『蝶よ花よ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
今日も、時間が朝を連れてきた
お花みたいなプリーツのスカート、短く折るの。
蝶みたいな大きいリボンを着ける、第1ボタンは外してね。
友達とお揃いのぬいぐるみの着いた勉強なんてする気のないサイズの小さいスクールバックに、香水とくし、リップ、筆箱も。
学校、私は馬鹿なふりをする。
冷静になんてなってはいけない。
全ては、頭が良くて 長い髪の綺麗なあの子のため。
お花みたいに、蝶みたいに可愛い姿を見せてるの。
見てくれてるよね?
あの子、全然自分の話をしてくれないの。
だから私はあの子の好みを知らなくて、女の子みんな可愛いと思うようなお花と蝶みたいになろうって。
でも全然見てくれない。なんでなかなぁ。
花も蝶も、いずれは死んで無くなるのが分かっているから今の美しさを強調するのよね。
「なら私も 、 」
今日も、時間が朝を連れてきた。
私の髪は長いからとかすのが面倒だ。
そうだ、今日こそは大きいリボンをつけたあの子にちゃんとは笑いかけてあげられるように頑張ろう。
いつも勇気がなくて目も合わせられないし。
そう意気込みを抱えて 教室に入る。
でもその子の机の上には大量の花が置かれていた。
お題 「蝶よ花よ」
蝶よ花よ
私は綺麗。私はかわいい。
とある国のとある貴族の娘に生まれた私。誰がみても見目麗しく、家族も使用人もみんながちやほやしてくれた。毎日のように美味しい料理を食べて、毎日たくさん甘やかしてもらった。
お勉強は大変だけど、頑張ったらたくさん褒めてもらえる。週末は大好きなお菓子がおやつに出てくるから、それまで頑張るってやる気が出る。お母さまは私が天才だって言ってくれる。ふふ、嬉しいな。
でも、私は街に出たことがない。この国の貴族と庶民は仲が悪いって使用人が言ってた。使用人も庶民だけど私に優しいのに、どうして仲が悪いんだろう。いつか、庶民の人達みんなに会えたらいいな。
今日は隣の国にお父さまとお母さまと一緒に行くことになってる。外交が大事らしい。昨日歴史のお勉強をして、今は各国で調停を結んでいるから大きな戦いは起こっていない。それでも、争いはいつの時代でも終わらないんだね。
今日は乗馬の稽古がある予定だったんだけど雨が降ったから中止になった。このくらいの雨ならお父さまたちはいつも乗っているのに。心配してくれているのは嬉しいけど過保護だな。
でも、なんだか今日は、街のほうから音がする。お祭りでもしているのかな。
最近、使用人たちが避けている気がする。私、というより私たち家族のこと、なのかな。みんな悲しそうな顔をしてる。私ができることはないのかな。
夜、目が覚めた。なんだか、あつい。それに、明るい。夜なのに明るいなんてはじめて。明るいのに静か。おかしい。どうして。何があったの。
おかあさまの、ひめいがきこえた。
けんをふりおろすおと。
けんのまじわるおとがきこえる。
おとうさま?
