『誇らしさ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
見窄らしかった貴方が心を決めた
海の向こうからやってきた王子様に
雷で打たれたかのような衝撃でもって恋をした
王子様の隣に立っても恥ずかしくないように
貴方は夢中で身なりを整え、言葉を覚え、戦った
確かに魔法使いはいたのかもしれない
でも貴方はガラスの靴を
その手を血で染めながら自分で用意した
身体中が痛んでも
偉大なる遊戯場で力の限り踊り切った
見た者の脳に鮮烈に焼き付く命のダンス
今は昔、そろそろ御伽話になってしまいそうな
貴方のシンデレラストーリー
◼️誇らしさ
《誇らしさ》
邪神を倒した時。彼は、胸を張ってはいなかった。
自国の皇帝の暴挙により起こった、他国への侵略行為に対しての今後の処理。
闇の眷属に蹂躙され、荒れてしまった自国の復興。
祝いの席にいてなお、彼は傷付いた他者への配慮とそれに対する責任の重さをただひたすらに噛み締めていた。
それでも自ら荒れた地へ赴き、厭うことなく力仕事も行って、民への信頼を築いていったよう。
民に混ざって額に汗して働いていた彼は、それは明るい笑顔だった。
そして、3年後。
彼はそうして民からの信頼を得たからか、国政に就き帝国をまとめ上げていた。
自分は指導者になる自信はない。
以前そう言ってはいたけれど、野望は持たずひたすら国民に対して真摯な彼は、本当に良き方向に国を導いていたようで。
相棒の中からではなく初めてこの目で直接見た帝国は、まだ復興が進まない箇所もあるけれど、それでも人々の笑顔で溢れていた。
皇帝に支配された結果持ち上げられた者の驕りの笑いではなく、全ての人達の安心から来る幸せの微笑み。
黄金色の街並みから生まれる人の営みが生む煙は呼吸のようで、そこに穏やかな生活がある事を示していた。
それは、彼の導きがたくさんの人の心を救ったという確実な成果で。
気が付いた時、嬉しさで胸が一杯になって泣きたくなった。
ああ、彼は3年もの間、こんなに頑張っていたんだなって。
そして今、私は彼の隣で街を見ている。
夕焼けの光を浴びて輝く、黄金色の街並み。優しい風にそよぐ、営みの炎が生む煙。
切り揃えた髪を風に靡かせながら、彼は背筋を伸ばして街並みを見つめている。
日の光で赤く染まった彼の表情は柔らかく、眼差しは慈愛に溢れている。
その姿は彼自身も気付いていない誇らしさが滲み出ていて、本当に美しくて。
私は燃えるような赤い光とともに、その美しさを瞳に焼き付けた。
ちっぽけなギャグでも
馬鹿にされる特技でも
君を笑顔が見れるなら
ちょっとだけ誇らしく思えた。
【誇らしさ】
「ホコリって聞くとどんなイメージ?」
ベランダ側に面した窓を掃除している時のことだった。後ろから聞こえる、クラスメイトの談笑と掃除の音が混ざりあった教室の中で、その声はやけに透明に聞こえた気がした。
昼休みに声の体積が大きいグループの一人で、つまり自分とは接点のないタイプの人間だった。ただ、いつも聞こえてくる声より柔らかい感覚があった。
「あんたに話しかけてるんだけど?」
近くに人はいなかった。ちらと柏木の方を見やると、洗剤で不思議な模様を描いている窓ガラスを、折り目正しく折られた新聞紙で丁寧に拭いていた。片手がジャージのポケットに押し込まれているのが、知りもしないのにらしいなと思った。
「この状況なら、埃しか思い浮かばないかな」
「どっちの?」
相手には音しか聞こえていないのだった。
「叩けば出てくる方の」
「……ま、そうだよね」
窓を拭く音が大きくなった気がした。
使っている新聞紙が役目を十分に果たしたので(本意ではないかもしれないけれど)、近くのゴミ袋に押し込んでから新しい新聞紙を拝借する。一度広げてくしゃくしゃにしてから、作業へと戻る。
「さっきから、なんでぐしゃってしてんの?」
「こっちの方が掃除としてはいいらしいよ」
「……先に言ってよ」
新聞紙の破れる音と、くしゃくしゃにする音が隣から聞こえる。
「何か言うことあるの?」
