『街』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
申し訳ございません。
今日も少し忙しい(課題のせい)のでお休みさせていただきます。
自分勝手ですが、明日の話はできるだけ早くしますのでお許しください。
明日の話があがるまで、今までの話を見てお待ちください。
あと昨日の作品の時点でハート800いきました!ありがとうございます!
以上、作者より
街
人は記憶するときには、できるだけ多くの感覚を使ったほうが良いと教わった。街に出るととても多くの情報があり、感覚をとおして脳が活性化される。たしかに“時は金なり”というから時間も節約したいと思う。また外に出ると様々な危険が潜んでいるのも確かなことだ。このような思想からスマホは開発されたのかもしれない。文明の発達は人びとの生活を便利なものとした。その一方で人びとは怠け者にもなった。怠けることに罪悪感を持つ人もいる。文明と健康は深いつながりがあり、健康を求めるのは人間の本能なのかもしれない。
夜に染みる程灯っている街を、善と見なすか、悪と見なすか。まだ私は決められていない。
67【街】
街の灯りは消え始める。
暗くなり空が黒一面に染まる。
でも一つだけ灯っている場所がある。
それは…ある街の公園。
その公園は人があまりよってこない公園。
だからこそ と町長が付けたらしい。
迷い人が来ても怖くならないように との思いを込めているという噂も。
事実かどうかはあなたが行ってみてください。
夜中 明かりが灯されている場所へ。
そこはもしかしたら あの世への入口かもしれませんね。
『街』
私、高校三年生のあざみが住んでいるのは、本当にうんざりするほど見渡す限り田んぼと畑しかない田舎。コンビニも喫茶店もファミレスすらない。信じられない、といつも友達と愚痴を言っていたっけ。
お店といえば、小さな商店を年老いたその家の人がやっているだけ。
あとはみんな働ける者は農業をしている。
男子で長男だと、農家の跡継ぎしか道はない。でも、次男ならいいかというと、親はやはり手広くやる為にあとを継いで欲しがる。
みんなが知り合いのこの小さな村だから、学生時代につきあっていても、三年生になると別れる子達が増える。つき合い続けるという事はその男子の家に嫁ぐ、という事だ。
それは即、農家の嫁を意味する。
みんな母親の大変さを、小さい頃から見てきているから、まず農家の嫁になろうとする子はいない。
この村には三十代、四十代の独身の男の人がたくさんいる。
好き好んで自ら一年中休みも無くひたすら働き続ける大変な生活に飛び込もうなんて、物好きな女の人はなかなか現れない。それだけ農家の仕事は過酷だから。
私を含めて大半の女子はこの村を出て就職をする。だって、ここには会社もないのだから。
私は東京のファミレスで働く事が決まっていた。まあ、人見知りしないし、誰とでもすぐに友達になれるから、あざみは大丈夫だろうと先生も言ってくれた。
私たち女子は、わざわざ隣の市まで行って買ってもらった、生まれて初めてのスマホを胸に、大海原にいかだで漕ぎ出すような不安感を抱いていた。ただ一つ良い事はこの何もない田舎から抜け出せる、という事だ。
これはやっぱり気持ちがどこか浮わついた感じがした。
雑誌で見るような街に行くんだ、とみんな期待があった。
そして四月、私は勤め先のファミレスから電車で二つ手前の駅前通りにある、少し古いアパートを借りた。
やっぱり、帰り道が怖いので明るい通り沿いにしたかったから。
支給された制服を着ると、なんだか別人みたい。みんな新しく入る子はここで研修をして、各お店に行くのだ。
仕事に必要なことで覚えることは山ほどあった。でも私は元々あまりものおじしないので、わりと早く覚えていった。実際仕事に入っても、思ったより困らなかった。だんだん慣れてくると、楽しくなってくる。失敗もあるけれど、最初だから、と気持ちを切り替え働いた。
仕事が終わるとコンビニに寄り電車に乗ってアパートに帰る。
体は疲れ、足が痛かった。立ちっぱなしだからだった。なんとか食事を済ませ、シャワーを浴びると倒れ込むように眠る。そんな生活をしていたある日、チーフから「今日はお給料日なのでお昼休みにでもおろしておきなさい」と言われた。
私も初めてのお給料日なので、もらったお金が多いのか少ないのか、全くわからなかった。とにかく家賃分を残して、あとはおろした。
うわ!初めての働いたお金だ!
