たしかに

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【蝶よ花よ】

 蝶よ花よと育てた我が子が、SNSでオジサンを釣っていた。

 私は雷に打たれたような思いだった。そんな子に育てた覚えはない。どこでこんな遊びを覚えてきたのだろう。
 何不自由なくとは言わないが、それなりの生活を送らせてきた。テストで良い点を取れば玩具を買ってあげたし、家の手伝いをすればお駄賃をあげた。
 そんなあの子も今年で18になる。私の言うことを素直に聞くばかりではない。先日も、つい世話を焼こうと口を挟んだ私に対して、放っておいてと苛立ったように言い返してきたばかりだった。
 本当にこの写真はあの子なんだろうか。何度見返したところで、半信半疑が確信に変わるばかりであった。小さい頃から見守ってきた親だからこそ分かる。可愛い我が子の信じられない姿に、私はひとりで頭を振った。あの子はきっと、蝶でも花でもない、蛙の子なのだ。
 偶然とはいえ、見かけてしまったからにはなかったことにできない。居ても立っても居られなくなり、リビングのソファから腰を上げる。
 この画像は本物なのかと問い詰めながら、あの子と話をしなければならない。どこからそんなはしたない服を手に入れたとか、どんな友達とつるんでいるのかとか。蛙の子の親として、それを知る義務がある。愛息子の可愛い女装姿を画像フォルダに収め、私は嫁のクローゼットを開けた。

8/8/2023, 1:28:59 PM