たなか。

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【街】

「この街も変わっちまったな。」
戻ってきて最初に出た言葉。本当は変わってなんかいなかった。ただ、この後に来るであろうこいつの言葉が欲しかっただけ。
「変わったのはお前だろうがよ。」
何も言わずに出ていきやがってなんて悪態をつくこいつは知らない。どれだけ薄暗い感情を抱いているか。一度離れなきゃきっと全て壊れていた。最善の選択だったと思う。良かれと思ってだった。
「変わんない方がよかった?」
「変わんなきゃ壊れてたんだろ。」
知ったように抜かす。そうだけど、違う。気づいてたんでしょ、知ってる。
「俺、あん時お前のこと好きだったんだよ。」
「それ今言っちゃうかぁ。」
本当はそのことだって知ってたよ。なんて、言えることは無い。あの時言ってくれればよかった。あの時気付かないふりをしてくれなければよかった。今ならわかるこいつはきっと知ってた。知ってて言わなかったんだ。気付かないふりをした。
「だるまさんの一日しよう。」
「昔に戻ったフリ? 相変わらずバカみたい。」
公園で日が暮れるまで。暮れても続く時があった。二人でも、何人でも。
「いいよ、やる。」
本当のこと教えてあげるよ。小さい頃だって私が鬼をやってわざと捕まってくれたんでしょ。知ってるよ。知らないでいてくれたお前のための種明かし。だるまさんが泣いていた。
「だるまさんが___」
「俺の負けになっちゃうか。」
まだ、捕まってくれるんだ。いつまで掴まってくれる? いつまでごっこ遊びに付き合ってくれる?
「だるまさんは泣けなかったんだな。」

6/11/2023, 3:16:37 PM