なんだか重みがある。一ヶ月がんばった証だもの。
母から家を出る前の晩に、お父さんには内緒だよ、と言ってけっこう入った通帳とカードを渡された。見ると私の名前になっていた。この時のために苦労して貯めたお金だろうに。小さな声で「お母さん、ありがとう」と言った。
今まではそこから少しずつ使っていたが、私はちゃんと貯金もして、あとのお金で暮らしていた。
初めてのお給料日の後、同期の美咲ちゃんがあざみちゃん、まだ東京知らないから案内してあげる、ついでにお店も行こう、と誘ってくれた。
夜、着ていく服を決めてから楽しみだな、まだ全然街に行ってないんだもの、と浮かれていた。
約束の日、美咲ちゃんがアパートまで来てくれた。電車を乗り継ぎ、それこそテレビで見る、街に来た。
ものすごい数の人が早足で歩いている。何度も人にぶつかりながら美咲ちゃんの後に続く。
美咲ちゃんが教えてくれていろんなお店に行った。
一体、どのくらいのお店が東京にはあるんだろうと思うくらい、同じような服屋さん、雑貨屋さん、靴屋さん、喫茶店、とまわった。
美咲ちゃんに、東京にふさわしい物を着ないとねと言われ一軒の洋服屋に入る。そこは美咲ちゃんの友達が勤めているので安く買えると言われ、どんどん服を勝手に選んてそのうちの一つを着たら「うん、これを着て行こうよ、あとは靴とバッグ」と言い勝手に選んでいく。なんだかわからないうちに家を出たとき身につけていたものは何もなくなっていた。
鏡には、見知らぬ女性が映っていた。
そんなに思ったほど高いお店ではなかったし、美咲ちゃんの友達の人が社割り、というのにしてくれたので、たくさん買ったわりに、思ったほどではなかった。袋をたくさん抱えて帰った。
それからは休みの度に美咲ちゃんに誘われ、案内がてら前に行ったお店でまた服を買った。
小さいけれど部屋にはクローゼットがあるので、前の方に買った服、後ろには持ってきた服を掛けておいた。
半年が経つ頃にはずいぶんと東京にも慣れた。行きたい所はスマホで検索して一人でも行けた。
ある休みの日、渋谷を歩いていると「あざみ!」と言われ見ると、田舎で一緒だったちさとだった。
「わぁー!懐かしい!」と二人で手を取り笑顔になる。ちさとは私を見て「あざみはすっかりもう東京の人だね」と言った。
ちさとは、相変わらずむかしの雰囲気を残したままだった。
「私ね、結婚するの」とちさとが言ったのでびっくりした。
「え?誰と?社内恋愛?」と言うと
ううん、と首を振り頬を桜色にして「高校で一緒だった孝次くん」。
あざみが驚いていると、ちさとの言うには、静岡に二人で行くという。そして体に優しい野菜を育てていくの、とちさとは言った。
「こういうの、Iターンっていうんだって」別の田舎で一から住んでやっていく、と言った。静岡を選んだのは、孝次が中学生の頃から、できたらいつか住んでみたいと思っていたからだそうだ。
「田舎ってどこも若い人が少ないでしょ?だから若いご夫婦とか一人ででも知らない田舎に住むのはすごい歓迎してくれるの。住む所もちゃんとそこで無料で用意してくれるの」
私ね、とちさとは言うと、
「街ってなんか合わないなあって思っていたの。そしたら孝次くんが違う田舎でこの先、生まれてくる子供のためにも安全な野菜を作りたいって。聞いた時私もやりたい!って思って」と言った。
じきに引っ越すからあざみにあえて良かった、と言って別れた。
その日帰ってからあざみはずっと考えていた。
今ではメイクもすっかり慣れ雑誌を見ながら工夫したりしている。
洋服も自分で欲しい物をよく買っている。
そのせいか、ちゃんと貯金しようと思ったのに結局お金がかかり貯金は出来ていない。
クローゼットを見る。東京に、街にふさわしい服が所狭しと掛かっている。後ろには昔の服が肩身が狭そうに掛かっている。
私は、私は何をしたかったのだろう。ちさとのように将来なんて何も考えていない。
ただこのまま東京で買った物に埋もれて生きていくのか。
それがしたかったことか。
ふと気がつき、スマホで調べる。
検索すると、たしかにIターンと呼ばれる人を歓迎しているところが多い。
