実家が旅館だからといって、着物が似合うお淑やかな大和撫子と思ったら大間違いだ。
過剰な程に蝶よ花よ可愛がられて、執拗に綺麗に身体を整えられて跡継ぎになるべく教育を施されてきた。ここまではよくある話だろう。もはや宿命なのかと言いたいほどだ。
そんな時代錯誤も甚だしい教育もかれこれ十五年経った。母は優しい。基本的には、とオプションを付けた方が正しいが。私が少しでもお転婆をしようものなら、すぐさま厳しい教育が施される。例えば、私がうん、と頷くまでこんこんとお話を聞かされる。厳しくないって?傍から見ればね。その他にも色々とあるが、非常に情緒には宜しくないだろう。その話はまた今度で。
今日も朝から身支度を整えさせられて、お太鼓結びをする。寝起きでも完璧な形を作れるほどになった。もはや笑いたい気持ちもある。
その後は家業の手伝いだ。歩き方を間違えようものならすぐさま指導が入る。もちろん場所は問わない。社員旅行の宴会中でも、廊下でもその場で指導だ。
え、普通のお話に聞こえると?
まあ、そう思うのも仕方ない。私が女であればな。
8/8/2023, 2:09:20 PM