あかいなにかがおとうさまから
しらないひとたちがいえにいる
でも、なんにんかはしっているかお
しようにん
ああ、そうか。
「あなたたちが招いたのね。」
蝶よ花よと育てられた私は知らなかった。美味しい料理を食べられたのは庶民に重税を課していたから。
蝶よ花よと育てられた私は知らなかった。街に出られなかったのは庶民が私たち貴族を悪んでいたから。
蝶よ花よと育てられた私は知らなかった。終わらない争いのタネは私たち貴族だったこと。
蝶よ花よと育てられた私は知らなかった。あの日はお父さまが反乱を起こそうとした庶民と罪のない家族を殺していたこと。
何も、知らなかった。使用人が怯えていた事も、私が無力なことも。
何も知らないオジョウサマ。かわいいかわいい私。せめて、最期まで綺麗なままで。
あら、知っている顔が歪んでいる。
ふふ、そんな顔をしてもらえるなら、生まれてきて良かった、のかも。
なんてね___
モノクローム2
色を知らない灰色の僕は
あの子の笑顔と髪飾りを見て
初めて色を捉えた
でも
それが何色かは
まだわからなかった
※蝶よ花よ
「喋よ花よ」
小さい頃から両親や祖父母に可愛がられてきたけれど
自分が世界一可愛いと思ったことないし、感情が表に出しにくい子でブスっとしてることも多かったから、父からいつも
「女の子なんだから愛想良くにこにこしてなさい」 と
言われていた。子どもだからイヤな時はイヤだし、楽しい時は楽しいと素直に表現したかっただけ。何で大人に気を遣わなければならないの?と父を嫌っていた。私は私らしくいたかった。大人になるまでは、男の人に媚びるとか機嫌をとるとかそんなことはしたくないから、あからさまに嫌われたりもしたっけな……とにかく、女だから男だからの決めつけとか窮屈で仕方なかったから、今の時代になってからはだいぶ生きやすくなったよ。
喋よ花よ、親になり息子が2人生まれてそれはそれは可愛いし大切に育てている。でも甘やかすのはまた別だと思う。両親に感謝しているのは、いつもどこかに連れて行ってくれて色んな経験をさせてもらったこと。色んな大人に会わせてくれたから、のちのち役にたったこと。ただ2人とも忙しくて話しを聞いて貰えなかったり、母からキツく当たられたことも多いから、息子たちにはそんな思いをさせたくない。
絵里
女の子は誰でもプリンセスになれると思っていた。母も父も私のことを蝶よ花よと育ててくれた。ふわふわとした癖っ毛もプリンセスだからこその特権だと思っていた。
だが、私が小学生になる頃に妹が生まれた。比べるのが嫌になるぐらい、妹は私よりもずっと可愛かった。ピンクのドレスもキラキラと輝くティアラも、すべてが妹のものになった。両親は私に見向きもしなくなった。それに気がつくと、私はこれまで好きだったものすべてを捨てた。自慢だったふわふわの髪も男の子のように短くカットした。
私が高校生になると、妹は小学生モデルとして雑誌に掲載されるようになった。到底小学生には見えない、高い身長だけじゃなく長い脚。幼さの欠片もない大人びた顔つきはすぐに妹を人気者にさせた。
それから知名度は右肩上りで、SNSのフォロワー数もどんどん増えていった。やがて、地上波のテレビ番組への出演依頼も来た。ハキハキとした表情豊かな誰にでも好かれる妹が放送されていた。それが家でも変わらない姿だったからこそ腹が立った。妹に少しの嘘でもあれば、嫌われる隙ができるのにと醜い機体を抱いていた。
ある日、妹はテレビで「もうすぐ大学生の姉がいるんですけど、すっごくかっこいいんです」と口にした。そして、その流れで妹は私の顔写真を地上波に流したのだ。その瞬間ネットはざわついた。
「どこがかっこいいの?」
「これが姉妹とか現実つら」
「どう見てもブサイクだろ」
帰宅した妹に私は顔を叩いた。商品であるその顔に傷をつけることに躊躇いなんてなかった。比べられたくなくて、ずっと日陰で生きてきた私をこいつは無理矢理引き摺り出したのだ。許せなかった。両親が不在だったこともあいまって、一度叩くと引っ込みがつかなくなった。
両親が帰宅して、私はひどく怒られた。
「お姉ちゃんのこと自慢したかっただけなのに」
「私はお前みたいな妹、一生誰にも知られずに生きていたかった」
妹が太陽の下で輝く蝶なら、私は夜行灯に吸い寄せられる蛾だ。太陽の下で生きていけない私は、どんな努力をしたって蝶にはなれない。
ただの劣等感が憎しみに変わった今日を私は忘れることなく抱えて生きていく。そのうち、芽生えるであろう罪悪感に今は目を瞑ることしかできなかった。
男が女に言う。
「貴方は世界で一番美しい。まるで蝶のようだ」
女が男に言う。
『あら、ありがとう』
『でもね、そんな私よりも美しいものがあるのよ』
