たやは

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3/22/2025, 8:46:47 PM

byebye

さくらの花びらが舞い散るあの日、私は中校を卒業した。
2年の夏から行くのを辞めた。勉強が分からない訳でも、いじめられた訳でもないけれど、行くのを辞めた。なぜか自分でも分からない。ただ、行かなくてもいいかと思ったのだ。

そんな私に友達が卒業証書を届けてくれた
学校に行かなくてもくれるのか。

「一緒に卒業式に出たかったよ」

「ごめんね。」

友達が寂しそうに笑う。

「これからどうするの?高校は?」

「通信…」

「そう。私は東京の学校に行くから、会えるのは今日で最後かな。あのね。学校に来なくなったのって、私のせい?私なんかしたかな。私と話しをしたくなかった」

え?
友達がそんな風に思っているなんて考えたことはなかった。
彼女は中学に入ってから新しく友達になったけど、話しも合い、楽しかった。

「そんなことないよ」

「じゃあなんで…」

彼女は泣きそうになりながら、私をみていた。卒業式の日にこんな顔させて申し訳ない。ごめんね。

「なんでかな。自分でもよく分からなくて。」
申し訳なくて彼女の顔が見れず、俯く。

「なにそれ。」

クスクスと笑う声。

驚いて顔を上げると彼女が泣きながら笑っていた。

「ずっと私のせいで学校に来ないと思ってた。そうじゃあなくて良かったけど、なんかムカつく。」

笑いながら怒る彼女。

「本当にごめん。あなたのことは好きだよ。でも、学校はなんか馴染めなくて…」

「そうなんだ。相談して欲しかったけど、仕方がないよね。最後に会えて良かった」

バイバイ。またね。
そんなあいさつで別れたけるど、きっと彼女の世界は広がる。これからもずっと広がる。私とは違う光に満ちた世界がある。

あの日から5年。
私は通信も辞め、引きこもり生活を始めていたが、彼女からの誘いで小さい島で自給自足生活をしている。
そして、彼女もまた大学を辞めて島で暮らしている。なぜ大学を辞めたのか聞く「何となく」と答えた彼女は笑っていた。

「この野菜さあ。美味しから2人でカフェでもやらない。」

「そうだね。引きこもりしてたから、接客は無理たからよろしくね。」

「大丈夫。そんなにお客さん来ないよ」

確かに、こんな小さい島のカフェに来るの人なんていない。

「ねぇ。なんで私を島に呼んだの」

「う〜ん。だって、話しが合う友達ってあなたしか思いつかなったから。」

「そうなんだ。」

なんか、嬉しい。

私たちの世界はこの小さい島で動き始めた。いや、まだ何もはじまってないけどこれから世界を広げて行けばいい。
島の人たちは優しいし、採れる野菜も美味しい。空も海も空気も綺麗だ。

中学校に行かなくなった私。通信の高校も辞めでしまった私。大学を退学した彼女。
つまずく事ばかりの私たちだけど、少しづつ私たちのペースでやっていこう。

3/21/2025, 6:43:12 PM

君と見た景色

「あのさ。さくら、見に行かない」

「うん。5年ぶりくらいだね。一緒に桜を見に行くの。うふふ。楽しみだな。」

そう。5年前に桜を見に行く約束をした。でも、約束は守られなかった。約束を破ったのは私だ。
あの時、別の友達から聞いた。君が私のこと「嫌いだ。」と言っていたと。でも、それは嘘だった。すぐに気がつく嘘なのに、嘘を信じてしまった。それからは、話すことが、そして会うことが無くなった。

あれから5年。高校の入学式で久しぶりに会った君は、変わらずに私に笑顔を向けてくれた。釣られて私も微笑む。

新たな約束の日。
少し散り始めた桜を2人で眺めながら、お弁当を食べる。お母さんも君と出かけると言ったら、嬉しそうにお弁当を2人分作ってくれた。

「あのさ。なんか。ごめんね。」

「いいよ。私もごめん。もっと早く話せば良かったね。」

「悪いのは私。でも、桜を見に来れて良かった。ありがとう。」

久しぶりに君と見た景色は、ずっとずっと忘れない。
これからは春には桜を、夏には花火、秋には紅葉、そして冬には雪を見に行こう。最高の思い出をたくさん作ろう。

そして、10年後も仲良くしていたいな。
これからはよろしくね。

3/20/2025, 12:24:47 PM

手を繋いで

吾輩はキジトラの猫である。
名前はキジ夫だ。
生まれてこの方、飼い主さんと住むこの家を出たことはない。この家と窓から見える踏切、そしてチンチンと音をたてながら走る電車が吾輩の世界の全てだ。
別に不幸とか思ったことは一度もない。
飼い主さんは優しいし、温かい寝床と美味しいご飯があれば、大概のことは問題にならない。

