白糸馨月

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お題『誇らしさ』

 たいしたことがないものばかり自慢する幼馴染がいる。

「今日、きれーな形の小石を見つけたの!」
「今日、ママが作ってくれたカレーがすごくおいしかったの!」
「今日、ホルンがちゃんと吹けたの!」
「●●高校に入れたんだ、頑張ったからうれしい!」
「▲▲大学、推薦で行けた!」

 幼稚園の時から大したことがないものを、まるでさも特別ですって感じで言ってくる女だった。そんな時の彼女は決まって誇らしさで顔を興奮気味に赤くしていた。
 私からすると、正直小石なんてみんな一緒だし、カレーなんてだからなにって感じだし、ホルンは誰よりも下手だし、●●高校は正直底辺よりすこしマシなレベルの学校だ。▲▲大学もたしか大したことがなかった気がする。
 そういった話をしては流し続けて、大学になってお互いに一人暮らしを始めるから疎遠になって、社会人になってたまたま同じタイミングで帰省したら幼馴染に会った。
 彼女は、となりに立っている男を私に紹介してきた。

「私、今度この人と結婚するの! すっごく優しくて最高なんだぁ!」

 へ、どこがって思う。その男はよりにもよってデブでハゲだった。内心、「罰ゲームかよ」と思いながらそれを表に出さないように

「へぇ、おめでとう」

 と言った。幼馴染は、嬉しそうに「ありがとう!」と返してそのハゲデブの手を引きながら家の中に入っていった。
 その後姿を見送りながら私は思う。
 別にあんなレベルが低い女にお似合いの婚約者がいて、見た目もあの自信なさそうに笑う表情も私からしたら「ないわー」って感じだし、それでもあの女は私にマウントとったつもりなんだ、腹が立つ。
 いいや、先を越されたんだ。
 そう考えると、私は実家に戻って自室のベッドの上に突っ伏した。
 皆から馬鹿にされないように、見た目を磨いてそれなりの地位を学校で築いて、勉強や運動も頑張ってそれなりのレベルの高校、大学に入って、歴代の彼氏は全員が容姿端麗だ。
 だけど満たされないのは、私にはこの性格だから友達が一人もいなくて、恋愛も半年と続いたことがない。皆、私の本性がバレて引いたか、浮気を繰り返すクズ男ばかりだからだ。
 それでもそういう他人の目を気にした生き方をやめられそうにない。一方で、見下してた幼馴染はあんなにも幸せそうだ。
 私は歯を食いしばって悔しさに耐えた。

8/17/2024, 2:21:45 AM