『蝶よ花よ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
蝶よ花よ____
塾の先生の言葉。
目に見えるのは結果。
目に見えないのは努力。
目に見える結果にするには、
目に見えない努力が必要なんだ。
中学の担任の言葉
適当に生きてこうぜ。
中学の顧問の言葉
俺の指揮だけ見てろ。怖くなったら逃げればいい。
親友の言葉
一緒に青春のチケット取ろうね。
男友達の言葉
裏の裏ってもう表じゃん。そんな深く考えんなよ。
母親の言葉
周りの心配より自分の心配をしなさい。
とある国の、とある県の、とある地域に、一輪の花が咲いていました。その花はずっと、ずっと周りから、花なのならば花らしくあれ、と言われ続けていました。花はそれを信じ、花らしくありました。
しかし花が花らしくあったとしても、周りは花を否定しました。
花は疲れてしまいました。
花は自身を枯らしてしまおうとしました。しかし、止められてしまいました。
花はまた、花らしくあろうとしました。
暑い夏がやってきました。
花は誰もいない静かな場所で、一人話始めました。
「僕は僕らしくしていたいのねにね。世間体ばかり気にしてるから僕の異変に気づけねえのさ」
花は自身を枯らそうと、首を絞めました。
だんだん耳に空気が詰まり、音が遠くで聞こえるような気がしました。だんだん口周りが痺れてきました。だんだんあたまがぼーとしてきました。
そこに、ちょうはあらわれました。
驚いた花は紐を首から外し、隠しました。
「あ、いやごめんね。そんなに怖がらないで。」
蝶は怖がられたと思い、優しく言いました。
花は首の痕を隠しました。
それに気づかないで、蝶は話し続けます。
しかし、花はその話を聞いていません。
見られた?聞かれた?通報される?怖い。
「ね!友達!友達からでさ!私と交際を前提にお友達になろう!」
花は驚きました。咄嗟にいいえといっていました。
「じゃあ、普通の友達!お願いっ!」
花は訳も分からず、それならばと了承しました。
それから、花と蝶は仲良く過ごしましたとさ。
蝶は花を見つけました。その花は堂々としていました。
「僕は僕らしくしていたいのねにね。世間体ばかり気にしてるから僕の異変に気づけねえのさ」
蝶は惹かれました。
花であるはずの彼女は自身を僕と呼んだのです。
蝶は、花でした。花であるのに、恋愛対象は花でした。
蝶は自身を僕と呼ぶ花になら、受け入れて貰えるような気がしました。
蝶は花に惹かれてしまいました。
お題【蝶よ花よ】
ひらひら ひらひら
ぱたぱた
ゆらゆら
夢色の蝶が 夢色をはこぶ
花は夢色に まどろんで
そして 静かに 揺れている
幼い頃から大切に育てられてきたぼくは、
もう立派に成長できたんだ
すごく速く走ったり、
ご飯もお皿いっぱいに食べられるし、
ちょっとの間ならお留守番だってできる
でもまだこれからも、ずーっと甘やかしてよね
だって、猫って可愛いでしょ?
僕には双子の妹がいる。兄の僕が言うのもなんだけど、それはそれはもう可愛くて。そこら辺の女子より断然眩しい。しなやかな黒髪と青みがかった瞳、長い手脚とやや厚めの唇。どこを切り取っても妹を超えられる同性の生物はいないんじゃないか。目に入れても痛くない。むしろ妹になら、踏まれたって痛みなど感じない。僕は彼女の1番の理解者であり、1番そばに居ていい存在なんだ。だから、お前が何かに怯えている時はその対象物を全力で排除するし、笑顔を奪うやつは断じて許さないよ。
だからいつ何時であってもお前には笑っていてほしいのに。最近の妹は気づくと一点を見つめて固まっている。塞ぎ込んでいる、とでも言うべきか。食事も残すし早々に自室へ籠もってしまう。一体どうしたというのだ。なにかの病に侵されているのか?そう考えただけでもう何も手がつかない。どうかいつものようにお兄ちゃんに笑いかけてくれないか。手を取り妹にそっと囁いた。だが彼女の表情は変わらない。困った顔も相変わらずキュートだ、が、そんなことを言ってる場合ではない。何をそんなに悩んでいるんだ。お兄ちゃんに話してごらん?優しく問い掛けるとようやくこっちを向いてくれた。お前を悲しませるものは全て排除してやろうではないか。何でも言っていいのだよ。さぁ、お前の悩みは何だ?
「あのね、担任の先生が、その……気になってて」
……………………………………………恋煩いか!