上の窓を拭き終わって、下の掃除にとりかかる。洗剤を視線で探していると、柏木がポケットから出した左手で「そっち」と指さした。
「ありがと、助かる」
灯台下暗し、しゃがみこんで足元の洗剤を拾い、そのままの体勢で窓に吹きかける。
「……話、あるっちゃある」
「あるんだ。怖いな」
衣擦れの音、遅れてやってくる気配と柔らかな香り。反射的に視線を向けると切れ長の瞳とぶつかる。
どうしていいか分からなかったので、周期的な監視カメラのように首を振って窓を見る。何が可笑しいのだろう、隣から吐息のような笑みが聞こえた。
「あんたさ、奥井たちにノート貸してたでしょ?」
洗剤を渡すと、柏木はお礼を言ってから受け取り、窓に吹きかけた。
「ノート、貸してたね」
テストの前、提出物の前になると奥井たちが借りに来るのだ。彼女の所属するグループの人間だったはずだけれど、案外冷たい呼び方をする。
「あれ、私も見させてもらってたから、お礼を言っときたくて、」
言葉は途切れたけれど、空気はまだ繋がっていた。不思議なもので、この数分でなんとなく分かるようになっていた。
「だから、ありがと」
「どういたしまして」
言葉にしてしまえばどうということはない話だった。大したことをしている訳ではないので、これくらいが丁度いいのだろう。
『真夏ー! そっちもう終わったー?』
がやがやとした教室の中心から、彼女を呼ぶ声が聞こえる。
「もう少しだけかかるかもー!」
『終わったらこっち来てー!』
返事の代わりに彼女はひらひらと手を振った。
「残りやっとくから、行ってきてもいいよ」
「いい。もう少しこっちやる」
窓拭きが好きなわけでは、どうやらなさそうだ。
「連絡先、交換しない?」
「いいよ」
「いいんだ」
スマホが手元にないので、電話番号を教えた。小さく復唱する姿が、しゃべるぬいぐるみの玩具のようだった。
「じゃ、後でかけるね」
そう言って、彼女は所属するグループの方へ戻っていった。立って背伸びをして、掃除し終わった窓を見やる。綺麗になった窓に対してやけに満足感のある自分がいることに、胸をすくような驚きを覚えた。
「『書き終わったら面倒でも声に出して読め』が、俺の卒論の先生の言いつけだったわ」
誇らしいじゃなくて、誇らしさかよ。某所在住物書きはネットの検索結果を確認しながら、ぽつり。
◯◯は誇らしさの象徴、△△は誇らしさで胸いっぱい、誇らしさは間違うと嫌味になるので取扱注意。
誇らしさと□□は紙一重、とかもあるだろう。
他には?他の物語の種は?
「俺に限ったハナシかもしれんが、意外と黙読じゃ、誤字脱字等々読み飛ばしちまうのよ。
で、その書き終わり音読派先生のおかげで昔、一度だけ校正の仕事貰ったことがあってな」
それが俺の「誇らしい」かな。物書きは回想する。
「で。……今日もこのバチクソ手強いお題か」
――――――
8月14日投稿分から続く、2019年のお盆のおはなしも、今日でようやく最終話。
雪国の田舎出身という藤森の里帰りに、「雪国の夏を見てみたい」と、都会育ちの親友宇曽野が、無理矢理くっついてゆきました。
最終日3日目の夕暮れ時、東京へ帰るその前に、
藤森は藤森自身の旧姓の、つまり実家の名字である「附子山」の、由来であるところの山へ、十年来の親友である宇曽野を案内しました。
未婚の藤森に旧姓がある理由は、7月21日投稿分の過去作参照なのですが、要するに色々あったのです。いわゆる諸事情というやつです。
過去作掘り起こしのスワイプがバチクソ面倒なので、あんまり気にしちゃいけません。
「四代藩主が統治していた頃だそうだ」
アスファルト舗装された山道を、藤森は実家に伝わる昔話をしながら、軽自動車でスイスイ登ります。
「民情視察のため、まだ村だったこの地を訪れた藩主が、視察を終えて帰る前に体調を崩してしまった。
藩主の不調を漢方薬の附子で癒やしたのが、村の医者をしていた私の先祖だったらしい」
助手席の宇曽野は花より団子。
「帰りの道中で食べなさい」と渡された茹でモロコシをガリガリしながら、
木漏れ日溢れる道路を、ちらり咲き覗く花々を、草むらの中で昼寝中らしい子狐を、見つめています。
