『落下』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
【落下】
落ちる狼落とし穴
ゆらゆら揺れるゆりかごは
誰をくるんで微笑むの?
イバラの棘が痛いから
手足を取って棚に置く
早くお家に帰りたい
泣いた兎はかごの中
カラの鏡は役立たず
流す涙も掬えない
今日も誰かと遊ぼうか
覗いた井戸に石を投げ
当たったあなたが今日の鬼
落下
ある日突然、足元が崩れて長い長い落下が始まった…それまでの、幸せだと思っていた時間が、どんどん色褪せて、枯れ葉を握り潰す様に、乾いた音と共に、粉々になってゆく…
本当は、最初から、自分の居場所なんて無くて、現実から目を外らして、居心地良い世界だと思い込んでいた…
あなたが、あの日、私の知らない誰かと親しげに、街なかで腕を組んで歩いている姿…はじめは、見間違い、って思いたかった…でも、確かめるが怖くて、あなたに、会うのも、メールするのも、出来なくて…ただ、何処までも、落ちてゆく…そんな日々に流されていくだけ…
気がついた時からゆっくりと落ちている感覚に悩まされているのに、一向に下にたどり着く感覚がないのがもっと怖い。
落下
船に乗って海を見下ろしていると、このままこの海に落下したらどうなるかなといつも考える。
高い所から見下ろして、落下したらどうしようとなるのとは少し違う恐怖があって、どうしても考えるのをやめられない。
海に落ちても、しばらくは生きているだろうし、もしかしたら誰かが気づいてくれて助けられるかもしれない。
でも、誰にも気づかれず静かに1人海で揺蕩っている時間が長くなるだろうと思うと、その絶望感に胸が締め付けられる。
怖くて絶対に落下したくないと、船内に戻るのに、また甲板に出て同じことを考えてしまう。
別に人生を終了させたいわけじゃない。
それなりに心弾む瞬間や湧き上がる高揚感だってある。
でも、船に乗ると落下したくなる。
いつか本当に手すりを乗り越えそうで、しばらくは船に乗るのを控えようと心に決めている。
でも、この恐怖を再び味わいたくてまた船に乗っちゃうんだろうなあ。
『大好きだよ。』
彼が言ってくれた言葉。何でこんな事になったんだろ。
『元気してた?僕はすっごく元気だよ。』
笑顔で言う彼。彼の足元には影がなく、生きていない事が分かる。
「楽しそうだね。君に久しぶりに会えて嬉しいよ。」
『僕もだよ。』
彼は死んだ事によって、生まれ変わった様だった。生前では考えられない、陽のオーラを放っていた。その事は素直に喜ばしかった。
『今日は君と話をしに来たんだ。』
彼の表情は先程とは違い、真剣なものだった。
「君も私を否定するの?」
彼は一年前に病死した。病気だと知った時から、彼の表情からは笑顔が消えていた。私は、彼を喜ばせようとした。しかし、彼は死ぬまで笑う事はなかった。彼が死んでから、私の世界は崩れた。それ程までに、彼の存在は私には大きかった。彼に会いたい。その気持ちは次第に溢れていく。死んだら会えるはず。そして私は、屋上に来た。
「私は君が好き。今までも、これからも君以上の人なんて居ない。だから、止めないで。」
分かっている。この思いは歪んでいる。誰も認めてはくれない。それでも、これが私の彼への愛の強さの証明だ。
『僕はね。見送りに来たんだよ。君は最後まで僕の傍に居てくれた。だから、最後ぐらい君の傍に居たいんだ。』
涙が止まらない。彼は私の手を取った。
『これからも一緒だよ。』
恐怖はなかった。ただ風だけが私を包んだ。
落下する先が、天国でも地獄でも何でもいい。彼と居れば、何処だってワンダーランドだ。
創作物語「落下物」
私たちの街にはいろいろなものが落ちてくる。
帽子に鞄、ネックレス…ときには札束なんかも落ちてくる。
落ちてきたものは市役所に届けることになっている。届けられたあとのことは秘密にされていて落下物の行方は誰も知らない。
ある日の登校中、手紙が落ちてきた。手紙は風船にくくりつけられていて誰かが意図的に飛ばしたようだった。
手紙には宛先は書いていなかった。誰もいないことを確認して手紙をみると〚これ以上落とさないで〛とだけ書かれていた。
この手紙の真相がわかったのは数年後、私が高校を卒業し、市役所の落下物対応課に配属されたあとである。
私の街は空中都市だ。
少し前から人口爆発が起き、それに伴う死者の弔い場所の減少が問題となっていた。
後で知ったことだが、処理に困った遺産の多くを争いが生まれないように街から落としていたそうだ。
同時期から多発していた落下物の処理も同様に行っていたのだ。
もしかしたら私たちの街の上にも街が続いていて落下物は遥か上から落とされていたのかもしれない。
上にある街の誰かの大切なものだったかもしれないと思うと、なんとも言えない気持ちになってしまうのは私だけだろうか?