いや待て、色々待て。担任の先生……だと?教師に恋してるのかお前は?お前の担任は確か30代の妻子持ちの奴だろうが。もうこれは、アウトだ。そんなこと決して許されないぞ。下手すれば法に引っ掛かる恐れもある。というか、待ってくれ、そもそもお前は……恋をしていたのか?【恋】。異性(時には同性)に特別の愛情を感じて思い慕うこと。恋すること。恋愛。恋慕。ウィキペディアよ、助かった。
兎にも角にも、そんなものに翻弄されていたのか僕の可愛い妹は。駄目だ、断じて、あってはならない。だってお前は、ずっとお兄ちゃんのそばにいると言ってたじゃないか。あの約束を忘れたのか?僕はずっと覚えてるし信じてるぞ。お前が僕のそばから離れないことを。僕を第1に思っていてくれてることを……!なぁ、そうだろう、僕のモンソレイユ!?
「……なにそれ。キモい」
Oh, mon Dieu !!!!!
『花』
小鳥のさえずり、涼やかに吹く風。
森のなかは今日も、穏やかで平和な日を迎えていた。
「マリア~、待ってえ~」
ふわふわしたボブカットで、ピンク色の髪のサリが言う。天然で性格もふわふわしている。
「もう、サリったら。
早くーっ!置いてっちゃうわよ!」
元気一杯に走り回り、活発なマリア。
オレンジ色の髪を1つに結び、揺らしている。
「マリア、サリ、まだ時間はあるしゆっくり行こう」
いつでも冷静で、二人をほどよく引き合わせるシーナ。艶々としたストレートで、淡い水色の髪色をしている。
「シーナが言うなら仕方がないかぁ。
サリ、疲れたらあたしがおんぶしてくよ!」
「え?!それは悪いよ~。頑張って歩く!
…でも私のせいで歩くのも遅くなってるんだものね」
「全然気にしない気にしない!
あたしとサリじゃ、体力もちがうんだし!
サリはサリで、いつも助けてくれるでしょ?
あたしは虫の声も、お花の声も聞こえないもん」
「そうだよ。サリはいつもそれで私たちを助けてくれるし。だからいつも森のなかを歩き回っても帰れるんだしね」
「えへへ、ありがと~」
私たちは花の妖精。
お題:《蝶よ、花よ》
その花は甘い香り女は華やかに美しい…
ひらひら舞うように女は飛ぶのよ
蝶のように軽やかに
お題 蝶よ花よ
ちょっと目を離した隙に
うみに飲まれてしまった君を
よかぜを浴びながら思い出していた
はるか彼方のどこかで
ながい時間をかけ、はなになった君も
よかぜを浴びているのか、同じ夜風を。
さいて儚く散る前に
らんまんと舞うのを見てみたい
ばいばいは無しにしてくれ。
あしたの電車で迎えに行くよ
すべてをここへ置いて
よかぜを浴びながら待っていてくれ
↑
実家が旅館だからといって、着物が似合うお淑やかな大和撫子と思ったら大間違いだ。
過剰な程に蝶よ花よ可愛がられて、執拗に綺麗に身体を整えられて跡継ぎになるべく教育を施されてきた。ここまではよくある話だろう。もはや宿命なのかと言いたいほどだ。
そんな時代錯誤も甚だしい教育もかれこれ十五年経った。母は優しい。基本的には、とオプションを付けた方が正しいが。私が少しでもお転婆をしようものなら、すぐさま厳しい教育が施される。例えば、私がうん、と頷くまでこんこんとお話を聞かされる。厳しくないって?傍から見ればね。その他にも色々とあるが、非常に情緒には宜しくないだろう。その話はまた今度で。
今日も朝から身支度を整えさせられて、お太鼓結びをする。寝起きでも完璧な形を作れるほどになった。もはや笑いたい気持ちもある。
その後は家業の手伝いだ。歩き方を間違えようものならすぐさま指導が入る。もちろん場所は問わない。社員旅行の宴会中でも、廊下でもその場で指導だ。
え、普通のお話に聞こえると?
まあ、そう思うのも仕方ない。私が女であればな。
蝶よ花よなど、昔の人の言葉の選び方には優雅さがあって好きだ。自分もそうなりたいけどそうなるために、本を読んだりして昔の人の素敵な言葉を吸収していこうと思う。
#3
蝶よ花よ、さあ!飛び出しなさい
誰かに踏みちぎられた花よ、希望を失い飛ぶことを恐れている蝶よ、自分らしさを胸いっぱいに咲せ、あの大空へと向かいなさい
自分の個性を武器にして
花や蝶を人や者に変えて読んでみてください
それが伝えたいメッセージです。
蝶も花もそこにあるだけで美しい
そんな当たり前のこと私にはわからなかった
「もう大人なんだから。」
「普通に生きられないの?」
「そんなの甘えだ」
大人って何?ただ年齢を重ねるだけだ
普通って何?当たり前って何?