男は不思議に思った。
「どうしてそんな事を言うんですか」
「美しさに関しては、女性は皆一番でありたいものじゃないんですか」
女は笑う。
『ふふ、確かに女性は一番の美しさを求めるわ』
『でもね。美しさって言うのは外見だけじゃないのよ』
『私は外見の美しさを極めているのだけれど』
『内見の美しさを極める方もいらっしゃるの』
男は言う。
「しかし貴方は何故、そのような方をご自身よりも美しいというのですか」
女は声高々に笑う。
『そんなの決まってるじゃありませんか』
『私が蝶なら、その方達は花』
『花が努力もせずに咲いているだけで、蝶が生き生きと輝くのですよ』
ー蝶よ花よー
彼女が死んだ。 バイクに乗ってて、玉突き事故に巻き込まれた。 即死だったそうだ。
俺の一目惚れだった。 でも彼女はずっと前から俺を知っていたらしい。
家族も優しく、俺に良くしてくれた素敵な、とても暖かな家庭だ。 だからか、彼女は蝶よ花よと育てられたらしい妖精のような人だった。
出会ったのはどの季節だったか、確か花粉アレルギー持ちの俺の鼻水が止まらない季節だったか、それともギラギラ太陽が眩しい季節だったか。
もう覚えていないけれど、君はそれほどに明るく風のような人だった。
彼女の葬式も、お通夜も、火葬場でも、誰かのすすり泣く声が聞こえていた。ずっと、聞こえていた。
「あの子ねぇ、司書になりたいって言ってたのよ。」
それは聞いた事があった。
「あ、それ聞いた事あります、俺が、、、、」
俺が、小説家になるって言ったからだ。
「貴方、小説家になるのが夢なんでしょう? あの子がね、言ってたのよ 「彼がね、小説家になるって言うのよ。だから私が彼の小説を本棚に並べたいの。」って、あの子らしいでしょう。」
そこまでは聞いた事が無かったから、少しびっくりした。
「貴方の事、近くの書店で見た事があったんだって、貴方の本を見つめる瞳が、とても好きだったって、言ってたわ。」
ああ、そうか、そうだったのか、彼女が俺を見かけたのは、俺が一目惚れをしたあの書店だったのか、
ぐすっうっ、
また誰かのすすり泣く声が頭に響いた。
「こんな、っ、ちっちゃく、なっちゃいました、ね、」
届いて欲しい人に届く訳もなく、嗚咽の籠った泣き声が響く。
「ええ、」
俺はただ、骨壷を抱いて行儀よく泣く事しか出来なかった。
蝶よ花よ
何よりも大切だった。大事にしたかった。
その想いが行き過ぎて、愛ではなくなることもあったけれど、それでも愛していたのだ。
死の間際に、母はそう言った。
大切にされすぎて、可愛がられすぎて、苦しくなって。
蝶よ花よと育てられたはずなのに、なぜか自分が嫌いで、母が嫌いだった。
愛が、こんなにも重荷になるだなんて、きっと母も私も思ってなかっただろう。
これは望みではないけれど、もしも、またあなたの元へ生まれてくるのならば、そのときはもっとちゃんと互いを愛せたらいい。
だから、次会ったときも笑ってよ。
『蝶よ花よ』
と聞くと蝶よ花よと育てられ…
なんてフレーズが頭に思い浮かぶ
気になったので、ネットを使い改めて意味を調べてみた
「「蝶よ花よ」は、「親が子どもを非常にかわいがって、大切にする」ことを意味する表現です。一般的に女性に使われる言葉ですが、性別を問わない使い方が増えているとする説もあります。」
なるほど、確かに女性に使うイメージがある
だが性別を問わない使い方というのは
良い傾向だなと個人的に思う
僕は己の性別にも他人の性別にも
あまりこだわりがないタイプだ
なのでどんどん性別を問わない使い方をする言葉や
新しい言葉が増えていけば良いなと思う
『マーメイド、あんず。』
私は、先天性で、脚が殆ど歩けない。
小さな頃からなや私の運命。
向かい風の中で生きていた、一人でちょっとでもいいから歩けたらいいな〜💛と、思った。
出来が悪くて、何時も泣きめそなあんず
弱い私のまま??
でも、色々な人と出会う度に変化していく私。
いっぱいら色んな人に助けてもらったり、
時には、いじめられたこともいっぱいあり寝込んだり、ずっとお腹が下したままでいた。
ずっと、俯いていた私です。
でも、友達は、『どうしたん?!』と、理解っているのに訊いてきた、それも、現実なんだ。(´;ω;`)
私は、吐き気をも様子ようになった。
でも、私は、色々なことがある度に、575に、自分の気持ちをぶつけた。
楽しいことも悲しいことも悔しくて泣いたことも。全部、歌にした。
ある時、先生は言った。
『あんずちゃんは、負けてないね。』と、何気ない一言だったが私はら何度も何度も噛みしめた。
何時も敗けるのが普通のこの私が『負けてない。』
胸がいっぱいになった。
割り切れないけれども、嫌なことは全部575のタメに起こるんだ。(☉。☉)!