さっきちさとが言った静岡、という言葉でお茶を思い出していた。
生まれ育ってから飲まない日はなかった。でも今はコーヒーばかりを飲んでいる。
お茶のいい香りが記憶の中で蘇り立ち昇る。
そこであざみは思い出した。
子供の頃お茶を飲む度、おいしいな、こんなおいしいお茶が作れたらいいな。この村みたいにたくさんのお米作ったり畑をやったりは大変で嫌だけど、お茶って作るの難しいのかな、と思っていた事を。
街はたしかにいろんな物が溢れている。でもそれと引き換えに大切な事をどんどん手放している気がしていた。
街は不自然なんだ、と初めて思った。
何も生み出していない。
とても眩いけれど、それはまやかしだ。
あざみは自分の生まれ育った田舎を思い出していた。
一面に広がる実って黄金色になった田んぼや野菜が育ち生き生きとした緑が広がり、土の匂いのする風が吹く。
懐かしさと、もう一度ああいう景色の中で過ごしてみたいと強く思った。
もう、なんの為に服を買ったりメイク道具を増やしていたのかわからなくなった。
私もやっぱり田舎が、農家が似合うのかな。
前はあんなに嫌だったのに。
静岡でお茶を作ってみたい、と思った。何かを作り出す、という事は東京には、街には、私は見いだせなかった。
そして時間はかかるだろうけれど、いつか家族に自分が作ったお茶を飲んでもらいたい。
おいしいお茶だね、と笑顔で言ってもらいたい、とはっきり思った。
これが私の将来の夢なんだ。
よし、と言うと真剣に静岡でお茶作りの為に受け入れてくれるところを探す。
久しぶりに気持ちが充実感で満たされる。
受け入れてくれるところを探して、一からお茶作りを教わって。
田舎の人と暮らすのは幸い慣れている。
これから忙しくなるな、受け入れ先をピックアップしてお休みの日に見に行かないと。
たくさん買った服はリサイクルショップで売ってしまえば少しでもお金になる。後ろの服を前に持ってこよう。
そうだ、チーフに言わないと。
退職届も書いておかなくちゃ。
美咲ちゃんにはちゃんと話しておこう。
いつの間にか夕方で暗くなりかけていた。
カーテンを引こうと立ち上がり、外を見る。様々なネオンが点いている。相変わらず外は人が多い。そして何故かみんないつも急いでいる。カーテンを引き、私は私にふさわしい場所で、ゆっくりと地に足をつけて生きて行こう、とあざみは凛とした気持ちで思っていた。
論理的な思考になっているので
あまりこったことは書かないが
街はいい、が、悪くもある
悪くもあるが、いい所もある
騒がしく騒々しさが肌にまとわりつくようだが
街、というのは
己を高めるためにはうってつけなのだ
そう、こうして外界に向けて
思いを馳せている自分も
街にいる。
こんなことをかけるのは
日々を忙しくしている者だけだろう
少なくとも私はそう思う。
ありがたーく育ててくれた親元を離れ
自分の足や手で
歩み、火の粉を払い除けて
進むのだ。
さぁ、こんな話は終わりにして寝ろ、
明日も学校だ。
もう一回、あなたとあの街へ行きたい。
あのキラキラと輝いていて、一人一人が笑顔で溢れていた、あの街へ。
行けるチャンスはいくらでもあるのだが、
生憎、今は彼がいない。
色々いざこざがあり、別れてしまった。
そんな今だからこそ、気づいたとことがあった。
あの人の存在が、どれだけ私に影響していたのかを――
〜街〜
【街】#3
夜の街
街灯がついて酔っぱたサラリーマン
パリピなお兄さんお姉さん
そんな中を歩いてたあの日。
好きでもない男の人と2人きりのドライブしたあの日
思い出すのはいつも冬の時期
誰かといても、どこかひとりぼっちだった。
いつか、
いつかこの街並みが綺麗なものになりますように
#46.5 街
ボクの住んでたところは、港街。
船で沖に出ると伴侶の誓いを行う場があるんだ。
だから人が多くて活気もある。
でも街並みはきれい。
ボクは店番をしながら、通り過ぎる幸せそうな二人を見ていたよ。ボクんちは船大工だからね。よそのお客さんはほとんど来ないんだよ。
え、におい?