「金銀錦の褒美を辞退した謙虚な医者に、藩主は深く感心して、かわりに薬草豊かな小さい山と、『附子山』の名字を与えた。――それが、私の『旧姓』のルーツ、ということになっている」
真偽は不明だがな。藤森はポツリ付け足しました。
「誇らしそうにしてる」
「『誇らしそう』?私が?何故?」
「お前は素直で正直だから分かりやすい」
「回答になってない」
車を停めて、エンジンをきって、降りた場所は開拓され開けた小さなハーブ畑。
「俺に見せたかったのはコレか?」
誇り高い「騎士道」の花言葉を持つ、白花のトリカブトと、厭世家な「人間嫌い」の紫のトリカブトを、そのツボミを、宇曽野が見つけて聞きました。
「まさか」
返す藤森はニヨリいたずら顔。
畑の大きなミカン科の木から、なにやら小さい緑の実を十粒収穫して、ペットボトルの水で洗って、
「コレだ」
問答無用で、宇曽野の口の中にダイレクトアタック。
「?」
なんだこれ。鼻を突き抜ける柚子か酸っぱいミカンのような、シトラスの香りを感じながら、カリカリ粒を噛み砕く宇曽野。
藤森の意図を勘繰り、数秒首を傾けていたところ、
「……、……ッ!……ア……!」
突然、唇がピリピリ、舌がヒリヒリ、唾液がドンドン溢れてきて、痺れる強烈な「何か」を感じました。
「ふじもり、きさま、あぁくそっ!」
藤森から水を引ったくり、口の中をすすぐ宇曽野。
藤森は、それはそれはイイ笑顔で、例の小さな緑を、未熟な実山椒を、プラプラ宇曽野に見せました。
そりゃ山椒の実を生で十粒も食ったら舌と唇が無事数分敗北するのです(よい子は程々にしましょう)
「はははっ、辛いだろう!つらいだろう!私の冷蔵庫のプリンを毎度毎度勝手に食う罰だ!」
「にしても程度があるだろう、程度が!」
「程度?そうか、足りなかったか!」
「ちきしょう、お前も食え!食っちまえ!」
「ハハハハハ!はは……、ぁっ、……が……!!」
ひとしきりポコポコ暴れてヒリヒリ舌と唇を痺れさせて、水を分け合って。藤森と宇曽野は仲良しこよし、お土産の茹でモロコシでガリガリ口直しをしてから、東京行きの新幹線で、帰ってゆきましたとさ。
おしまい、おしまい。
誇らしいって難しいなぁ。
好きなことはこうして文章を書いたり、絵を描いたりくらいだ。
絵に関しては褒められたこともあるので、やはりそれになるのかしら。
自分の誇らしさと言えば…難しいですが絵が得意な事ですかね。自分の誇らしさを見つける事って本当に難しいですね…あまり自分の事を知っていないのかもしれません、強いて言うとすれば人付き合いが上手いとよく言われるのでそうなのかもしれませんね。自分の悪い所と言ったら沢山出てくるんですけどね~まぁ、人ってそんなものですよね、
文章にするって難しいなぁ…
これくらいで終わります
私の父(享年67)の名前は「誇(ほこる)」という。
いやマジで。
お盆シーズンにこのお題が出たのはタイムリー。
仏様のお導き。
よし!今日は草刈りする予定だったけど、めちゃ暑だし、
クーラー効いた部屋で、
ベッドでゴロゴロして、
ガリガリ君食べながら、
アプリゲームしつつ、
誇さんの誇(ほこる)らしさ満載のエピソードを思いうかべて故人を偲ぶ。
そんな1日にしよう。
-お題『誇らしさ』
お題『誇らしさ』
たいしたことがないものばかり自慢する幼馴染がいる。
「今日、きれーな形の小石を見つけたの!」
「今日、ママが作ってくれたカレーがすごくおいしかったの!」
「今日、ホルンがちゃんと吹けたの!」
「●●高校に入れたんだ、頑張ったからうれしい!」
「▲▲大学、推薦で行けた!」
幼稚園の時から大したことがないものを、まるでさも特別ですって感じで言ってくる女だった。そんな時の彼女は決まって誇らしさで顔を興奮気味に赤くしていた。
私からすると、正直小石なんてみんな一緒だし、カレーなんてだからなにって感じだし、ホルンは誰よりも下手だし、●●高校は正直底辺よりすこしマシなレベルの学校だ。▲▲大学もたしか大したことがなかった気がする。