普通も当たり前もわからない
性別に縛られたくない
普通に生きることも当たり前に生きることも
君にとっては当たり前の感情なのかもしれない
でもさ、大事に可愛がられたことのない私にはわからない
苦しい時に逃げることは甘えなの?
私も本当は逃げたくなかった
先に心が壊れてしまった
何も感じないんだ
心が壊れる前に逃げろと、逃げていと人は言うけれど
実際に逃げたら甘えだと言われる
大人なんだから我慢しろと言われる
普通に生きてほしいと言われる
助けてくれる人なんていなかった
蝶よ、花よ、その美しさで
私に可愛がられる大事にされる
魔法をかけてよ
そこにあるだけで美しいと言われる
あなたの力で。
蝶よ花よ
子をひととおりでなく
いつくしみ愛するさま
調べてみたら意味はこうらしい
なんとも思わない
蝶も花も
お互い様なんじゃない
花には蝶が必要で蝶にも花が必要
さておき
子をひととおりでなく慈しみ愛する
これがよくわからないだよね
どれくらいのものなんだろう?
慈しみも愛するも難しくない
それをひととおりでなく過剰にする
お互いによろしくないんじゃない
不思議でならない
慈しみ愛するには境界線が必要で
それを超えてしまうと暴力的でさえある
なんとも思わないとか書いてるけど
全然ピントが合わない
よくわからないことが原因かな
だからこそおそらくなんとも思わない
捉えられないものはいくらでもある
挑戦するにはいいのかもしれない
調べながら書くのも手かも
調べれるくらいに取っ掛かりがあるなら
花にとまる蝶を羨ましく思っていた。
自由に飛ぶあの美しい蝶が羨ましい。
私もあれほど自由に飛べれば良かったのに。
学校から下校する私はそんな蝶を横目に下駄箱から校門まで歩いていた。
ふと他の女学生達がちらちらと校門の横を見てはそそくさと後にしているのに気づいた。
何かと思い、私も彼女達が見ていた方を見た。
「あっ」
そこには男性が1人立っていた。
その方には見覚えがあった。
「貴女は何時かの舞踏会の……!?」
彼はそう言って驚いていた。
彼は前の舞踏会で出逢った紳士だ。
今日の彼は軍服を着ていた。
私は彼を見た瞬間にドキリと胸が高鳴る。
「何故こちらに……?」
「……い、妹を待っておりまして」
「妹?」
「使いの者がどうしても迎えに行けないとのことで、私が代わりに……」
彼はそう言って、軍帽の鍔をくいっと下げる。
私は不思議そうに首を傾げた。
「使いの者が来れないことなんてあるのですね」
「私の家はとても裕福って程ではないので……」
……そうなのか?と私は少し疑問に思いながらも、一応は納得した。
その時、ひらりと先程の蝶が飛んで来た。
「あっ蝶」
彼はその蝶を見てそう言った。
「……蝶という生き物はお好きですか?」
「え、は、はい」
私は彼の問いにそう答えると、彼はにこりと微笑んだ。
「分かります。あの姿はとても美しいですよね。特に野に咲く花にとまる姿は大和撫子の如く美しい」
「え、貴方も!?」
彼の言葉に驚きを隠せず、つい声に出してしまった。彼は少し驚くも私の方を向いて微笑んだ。
「貴女も野に咲く花にとまる蝶が好きとは奇遇ですね」
「……で、ですが、私は蝶程に自由になれない」
「え!?」
「あっ……!!」
私、何を言って……!?