うーん…花の匂いかな。
サカナ?においはしないよ。
サカナは獲らないんだ。お祝いの街だからね。
そういうのは、すぐ隣の街でしてるよ。
あー、うん。他の店は観光船しかやってないところもあるよ。でも、うちは技術が落ちないように、わざわざ隣や他の街からも仕事をもらってたんだ。
どう?すごいでしょ。
やだなぁ、父さんのことは言わないでよ。そりゃ、父さんにはまだまだ敵わないけどさ。でもボクだって負けてないんだから。
ねえ、船長もそう思ってるでしょ?
(#42のボクっ娘)
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#46 街
都会は、あまり好きじゃない。
良いものも、悪いものも何でもあって、
変化は止め処なくて。
ビルの谷間は、においに溢れて落ち着かなくて。
道には何だか分からないものがよく落ちていた。
それでも、毎日のように同じ道を通った。
街に溶け込もうと服も背伸びして、
周りと同じような速足で歩いてた。
今は、色々と変わっていることだろう。
もう遠い、あの街。
街
街、家屋や店が建ち並び、人が行き交い交流をしている。
朝から果物や野菜、精肉、鮮魚、惣菜を扱う露店が賑わいを見せ、思わず足を向けたくなる衝動に駆られる者も少なくは無い。その道をひとたび歩けば様々な香りに囲まれなすすべも無く懐からコインを取り出したくなる。
「食べたいのですか?」
そう声をかけられ、驚いた様子で振り返ったのは香色ともとれる髪色をした、赤目の少年。視線の先には少年と似た髪色をそよ風になびくほど伸ばし、翡翠を彷彿とさせる瞳をもった穏やかな青年。
いや、と一瞬たじろぐ少年をよそに「ずっと見てましたよ」とくすくす笑い声を漏らすのはもう1人の同行者である少女。まだあどけなさの残る顔に腰の下まで伸びる黄檗色の髪を三つ編みに束ね揺らしている。
「む、……うん、じつはその、気にはなっていた。」
「そうですよね。これだけ朝から賑わっていると、目移りしてしまいそうです。」
「ははは。我々の本来の目的ではありませんが、少しだけ見て回りましょうか。」
「いいのか?」
「あまり時間はかけられませんよ。当初の目的をお忘れなく。ルーラーと、2人で行ってくるといいでしょう。」
ルーラーと呼ばれる少女の方を見ると、艶やかな果物を目を輝かせて眺めていた。
「アーチャーは行かないのか?」
「私はサーヴァントの探索を行います。安心しろとは言いませんが、警戒はしてください。」
「……少しくらいなら、一緒でも大丈夫ではないか?」
「お誘い頂けるのはありがたいですが私なら大丈夫ですから。」
此度の戦いにおいて、サーヴァントとの接触は避けられぬもののためアーチャーと呼ばれた青年は一切油断せず、しかし少年たちにはこの賑わいに乗じて欲しい気持ちが勝っている。
街に着く その前までの期待さえ
揺れる海の 光に弾かれ
【街】短歌
🎹ぼくはピアノを
弾かないけれど
紫陽花は街に
八分休符をはなつ
荻原裕幸🌿
空は白んで薄明の時、街は静かに目を覚ます。
走る列車の音、心臓の鼓動、切る風は呼気、朝露の匂い。
日は昇って旦明の時、照らされた街は動き出す。
人の音、車の音、混ざってごうごう、街の呼吸。
日が傾いて黄昏時、眠る支度を街は始める。
引きゆくざわめき、「また明日」の声、帰宅を促すカラスの呼びかけ。
日は落ち暗い宵の時、街は静かに寛いでいる。
少しの灯り、夜の民の歌、鉄の鳥が轟音で飛ぶ。
そして静まる未明の時、街はようやく眠りに就く。
あるのは虫達の話し声と、木の葉達の囁きだけ。
————
「街」