そういった話をしては流し続けて、大学になってお互いに一人暮らしを始めるから疎遠になって、社会人になってたまたま同じタイミングで帰省したら幼馴染に会った。
彼女は、となりに立っている男を私に紹介してきた。
「私、今度この人と結婚するの! すっごく優しくて最高なんだぁ!」
へ、どこがって思う。その男はよりにもよってデブでハゲだった。内心、「罰ゲームかよ」と思いながらそれを表に出さないように
「へぇ、おめでとう」
と言った。幼馴染は、嬉しそうに「ありがとう!」と返してそのハゲデブの手を引きながら家の中に入っていった。
その後姿を見送りながら私は思う。
別にあんなレベルが低い女にお似合いの婚約者がいて、見た目もあの自信なさそうに笑う表情も私からしたら「ないわー」って感じだし、それでもあの女は私にマウントとったつもりなんだ、腹が立つ。
いいや、先を越されたんだ。
そう考えると、私は実家に戻って自室のベッドの上に突っ伏した。
皆から馬鹿にされないように、見た目を磨いてそれなりの地位を学校で築いて、勉強や運動も頑張ってそれなりのレベルの高校、大学に入って、歴代の彼氏は全員が容姿端麗だ。
だけど満たされないのは、私にはこの性格だから友達が一人もいなくて、恋愛も半年と続いたことがない。皆、私の本性がバレて引いたか、浮気を繰り返すクズ男ばかりだからだ。
それでもそういう他人の目を気にした生き方をやめられそうにない。一方で、見下してた幼馴染はあんなにも幸せそうだ。
私は歯を食いしばって悔しさに耐えた。
【誇らしさ】
「あなたはこの街の誇りです!」
人々の声に背中を押され、若き勇者は魔王を倒すために旅立ちました。
「たくさん修行しました。こうしてあなた様をお護りする任に就けたことが、私の誇りです」
教会から派遣された忠実な僧侶も、勇者とともに旅立ちました。
「おまえのような弟子を持てて、わしは誇らしいのう」
師から免許皆伝を告げられた武闘家が、勇者の仲間に加わりました。
「この樫の杖は我が一族の誇り。この杖にかけて、魔王を倒すと誓いましょう」
そう告げるエルフの魔術師が、勇者の仲間に加わりました。
勇者一行は山を越え河を越え荒野を越え、長い旅の果てに、ついに魔王城へとたどり着きました。
そして、魔王の卑劣な罠にかかって負けてしまいました。
瀕死の勇者は、魔王に向かって叫びました。
「正々堂々と戦わずにこんな卑怯な手を使うとは、おまえに誇りはないのか!」
「誇り? そんな腹の足しにもならんものをありがたがるほど、魔王は暇ではないのだ」
魔王はためらいなく勇者たちにとどめを刺しました。
「こたびも人間どものしつこい侵略を退け、我が城を護ることができた。皆の協力に感謝する」
玉座に堂々と座した魔王は、居並ぶ配下たちを誇らしげに見回しました。
「ありがたきお言葉。魔王さまのお役に立てるのでしたら、どんな姑息な手をも使いましょう」
配下の魔物たちも、誇らしげな顔で応えました。
そして今日も、どこかの街から若い勇者が魔王討伐のために旅立ちます。人々の声援を背に受け、胸いっぱいの誇りを携えて。
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お久しぶりです。休眠中にもぽつぽつ♡をいただいていたようで、ありがとうございます。励みになります。
またこれからしばらく平日に投稿していきます。よろしくお願いいたします。
「漫画家になりたい」
そういうとよくバカにされたり
冗談だと思われる。
でも、その人達は
夢がないとか言ってる、
あるのかもしれないけど……
胸を張って夢を言えるところが
自分の誇らしいとこだと思うんです。
No.92『誇らしさ』
自分に誇らしさを感じることなんて滅多にない。
だって私は誇れることなんて一つもできやしないから。
でもね。私はあなたにとっての誇りになりたいと思ってしまったんだ。
【誇らしさ】
台風のあと
激しい雨風に全てが洗われる
そんな中、太陽に向かい凛と咲くひまわり
「誇らしさ」
私には、誇らしいと思えることがない。
というか、文章を考えているうちに"誇らしいって何?"という結論に至ってしまいこれはもうだめだと判断したため今回は全く関係のないことを書こうと思う