もちろん、楽しいこともある。
うちの飼い主さんは仕事から帰ってくると吾輩に覆い被さり、吾輩を思っ切り吸い込むのだ。
いわゆる、猫吸いだ。
吾輩を吸い込んだ飼い主さんが顔を上げると、その顔はムフフとなり、ゆるゆるだ。
そして、吾輩に感謝するのだ、

「癒やされた〜。ありがとう。キジ夫」

飼い主さんのこの顔が見られれば、吾輩は幸せだ。飼い猫冥利につきる。
この飼い主さんは、ちょっと変なところもある。猫吸いは、仕方がないとしてなぜか分からないが、吾輩の手を掴んで喜んでいる。何が楽しいのか。

「握手。握手〜。」

なぜかいつも、手をぶんぶん振り回し、飼い主さんと手を繋いで握手なるものをさせられる。
謎の儀式だ。
もういっそ、悪魔を呼ぶと言ってもらったほうが頷ける。

こんな飼い主さんとの生活だが、割と楽しませてもらっている。飼い猫も悪くはない。

3/19/2025, 11:54:28 AM

どこ?

どこ?ここはどこよ?
完全に迷った。
う〜ん。分からん。
あんまり歩き回らない方がいい気がするけど、誰かに道を聞こうにも…、
ここは、フランス!言葉なんて“ボンジュール”位しか分からない。
どうして、1人でフランス来ようと思ったのか。フランス人はフランス語を話せない人は相手にしないって聞くし、どうしよう。困る。ホテルまで帰れる気がしない。

とりあえず、大通りに出て、観光にきた日本人を捕まえよう。それしかない。
大通りってどっち?
あ!あの人。日本人ぽい。

「すみません。大通りってどっちですか」

絶対日本人だ。

「え?大通りはそこを右に曲がったところよ。」

「ありがとうございます」
お辞儀をして歩きだす。
ん?
せっかく日本人にあったのになんでホテルの場所を聞かなかったのか。
バカだ。バカ過ぎる。私って本当にバカた。

大通りに出たが、やはりホテルの場所は分からない。
どこ?どこよ。ホテルはどこ?
ウロウロ歩き回ったがホテルの場所はわからないし、そのあとは日本人にも会えなかった。もう泣きたい。あー。本当に涙出てきた。

「あの、ど、うしました、か?」
へ?変な日本語。でも日本語。
顔を上げると金髪の可愛らしい女性がいた。女神だ。

「ホテルへ帰る道が分からなくて。」
涙でぐしゃぐしゃになった顔で笑ったら、その人もほほ笑んでくれた。

可愛いい〜

なぜか可愛い金髪のフランス人に手を引かれて大通りを歩き出す。この人、私のこと子供だと思ってるよ。絶対に。25才なのに
迷子だと思われてる。
なんか、それはそれで悲しい気がする。
でも、こんな可愛いお姉さんに手を引かれてちょっと嬉しいな。

こんなフランス1人旅もいい思い出かも。
でも、この次はせめて英語が話せる国がいいかも。私は英語話せないけれどね。

3/18/2025, 12:23:33 PM

大好き

お父さん!大好き!
大きくなったらお父さんのお嫁さんになる。

子供のころからの私の口癖。
どこに行くにもお父さんのあとを着いて歩き、何をするにもお父さんじゃなきゃイヤと駄々こねていた。

それなのに、中学生のころからお父さんが疎ましくなった。
嫌いになった訳でははない。
でも…。
門限があるとか、友達は選びなさいとか、
勉強をしなさい、なんて言われたことはないのに疎ましくなった。
口を効かなくなった。
そんな私を見てもお父さんは「思春期だよ。しかたがないさ。」と寂しそうに笑っていたらしい。お姉ちゃんの話しだ。

ある日、お父さんが仕事で単身赴任することになった。お母さんは、私の進学のこともあるからと私とお姉ちゃんと地元に残ることにした。
先週、お父さんは単身赴任地へ行ってしまった。お父さんがいない我が家は、静かだ。いつも、お父さんの回りで誰かがしゃべり、お父さんは聞き役なのに笑声がたえない我が家。改めてお父さんは我が家の中心にいたのだと思う。 

数カ月後、赴任先でお父さんがケガをしたと連絡があった。ケガの話しを聞いた時、涙が溢れ、お母さんと慌てて列車に乗った。列車のなかでも涙が止まらない。

お父さん。死なないで。大好きなお父さん

お父さんはベッドの上にいた。ベッドの上でニコニコと笑顔で手をふるお父さん。
ちょっと。全然元気じゃん。
死にそうって言わないかった。お母さん!
お母さんを見ると涙でぐしゃぐしゃだった。お母さんも死にそうだと思っいたのだろう。おっちょこちょいだなぁ。

私も涙が止まらない。ぐしゃぐしゃだ。
なのに、お父さんはニコニコしてる。なんか癪に障る。おおげさでも、お父さんが生きていてくれて良かった。

お父さんを疎ましく思う気持ちは無くなった。また、大好きなお父さんに戻ったのだ。これからも大好きなお父さんでいて欲しい。

お父さん!大好きだよ!



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