いいことも、恋したことも片想いも、振られても、嫌われても、(´;ω;`)それが、私の運命なのかも。
でも、私は、私、強くなれないけれども、先生からもらった一言は、私の宝物です(´;ω;`)
でも、また、試練はあるのだろうな〜、いっぱい。
私は、歩けないから、マーメイド、ーーで、弱いけれども575の私らしい調べにのせて、
ーー全部、詠にします♫(*^^*)
そんなものは捨ててしまいなさいよと
植え込みは 眸子たちの墓場
持って生まれた顔や声
それと知らずに配り行く
蝶よ花よと囃されて
皆が群がるお人形
美酒に酔いしれ夢を見て
驕り高ぶるお姫様
永遠に続けと願えども
極楽切符は期限付き
飽きて離れた人や金
なにも知らずに捨て置かれ
いいよいいよと避けられて
皆が嫌がるお人形
酒に溺れて瓶振るい
怒り狂えるお姫様
日々を返せと叫べども
地獄の底へ落ちてゆく
【蝶よ花よ】
蝶よ花よと育てた我が子が、SNSでオジサンを釣っていた。
私は雷に打たれたような思いだった。そんな子に育てた覚えはない。どこでこんな遊びを覚えてきたのだろう。
何不自由なくとは言わないが、それなりの生活を送らせてきた。テストで良い点を取れば玩具を買ってあげたし、家の手伝いをすればお駄賃をあげた。
そんなあの子も今年で18になる。私の言うことを素直に聞くばかりではない。先日も、つい世話を焼こうと口を挟んだ私に対して、放っておいてと苛立ったように言い返してきたばかりだった。
本当にこの写真はあの子なんだろうか。何度見返したところで、半信半疑が確信に変わるばかりであった。小さい頃から見守ってきた親だからこそ分かる。可愛い我が子の信じられない姿に、私はひとりで頭を振った。あの子はきっと、蝶でも花でもない、蛙の子なのだ。
偶然とはいえ、見かけてしまったからにはなかったことにできない。居ても立っても居られなくなり、リビングのソファから腰を上げる。
この画像は本物なのかと問い詰めながら、あの子と話をしなければならない。どこからそんなはしたない服を手に入れたとか、どんな友達とつるんでいるのかとか。蛙の子の親として、それを知る義務がある。愛息子の可愛い女装姿を画像フォルダに収め、私は嫁のクローゼットを開けた。
蝶よ花よ
子供のこと、女の子のこと可愛がる様子、
蝶よ花よ。
わたしもそうして貰つた思い出あります。父には、特に可愛がってもらいましたから。でも、度が過ぎたのは良くありません。わたしが良い例でしょう。ワガママに育ちましたから。
わたし、女の子育てたことがありません。もし育てたなら、蝶よ花よとはしなかったな。男の子も女の子も対等に接する子育てをしたと思う。この先、生きていくのも対等なんだし、本人の為と思えるから。
題:蝶よ花よ
蝶は苦手だけど、蝶と花の関係は好きなの。
蝶にとって花は無くても生きていけるけど、
花があって悪いことは無い。
蜜を吸うことが出来るから、
あったら嬉しいなくらいだと思う。
みんなに必要な存在になりたいけど、
欲張っちゃダメだよね。
だから居ても居なくてもいいけど
居てくれたら嬉しいなって思われるような人になりたい。
蝶よ、僕にもその羽根を下さい
(自由になりたいから)
花よ、僕を君の代わりにして下さい
(早く死ねるから)
# 88
花のように、自信を持って堂々といれたら
蝶のようにひらひらと、自由に舞うことができたら
あの人の影を、踏むことができるかな
蝶よ花よと、育てられ。
きっと、ご両親から大切にされたお嬢さんはスレンダーで綺麗な娘が多い。
僕も若い頃は、見た目が華やかなで、顔立ちの美しい女性に惹かれていた。
でもその場合、僕の見た目も厳しく見られていて、かなり気を使ってしまい段々と疲れていった。
そして、あまり気を使わない、自然体でいられる女性に惹かれるようになっていった。
僕の気になるあの娘は
たぶん、派手な服装ではなく蝶ではないかもしれない。
たぶん、目立つような顔立ちの花ではないかもしれない。
随分と失礼な言い方になったね。
でも僕には、蝶よりも綺麗で、花よりも美しく見える。
蝶よ花よ、僕の大切な君よ。
