期末の試験があった。試験勉強も頑張って、毎日図書館に通ったりもした。
今回、頑張ったから学年でも上位を狙っていた。いつもは、一緒に勉強する友達にも、「集中したいからごめん」と言って辞退した。
なぜ私がこれほどまでに期末試験に力を入れているのか。それは、推薦がもらえるかとうかの瀬戸際だからだ。
推薦があるのとないのでは、全く違う。
なんとしても推薦が欲しい。
推薦があれば、これからの高校生活が楽になる。余裕を持って遊べる。
なんに!なのに!
試験の範囲を間違えてしまった。
友達といつも通り一緒に勉強していたら気がついただろうに。どうしてこの大事なときに限ってこんなことになるのか。
一生の不覚。
取り戻せない推薦枠。
試験で頑張れるしかない。
もう二度としくじらないように、念には念を入れて試験会場に向かう。
試験会場は広く、たくさんの受験生がいたが、私はわたしを信じている。
必ず、合格する。
曇り
曇りのち雨。
私の恋模様だ。
高校に入って好きな人ができた。隣の席の田島くんだ。無口だけど、笑うと可愛くて、パンジーみたいって言ったら怒ってた。
「なにそれ。意味わかんねぇよ。」
確かに。
私にも分からない。でも、笑顔が可愛らしくて思わず出た言葉。パンジーはちょっと失礼だったかな。
始めはあいさつだけだったけど、話しもするようになって、あなたの優しさに気がついた。無口なのに友達がたくさんいて、カース上位の女の子とも普通に話しをするあなたに驚いたりもした。
今日は卒業式。
最後だから告白しようと思っている。でも、あなたに彼女さんがいることはみんなが知っている事実。
振られるのが分かっているのに告白するのはどうかと思うけど。それでもケジメをつけたい。女友達からは「男前だねぇ〜」なんて言われたけど、心のなかは、曇りのち雨だろうなぁ。
やっぱり告白するのやめようかな。
決心が揺らぐ。
告白してもメリットなんてないのに…。
どうしよう。
田島くんに呼び止められた。
え?なんで?
「あのさぁ。俺に何か言いたいことないの?」
どういうこと?
「ないの?おまえ、さあ。俺のこと好きだろ。だから告白してくるかと思ってた。まあ、彼女いるし、付き合えないけどさ。」
なんだこれ?
私に告白されるのを待っていたってこと。
彼女さんいるのに?
なんの自慢?
はぁ?冷めた。一気に冷めた。アホらし。
「別にないよ。あんたこと好きとか思ってないし。彼女さんにバラすよ。キモ!」
田島くんの横を駆け足で通り抜けていく。
告白しなくて良かった。
危な!あんなのクズじゃん。
私って人をみる目なさすぎでしょ。
あとで、友達にバラしてやろう。
心は曇りのち雨から雷雨。
あいつ。ムカつく。
暗い夜道には気をつけろよって言ってやれば良かった。
やっぱムカつく。
その日、田島くん彼女さんに振られたと風の噂で聞いた。そりゃあそうだろう。
あれはダメだよね。
彼女さん正解。
心は晴れやかな晴天だ!
byebye
さくらの花びらが舞い散るあの日、私は中校を卒業した。
2年の夏から行くのを辞めた。勉強が分からない訳でも、いじめられた訳でもないけれど、行くのを辞めた。なぜか自分でも分からない。ただ、行かなくてもいいかと思ったのだ。
そんな私に友達が卒業証書を届けてくれた
学校に行かなくてもくれるのか。
「一緒に卒業式に出たかったよ」
「ごめんね。」
友達が寂しそうに笑う。
「これからどうするの?高校は?」
「通信…」
「そう。私は東京の学校に行くから、会えるのは今日で最後かな。あのね。学校に来なくなったのって、私のせい?私なんかしたかな。私と話しをしたくなかった」
え?
友達がそんな風に思っているなんて考えたことはなかった。
彼女は中学に入ってから新しく友達になったけど、話しも合い、楽しかった。
「そんなことないよ」
「じゃあなんで…」
彼女は泣きそうになりながら、私をみていた。卒業式の日にこんな顔させて申し訳ない。ごめんね。
「なんでかな。自分でもよく分からなくて。」
申し訳なくて彼女の顔が見れず、俯く。
「なにそれ。」
クスクスと笑う声。
驚いて顔を上げると彼女が泣きながら笑っていた。
「ずっと私のせいで学校に来ないと思ってた。そうじゃあなくて良かったけど、なんかムカつく。」
笑いながら怒る彼女。
「本当にごめん。あなたのことは好きだよ。でも、学校はなんか馴染めなくて…」
「そうなんだ。相談して欲しかったけど、仕方がないよね。最後に会えて良かった」
バイバイ。またね。
そんなあいさつで別れたけるど、きっと彼女の世界は広がる。これからもずっと広がる。私とは違う光に満ちた世界がある。
あの日から5年。
私は通信も辞め、引きこもり生活を始めていたが、彼女からの誘いで小さい島で自給自足生活をしている。
そして、彼女もまた大学を辞めて島で暮らしている。なぜ大学を辞めたのか聞く「何となく」と答えた彼女は笑っていた。
「この野菜さあ。美味しから2人でカフェでもやらない。」
「そうだね。引きこもりしてたから、接客は無理たからよろしくね。」
「大丈夫。そんなにお客さん来ないよ」
確かに、こんな小さい島のカフェに来るの人なんていない。
「ねぇ。なんで私を島に呼んだの」
「う〜ん。だって、話しが合う友達ってあなたしか思いつかなったから。」
「そうなんだ。」
なんか、嬉しい。
私たちの世界はこの小さい島で動き始めた。いや、まだ何もはじまってないけどこれから世界を広げて行けばいい。
島の人たちは優しいし、採れる野菜も美味しい。空も海も空気も綺麗だ。
中学校に行かなくなった私。通信の高校も辞めでしまった私。大学を退学した彼女。
つまずく事ばかりの私たちだけど、少しづつ私たちのペースでやっていこう。