この街が嫌いなわけではない。
しかし、ここで終わるのは嫌だ。
どうせいつかは滅ぶ命。
ならば好きだと思える地にこの身を置きたい。
彷徨い続ける人生。
最果てが安寧と願って。
~街~
いろんな形の☁️
それをみるのが好き
昼間は明るくて賑やかだった街が
静かに夜景となっていく
この街は笑顔で溢れている。みんな「悩み」なんてものはないんだろうと思えるような素敵な笑顔。そんなわけがない。今、皆が笑えているのは過去に挫折や苦悩を抱えてきたから。何気ない日常に笑みがこぼれている。私はそう思う。そうは思っても、私は今が耐え難い。学校では毎日精神をすり減らして、心情とは真反対につくる笑顔。家では母と兄の言い合いに理不尽に巻き込まれ怒りで声帯が震える。1人になっても、過去を再生し私の世界に雨が降る。もういっそのこと崩壊してほしい。「人生18年」ふとこの言葉が出てきた。死んだ後はどうなるのだろう。新しい命に生まれ変わるのか。それとも、幽霊という存在としてただ苦しんだこの世界を浮遊するのか。
明日、目覚めたときに私はこの文に嫌悪できるだろうか。
今日は日曜日、快晴。
お気に入りのコーヒーを飲みほしたら、
ドアの向こうへ。
私の大好きなパッサージュ♪
黄金色のひだまりがいっぱい。
やさしくアーケードを包んでる。
上を見て?空とおそろいのワンピース♪
スキップだってしちゃいそう。
あら、焼きたてパンのいいにおい…
休日はこれからね♪
街
私は街が好きだ。
それも住宅街より商業地の繁華街。
テナントビルの合間に人が住んでいるような場所では、誰もが自分に心地良い距離感で、人づきあいをしていて、多様に入れ替わる。ご近所づきあいなんて、そもそもそれくらいのゆるさがちょうどいい。
別に賑やかさを求めているわけじゃない。
だから1番好きなのは、朝。
燦く朝日に照らされて、夜の毒気がさっぱり抜けた街はどこかひっそりとしていて。
ゴミ袋をつつくカラスをよけながら、ランドセルを背負った子どもが、人気のない道を学校へと急ぐ。
どこからか湧いてくる活気が、喧騒を呼び醒ますまでの、ほんの数時間。そこには穏やかな静寂が確かにある。
不夜城の妖しい美男美女が、無垢な人に戻って羽根を休める時の街が、何とも言えず愛おしい。
『よるのまち』
この世界のどこかには、『よるのまち』があるらしい。そこは色んな種族が暮らす街で、その名の通り夜にしか現れない街なのだそう。
このよるのまちはどこからともなく現れて、朝になると消える。住人たちは快く迎えてくれて迷い込んでしまった人間たちは朝までほのぼのと暮らすのだそうだ。
そうふと、思い出した『よるのまち』の話。
今は夜中の12時。もう何もかも嫌になって夜の散歩中。危ないけどもういいや。
「……ほんとにあるなら出てきてよ。よるのまちとやら」
私はそう呟く。全て嫌になった人間を優しく迎えてくれるらしいよるのまち。本当にそんな場所があるなら行きたいくらいだ。
「はぁ、馬鹿なこと考えてないでさっさと帰って寝よ。明日も仕事だし」
そう思って家の方へ戻る。
その最中に灯りが見えた。
そしてとてもとてもいい匂い。
「…こんな時間に?」
まるで屋台のように良い匂いはご飯も食べる気を無くして出てきた私にはとてもつられる匂いだった。
匂いと灯りがある方へ進んでいく。
どんちゃん騒ぎの音も大きくなってくる。
「………うわあ」
目の前に広がるのは綺麗なオレンジ色の光。
ベージュ色の壁と屋根。目の前には大きなゲートがあり看板がぶら下がっている。
その看板には『よるのまち』と書いてあった。
「………『よるのまち』…?!