あまりに恥ずかしくて私は咄嗟に俯いてしまった。
「……自由」
彼の声が聞こえる。
「……そうですね、私も蝶程に自由になれません。ですが……ですが、蝶も決して自由ではないのかもしれません」
「えっ!?」
私は驚きのあまり、目線を彼に向けた。
「蝶だって私達が思っているだけで自由ではないのかもしれません。例えば、蝶は花の蜜を吸ってることが多いですが、もしかすると好きではないけど生きるため仕方がなく吸っているのかもしれません。それに引き換え私達は食べたい物を選んで食べられます。そういった面では、私達の方が蝶にとって自由なのかもしれませんね」
彼はそう言って微笑んだ。
彼の笑顔が眩しかった。
不思議だ、彼の笑顔を見ると自然と元気を貰える。
「……あ、妹です」
彼がそう言うと、妹らしき黄色い着物と赤い袴を着た女性が近づいてきた。彼女は軽く会釈をする。
「では、また逢いましょうね」
彼はそう言って軍帽をとって会釈し、再び軍帽を被り直した。そして、妹と共に私に背を向け歩き始めた。
「……また、必ず」
私は彼の後ろ姿を見てそう呟いた。
蝶よ。花よ。教えて下さい。
私の心を締めつけるこの感じの答えを。
※先日の作品「鳥かご」の続きものです。
■テーマ:蝶よ花よ
蝶よ花よ
教えてほしい。
君たちは何故、そんなに強いのか。
人や建物に負けず、懸命に羽を広げ、
優雅に飛び回る蝶よ
咲く場所を選ばず、アスファルトであろうと、
綺麗な顔を出す花よ
教えてほしい。
君は、どんなことに幸せを見出す?
君は、どんなことに戸惑う?
そして君は、、、、、、、、
今日も、時間が朝を連れてきた
お花みたいなプリーツのスカート、短く折るの。
蝶みたいな大きいリボンを着ける、第1ボタンは外してね。
友達とお揃いのぬいぐるみの着いた勉強なんてする気のないサイズの小さいスクールバックに、香水とくし、リップ、筆箱も。
学校、私は馬鹿なふりをする。
冷静になんてなってはいけない。
全ては、頭が良くて 長い髪の綺麗なあの子のため。
お花みたいに、蝶みたいに可愛い姿を見せてるの。
見てくれてるよね?
あの子、全然自分の話をしてくれないの。
だから私はあの子の好みを知らなくて、女の子みんな可愛いと思うようなお花と蝶みたいになろうって。
でも全然見てくれない。なんでなかなぁ。
花も蝶も、いずれは死んで無くなるのが分かっているから今の美しさを強調するのよね。
「なら私も 、 」
今日も、時間が朝を連れてきた。
私の髪は長いからとかすのが面倒だ。
そうだ、今日こそは大きいリボンをつけたあの子にちゃんとは笑いかけてあげられるように頑張ろう。
いつも勇気がなくて目も合わせられないし。
そう意気込みを抱えて 教室に入る。
でもその子の机の上には大量の花が置かれていた。
お題 「蝶よ花よ」
蝶よ花よ
私は綺麗。私はかわいい。
とある国のとある貴族の娘に生まれた私。誰がみても見目麗しく、家族も使用人もみんながちやほやしてくれた。毎日のように美味しい料理を食べて、毎日たくさん甘やかしてもらった。
お勉強は大変だけど、頑張ったらたくさん褒めてもらえる。週末は大好きなお菓子がおやつに出てくるから、それまで頑張るってやる気が出る。お母さまは私が天才だって言ってくれる。ふふ、嬉しいな。
でも、私は街に出たことがない。この国の貴族と庶民は仲が悪いって使用人が言ってた。使用人も庶民だけど私に優しいのに、どうして仲が悪いんだろう。いつか、庶民の人達みんなに会えたらいいな。
今日は隣の国にお父さまとお母さまと一緒に行くことになってる。外交が大事らしい。昨日歴史のお勉強をして、今は各国で調停を結んでいるから大きな戦いは起こっていない。それでも、争いはいつの時代でも終わらないんだね。
今日は乗馬の稽古がある予定だったんだけど雨が降ったから中止になった。このくらいの雨ならお父さまたちはいつも乗っているのに。心配してくれているのは嬉しいけど過保護だな。
でも、なんだか今日は、街のほうから音がする。お祭りでもしているのかな。
最近、使用人たちが避けている気がする。私、というより私たち家族のこと、なのかな。みんな悲しそうな顔をしてる。私ができることはないのかな。
夜、目が覚めた。なんだか、あつい。それに、明るい。夜なのに明るいなんてはじめて。明るいのに静か。おかしい。どうして。何があったの。
おかあさまの、ひめいがきこえた。
けんをふりおろすおと。
けんのまじわるおとがきこえる。
おとうさま?