作品No.79【2024/06/18 テーマ:落下】
ひたすらに
落ちていく
どこに辿り着くのかも
わからないまま
身動きすら
取れないまま
ただ 落ちていく
自分では
どうしようもないほどに
落ちて
落ちて
這い上がることも
上に飛ぶことも
思いつくこともできぬまま
どこまでも
落ちていく
無愛想な君の、まるで花が綻ぶかのような笑顔をみた。
そこからはまさに急転落下。
坂道を転げ落ちる勢いで恋に落ちた。
もう一度その笑顔を見たくて、自分に向けて欲しくて。
沢山話して、一緒に居る時間も増えちゃったりして。
そうしたらいつの間にか、無愛想な君の、呆れるような絆されたかのような、はたまた無邪気な笑顔は沢山貰えるようになったけど、いつかみたあの綻ぶような笑顔を貰うことができないまま。
でもね、わかっていたんだよ。
あの笑顔の先にいる人はただ一人だけって。
恋する君の、花が綻ぶような笑顔をみて恋に落ちた。
落ちて、
おちて、
果たして、その先は。
『落下』
#15
「落下」
スーパーで買い物をしてきた。
冷蔵庫に買ってきた品物を、少しでも新鮮なうちにとどんどん入れていく。
6個パックの玉子、いつもならパックごと両手で丁寧に持つのに、嫌なことがありイライラしていて、つい片手で持ってしまった。
そして冷蔵庫に入れる直前、指を滑らせ落としてしまった。
玉子は割れてダメにしてしまうし、掃除はしないといけないしで、イライラに情けない気持ちも追加されてなんだか泣きたくなった。
緩やかに、空が視界を横切っていく。
雲を突き抜け湿った服が風で冷たくなり、肌を冷やしていく。
綿菓子みたいな雲を掴めるはずもなくて。冷えきって動かない手を軽く伸ばしてみるけれど、何にも当たることは無かった。
耳元でずっと、風が唸る。
突然。
木々が見えたかと思うと、体は水に叩きつけられた。
落下
私は落下で2つ思い出すことがある
まず1つ目は洗い物のときによくお茶碗を
落としてしまうこと
2つ目は夜にスマホを見ていて寝落ちと
同時に床にスマホを落下させてしまうこと
落下させる度に後悔の繰り返しになるので
これからはしっかり注意を払おうと思う
【落下】
元から高いところにいた訳でもない
それなのにあるのが当たり前に思っていた地面でさえ
裏切って弛み僕を沈めていく
嘲笑うように見下ろしてくる
いつからか周りに水も迫ってきて
さらに呼吸をしにくくする
口から漏れる泡だけが上がって行くが、
黒い空気に埋もれてそれもまた落ちる
これ以上落ちないように
これ以上溺れないように
何か掴めるものを探した手を
弄んでは更に深く突き落とされて
周りはいつしか暗くなっていった
誰かを呼ぶ声も出ないし、思い浮かぶ人もいなかった
いつの間にか暗闇の中でうずくまった
何かの声が聴こえて、何かがそばに居てくれる気がした
でも上がる力も術も持たない僕に
寄り添う人がいるわけもなく
そんな人がいたとしても道連れに更に落ちるだけだ
今こうしている間にもいしが投げつけられて
当たる度に落ちて行く
もうとっくの昔に全部諦めていた
だからもう良いのに
聴こえる声はなんて心地いいんだろう
どうして何処にも行かないで
ここに居てくれるんだろう
2024-06-18
いつも通りに起きたら、愛する人がいる。
愛する人の笑っている顔が見られる。
僕はそんな日常が気に入っていた。
ずっと続くと思っていた。
僕はみんなとは違う。
見えてはいけないものが見える。
お化けみたいなそれを、やっつけるのが僕の仕事だった。
ある日、愛する人が難病にかかった。
余命一ヶ月。
僕はそれがお化けのせいだと知っていたけど、言わなかった。
いえなかったんだ。
ある日彼女が、僕を呼び出した。
余命残り一日になった日だった。
彼女は思い詰めた顔をしていた。
寿命が尽きるのが怖いのかと思ったが、違った。
逃げて。
彼女はそう言い放った。