最近スマホを充電しようと思って、夜寝る前に充電器を挿そうとするのだが毎回忘れてしまい、朝になって充電がないと気づくことがしょっちゅうある。
ああ、またやっちゃったと思った と思った時には大抵家を出なければいけない時間。仕方なくそのまま持って行く時もある。
数年前学生だった頃、友達と「何%になったらスマホを充電する?」という話になったことがある。私は5%を切ったら危機感をもち1%になってようやく充電する。ちなみに私の友達は40%になったら充電するらしいが私の1%というのにとても驚いていた。自分でもさすがに電源が落ちるかのギリギリは危険だなと思いつつ充電器を手に持つめんどくささが勝ってしまい、結果1%になる。
私が気になるのは全国民、何%になったら充電を開始するのかということだ。各々理由も聞いてみたい。
もしこの文章を読んでくださった方の中にテレビのプロデューサーさんや雑誌の編集者さんがいらっしゃれば是非とも調査していただきたい(笑)
まあそんな都合のいいことあるわけないとは思うが…
誇らしさ
俺の人生にはまったくといっていいほど縁のないお題がきたな。
金がないは誇りがない。接客業をしてれば怒りと惨めさだけが積み上がっていく。
今の状況からはい上がろうにも子どもの頃からの怠けぐせで努力ができない。金や女、人生に強い欲望がないから努力ができない。
結局ずるずると今の状況がずっと続いている。きっと死ぬまでこのままなんだろうな。
そんな俺の人生に誇らしさなんてものがあるはずがない。
まぁそれはどうでもいいとして今日から本気でダイエットに取り組むぜ。今回の俺は本気だ。
ダイエットは結局食事制限。つまりカロリーを完璧に計算された食事を毎日食べれば必ず痩せる。
じゃあなんでそれができないかっていうと空腹に耐えられずに食べちゃうから。つまり空腹をなんとかすればいい。
今回は空腹対策としてところてんに寒天ゼリー、更にたくあんを用意した。この低カロリー食材を食前に食べて暴食を防ぐ。
ちょっと小腹が空いた時にはたくあんと白湯を飲んで空腹をしのぐ。これで痩せられるはず。
なんでこれが本気かっていうと金がかかるから。諸事情あって普通に飯を食う分にはあまり金がかからないけどこういった食料を買うには普通に金を払う必要がある。
これらを食費に足すと一日三百円くらいかかるはず。つまり月に食費が三千円くらい増える計算になる。
金をかける。貧乏な俺には辛い選択だ。だからこその本気というわけだ。お金をかけたからには絶対に痩せてみせる!
誇らしさ
プライドって書くとあんまり良くないイメージがある。
意味的には同じはずなのにね。
誇りか…基本的に持たないようにしてるからあんまない…
プライドあっても邪魔なだけじゃないかな?
「お前はどこに行ってもいじめられる」
それは学生時代に付き合っていた元彼の一言。
なぜそんなことを彼は言ったのかというと、
私が過去のいじめの話をしたからだ。
私は彼に会うずっと前、
幼稚園の頃からいじめっ子に目をつけられていた。
それから私は彼女(いじめっ子らのリーダー)を通して
高校を中退するまでいじめられ続けた。
原因などわからない。
だけど、何かが彼女にとっては気に入らなかった。
何を正せばいいのかわからないまま私は
心を病んだ大人になった。
同じような障がい者として当時の彼は
私に生きる術を教えてくれた。
「あなたがいじめられたのは、
人の話を聞くよりも自分のことしか話さないから」
そう言われてみれば、そうだったと思った。
だから、相手の気持ちを汲み取って話題を作った。
それが今にも生かされている。
元彼があの時言った通り、
私はその後も別の人たちにもいじめられた。
でも、職場のいじめの原因は明らかだった。
だからこそ、自分から必死になって解決に勤しんだ。
そして、今がある。
来月になれば入社して二年になる。
そんな私の誇らしさ。
それは、いじめに耐え抜く力と解決策を練る勇気。
逃げなかった私は最近では、
職場で従業員と「ありがとう」を交わしている。