……うそ、本当にあるの…?」
おっかなびっくりになりながらゲートをくぐる。
美味しそうな匂いと楽しげな音。
中央付近まで歩いていくと、人間と、それから人間ではないものが楽しそうに宴をしていた。
それをぼーっと見ていると、横から驚かせないように声をかけてきた人が居た。
「こんばんは。新入りさんだよね?」
「………こ、こんばんは。」
見た目はふわふわの犬みたい。でも二足歩行だ。
顔はとても可愛らしい顔をしていて撫でたくなる。
「珍しい、っていうか見たことないよね。私たちのような種族は。人間さんもあっちにいるよ。
ここは『よるのまち』。毎日毎日頑張って偉かったね。今日くらいはゆっくり過ごしてね。
もちろん寝てもいいし、美味しいものをたくさん食べて騒いでもいいよ。ここでは現実世界の時間が進まないから安心して大丈夫。
ただこっちで朝になるとこのまちは消えちゃうから向こうに戻っちゃうと思う。
最初は強制的に戻らされちゃうけど、2回目はここに居るか決めることが出来るようになるから、もし2回目に迷い込んだら選べるよ」
「…あの、迷惑じゃなければほんのすこし話を聞いていただけますか」
「うん、大歓迎!」
「私、今仕事に追われてて…、酷いときは会社で寝るときもあったりして…もう嫌で、苦しくて
死にたくなって」
「うんうん」
「それで、あるときに聞いた話を思い出して散歩してたんです。優しく歓迎してくれるまちがあるって」
「うん」
「……不思議ですね。このまちに居るだけで、なにもしなくても心がほどけていくようで」
「そういう街なの。ここはさ」
「向こうにあるご飯は食べても平気なんですか?」
「うん!食べても平気!迷い込んだ子達には無料で提供してるんだ!」
「すごいなあ」
お題:《街》
【街】
「この街も変わっちまったな。」
戻ってきて最初に出た言葉。本当は変わってなんかいなかった。ただ、この後に来るであろうこいつの言葉が欲しかっただけ。
「変わったのはお前だろうがよ。」
何も言わずに出ていきやがってなんて悪態をつくこいつは知らない。どれだけ薄暗い感情を抱いているか。一度離れなきゃきっと全て壊れていた。最善の選択だったと思う。良かれと思ってだった。
「変わんない方がよかった?」
「変わんなきゃ壊れてたんだろ。」
知ったように抜かす。そうだけど、違う。気づいてたんでしょ、知ってる。
「俺、あん時お前のこと好きだったんだよ。」
「それ今言っちゃうかぁ。」
本当はそのことだって知ってたよ。なんて、言えることは無い。あの時言ってくれればよかった。あの時気付かないふりをしてくれなければよかった。今ならわかるこいつはきっと知ってた。知ってて言わなかったんだ。気付かないふりをした。
「だるまさんの一日しよう。」
「昔に戻ったフリ? 相変わらずバカみたい。」
公園で日が暮れるまで。暮れても続く時があった。二人でも、何人でも。
「いいよ、やる。」
本当のこと教えてあげるよ。小さい頃だって私が鬼をやってわざと捕まってくれたんでしょ。知ってるよ。知らないでいてくれたお前のための種明かし。だるまさんが泣いていた。
「だるまさんが___」
「俺の負けになっちゃうか。」
まだ、捕まってくれるんだ。いつまで掴まってくれる? いつまでごっこ遊びに付き合ってくれる?
「だるまさんは泣けなかったんだな。」