遅かった。
僕はそう思った。
彼女は、取り憑かれた霊に生気を吸われて死ぬのだと思った。
違う。
彼女は取り憑かれていた。
僕はすぐに彼女についていた霊を、死に物狂いでやっつけた。
でも、彼女の寿命はもう尽きていた。
このままだと彼女は1人彼岸に行くことになる。
そんなの嫌だ。
僕はそう思った。
僕は不思議な場所を知っている。
それは、大きな穴だ。
この穴に落ちたものは、生者でも死者でも、悲願送りになってしまう恐ろしい穴。
僕はそこに、彼女もろとも落っこちた。
なんとか口を開けた少女が言う。
死なないで。
大丈夫だよ、とぼくは微笑む。
きみを1人にはしない。
そう言って、僕らは真っ暗な穴の中に、落ちていった。
ふわっと 後ろから
落ちるような感覚になるから
上りの階段は ちょっと怖い
みんな、踵を浮かせてずんずん上れるよね
わたしは階段の断面にベタ付けじゃないと
手すりにもちゃんと掴まってないと
本当に落ちそうになるのに…
体幹とか筋力とかの問題じゃないと思う
小さい頃から 階段は苦手
背中にアザがあるから
前世は 背後から弓矢に射抜かれて
階段から落ちたに違いないのだ
と、本気で思ってる
◇落下◇
最後はもはや、笑えてくる
いくとこまでいったら、怖いもんなしだよ
一回り成長できるなら
それはそれで、悪くない
#落下
子どものころ 底なし沼に落ちた
実際には底なしではなくても
水と土の微妙な量のバランスで
泳ぐことのできない
もがくほど沈む恐ろしい泥沼になる
きれいな湧き水で知られる土地で
蝶を追っていた夏の日
池のほとりは水草が茂っていて
どこまで地面かわからないまま
踏み込んだ足がすっ、と吸い込まれた
ポチャンと水に落ちるのではない
泥の中にゆっくり沈んでいったのだ
頭は真っ白で声も出ない
蝉の声も消えた静寂の中で
身じろぎもできぬまま膝、腰、胸と
もう目を閉じるしかないような瞬間
対岸から駆けつけた父が引き上げてくれた
全身小さな浮草と泥まみれ
蝉の声が戻ってきても放心していたっけ
慣れぬ土地の池や沼、
どうか皆さまお気をつけて
「落下」
#447
落下、、
あぁ、落下したい。下を見ると、恐ろしい。勇気ない。
【落下】
「相合傘」で降下していく落下傘カップル部隊
体に浮遊感を覚える。
私の頭はそれがあり得るはずのない感覚だと訴える。
私はその訴えを認めたくなかった。
この状態はあり得るはずがなかったから、あって欲しくなかったから。
私はいつも通り魔法の箒で学校に向かう。
今日は魔物退治がある。人手が足りないらしく学生も報酬をもらい魔物退治ができるように最近決められたそうだ。
万年金欠の私にとってはとても嬉しいニュースだ。
早速申し込んだ。それが今日だ!
学校側も色々用意してくれて、無駄にお金を使う必要がなく、本当にありがたかった。
魔物は東の森にいるらしく、早速箒で向かった。周りを見渡しながら攻撃魔法の準備をする。
だが私は真下を見ていなかった。
突然箒が真っ二つに折れ、落下する。
パニックになり低速落下の魔法をかけようとすると杖を魔物の触手に飛ばされる。
森の木が近づいてくる。
手の届く範囲には折れた箒。
もう私は思考することができなくなってきた。
『落下』18/356
あなたと一緒なら、落ちるのなんて怖くはないわ。
だから、この手は一生、離さないでよ。
黒い都会の風が吹き荒ぶ。
遠くに、かすかに聞こえる嗚咽。
頼りないフェンスの向こう、眼下に渦巻く欲望。
絶え絶えに声が聞こえ、後ろを振り返る。
あなたの蒼白な顔が、月光に照らされた。
でも、残念。一瞬、遅かったのよ。
もう、私を支える物は何もない。手を固く握るだけ。
体を宙に投げ出して、次第に視界が加速していく。
鮮血を舞わせながら、落ちていく。
遺体の周囲には、まるで雨が降り注いだような血痕が残っていた。しかし、それよりも奇妙なことは…