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創作物語「落下物」

私たちの街にはいろいろなものが落ちてくる。
帽子に鞄、ネックレス…ときには札束なんかも落ちてくる。

落ちてきたものは市役所に届けることになっている。届けられたあとのことは秘密にされていて落下物の行方は誰も知らない。

ある日の登校中、手紙が落ちてきた。手紙は風船にくくりつけられていて誰かが意図的に飛ばしたようだった。
手紙には宛先は書いていなかった。誰もいないことを確認して手紙をみると〚これ以上落とさないで〛とだけ書かれていた。
 
この手紙の真相がわかったのは数年後、私が高校を卒業し、市役所の落下物対応課に配属されたあとである。

私の街は空中都市だ。
少し前から人口爆発が起き、それに伴う死者の弔い場所の減少が問題となっていた。
後で知ったことだが、処理に困った遺産の多くを争いが生まれないように街から落としていたそうだ。
同時期から多発していた落下物の処理も同様に行っていたのだ。
もしかしたら私たちの街の上にも街が続いていて落下物は遥か上から落とされていたのかもしれない。
上にある街の誰かの大切なものだったかもしれないと思うと、なんとも言えない気持ちになってしまうのは私だけだろうか?

6/18/2024, 2:16:17 PM