誇らしさ
その男の子と出会ったのは真夏の熱帯夜で、もう崩れるんじゃないかってぐらいボロいアパートのベランダだった。
煙草を吸おうとベランダに出ると、20代前半、もしくは10代後半、それぐらいの男の子がベランダの柵に背中を預けて、ビールを飲むみたいに缶ジュースを煽っていた。
お隣さんと鉢合わせるってだけではなんの気も使わないので、私はお気に入りだった14タールの大人にしか許されない高タールな煙草の煙を心置きなく月に向かって吐き出す。
雲一つない空に私が吐き出した煙が雲のように空に散らばっていくこの瞬間は1日の中で一番好きな時間だ。
そんなふうに私が悦に浸っているとそれまで缶ジュースを煽っていた男の子が「未成年なんで」って呟くように吐き出した。
少しムッとしながらも煙草を灰皿に押し付けて火を消す。
「大人の大切な休憩時間奪ってんだからさ、あんたが家の中入ればいいでしょ。しかも未成年なんだったらこんな時間まで起きんな」
「家ん中ではゴリラが暴れてるもんでね。避難してんだわ」
「………そ」
ゴリラが暴れてる、それだけで瞬間的にDVか、と分かってしまう私は結構こっちの世界に染まってしまったんだろう。まぁ私自身、学生時代から身売って立派なトー横キッズやってたんだから当たり前か。
「……………大人のキスでも教えてやろうか」
「うわキモ……なに、急に」
私がそう言うと男の子は飲んでいた缶ジュースを吹き出しそうになりながらも顔をわかりやすく顰める。
「誰かに爪痕残したくなっただけ…」
「現代社会の闇の塊みたいなこと言ってんな」
「うるせぇよ…お前顔結構いいだろ、そんな奴に大人のキス教えたのは私だって誇らしくなりたいんだよ……」
「そんなクソみたいな誇らしさ持っても意味ないだろ」
お前にはわかんねぇだろうな、水商売ってほどやりがいも誇らしさも持てない仕事ないんだよ。
おっさんの相手してもなんも楽しくないし、気持ち悪いし、だからお前の相手させろって言ってんだよ。
「あのさ………、誇らしさってさ俺らみたいな人種じゃ絶対手に入らないものだと思うよ」
「知ってるっての」
「でもさ、おねーさんさ、誇らしさが欲しいわけじゃなくて、誰かの特別になりたいんだと思うわけ」
「…………」
「だから俺から一つだけ……、俺が家で親が暴れてるって言ってなにも言わなかったの、これまででおねーさんだけだよ。みんな上っ面だけの心配したり、怖がったり、珍しがったりで、めっちゃ色々口出してくんの」
「………あっそ」
それから男の子はまた缶ジュースを煽って、なにも喋らなかった。ボロアパートの熱帯夜で汗ばむ肌と、柵にもたれかかる男女の無言の空間。
普通だったらめっちゃ気まずい空間、その時はそれが何だか心地良かった。
クッキーを一口つまむ。それはさっくりとした食感で、ほろっと甘みを残して口内にすーっと溶けていく。
ピーチフレーバーの紅茶を啜ると、あっという間にほんのり柔らかな桃の香りで満たされていった。
「形あるものに縋りたくないの」
まるで紅茶に上書きされたクッキーのようにそれは必ず消えていく運命だから、と女は続けた。
再び茶菓子をつまみ、ティーカップに口を付ける彼女。
僕は何だか見てはいけないものを見てしまったような気がしてそっと目を逸らす。顔全体が茹で蛸のように真っ赤になる。心臓がとくんとくん、音を立てて暴れる。
「……でもね、嬉しかったわ」
こんな私に愛を囁いてくれる人がいるってこと。
貴方はいずれ上書きされていくかもしれないけれど、そこにあった愛だけはこれからも消えずに残るから。
嗚呼、勇気を出して良かったんだ。
開け放たれた窓から射し込む木漏れ日、鳥たちの囀る声、そのどれもが僕を、僕たちをあたたかく祝福してくれている。
彼女にとっての最初のクッキーに選ばれたこと、優越感にも似た心持ちで温くなった紅茶を一気に流し込んだ。
プライドは傷つくが
誇りに傷はつかない
安心して欲しい
アンタが俺の誇りでいるかぎり
俺がアンタを誇りにしているかぎり
アンタの心に傷がつくことはない
棺の中の君に言うには遅すぎたかもしれないが