君の心は誰よりも澄んでいて、世界一美しい。
蝶よ花よ
(注意:本来の言葉の意味とは違う解釈をしています)
私はあなたを世界一愛しているけど、他の誰も、あなたに見向きはしない。
いや、正確には見ても決して近寄らないのだ。
あなたは傲慢で、誰に対しても威圧的で攻撃的だから。
そう、例えるならあなたは高嶺の花。美しい薔薇だ。
私の愛も、あなたにとってはどうでもいいのだろう。
まるで私は薔薇に魅了された蝶だ。
蜜を吸いたくても、薔薇には沢山の棘がある。自分を守る為の。だから私はあなたの近くをひらひらと舞うだけ。
あなたはこの先も、一人でいるのだろうか。
「『蝶よ花よ』って、『親が子供を』、『蝶や花を人間が慈しみ愛でる、それと同レベルに、格別にかわいがり』、『愛をもって大切に育てること』なのな」
てっきり「子供自身が」、「『ほら蝶々、ほらお花』と、綺麗な物・綺麗事100%の『無菌』な環境に置かれて」、「下品下劣・世俗を知らない、ガチのピュアっ子に育つこと」だと思ってたわ。
某所在住物書きは題目の意味を調べ、己の誤った解釈に気付き、数度頷いて純粋に知識を改めた。
「意外と、『実は間違って覚えてました』っていう言葉とかことわざとか、多そうよな」
ため息ひとつ、物書きは額に手を当てる。
「で、……『蝶よ花よ』で何をどう書けと?」
――――――
8月8日は世界猫の日だそうですね。それにちなんだワケでもありませんが、ネコ目イヌ科キツネ属のおはなしをご用意しました。
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、不思議な不思議なお餅を売り歩く、不思議な不思議な子狐が住んでおりました。
「ただいまもどりました!」
今日もコンコン子狐は、ホオズキの明かりを右手に、葛で編んだカゴを左手に、ウカノミタマのオオカミさまのご加護でしっかり人間に化けて、たったひとりのお得意様のアパートへ。
ウカノミタマのオオカミさまのご利益厚い、心の中の悪いものを少し落としてくれるお餅を売って、
「ととさん、かかさん!今日もおとくいさん、買ってくれた!」
ほら、キレイ!
仁王立ちする母狐と、母狐の前で畳に正座し、小ちゃくなっている父狐に、己の労働の対価を見せました。
「まあ、まあ!なんて素晴らしい!」
奥の台所のあたりから、チラチラチラ、細くて白い煙が、強いお焦げの香りと共に、部屋に入ってきます。
「かかさんに、もっとよく見せてちょうだい。お前の頑張ってきたものを、よく、見せてちょうだい」
どうやらまたまた父狐、自分の職場に持っていくお弁当を、自分で作ろうとして失敗して、お肉をすぶすぶ焦がした様子。
なんということでしょう。
コンコン子狐の父親は、都内の某病院に漢方医として勤務して、労働し納税し昨今の悪しき病魔に立ち向かう40代既婚(※戸籍上)で、
コンコン子狐の母親は、神社近所の茶葉屋店主として店を営み、ハーブとお茶っ葉と少しの軽食メニューで客の心と魂を癒やす40代(※同上)だったのです!
かかさんのごはん美味しいから、かかさんにお願いして、お弁当作ってもらえばいいのに。
ととさん、かかさんのお仕事減らしてあげたいのは分かるけど、お料理だけは、絶対かかさんに任せた方がいいのに。
子狐は、父狐がお肉を焦がして正座させられるたび、こっくりこっくり頭をかしげるのでした。
「今日は、おっきいキラキラ1個と、ちいちゃいキラキラ3個貰った」
500円硬貨1枚に、100円硬貨が1、2、3枚。
「かかさんに、いちばんおっきいキラキラ、あげる」
とてとてとてと、コンコン子狐が近づくと、
優しい顔に戻った母狐は、子狐をそれはそれは愛おしく、ぎゅっと、抱きしめてやりました。
「いいえ。500円玉は、その大きいのは、お前がお持ちなさい。お前が、頑張って頑張って、お餅を売って、貰ったご褒美なのですから」
ああ、こんなに立派になって。こんなに優しい子に育って。
まだ気まずそうに、ちんまり正座する父狐をしり目に、母狐は子狐を、幸せと少しの感涙で、撫でて抱きしめて頬を擦り寄せ、ただただ、愛してやりました。
おしまい、おしまい。