あかいなにかがおとうさまから
しらないひとたちがいえにいる
でも、なんにんかはしっているかお
しようにん
ああ、そうか。
「あなたたちが招いたのね。」
蝶よ花よと育てられた私は知らなかった。美味しい料理を食べられたのは庶民に重税を課していたから。
蝶よ花よと育てられた私は知らなかった。街に出られなかったのは庶民が私たち貴族を悪んでいたから。
蝶よ花よと育てられた私は知らなかった。終わらない争いのタネは私たち貴族だったこと。
蝶よ花よと育てられた私は知らなかった。あの日はお父さまが反乱を起こそうとした庶民と罪のない家族を殺していたこと。
何も、知らなかった。使用人が怯えていた事も、私が無力なことも。
何も知らないオジョウサマ。かわいいかわいい私。せめて、最期まで綺麗なままで。
あら、知っている顔が歪んでいる。
ふふ、そんな顔をしてもらえるなら、生まれてきて良かった、のかも。
なんてね___
モノクローム2
色を知らない灰色の僕は
あの子の笑顔と髪飾りを見て
初めて色を捉えた
でも
それが何色かは
まだわからなかった
※蝶よ花よ
「喋よ花よ」
小さい頃から両親や祖父母に可愛がられてきたけれど
自分が世界一可愛いと思ったことないし、感情が表に出しにくい子でブスっとしてることも多かったから、父からいつも
「女の子なんだから愛想良くにこにこしてなさい」 と
言われていた。子どもだからイヤな時はイヤだし、楽しい時は楽しいと素直に表現したかっただけ。何で大人に気を遣わなければならないの?と父を嫌っていた。私は私らしくいたかった。大人になるまでは、男の人に媚びるとか機嫌をとるとかそんなことはしたくないから、あからさまに嫌われたりもしたっけな……とにかく、女だから男だからの決めつけとか窮屈で仕方なかったから、今の時代になってからはだいぶ生きやすくなったよ。
喋よ花よ、親になり息子が2人生まれてそれはそれは可愛いし大切に育てている。でも甘やかすのはまた別だと思う。両親に感謝しているのは、いつもどこかに連れて行ってくれて色んな経験をさせてもらったこと。色んな大人に会わせてくれたから、のちのち役にたったこと。ただ2人とも忙しくて話しを聞いて貰えなかったり、母からキツく当たられたことも多いから、息子たちにはそんな思いをさせたくない。
絵里
女の子は誰でもプリンセスになれると思っていた。母も父も私のことを蝶よ花よと育ててくれた。ふわふわとした癖っ毛もプリンセスだからこその特権だと思っていた。
だが、私が小学生になる頃に妹が生まれた。比べるのが嫌になるぐらい、妹は私よりもずっと可愛かった。ピンクのドレスもキラキラと輝くティアラも、すべてが妹のものになった。両親は私に見向きもしなくなった。それに気がつくと、私はこれまで好きだったものすべてを捨てた。自慢だったふわふわの髪も男の子のように短くカットした。
私が高校生になると、妹は小学生モデルとして雑誌に掲載されるようになった。到底小学生には見えない、高い身長だけじゃなく長い脚。幼さの欠片もない大人びた顔つきはすぐに妹を人気者にさせた。
それから知名度は右肩上りで、SNSのフォロワー数もどんどん増えていった。やがて、地上波のテレビ番組への出演依頼も来た。ハキハキとした表情豊かな誰にでも好かれる妹が放送されていた。それが家でも変わらない姿だったからこそ腹が立った。妹に少しの嘘でもあれば、嫌われる隙ができるのにと醜い機体を抱いていた。
ある日、妹はテレビで「もうすぐ大学生の姉がいるんですけど、すっごくかっこいいんです」と口にした。そして、その流れで妹は私の顔写真を地上波に流したのだ。その瞬間ネットはざわついた。
「どこがかっこいいの?」
「これが姉妹とか現実つら」
「どう見てもブサイクだろ」
帰宅した妹に私は顔を叩いた。商品であるその顔に傷をつけることに躊躇いなんてなかった。比べられたくなくて、ずっと日陰で生きてきた私をこいつは無理矢理引き摺り出したのだ。許せなかった。両親が不在だったこともあいまって、一度叩くと引っ込みがつかなくなった。
両親が帰宅して、私はひどく怒られた。
「お姉ちゃんのこと自慢したかっただけなのに」
「私はお前みたいな妹、一生誰にも知られずに生きていたかった」
妹が太陽の下で輝く蝶なら、私は夜行灯に吸い寄せられる蛾だ。太陽の下で生きていけない私は、どんな努力をしたって蝶にはなれない。
ただの劣等感が憎しみに変わった今日を私は忘れることなく抱えて生きていく。そのうち、芽生えるであろう罪悪感に今は目を瞑ることしかできなかった。